Xeno_Blue Archive Alternative Story 作:リョウ猫@夜桜
???「窃盗事件?」
???「うん。数ヶ月前から時折あったらしいんだけど、数日前の今回は流石にマズいものが盗られたらしくてね」
その事件について問うたのはミレニアムサイエンススクールのセミナー所属、早瀬ユウカ。答えるはシャーレの『先生』であった
ユウカ「その、盗まれた物というのは?」
先生「それが私も詳しく知らなくって。けど、何らかの契約書ってことだけはわかってる」
ユウカ「契約書?」
先生「多分商業に関するものだろうね。何かを仕入れる、とか」
あくまでも予想だけどね。と、『先生』は付け加えた
ユウカ「ですが、それが盗まれるまで何故相談が来なかったんでしょう?」
先生「それがわからないんだ。火薬やセンサーが盗まれていた、という報告はあったけれどそれは噂の範疇だったんだ。被害者の方が直接連絡してはこなかったんだよね」
ユウカ「…それ、被害者の方に何か裏があるんじゃ…」
先生「あはは、やっぱりそう思うよねー。私もそうなんじゃないかと思ってる」
けど、と言い『先生』は話を続ける
先生「これまでに窃盗があったのは事実。それに、盗んでいるのが同一人物なのはわかってるんだ」
ユウカ「そこまで情報があるんですか?」
先生「うん。ほら、これ見て」
と、『先生』は監視カメラの映像をPCに映し出した。一目見れば、グレーのコートに見を包んだ少女がいることにきづけるだろう
先生「こう言うと失礼かもしれないけど、見るからに怪しい娘がいるだろう?この娘が犯人らしくて、巷じゃ『シンデレラ』って呼ばれてるね」
ユウカ「灰かぶり─シンデレラ─、ですか…。彼女を追跡しようとかはあったんですか?」
先生「そういう試しはあったそうなんだけどね…催涙ガスや閃光手榴弾─スタングレネード─を使用してきたり、発信機を付けることができたと思えば、小型のEMPですぐ無力化されたってさ」
ユウカ「それじゃ、アジトがわからない…?」
先生「いや、近隣住民の話からアジトの場所はもう見当がついているらしいんだ。どうも、ミレニアム近くの廃工場らしいんだけどね」
ユウカ「場所が判明しているのなら乗り込めば良いのでは?」
先生「そうしたらしいんだけどね。至る所にトラップが仕掛けられていて、とても突破は困難だったようなんだ」
ユウカ「それほど強固なんですか?」
先生「どこで仕入れてきたかわからないけど、催涙手榴弾にさらに麻痺毒まで含ませていたらしくてね。そして恐らくはそれをいくつも用意している。ただ体力を消耗するだけと判断、撤退したんだと思うよ」
ユウカ「麻痺毒…まさか、山海経から?」
先生「その可能性はあるだろうね。まぁ、それも盗み出したものとは思うけれどもね」
ユウカ「そこまでして盗みを働くとは…」
先生「オマケにミレニアムから盗んできたであろうタレットやドローンなんかもあったそうで。かなり腕が立つ泥棒さんだよ、これは」
それを聞くと、ユウカは「そういえば、」と言い少し話し始めた
ユウカ「少し前、ミレニアムでも盗難があったんです。それも人感センサー式のタレット、それにドローンも。けれど、それは廃棄品だったので特に問題はないと判断されましたし、しかも廃棄されたのは一つだけでしたよ?」
先生「…となると、考えが変わるね。私はタレットやドローンも全て盗んできたものと思ってたけど、どうも違うようだ」
ユウカ「まさか、盗んだ一つをもとに他はすべて自分で作った…!?」
先生「それが一番可能性が高いだろうね。そこまでの腕があるとなれば、流石に放っておくわけにはいかなくなってくる」
ユウカ「それに、麻痺毒が盗まれたものとなると、次はさらに危険なものを盗む可能性も…」
