海辺の街を出発してほどなく、目的の洞窟ダンジョンに到着した。洞窟の入り口は想像以上に整備されていて、壁には等間隔にランプが設置され、薄暗いながらも足元がしっかりと見える。ここはかつて多くの商人や冒険者が通った道なのだろう。石壁には長年の使用による磨耗の跡が残り、いくつかの古びた標識が冒険者たちの通行を物語っていた。
「なぁ、達也?オマエ、ちょっと髭伸びたか?」
らんまの言葉に口元に手をあて、髭の長さを確認する。昨夜剃ったばかりのはずだが、確かに髭の伸びが速い。最近、体毛が濃くなったような気がしなくもない。らんまとの親密な関係が始まってから、何かしら影響があるのだろうか。
数日前、港町ソイツェストでの出来事がオレの中で鮮明に蘇る。あの夜、オレとらんまは男と女として繋がり、結ばれた。つまりは、二人とも初体験を済ませたってわけだ。
それ以来、オレたちはただの冒険仲間ではなく、少し深い関係にありつつある。らんまは強く、頼もしい存在であり、同時にオレにとって特別だ。非力ながらにらんまを守りたいと思うし、らんまの隣にいると、不思議と自分も強くなれる気がする。
「なぁ、らんま…オレたち、あの夜から何か変わったと思うか?」
オレの問いに、らんまは少し考え込んだような表情を見せ、やがて口元に笑みを浮かべた。
「変わったか?さぁな…でも、オレたちが強くなったのは間違いねぇだろ?だって、オマエもオレも、お互いに信頼してるんだからな」
その言葉を聞いて、オレも思わず笑みがこぼれた。らんまが言う通り、変わったのかどうかはわからないが、確かにオレたちは強くなっている。それは、ただの戦闘力の話じゃなく、二人の絆が深まったということだろう。
「よし、行くか。ゴブリンどもにオレたちの実力を見せてやろうぜ」
ダンジョン内を慎重に進み、二度ほど曲がった先で、突然、床が抜けた。
「うわぁっ?!な、なんだ、落とし穴?!」
反射的に手を伸ばして何かに掴まろうとしたが、間に合わず、オレたちは真下の部屋へと落下してしまった。四角形の部屋は広く、天井から崩れ落ちた瓦礫が散らばる中、目の前にはうじゃうじゃとゴブリンたちが現れた。
「らんま…!大丈夫か?」
隣にいるらんまを心配して声をかけた。オレたちが落ちてきた天井の破片がまだパラパラと落ちてくる中、らんまはすぐに体勢を整え、立ち上がっていた。
「痛ててて……。ちょっとびっくりしたけどな、大丈夫。問題ねぇ!達也、油断するなよ」
らんまが自慢のビキニアーマーを見せつけるようにマントを広げる。その姿はどこか小悪魔的ながらも、戦士としての覚悟が見える。オレも負けじと腰の剣を抜き、ゴブリンたちに向き直った。
「さあ、さあ、ゴブリンども!オレたちの経験値の糧になってくれよ」
ゴブリンが相手なら、オレも少しは強気になれる。ここ最近、手強い相手ばかりだったせいか、この程度なら楽勝だ。
「達也、油断するんじゃねえぞ、こいつら、チームワークは良さそうだぜ」
らんまの言葉に少し気を引き締めるが、オレたちの連携に敵うゴブリンなどいないはず。オレだって、ここ数日で強くなっているんだ。
「でぇええええい!」
オレは長剣を振りかざし、勢いよくゴブリンに斬りかかった。緑や黄ばんだ身体のゴブリンたちが砂のように崩れていく。らんまも剣を振りかざし、オレに続いてゴブリンたちを倒していった。さらにらんまは蹴りの攻撃も加えていった。
「無差別格闘早乙女流旋風脚ぅうっ!!」
「いいぞ、らんま!オレたちなら、この程度の相手じゃ物足りないな!」
オレがそう言いながら振り返ると、らんまは自信に満ちた笑みを浮かべながら、また一匹ゴブリンを蹴り飛ばした。その勢いでゴブリンは壁に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちていく。
「へへ、オレも同感だ。けど、油断は禁物だぜ、達也。まだ終わっちゃいねえからな!」
やがて、残りは五匹程度になり、オレたちは背中を合わせながら次の攻撃に備えた。息も少し上がり、防具の重さがじわじわと体力を削っていく。殲滅まであと少しだ。
しかし、突然、ゴブリンの一匹が腰蓑から何かを取り出し、それをオレたちに向かって投げつけた。薄紅色の霧がオレたちを包み込み、瞬く間に全身の力が抜けていく。まるで全身麻酔にかけられたような。
「な、なんだ、これ…んくっう……!」
「んぅ、妖術?!身体が…動かねぇ…」
全身が麻痺したかのように力が入らず、数秒も数えれないまま意識が遠のいていった。オレたちは、ゴブリンたちの策略にまんまと嵌ってしまったようだ。