【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
「――家の近くまで送ってこっか? 夜も遅いしさ」
ホテルから退店し、駐車場までの僅かな道すがらでお姉さんから提案される。
時刻はすでにを回っているが、終電には余裕で間に合う時間帯だ。大変ありがたい話だが、家族に目撃されたら洒落にならないので丁重にお断りする。
「いえ、駅までで大丈夫です」
「そう? ならいいけど」
車に乗り込んで、お姉さんがエンジンをかける。それとほぼ同時に、俺の携帯の着信音が鳴り響いた。
「どうしよう……」
相手は神崎さんだ。身から出た錆以外の何物でもないが、通話に出るのが恐ろしくて固まってしまう。
「出た方がいいんじゃない? エミは怒ると怖いぞー」
「誰のせいでこうなったと……」
助手席に座ってスマホと睨めっこする俺と、下手くそな口笛を吹きながらそっぽを向くお姉さん。沈黙の間にも粛々と鳴り続ける着信音。
……ああもう!
このまま無視するわけにはいかない。観念した俺は通話ボタンに触れた。
「もしも――」
『――姉さんとのエッチは気持ち良かったですか?』
発言を遮られ、開口一番に放たれた言葉に頭が真っ白になる。耳元から聞こえた声は明らかに怒りの色を帯びていた。
「いや……その……」
『近くに姉さんいますよね?』
「はい……」
『スピーカーにしてください』
拒否権などあるはずもなく、命令通り音声をスピーカーに切り替える。
『姉さん。自分がなにをしたかわかってるの?』
「げっ……」
お姉さんは恨めしそうに俺を一瞥した。
俺も悪いけどあなたも同罪です、と心の中で反論しておく。
『妹の彼氏を寝取る姉がどこにいるの? しかも私のケーキに睡眠薬まで混ぜて……携帯も勝手に使って!』
「やいのやいの言わないの。別に略奪しようと思ってデカチンポくん誑かしたわけじゃないんだから。世の中には姉妹丼っていうジャンルもあるんだし、そこはちょっとぐらい大目に見てくれても……」
『姉さん』
小さな呼びかけに、お姉さんの肩が竦み上がる。
「すみません」
しゅんと肩を落としてお姉さんは謝罪の言葉を紡いだ。
『峰川くんも峰川くんです。姉さんには気をつけてくださいと、あれだけ口を酸っぱくして伝えたのに』
「返す言葉もありません……」
『まあ、姉さんの罠にまんまと嵌まってしまった私にも落ち度はありますけど……それにしても迂闊です』
「本当にごめん……」
全面的に非を認める俺に、電話の向こう側で神崎さんはため息を吐いた。不満そうにしている神崎さんの顔が目に浮かぶ。別れを切り出されるかもしれない、それすら危惧していたが、
『……いいですよ、許します。サキさんがひとり増えたようなものと考えれば……まあ、それはそれで大変ですけど、私たちの恋人関係に亀裂が生じたりはしません』
と、神崎さんは呆れながらも温情を示した。
「つまり彼女公認のセフレ! やったねデカチンポくん!」
俺の肩に寄りかかり、お姉さんは無邪気に喜ぶ。
『でも姉さん。一番は私だってこと肝に銘じといてね。私の彼氏なんだから』
「そこは安心していいわよ。この子、ヤることヤッたくせに私のキスは拒絶したんだから。ふたりが大喧嘩でもしない限り、私が介入する余地なさそうだし」
『ふ、ふーん……ならいいけど。峰川くんも、明日はみっちりとお説教ですからね。覚悟しといてください』
「はい……」
明日の大学が憂鬱だが、自業自得なので仕方がない。
『それからふたりとも、寄り道せずにすぐに帰宅すること。私のあずかり知らぬところで浮気されるのは……なんというか、一番嫌なんです。いいですね!』
俺たちの返事を聞くことなく、通話はブチッと切れた。
気まずい空気を断ち切るようにお姉さんが口を開く。
「ひぃー、怖かったねぇ……」
「正直、今でも生きた心地はしませんけど……」
「まあ良かったじゃん。エミとサキちゃんだっけ? そこに加えて私ともこれからヤり放題なんだよ? 自分で言うのもなんだけど、私たち結構上澄みな女だと思うけど」
「本当に自分で言うのもなんですね」
「寛大なエミに感謝だね」
にしし、とお姉さんは笑う。
「寛大……なんですかね……」
俺は今、形容し難い感情に襲われていた。
男の性欲的な面で解釈するなら、今の状況はたまらなく嬉しい。ただ、性欲ではなく承認欲求の方――恋愛的な側面からこの状況を捉えると、素直に喜べないというのが実情だった。
サキとの肉体関係を承諾したときにも思ったことだが、神崎さんの貞操観念はどこか狂っている。自分の彼氏が他の女性に抱かれることを良しとする――俺には丸っきり理解できない感情だ。
たとえば、神崎さんが他の男とセックスしていたら……そのとき俺はどう思うだろう。
『他の男性ともエッチしますけど恋人は峰川くんだけですよ』と、もし言われたら?
正直、今と同じように神崎さんを好きでいられる自信はない。
しかし、前提条件が変わるなら話は別だ。
俺が神崎さんのことを『恋人』ではなく『セフレ』としか考えていなかったら、他の男といくら体を重ねようと気に病んだりはしない。
今の神崎さんの心境は、それに近しいのではないだろうか。
つまり、やっぱり――神崎さんの目的は俺ではなく俺の一物だけで、そこに恋愛感情は存在していない。だから、俺がサキやお姉さんとセックスしても簡単に許す――悲しい推測だが、この考えが一番納得がいく。
「浮かない顔だね」
「自己嫌悪ってやつです」
「浮気して初めて男は一人前になるのよ。しゃきっとしなさい」
「そんなふうに割り切れたら楽なんですけど……」
真相はわからない。しかし、恋人がいながら浮気をしてしまった事実に変わりはない。
神崎さんの本懐がなんであれ、彼女を非難する資格など俺にあるはずがなかった。