【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
温泉は気持ち良かったが、気が休まったとは到底言い難い。心境の変化こそあれど、結局は大きな進展もなく夜になってしまったからだ。
風呂から上がり浴衣に着替えて髪を乾かしたあと、俺は自販機で瓶のフルーツ牛乳を購入した。脱衣場のベンチに座り、気を取り直すように息を吐く。
そう、夜になってしまったのだ。しかも今夜はただの夜ではない。サキがいる夜、お姉さんがいる夜――性欲の化身たちと寝床を共にせねばならない夜だ。並の覚悟では、がっぷり食べられて終いだろう。
そして、もし神崎さんの隣でサキたちの誘惑に負けてしまったら――今度こそ俺たちの仲は終焉を迎えてしまうかもしれない。
――今夜はなんとしても己の男根を守らねば。
フルーツ牛乳を一気に飲み干し、瓶を捨て箱の中に置く。俺は決意を固めて客室に戻った。だが、
「――あれ? ふたりは?」
鋼の意思で帰還したものの出鼻を挫かれる。
部屋には神崎さんしかいなかった。自身の布団の上で、漬物石みたいに正座している。
「お風呂に入ってくると」
「お姉さんはわかるけどサキも? さっき入ったんじゃ」
「姉さんと話したかったみたいです。あと、軽くゲームセンターで遊んでくるとも」
そういえば、レトロな感じの小さなゲームコーナーが1階にあったっけ。
提げたトートバッグを客室の隅に置いて、俺も自分の布団に腰を下ろす。神崎さんは正座のままこちらに膝をずらした。
「多分、ふたりきりになれるよう気を使ってくれたんだと思います」
それが真実なら粋な計らいだ。サキの場合、自分の欲に従っただけのような気もするが。
「峰川くん」
「はい!?」
急に名前を呼ばれて体が跳ね上がる。しかし呼んだ当人もあっちそっちにと視線を泳がせていた。
なんだろう。思わず俺も姿勢を改める。
神崎さんは大きく息を吸った。
「――今までごめんなさい!」
繊細な髪の毛が布団の上に垂れ落ちて、神崎さんの背中を見下ろす形になる。両手こそついていないが、ほとんど土下座の体勢だ。
「えっと……」
呆気に取られていると、神崎さんは堰を切ったように体を持ち上げた。
「無視してごめんなさい! 怒ってばっかりでごめんなさい! それから……、それから……!」
「お、落ち着いて神崎さん!」
丸めた紙みたいに歪んでいく表情を見ていられなくて、言葉を制しつつ両肩を優しく掴む。震えているのが手のひらから伝わった。
「神崎さんが謝ることじゃないよ。悪いのは俺なんだから」
「でも……私、突き放してばかりで全然寄り添おうとしませんでした。だから……ごめんなさい……!」
肩に添えた手を外され、再び背中が丸まる。
なにも悪いことをしていないのだから神崎さんが謝る必要はどこにもない。俺が謝罪して神崎さんが許す、ないし許さない以外の展開は道理に反するのだ。
だから、これは一種のけじめなのだと思った。
前に進むためのちょっとした儀式。お互いに頭を下げて仲直りしようね、という神崎さんなりのアプローチ。
ならば、『顔を上げてよ』などと上から物を言うのは筋違いだ。俺がやるべきことは、
「こっちこそ本当にごめん!」
同じように頭を下げることだった。布団に額をつけて返事を待つ。つむじを突き合わせるような形になっているので、神崎さんの顔は見えない。
1秒、2秒と時間は流れていく。エアコンの駆動音がやけに大きく聞こえた。
「ふ……」
吐息のような笑い声、だろうか。直後、衣擦れの音がして神崎さんが頭を上げたのがわかる。だが、俺は許しが得られるまで頭を下げ続けるつもりだ。
「――顔を上げてください」
頭上から穏やかな声が聞こえ、ゆっくりと体勢を元に戻していく。
神崎さんは今どんな表情をしているだろうか。言葉と声は優しくても、本当はまだ怒っているのではないか。不安と、ほんの少しの期待を抱きながら――浴衣越しの膝と胸、細い首と、徐々に開いていく光景に息を呑む。綻んだ口元を捉えた矢先、視界が大きく反転した。
「――ッ!?」
木目調の天井が目に入り、衝撃の源に下を見ると、
「んふふ!」
俺の胸板に頬をスリスリさせる顔が焦点を結ぶ。
頭を上げた俺へ、神崎さんが飛びかかるようにして抱きついたのだ。
「神崎さんッ!?」
「えへへぇ、やっと素直になれました。許します、許してあげます。んふふっ」
緩み切った声色は砂糖を溶かしたようで、絶えず頬擦りする顔はさながら子猫で。
照れも羞恥もない。甘えの極致だった。あまりの甘ったるさに、こっちの方が恥ずかしくなるほどの。
「――仲直りのギューです」
神崎さんは囁いて、大の字になった俺の両脇に腕を差し込んだ。密着度がさらに増し、ふわりと、ホットミルクのように濃密な、女の子特有の重みを帯びた甘い匂いが鼻腔を掠める。
浴衣越しなのがもどかしい。約1ヶ月ぶりに神崎さんの温もりを浴びて、宙に浮いたような多幸感に包まれた。
「峰川くんの心臓、ドキドキしてます」
「そ、そりゃあ……!」
「今まで意地悪した分、もっとドキドキさせてあげます」
俺の心臓に耳を当てていた神崎さんが、顔の高さを合わせるように腕立て伏せの要領で体を持ち上げる。そのまま膝を曲げ、俺の腹へと馬乗りになった。
重力に従って垂れ落ちる髪を耳にかけながら、神崎さんが顔を近づけてくる。――キスされる、そう思って俺は瞼を閉じた。
「――ッ」
しかし、訪れたのはコツンという衝撃。目を開けると白い鼻筋が間近にあって、額と額がくっついたことを知る。
「――――――――」
鼻先が触れ合う距離。息が鼻から抜け、おでこをくっつけたまま互いに上目遣いで見つめ合う。甘え一辺倒だった神崎さんの頬に朱が差し込まれ、瞳に潤みが浮かぶ。
それが合図に思えて、俺は唇を開いた。どっちが最初に顔を押し出したのか、自分でもわからない。ただ自然と、吐息を交換するように俺たちは口づけを交わした。
「――――――――」
長くも短くもないキスだったように思う。顔を引くと互いの唇が引っ張るように吸いつきながら離れ、また、額をくっつけて上目遣いで言葉もなく見つめ合う。
熱に浮かされた思考が理性のタガを外し、それまで見ないようにしていた部分に目線が行った。
弛んだ浴衣から覗くブラジャー越しの谷間。その奥に潜む乳白色の膨らみに視線を奪われる。
――目を合わせていたのだ。俺がどこに意識を向けたのか、神崎さんには手に取るようにわかったはずだ。しかし咎められることはなく、神崎さんは耳にかけていた手を自分の後ろに回した。
支えを失った髪の毛が俺の頬を直撃。一瞬こそばゆさを感じたが、膨れ上がった股間を指先で撫でられ、全神経がそっちに集約される。
「神崎さん……」
目線を上に戻し、熱を込めて名前を呼ぶ。
情欲の色が滲んだ瞳を揺らめかせ、うっとりとした声で神崎さんは言った。
「私のこと、無茶苦茶にしてください……♡」