先生「奪うどころか作り出すかもしれないね。私どころか君たちさえ殺すようなのを」
自分たちが毒に侵され、苦しみながら死にゆくなんていうのは、想像するだけで身が震えるものだ
先生「さて、本題に入ろう。君…いや、君たちにはこの窃盗犯を捕まえてきてほしいんだ」
ユウカ「捕まえる…ですか」
先生「うん。編成としてはまずユウカとマキ、それからアスナ。最後に…こう言うとアレだけど、もし何か不測の事態が発生した場合に全て吹っ飛ばすためのアリス。この4人で行ってもらいたいんだ」
ユウカ「…あぁ……」
早瀬ユウカは知っている。天童アリスの持つレールガンの威力を。このシャーレのオフィスの屋根を吹き飛ばしたという事実を。彼女はよーく知っているのだ
先生「作戦開始時刻は明後日の20:30。頼んだよ、ユウカ」
ユウカ「っ…はい!」
その間、『シンデレラ』が動くことはなかった。単に動く必要がなかったのか。あるいは、戦闘に備えていたのだろうか
そして、作戦当日
アスナ「へぇー、ここがその泥棒さんの工場?」
先生「うん、ちゃんと証言もあるし、何より入ったらすぐタレットがあるはずだからね」
マキ「見分け方物騒…って、ホントにいた!」
タタタタタタタタタ!!
無論、容赦など欠片もない発砲。むしろ、侵入者に情けをかけるような主がどこにいるのだろうか
ユウカ「総員戦闘配置!」
アリス「ダンジョンの門番ですか…アリス、行きます!」
先生「威力は控えめにね!まだ全部吹っ飛ばす段階じゃないから!」
アリス「はい!」
タレットの数は8つ。少し多いが、人間でないのならこちらも情けは不要
1つ、また1つと着実に破壊されていく
だが、この程度で済ますようなセキュリティでは欠陥と言う他ないだろう
アリス「……!皆さん、気をつけて!上に何かあります!」
ユウカ「何か…って、アレ、ピッチングマシン!?」
そこにあったのはよくバッティングセンターで見るようなピッチングマシンであった。だが1つ、異なる点があった。それは…
ヒュンッ
カラン…
ユウカ「っ…これ、スタ─」
中にあるのが野球ボールではなく手榴弾である、という点だった
パァン!!!
アリス「なんの光!?」
凄まじい閃光と腹の奥まで震えるような轟音が響く
当然マトモに立っていられる訳もなく、さながら千鳥足のようによろめいている
…が、それが功を奏した
マキ(ん…?足になにか……えいっ!)
カン、と思い切り蹴飛ばされた何か
直後、その何かは煙のようなものを出していた
ユウカ「う、ぅぅ……」
マキ「うぅ〜…あ、あれ!」
と、蹴飛ばしたマキ本人が真っ先に気づいた
アリス「あれが例のガスですか…」
アスナ「ほら皆、マスクマスク!」
と、各自ガスマスクを装着する。顔を完全に覆えるタイプである
マキ「さっきからぽいぽい投げて、ちょっとしつこいよ!」
タタタタタタ!
ピッチングマシンめがけ、弾丸が放たれる
所詮はごく普通の機械、耐久性がそこまで高いわけでもなくすぐに破壊された
ユウカ「ふぅ…なんとか乗り切ったってところね」
アリス「では、いよいよ内部の探索ですね!」
アスナ「探索とはいっても、集団で行動したほうがいいかもよ?ほら、どこで奇襲されるかわかんないし」
ユウカ「一理あるわ…よし、そうしましょう」
が、探索は想定外に上手く進んだ
途中ワイヤー式の爆弾が仕掛けられていたが、遠くから撃ってしまえばどうということもない
また、先程と同じようなタレットもあったが彼女らの障害ではなかった
なにせ、戦闘の指揮においてキヴォトスの中で右に出る者はいない、と言っても良いほどの存在、『先生』がバックにいるのだから
そんな彼女らがもう少し奥を探索しようとした、その時だった
ダァン!
