【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
10分ほど電車に揺られ、目的地のターミナル駅に到着した。日曜の真っ昼間ということもあって、さすがに人は多い。人の波に揉まれながら改札を抜け、集合場所である駅前の広場に足を向ける。
だがしかし、集合場所に着くより早く、
「あっ、峰川くん」
駅の中でばったり神崎さんと遭遇した。
モコモコ素材の茶色いトップスに、黒の長いスカートという落ち着いた装いだ。ショルダーバッグを肩から斜めにかけている。
いつもと変わらない、いつも通りに可愛い神崎さんだ。
「早いね、神崎さん。もう着いてたんだ」
神崎さんは改札とは違う方向から現れた。俺の何本か前の電車に乗って来たのだろう。
「ちょっと買いたいものがありまして、少し早く来たんです」
「買いたいもの?」
「これです」
神崎さんは右手を軽く持ち上げた。今気づいたが、なにやらビニール袋をぶら下げている。
「急にお呼び立てしてしまったので……お詫びにと思って、シュークリームを買ってきました」
「そんな! 気にしなくて良かったのに」
「ここのシュークリーム、すごく美味しいんですよ。私も久しぶりに食べたかったので……、まあ、半分は私のわがままみたいなものです」
天使かこの子は。律儀な上に気遣い上手。人目がなかったらハグしていたかもしれない。
「それじゃ遠慮なくいただこうかな。ありがとね、神崎さん」
「いえいえ。不本意ですがサキさんの分も買ってありますので、あとで3人で食べましょうね」
口角をキュッと上げて神崎さんは微笑む。実の姉にあんな状況を見られて気を病んでいるかと心配していたが、思ったよりも元気そうで安心した。
「広場向かいましょうか」
神崎さんに先導され、駅前広場を目指して歩き始める。
「昨日はごめんなさい。姉さんが失礼な真似をしてしまって」
「びっくりはしたけどね。まあ、誰が悪いって話じゃないと思うし、神崎さんが謝ることはないよ」
「でも、私が薬を入れたりしなければ、峰川くんも意識を失ったりしなかったでしょうし……」
「ああ……」
実際その通りだろうから決まりが悪い。あの異常なまでの睡魔は、精力増加の副作用と考えて間違いない。が、それで神崎さんを責める気にはなれなかった。
「そんなこと言い始めたら、神崎さんが気絶しちゃうぐらい激しくした俺も悪いし……てか、人前でする話じゃないね」
「ですね」
駅のド真ん中にいることを自覚する。神崎さんと俺はお互いに苦笑し合った。
「姉さんのあれこれは、サキさんと合流してからにしましょうか」
「了解」
駅の構内を歩きながらスマホを確認する。現時刻は待ち合わせの10分前。
近頃は狂人まっしぐらなサキだが、基本的にはしっかりとした人間のはずだ。午前中にどんな予定があったのかは知らないが、時間にルーズというイメージはないので、すでに到着していても不思議ではない。そして俺の読みは間違っていなかった。
駅の出入り口を抜け、駅前の広場が見えてくるのと同時に見覚えのあるシルエットが視界に入る。待ち合わせ場所としてよく利用されている噴水の前にサキは立っていた。
長い脚を連想させる黒のフレアパンツに、白のタートルネックとベージュのロングコート。セミロングの茶髪を珍しく編み込んでいて、ポニーテールのような髪型をしていた。
こうして見るとやはり普通の女の子……どころか、モデルと比べても遜色のない容姿だ。
あれで中身がアレなのだから本当に質が悪い。俺の知らないところで俺のように泣かされた男が、きっと他にも何人かいるのだろう。今も実際、
「サキさん、なんか変なのに絡まれてますね」
