【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
第37話『交渉決裂』
バレンタインから2日後。
今日は進藤との決別日である。澄み切った晴天の中、駅の改札を抜けた俺は、コートに顎を沈めながらファミレスまでの道のりを歩く。
約束の時刻は10時。昼前にはケリをつけたいところだ。
家が近いだけあって、進藤はすでに到着しているらしい。やや駆け足になって俺は先を急いだ。
――ファミレスに到着。
店内に入ると、テーブル席から金髪イケメンが顔を覗かせた。スキニーデニムにニット素材のトップス。元がいいからシンプルな服装でも映えている。
「こっちだ」
「おう」
軽く手を挙げつつ、進藤の向かいに腰を下ろす。
なんだかんだでこのファミレスに来るのも3回目。注文は手慣れたもので、オーダーを聞きに来た店員にドリンクバーを頼む。
コーヒーを注いで再び椅子に座り、俺は眼前のイケメンに意識を向けた。
「ようやく指導してくれるんだな、峰川。今日という日をどれだけ待ち焦がれたことか!」
せっかくの整った顔は、歪な期待に染まっていた。
さて、どこから話したものやら……。
「まずは座学か?」
とりあえず、こいつの巨根への異常なまでの執着を解くところから始めるか。
進藤が巨根を志したのは、巨根の持ち主である俺のことをサキが好きになったと勘違いしているからだ。……いやまあ、それ自体は事実なのだが、俺たちの関係が偽物なのをこいつは知らない。
俺とサキが恋人同士じゃないことを明かせば、巨根云々は関係なかったと誤認させられるはず。サキのあの罵倒は、あくまで進藤を突き放すための方便だったと。
「そのことなんだけど、ひとつお前に謝らなくちゃいけないことがある」
そう前置く。
「俺とサキが付き合ってるって話。あれ、実は嘘なんだよ」
「……なに?」
進藤の眉根が寄る。当然の反応だろう。
「幼馴染っていうのは本当だけど、恋人っていうのはただの設定だ。お前を鬱陶しく思ったサキが、体のいい口実を作るために彼氏役を俺に依頼した。それが裏側だ」
「…………」
進藤は固まっていた。思考を整理しているのかもしれない。
間を作るように、俺はコーヒーをゆっくりと啜る。一度唾を飲み込んでから続ける。
「たしかに俺は人よりデカい一物を持ってる。けど大前提として、サキと俺は付き合っていないんだよ。だから、お前がフられたことに巨根云々は関係ない。サキのあれはお前を絶望させるために、お前に嫌われるためにあえて言ったもので、だから……その、なんだ。お前はありのままでいいんだ」
進藤は考え込むように俯いていたが、やがて顔を上げて腕を組んだ。
「ふたつ疑問がある」
「なんだ?」
「その話が本当だとして、お前とサキは俺の目の前でセックスした。しかも、口ぶりからして体を交えたのは一度や二度じゃない。それについてはどう説明する?」
「大人の関係ってやつだな。恋愛感情はない」
「見かけによらず、峰川はヤリチンだったということか?」
「そう思ってもらって構わない」
下手に否定はしない。見かけによらずという物言いは気に入らないが、今の進藤には落ち着きが見られた。このまま上手く話を進めていけば、ふざけた師弟関係を解消できる。
進藤ツトム。俺と同じようにサキにこっぴどくフられた仲間で、正直こいつには同情というか親近感みたいな感情を抱いているのだが、春休みはこれで結構忙しかったりする。
バイトもあるし、運転免許も取りたい。叶うかもわからない巨根計画に付き合う暇はない。
「騙すような真似をして悪かった」
俺はテーブルに両手をついて頭を下げた。声を荒げられる可能性も考慮していたが、進藤の反応はあっさりしていた。
「わかった。そのことは気にするな。ふたつ目の疑問だが」
頭を上げる俺に、進藤は言った。
「それを俺に伝えて、お前はなにを言いたいんだ? サキと峰川が偽の恋人同士なのはわかった。だが、それがどうした?」
「どうしたもなにも……、だから、これでお前が巨根を目指す理由はなくなっただろ? 意味がないって話さ」
実際は、巨根になったらサキは振り向いてくれるかもしれない。ただ、それは口には出さない。余計な期待を持たせて、つきまとわれるのは御免だからだ。つきまとうならサキにしてくれ。俺はもう、それを止めないから。
「峰川。どうやらお前は致命的な勘違いをしているようだな」
やれやれとばかりに進藤は背もたれに体を預けた。
勘違い? 俺が?
「なんだよ、勘違いって」
「前にも言ったと思うが、俺がサキに迫っていたのは交際破棄の理由を聞きたかったからに過ぎない。ちゃんとフられた以上、サキとの恋愛は俺にとって過去。すでに終わった話なんだよ」
「は、はあ……?」
「つまり、だ」
テーブルの上に両肘をつき、進藤は組み合わせた手の甲に顎を乗せて言う。
「俺は別に、サキに振り向いてもらいたくてお前に弟子入りしたわけじゃない。そこを履き違えてもらっては困る」
どういうことだ?
こいつが俺に縋っていたのは巨根になってサキと復縁したかったからじゃないのか。巨根にさえなれば、サキが自分に振り向いてもらえると思っていたからじゃないのか。
「たしかにきっかけはサキの侮蔑だった。だが、それは所詮きっかけに過ぎない。今の俺はただ、純粋に巨根へ憧れを抱いてるんだよ!」
ドンッとテーブルに拳が振り落とされる。通路を歩いていたウェイトレスが、ぎょっとした様子でこちらを見やった。それに構わず進藤は捲し立てる。
「俺はお前に魅せられた! ただ、それだけなんだよ! もちろんサキを見返してやりたいっていう気持ちが一ミリもないわけじゃないが、もはやサキなど関係ない! 俺はお前みたいになりたい! 巨根になりたいんだよッ!」
勢い余って立ち上がる進藤に、突如、声をかける者が現れた。
「――よく言ったわ! 進藤くん!」
聞き慣れたその声に、俺と進藤は同時に首を横に向ける。目線の先、テーブルの横に立っていたのは話題の人物だった。