ユウカ「!!」
マキ「今の…銃声だよね!?」
アスナ「ご主人様、相手は一人なんじゃないの!?」
先生「いや、相手がどれだけいるのかなんてのはわかっていないんだ。そもそも『シンデレラ』が灰色のコートを着用しているから付けられたコードネームなのであって、中身が同じ人間であるという確固たる証拠は無い」
言われてみればその通りである。『シンデレラ』と呼ばれる少女が盗みを働いた、たったそれだけの事実なのだ。本当に一人で行っている可能性があるが、体格が同じ複数名の犯行である可能性も十分にある。それに、だ
ユウカ「盗む担当と組み立てる担当がいる可能性も…?」
先生「十分、あるだろうね」
失念していた。相手が多数である可能性を考えていなかったのだ
冷静に考えてみれば単独のはずがない。アレだけ盗んでおいてここまで問題になっていないとなれば、裏で脅迫か何かをする担当でもいたりするのだろうか。例えば、大きな会社をバックにつけている者、とか
しかし、それではわざわざこんなところをアジトにする意味がわからないし、会社がバックにあるのならそこから仕入れれば良いじゃないか
ユウカ「…わからない……」
アスナ「…行こ。ここで止まってても、何も解決しないよ?」
アリス「そうです…ね。多分ラスボスには逃げられちゃいましたが、手がかりとなる人物はいるはずです!」
マキ「そうとなれば善は急げ、だね!」
そうして彼女らは駆け出した。この先へ。工場の奥、管理室へと
ユウカ「着いた…」
アリス「アリスが開けます。皆さんは警戒を」
マキ「わかった!」
アスナ「任せて!」
アリス「それでは…ていっ!」
ガチャ、と、扉は簡単に開いた
中には、倒れている一人の少女がいた
髪色は若干紫がかっており、いわゆるポニーテールの形を取っていた
ヘイローは無く、しかし息があるのを見るに恐らくは気を失っているのだろうと思えた
服は白く、けれど脇腹の部分が赤く染まっているのでそこを撃たれたのだろう
ユウカ「仲間割れ…かしら」
マキ「やっぱ複数犯かぁ…」
アスナ「どこかに手がかりがあればいいんだけどなー」
アリス「探索パート、開始ですね!」
と、周りを探り始める
盗まれたものであろうセンサーや弾薬、手榴弾。それと、空になった麻痺毒が入っていたであろう容器も見つかった
アリス「手がかりはこのくらいでしょうか…」
ユウカ「…いや、まだあるわ」
アスナ「じゃ、どうする?この娘。多分共犯だろうし、尋問でもやる?」
ユウカ「その前に、傷の手当をしたほうがいいわね。誰か救護室まで行ってきてくれる?」
マキ「それなら、手分けした探したほうがいいかな?」
アスナ「さんせ!じゃ私先に行ってくるね!」
ユウカ「あ、ちょっと!あ〜もう、私も行ってくる!」
マキ「じゃ、私も行くかな。ごめんねちょっとこの娘見てて!」
アリス「お任せください!」
と、3人は手分けして救護室を探し始めた
アリス「……アリスも探索、やってみたかったです…」
ぽつり、とアリスはそう呟いた。その瞬間だった
???「動かないで」
アリス「…!!」
どこからか声がした。すぐ近く、けれどこの部屋にいるのはアリスと倒れている少女のみ。となれば…
アリス「……起きていたんですか?」
???「仮死薬ってやつ、言わば死んだふり。あの血は鉄を混ぜた血糊」
右は赤、左は青の瞳がアリスを睨みつける
ヘイローは左右が瞳と逆の配色をした円であり、なおかつ左右がズレていた。それがどこか精神の不安定さのようなものを感じさせた
アリス「では、あの銃声は…」
???「誰も撃ってない。そもそもここには私一人しかいないし」
アリス「単独犯…だったんですか」
