オレはギルドを後にし、森の奥へと向かった。道中、らんまの面影が頭をよぎり、胸の中が重くなる。まるで、オレの心が黒い霧に覆われ、その中で迷子になったかのようだった。希望と絶望が交錯し、現実が歪んで見える。もし本当にらんまがゴブリンクイーンになってしまったのだとしたら、オレはどうすればいいのか。救い出すつもりで来たが、心のどこかで、事実を受け入れられずにいた。
森の奥へ進むにつれて、周囲の雰囲気が変わっていく。木々は薄暗く、まるで太陽がこの場所を避けるかのように、その光が届かない。空気は湿っていて、まるで腐りかけた世界に迷い込んだかのようだった。やがて、オレは小さな開けた場所に辿り着いた。そこで見た光景に、オレは足を止めた。
目の前には、らんまの姿があった。らんまは地面に腰を下ろし、小さなゴブリンたちを抱いている。腕の中で、赤ん坊のゴブリンたちがらんまの胸元に顔を埋めて、母乳を吸っている。らんまの顔には、肝っ玉かあさんのような安らぎと強さが漂っており、全てを受け入れているかのような雰囲気だった。
「よしよし、そんなに焦らなくてもおっぱいは逃げないよ。お前たちはオレの子供なんだから、たくさん飲んで大きくなれよ」らんまはゴブリンたちに優しい声をかけていた。言葉は、まるで自分の運命を受け入れてしまったかのように、穏やかで、恐ろしいほどの覚悟を感じさせた。
「らんま…」
オレは震える声でらんまの名前を呼んだ。
らんまはゆっくりと顔を上げ、オレの方を見つめた。その目には、どこか遠くを見つめるような虚ろさがあったが、同時に深い悲しみも感じられた。
「達也…」
「オマエ、来てしまったんだな。でも、もう遅いんだ…オレは、ここで生きるしかないんだ」
らんまの声は、まるで過去の自分をどこか遠いところに置き去りにしてしまったかのようだった。オレは言葉を失った。目の前にいるらんまは、確かにオレの知っているらんまだった。だが、同時に全く違う存在になってしまったことが、痛いほどに伝わってきた。
「そんなこと、ないだろ…!一緒に帰ろう、らんま!オレたち、元に戻れるんだ…!」オレは必死に訴えた。
しかし、らんまは首を振った。
「オレは、もう戻れないんだ…ゴブリンキングと一緒に過ごして、子供たちを育てることが、オレの運命になってしまったんだ。人間界に戻ったとしても、もうオレには居場所がないんだよ。オレは今、キングの赤ん坊を産んだり、育ているのに忙しいんだ、達也。帰ってくれ!」
「らんま…そんなこと言うなよ!オレがいるだろう!一緒に帰ろう、らんま!」
「達也、オレはもう決めたんだ。オレはゴブリンキングのもとで生きていく。ここでこの子たちを育てることが、オレの役割なんだ。」
「そんな…らんま、どうしてそんなこと言うんだよ!オレたちは一緒に人間界に戻れるはずだろ?」
「もう、戻る必要はないんだよ。ここでの生活がオレにとっての新しい居場所なんだ。キングと一緒にいることが、今のオレにとって自然なんだ。それに男のオマエにはわからないかもしれないけど、キングのチンポはめちゃめちゃ気持ちいいんだ。オレはあれから、毎晩、キングに抱かれている。それに、また、新しい命を授かっているんだ」
らんまは静かに立ち上がり、ふわりと膨らんだお腹に手を当てた。その仕草には、母親としての慈愛と覚悟が滲み出ており、オレの胸に重くのしかかる。
「達也、見てくれ。オレはもう、キングの子供を宿しているんだ。これがオレの新しい命であり、新しい運命なんだよ。」
言葉には、迷いも戸惑いもなかった。らんまはその膨らんだお腹を誇らしげに撫でながら、オレに真っ直ぐな視線を送ってきた。そこには、オレが知っている強いらんまとは違う、しかし確かに決意が見て取れた。
「らんま……」
オレはその場で立ち尽くし、どうすることもできなかった。らんまが戻らないと言っている以上、無理やり連れて行くことはできない。だが、オレの心は、らんまを失うという現実に耐えられなかった。まるで心臓がゆっくりと壊れていくのを感じるような、そんな感覚だった。
森の中、らんまがゴブリンの赤ん坊たちに母乳を与え続ける姿が、オレの目の前に広がっていた。らんまの腕の中で、ゴブリンたちがらんまに寄り添う様子は、見ているだけで胸が締め付けられるような、どうしようもない無力感を感じさせた。オレは何も言わず、何もできず、ただその光景を見つめるしかなかった。
らんまの姿が、オレの視界から遠ざかる。目の前のゴブリンクイーンがかつてのらんまだったという証は、もはやどこにも残っていない。オレが知っていたらんまは、もういないのだ。絶望と無力感がオレの心を締め付け、やがて涙が頬を伝い落ちていった。
オレは静かにその場を後にし、森を出た。らんまを救うことができなかったという事実が、オレの心に深い傷を刻み込んでいた。これから先、オレはどう生きていくのか、その答えは見つからなかった。ただ一つ、らんまがもうオレのそばにはいないという現実だけが、冷たく、そして重くのしかかっていた。
人生という長い夜の中で、オレは一人取り残され、道を見失った旅人のようにさまよい続けるだろう。かつての希望は闇に飲み込まれ、胸の中に残ったのは、終わることのない痛みだけだった。未来のない道を、これからも歩き続けなければならないという現実が、オレの心を壊していく。闇の中で、オレはもう二度と光を見つけることはないだろう。
そして、らんまはもうオレのらんまではなく、ゴブリンの王妃としてその役割を果たしていく。暗い森の中で新しい生を全うするのだろう、ゴブリンクイーンとして。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました!
良ければ、感想や評価をぜひ、お願いします。
今後の執筆の励みとなります。