神崎さんの言う通り、サキは男ふたり組にナンパされていた。耳に大量のピアスを着けた金髪と、男にしては髪の長い茶髪。ホストみたいな風貌をした男ふたり組。どちらも背が高く、遠目に見てもイケメンだとわかる。
陽キャオーラ全開でグイグイ迫る男たちに対し、サキは動じた様子もなく呑気にスマホをいじっていた。
「助けた方がいいのかな?」
「さあ。勝手になんとかしそうですけど」
助け舟を出そうか出すまいか迷いつつも、とりあえず俺たちはサキの下へと近づいていく。すると、会話が耳に入った。
「ねえいいじゃん。俺らと一緒に遊ぼうよ」
「ちょっとだけだって。3人で楽しいことしよ?」
「――しつこい。友達と用事があるって言ってるでしょ」
スマホに目線を落としたまま、不機嫌そうにサキは吐き捨てる。しかし男たちは諦めることなく食い下がった。
「俺たち顔もそんな悪くないっしょ?」
「用事なんて放っといて一緒に遊ぼうよ」
そこで初めてサキは顔を上げた。男たちの顔を交互に眺めてから一言、
「まあ、たしかに顔は悪くない」
前向きな対応が意外だったのか、男たちは一瞬きょとんとする。すぐに調子を取り戻すと、
「でしょ? それじゃあ3人で――」
と言いかける。だが、男の言葉を遮るようにサキは言った。
「返事を出す前にひとつ質問。あなたたちは何cmあるの?」
「見てわからない? ふたりとも180cmは超えてるよ」
得意げに答える金髪に対し、サキは冷ややかな眼差しを向けた。
「ふざけてるの? 私が聞いてるのはチンポのサイズよ。遊び相手の身長とかどうでもいい」
「「え……?」」
まさかの発言に男たちは絶句する。俺と神崎さんも同様に固まってしまった。硬直するふたり組の男に、サキは追い打ちをかけるように言葉を続けた。
「どうせそのつもりでナンパしてるんでしょ? 私を満足させられるだけのものを持ってるのかって聞いてるの。どっち?」
「えっと……まあ、結構デカい方だとは思うけど……」
「俺も……そこそこには?」
歯切れの悪い返事を漏らす男たち。サキは大きなため息を吐いた。
「それでも男? プレゼンするなら具体的に示してよ」
「測ったことないからわかんないけど……これぐらい?」
見えないボールを持つかのように、両手を物差し代わりにして大きさを示す茶髪男。もうひとりの金髪も同じように長さを示す。
「太さは?」
間髪容れずに続くサキの質問に、今度は指を輪っかにして直径の大きさを伝えるふたり。それを見て、サキは「フンッ」と鼻を鳴らした。
「話にならない。コンビニで売ってるフランクフルトの方がまだマシなレベル。そんなの、チンポの皮を被ったお飾りも同然よ。包茎以上の皮被り。長さも太さも2倍にしてから出直して頂戴」
ふたり組のみならず、聞き耳を立てていた周りの人間までもが唖然としている。横を見ると、神崎さんが物凄い顔でドン引きしていた。
「行こう……この子普通じゃない」
「だな……」
「お家に帰ってタコさんウィンナーでも食べてればいいのよ」
意味がわからない台詞をふたり組に投げかけて、サキは何事もなかったかのようにスマホへと視線を戻した。
「あの人本当に大丈夫なんですか……? 私や峰川くんだけに飽き足らず、見ず知らずの人にまで下品な対応をして」
「もう今さらじゃないかな……大学でもあんな感じだったし」
「まったく、罪なでかちんぽです」
やれやれと呆れ顔の神崎さん。そんなやり取りをしていると、俺たちに災難が降りかかった。
「おっ。ねえねえ、そこの君」
「そんなヒョロチビの男より俺らと遊ばない?」
進行方向にいたのが運の尽きだった。ふたり組はなんと、サキから神崎さんへと標的を変えたのである。
ナンパの極意はとにかく数をこなすことだと聞いたことがある。しかし、まさか男を連れている女の子にまで声をかけるとは恐れ入った。