???「そういうこと。けど、悪いのは私じゃない、あんな汚い大人たちだ」
ユウカ「アリス、包帯持って…」
???「手を上げろ!」
ユウカ「っ…!」
???「今すぐ後ろを向け、でないとコイツがどうなるか…察することくらいできるな?」
アスナ「…わかった。けど、その後でいくつか質問に答えてくれる?」
???「断る」
アスナ「そっか、残念」
???「じゃあ、このままここから出ていって。そして二度と私に関わらないで」
ユウカ「要件はそれだけ?」
???「あぁ、ならミレニアム製の防犯システムをいくつか持ってきてもらえる?それまでコイツは人質としてここに置かせてもらうから」
ユウカ(余計なことを言ってしまったわね…)
ユウカ「…わかったわ。3日以内に必ず用意する」
???「交渉成立。じゃ、早く行ってよ」
アスナ「…ごめんね。ちょっと待ってて?」
アリス「…はい」
マキ「じゃ、行こっか…」
そうして3人はここから去った。管理室に映る映像から、その様子が見えた
数十分後
先生「アリス、アリス?聞こえる?」
アリス「先生!」
???「へぇ…アンタが。噂には聞いてたよ、シャーレの先生?」
先生「…君が、『シンデレラ』か」
シンデレラ「あ、やっぱそう呼ぶんだ。いやその他の呼び方を用意してないこっちが悪いんだろうけどね?」
先生「自分の非を認めることができてる以上、君は多分根は良い子なんだろうね。けど、それだと窃盗をしている意味がわからない。なぜ、そんなことをしているのかな?」
シンデレラ「私のことなんか理解できるはずないだろう…お前のような大人に、自分は後ろから呑気に見物している汚い大人に、私の何が」
震えながら『シンデレラ』はそう言った
先生「わかった。じゃあこうしよう。今から君のところに行く。だから、大人しく待っててくれるかい?」
アリス「先生駄目です、それだと先生が!」
シンデレラ「わかった。トラップは全部機能を停止させておく。けどワイヤートラップには気をつけて」
先生「…やっぱり良い子だね。それじゃ、すぐに行く」
と、通信が切れた
アリス「…どうしてそんなことを」
シンデレラ「別に?特に理由はないよ」
アリス(いえ、そんなはずがない。今すぐ先生に連絡して…)
シンデレラ「おっと、通信はしないほうが良いよ?自分の身が大事ならね」
アリス「どうでもいいです、アリスの身のことは!」
シンデレラ「あ、そう?けどそしたら先生がちゃんと生きてられる保証人いなくなっちゃうよ?」
アリス「うぅ……」
シンデレラ「じゃ、大人しくしといて。あそうだ、これ食べる?普通のスープだけど」
と、『シンデレラ』は缶入りのスープと二人分のスプーンを取り出した。中は普通のコーンポタージュのようだ
シンデレラ「ほら、どうぞ?」
アリス「…どうしてですか」
シンデレラ「へ?」
アリス「どうして、そんなことをするんですか。」
シンデレラ「どうしてって…人質が腹空かせてたら困るでしょ」
アリス「…なんで、大人を憎むんですか」
シンデレラ「それはあなたには関係のないこと。私の問題だから」
アリス「アリス達にできることなら協力します、だから…!」
シンデレラ「じゃ、ここを出たら二度と近寄らないで。私が盗んでも追っかけようとしないで。それが一番の協力だから」
アリス「…わかり、ました」
シンデレラ「食べよっか、先生が来る前に」
それ以降、会話は無かった。モニターには、管理室へ向かってくる『先生』が映し出されていた
そして、その時は来た
先生「おまたせ、アリス。それと…『シンデレラ』」
アリス「先生!」
シンデレラ「ようこそ、先生。あ、もう行っていいよ」
と、『シンデレラ』はあっけなくアリスを解放した
