【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
旅館の内装は重厚感が漂う見事な造りだった。ブラウンの絨毯と点在する間接照明が落ち着いた雰囲気を醸し出しており、立っているだけで眠気に襲われそうな居心地の良さを感じる。
フロントの横にはソファーなどが置かれた休憩スペースがあり、向かい側にはお土産コーナーが設けてある。
旅館に入るなり、サキは一直線にお土産コーナーへと吸い寄せられていった。
残りの3人でフロントに立ち寄り、お姉さんが代表してチェックインの手続きを済ませる。神崎さんは元気なさげに俯いたままだった。
自分と神崎さんの鞄で両手が塞がっていて話し相手もいないため、手持ち無沙汰を紛らわすように周囲を眺めていると、立派な生け花と壷が目についた。あれを壊したら何円ぐらい請求されるんだろうとくだらない想像を膨らませていたら、
「あーっ! 温泉まんじゅうだー! 峰くん峰くん!」
ロビーに嬉々とした声が反響する。こっちこっちと手招きされ、注意がてらお土産コーナーの方へ。
「他のお客さんに迷惑だろ。もうちょっと声を小さくだな」
「――まんじゅうといえば!?」
俺からの注意をガン無視し、クイズ番組の司会者じみたテンションでサキは人差し指を1本立てる。
一瞬ぶっ飛ばしてやりたくなったが、あいにく両手は塞がっていた。
「いいから静かにしろ」
と、サキのつま先を踏みつつ、これといってやることもないので渋々その問いかけに付き合うことにする。
まんじゅうといえば、か。少し考えてから答える。
「怖い?」
「?」
首を傾げるサキ。察するに不正解らしい。
「なんか昔の落語であっただろ。どういう話か忘れちゃったけど」
「違うよ全然違う! 峰くんは乙女心がわかってないなぁ」
やれやれと呆れたジェスチャーをされる。なんだこのむかつく反応は。
「ふふーん。私はわかるよサキちゃん」
背後から第三者の声が割り込む。
受付は終わったようで、鍵を2本携えたお姉さんがこちらに来ていた。隣には神崎さんもいる。
「おっ、さっすがお姉さん! では解答をどうぞ!」
待ってましたとばかりにサキに煽られ、お姉さんは咳払いを挟んでから口を開いた。
「ずばり答えは――」
「部屋に着いてからやって」
しかし、お姉さんの解答は神崎さんの一言に遮られる。そして神崎さんは、なにも言わずに旅館の奥へと歩いていった。
サキとお姉さんは「ちぇーっ」とつまらなさそうに唇を尖らせて、神崎さんに続いて歩き出す。俺もそれにならって足を進めようとするが、
「――峰川くん」
「な、なに!?」
不意に足を止めた神崎さんから久しぶりに名前を呼ばれ、舞い上がった俺の体は歓喜によって停止した。思わず声が弾んでしまい、目を見開いて次の言葉を待ちわびる。まるで舌を出して餌を待つ犬のように。
「ちなみに今の問題の答えは、峰川くんが大好きなモノだと思います」
「え?」
極々単調にそれだけ言って、神崎さんは歩みを再開させる。俺が大好きなモノ?
「あー、たしかに」
「神崎さん上手いこと言う!」
残りのふたりから揃って馬鹿にしたような目を向けられて、俺は首を傾げるしかなかった。
「なんだよみんなして……」
知識はなくとも現代には強い味方がいる。自分の鞄を地面に置き、空いた手でスマホを取り出してまんじゅうについて検索。
調べてわかったのは、やはり神崎さんは怒っているらしいということだった。
*
部屋は10畳ほどの和室だった。中央にはテーブルと座椅子が4台、そして窓際の空間にもテーブルと2脚の椅子が置いてある。
窓の向こうには緑豊かな景色が広がっている。
「夕飯まで時間あるけどみんなはどうしたい?」
時刻は15時辺りでまだ日も高い。年長者ということもあってか、場を仕切るのはお姉さんの役割だ。
「浴衣着たいんで私は旅館の温泉入ってきます!」
鞄の中から化粧品やらを取り出して、サキは宣言した。
「エミとデカチンポくんはどうする?」
続いてお姉さんは、神崎さんと俺を見た。
こんなこともあろうかと、俺は旅行に来る前から神崎さんとふたりで楽しめる場所をリサーチしていた。ネットで検索したところ、旅館から徒歩圏内の場所に足湯があるらしい。ここでその情報を役立てずにいつ使うのか。
「神崎さん。近くに足湯があるみたいだから、良かったら一緒に行こうよ」
しかし、
「私もサキさんと温泉入ってきます。あとで合流しましょう」
「あ、うん、了解……行ってらっしゃい」
勧誘は呆気なく玉砕。ふたりは押し入れから浴衣を取り出すと、鍵を1本持って部屋を出て行ってしまった。手を振り見送るが、背中が見えなくなったところで腕が垂れ下がる。
結果、部屋には俺とお姉さんだけが残された。
「今日のエミ、つんけんしてるね」
「悪いのは俺ですから……。すみません」
「ああ見えて頑固な子だからね。まっ、頑張って」
「はい」
力なく返事をして、とりあえず荷物をまとめる。当然そんなのあっという間に終わり、すぐに暇になった。
「足湯、私が一緒に行ってあげようか?」
暇を持て余していた俺に、お姉さんからの意外な提案。
神崎さんと一緒にいたかっただけで特別足湯に行きたかったわけではないのだが、お姉さんと個室でふたりきりというのは危険な香りがプンプンする。
人の目があれば変なことはしないだろうし、ここは厚意に甘えるとしよう。
「ありがとうございます。じゃあ、お願いします」
旅行とは風情を楽しむもの。風呂はまだだが、せっかくなので俺たちは私服から浴衣に着替えることにした。もちろん俺はユニットバスの中で、ついでに鍵を閉めて。
花模様がベースの浴衣に、防寒用のシンプルな紺色の羽織。インナーを中に着ているため、暖房の効いた部屋だとかなり暑い。だが、外の寒さを凌ぐには丁度いいだろう。
ふたり同じ格好になる。一応サキと神崎さんにメッセージを残してから、俺たちは客室を後にした。