ゴブリンの巣窟でゴブリンキングにらんまを奪われてから、数週間後。
オレは元の世界に帰れないまま、ただただ、この街で一般市民として暮らしていた。
ある日、久しぶりにギルドに立ち寄ることにした。ゴブリンに襲われた冒険者たちの話を聞けば、何か手がかりが得られるかもしれない。ギルドの中は相変わらずざわついていて、冒険者たちが各々の任務や噂話で盛り上がっていた。
オレは、掲示板の前に立ち、ふと目に留まった一枚の写真を見つめる。写真の中には、らんまの面影があった。鋭い目つきとおさげ髪は、オレにとって忘れられないものだ。しかし、その写真に添えられていた名前は「ゴブリンクイーン」と書かれていた。
「ゴブリンクイーン…?」オレは呟いた。何かの間違いだと思いたかった。しかし、写真に映るその姿は、確かにらんまに似ている。胸がざわつき、呼吸が浅くなる。
写真の横には、説明が書かれていた。ゴブリンクイーンは、ゴブリンキングとの間に多くの子を産み落としているという。そして、その子供たちは格闘型のゴブリンであり、ゴブリンの中でもエリートクラスの強さを誇るという記述が続いていた。
信じたくない。オレの頭の中で何度もその言葉が響いた。らんまが、あのゴブリンたちのクイーンだなんて…。そんなこと、あってたまるか。
だが、オレの心の奥底で、何かが叫んでいた。もし、本当にらんまだったなら、オレは何をすべきか?ゴブリンクイーンとなってしまったらんまを、このまま放っておいていいのか?
オレは震える手で、写真を手に取ると、しっかりと握りしめた。胸の中に渦巻く感情を抑えきれないまま、オレはギルドのマスターのもとへ向かった。
「これについて、もっと詳しく教えてくれ」とオレは低い声で問いかけた。
マスターは、オレの様子を見て、少しの間を置いてから言葉を選んで答えた。「そのゴブリンクイーンは、最近、森の奥で発見されたんだ。強力な力を持ち、冒険者たちを次々と襲っているという報告が増えている。だが…あまり近づかない方がいい。彼女はもう、元の姿には戻れないかもしれないからな」
その言葉がオレの胸に突き刺さる。らんまが、元のらんまに戻れない…? そんなこと、絶対に認められない。
オレは写真をポケットにしまい、決意を固めた。もし、あのゴブリンクイーンが本当にらんまだとしたら、オレがやるべきことは一つしかない。らんまを救い出し、この狂った運命から解放することだ。