先生「アリスはもう帰っていいよ。もう23時だ、子供は寝る時間だよ?」
アリス「ですが、先生…」
先生「私は大丈夫だから。ほら、ゆっくり休んで明日に備えないと。入り口に自動操縦のヘリがあるから、それに乗って」
アリス「わかりました。先生、どうかご無事で」
先生「うん、ありがとう」
そしてアリスは去っていき、部屋には『先生』と『シンデレラ』の二人だけとなった
先生「えーと、はじめまして。知ってると思うけど、私がシャーレの『先生』。…よろしく?」
シンデレラ「『シンデレラ』。こちらこそよろしく」
先生「…さて。立ったままだけど、これから個人面談をさせてもらうね。基本的に拒否権はないと思ってほしいな」
シンデレラ「もし、断った場合は?」
先生「君の行くとこに同行して、盗みを働く瞬間を間近でじっと見つめる、かな。止めもせず、数センチの差のところでじーーっと」
シンデレラ「…まさかトイレも」
先生「うん」
シンデレラ「…シャワーも」
先生「うん、当然」
シンデレラ「…ド変態」
先生「うん、よく言われる。これが嫌なら、ちゃんと面談に、正直に答えて?」
シンデレラ「やっぱり大人ってのは汚い…」
先生「じゃあ早速1つ目。どうしてそんなに大人を嫌うのかな?」
シンデレラ「大人は汚いから。他人を平気で利用して、裏切って、蹴落とす存在だから」
先生「2つ目。その考えに至る背景を教えてほしいな」
シンデレラ「私は昔、小さな保育所みたいなとこにいた。そこで過ごしてたある日、私を預かりたいって大人が現れた。それで私はついていったんだ。しばらく普通に過ごしてたけど、ある日話が聞こえてきた。私を薬の実験台にするって。私は逃げた。当然そんなのお断りだ。逃げて、逃げて、しばらくして前のとこに戻った…はずだった。眼の前でそれは燃えてた。真夜中、誰もが寝てるような時間に放火されてたんだ。きっとアイツらだ、そうに違いないと信じた。後から知ったけど、みんな焼け死んだ。私と仲良くしてくれたやつ、そうでもないやつ、みんな、みんな燃えて死んだんだ!……それ以来、私は大人を信じなくなった」
先生「…それは、辛かっただろうね。私はその経験はないけど、もし生徒の誰かが死んだら私は正気じゃいられないかもしれないだろうから。」
シンデレラ「…次は?」
先生「じゃあ、次。どうしてここに一人でいるんだい?」
シンデレラ「さっきのが原因。あの場所にいたから、みんな死んだ。私と関わったから、死んだんだ。なら、誰とも関わらない。何があろうと、死ぬのは私だけだ」
先生「なるほど、うまく考えたね。じゃあ、次の質問。君が盗むものに、共通点はあるのかな?」
シンデレラ「私が盗んでるのは汚いヤツらが用意した粗悪品。生産の過程で出来たエラーを安く仕入れて、それを高く売りつける業者がある。そこから出た弾丸とかを盗んでる。食料は普通に買ってるけども」
先生「じゃ、その食料を買うお金は?」
シンデレラ「ジャンクを買い取ってくれる店に盗んだものを売ってる。1回溶かして、分解して、また材料にすればいいんだって」
先生「そのお金で粗悪品を買おうとは思わないの?」
シンデレラ「普通に考えて赤字だし、そもそも粗悪品とわかっていながら定価で買おうと思う?」
先生「一理ある、かもね」
シンデレラ「だったら」
先生「けれど」
そう言って『シンデレラ』の発言は遮られた
先生「どれだけ悪くてもお店の商品を盗むのは良くないことだよ。そういう業者があることがわかったし、それを潰すためにヴァルキューレには動いてもらおうと思うけれど、それは別として君も罰を受けなきゃいけない。このままだと、君も汚い大人になってしまうよ?」