それとも、俺の外見があまりにしょぼいから舐めてかかっているのだろうか。だとしたら悲しい話だが……。
「あの、俺の彼女なんでそういうのは勘弁してください」
神崎さんを庇うように一歩前に出て言い切る。恐ろしさは少しあるが、さすがに暴力までは振るわれないだろう。間違ったことは言っていないのだから堂々としていればいい。
「君じゃ釣り合ってないから。ねえ、俺らのどっちかにしときなよ?」
「そうそう。そんなひょろっちいやつより俺らのがいいでしょ?」
「――はい? 知らない人と遊んでなにが楽しいのか教えてもらえますか? しかも彼氏連れの女性に複数で声をかけるような野蛮な人間と。雲を眺めていた方が有意義だと思うのですが」
「そんな固っ苦しいこと言わずにさあ」
金髪が回り込むように神崎さんの横に立つ。そのまま肩を組もうと腕を伸ばし始めたので、
「おい!」
さすがに見過ごせず声を荒らげる。
だがその直後――男の腕はピシッと払い除けられた。神崎さん本人の手によって。
「指一本でも触れたら痴漢で訴えますよ? ああでも、今触れちゃいましたね。その場で動かないでください、警察を呼ぶので」
スマホを取り出しながら神崎さんは淡々と述べる。それで怯んだのか、男は腕を引っ込めた。
「こわっ。なんなんだよ今日は……」
「次だ次!」
ふたり一緒に駅の構内へと消えていく。良かった。諦めてくれたようだ。
「……ごめん神崎さん。俺、なにもできなかった」
追い払ったのは神崎さん自身だし、俺はなにもしていないに等しい。これでは彼氏失格かもしれない。
「いえ、私のために怒鳴ってくれたの嬉しかったです。それに、一緒にいてくれるだけで心強いですから」
「神崎さん……!」
自己嫌悪に陥りかけていた心が急速に癒やされる。
「でも、また絡まれたりすると面倒です。ですから……」
仄かに頬を赤く染め、神崎さんはゆっくりと左手を前に出した。
「手……握ってください。変な男の人が近づかないよう恋人繋ぎで」
可ッ愛い〜!
あまりの可憐さに心の中で叫びつつ、即座に右手を伸ばして指を絡める。神崎さんは鼻歌交じりになってご満悦な様子だった。
「サキさんに見せつけてやりましょう」
「――もう見てるから」
前方から呆れたような声が届く。いつの間にやらサキが目の前に来ていて、こちらにジト目を向けていた。
「あれ、サキさん。気づいてたんですか」
「そんなラブラブな雰囲気出されたら知り合いじゃなくても目に付くし。イチャイチャするのは勝手だけど、場所は弁えた方がいいんじゃない?」
「それ、世界であなただけには言われたくないんですけど。今さっき公然の場で下品な言葉を撒き散らしていたのはどこの誰ですか?」
「ナンパあしらうにはあれぐらいが丁度いいのよ。ああけど、神崎さんにはわかんないかぁ。ナンパされた経験とか少なそうだし?」
むっと神崎さんの眉根が寄る。
「今まさにされたんですけど?」
「見てたよ。私の“次”にナンパされたんだよね」
バチバチと、ふたりの視線が交差して火花を咲かせている。
「なんで順番で張り合おうとするんだよ……。神崎さんも喧嘩腰にならないで」
このまま放置していたら収拾がつかなくなりそうだったので、会話に入って仲裁を図る。
「そうですね。サキさんの言動に一々目くじらを立てていたら、時間がいくらあっても足りませんし」
「呼び出しておいてそれは酷くない!?」
「ふんっ」
神崎さんはぷいっと顔を背けた。不謹慎だが、怒っている姿も可愛い。
「ほら行こう。突っ立ってたらそれこそ時間が勿体ないし」
矛が収まったのを見計らって移動を促すと、ふたりとも大人しく従ってくれた。
当初の予定通り、目的地は駅前にあるカラオケ店である。