シンデレラ「…そう、だよね。わかってた。自分の行いは悪なんてわかってた。だから一人でいた。誰も巻き込まれないように、たった一人で」
先生「その優しさだけは大事にしてほしいものだね。それと、もひとつ質問。問題の契約書はどこかな?」
シンデレラ「…これ」
と、『シンデレラ』は懐から折り畳まれた1枚の紙を取り出した
先生「…なるほど。安い値段でもの売りますから、ってことね」
シンデレラ「それが粗悪品だと知らずにね。被害を防ぐためにこれを盗んだの」
先生「けど、また用意されるんじゃないかな?」
シンデレラ「それはわかってる。けど、どうしても我慢できなかった。これ以上、あんな汚い大人のせいで誰かが迷惑を被るのは放っておけなかった」
先生「うん、君は本当に優しい子だ。だからこそ、ちゃんと罪を償わなきゃいけない。いいね?」
シンデレラ「わかってる。いつかこうなるってわかってた、時間の問題だったから…ちゃんと受け入れる」
先生「それじゃ、出ようか。そしたら、ヴァルキューレに来てもらうからね」
シンデレラ「…うん」
そして、廃工場から出た二人は、しばらくしてヴァルキューレの生徒と合流した
ヴァルキューレの生徒「先生、今回はご協力ありがとうございます」
先生「それなんだけど、彼女は捕まえないでいてほしいんだ。代わりに、工場の中の弾とかを押収してほしいんだけど」
ヴァルキューレの生徒「…と、言いますと?」
先生「彼女以上に悪い人がいるってことさ。盗みなんかよりも酷い。粗悪品を売りつけてるとなると、銃が暴発して怪我、最悪の場合命に関わりかねないから。頼まれてくれるね?」
ヴァルキューレの生徒「はっ、承知しました!」
先生「じゃ、帰ろうか」
シンデレラ「帰る…って、さっきヴァルキューレに引き渡すって」
先生「ごめんね、気が変わっちゃって」
てへ、と『先生』は微笑んだ
シンデレラ「けど、帰る場所なんて…」
先生「じゃあ、シャーレに行こう。そこでしばらく過ごしたらいい」
シンデレラ「…いいんですか。それで、本当に」
先生「別に私は構わないけど?床でもちゃんと寝れるし」
シンデレラ「そうじゃない…私は、このまま解放されてていいんですか!?」
先生「良くないよ?だけど、君の行いには理由があった。だから、まず謝りに行こう。お店の人に理由を話して、ちゃんとごめんなさいって、ね?」
シンデレラ「…はい」
先生「それと、今後色々な出来事があると思う。それに、君には協力してもらいたいんだ。いいね?」
シンデレラ「…私は。私は、大人はみんな酷いと思ってました。けど、あなたは…」
先生「いいや。…私も、汚い大人だよ。みんなを危険な目に合わせて、自分は後ろでふんぞり返ってる」
シンデレラ「…けど」
先生「止めないで。…そうだ、君、私を殺す気だったような?」
シンデレラ「…あんな変態じみたこと言われたら流石に殺す気も失せますよ」
先生「あはは、作戦大成功?」
シンデレラ「卑怯だなぁ…」
先生「うん、これもよく言われるね…えーと…そうだ、最後の質問いい?」
シンデレラ「どうぞ」
先生「君の名前が、知りたいな」
シンデレラ「名前…私の、本当の名前……」
先生「うん。君の名前。嫌なら言わなくても」
シンデレラ「ゼノ」
『先生』の言おうとしたことを遮るように、彼女はそう言った
先生「…ゼノ?」
シンデレラ「琴奈ゼノ。それが、私の名前。私という存在を保証するモノ。だから、覚えていて。私が死んだとしても…」
ゼノ「琴奈ゼノという生徒がいたということを、絶対忘れないで」
先生「忘れないさ、絶対」
ゼノ「うん、だから…
これからよろしくね、先生」
始まったばかりにこの始末☆はてさてこの先どうなりますことやら