【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
その日は神崎さんと帰ることになった。5限の教養科目を一緒に受けたあと、俺も神崎さんもサークルには所属していないので、流れで駅までの道のりを共にすることになった。
夕焼け色に染まった正門に続く並木道をふたり並んで歩く。
「神崎さん。クリスマスさ、一緒にどこか出かけようよ。年が替わったら初詣とかも行きたいな」
直に季節は12月に差し掛かる。そして12月には恋人たちの一大イベント、クリスマスが待っていた。年末年始には、冬期休暇を利用してどこかに出かけるのもいいかもしれない。
「いいですね。どっちかっていうとインドア派なんですけど、峰川くんとならどこに行っても楽しい気がします」
良し、言質は取ったぞ。
「楽しみにしてるね」
「……ふふ♡」
横目で神崎さんを見ると、その頬は朱色に染まっていた。
多分、俺も似たような表情をしていたと思う。
「――げっ」
正門を抜けたところで、俺は鬼の姿を視界に捉えた。すぐそこの歩道に立つ、赤紫色のオーラを放った鬼。もちろん比喩だが、俺には本当にそう見えた。
見て見ぬふりをして潜り抜けたいところだが、それが許される相手ではない。目ざとく俺を視認した鬼は、明らかな作り笑いを浮かべながらこちらに駆け寄ってきた。
「もう、遅いよ峰くぅん♡ 一緒にかーえろっ♡」
無論、その鬼とはサキのことである。
「なんですかあなた?」
頭ひとつ分ほど背が低い神崎さんは、見上げながらもたしかな敵意を以てサキを睨みつけた。対するサキも笑顔を絶やさずに応じる。
「はいー? 峰くんの彼女ですけど、あなたこそどちら様で?」
……は?
ちょっと待て。なにを言って?
「ふざけるのも大概にしろよ。俺を振ったのはサキの方だろ」
「だーかーら、あれは嘘だってば! すっごく恥ずかしかったの! 照れ隠しだってわかんなかった? それとも逆に峰くんが照れてるとか? だから、そんなチビ女ぶら下げてるの?」
瞬間、神崎さんの眉が吊り上がった。
「なん――」
反論しようとした神崎さんの声に、被せるようにして俺は言った。
「俺の彼女は神崎さんだ。サキはただの友達、小さい頃から顔見知りの幼馴染でしかない」
自分の彼女を矢面に立たせたくはない。俺は庇うように神崎さんの前に立った。
「……ぅっっ」
作り笑いにピキピキと亀裂が入っていく。
しかし、サキは笑顔を崩さなかった。
「で、でしょぉ? 私たち幼馴染じゃん! そんなぽっと出のちんちくりん女より、よっぽど峰くんのこと知ってるよ私は! だから私と付き合った方が絶対に楽しいって!」
「サキ……」
会話が成り立っていない。
なにを言っても無理やりな論法を展開されてしまう。
「もういいだろ、頼むからどっか行ってく――いや、俺たちが行くよ。行こ、神崎さん」
「は、はい」
神崎さんと手を繋いで、サキの横を通り抜けようとする。が、やはりというか、行く手を阻むようにして両手を広げたサキが俺たちの進行方向に立ち塞がった。
「いい加減にしろよ……ストーカーみたいだぞ、今のサキ」
正門付近ということもあって、辺りには学生の姿が多い。ただならぬ雰囲気を察してか、何人かが俺たちの様子を窺っていた。
変な噂が立つのは勘弁願いたい。
「とりあえず今日は帰らせてくれ。話があるなら電話かメールで聞くから」
「やだっ! 私と付き合うって言うまで絶対に帰さないから!」
「あのな……」
「私は本気なの! 幼馴染なのおぉぉッ! だからねっ!? 私と付き合お!?」
「じゃあな」
強引に話を切り上げるが、サキは尚も行く手を阻んでくる。さすがにしつこい。
「マジでいい加減に――」
「ねえ……神崎さん、だっけ?」
俺の言葉を遮ると、サキは神崎さんへと意識を切り替えた。
「はい、そうですけど」
そして作り笑いとはまた別の、歪な笑みを浮かべてこう言った。
「――私と峰くんね、セックスしたんだよ?」
なっ!?
「おいサキ!」
俺は神崎さんの手を離し、咄嗟にサキに詰め寄ってふたりの間に距離を取らせた。が、俺の肩から顔を前に出して、サキは矢継ぎ早に叫んだ。
「ファーストキスも童貞も、先週私で卒業したばっかりなの! 私の部屋で! マンコだって舐められたし中出しまでされた! あなただってそんな男と付き合いたくないでしょ!? お願いだから私に譲ってよ! 最悪チンポだけでもいいから私に!」
マジかよこいつ……。
まさか、ここまでなりふり構わず俺と神崎さんの関係を壊そうとしてくるなんて。しかし、事実であるだけに否定のしようもない。
「うわあ……」
「なにあの子……ヤバくない?」
恥も外聞もなく淫語を撒き散らしたサキへ、周りから疎んじたような声が寄せられる。
……終わった。
確実に神崎さんに嫌われてしまった。初めての彼女だったのに……。
と、落ち込んでいたのも束の間、
「別に、私は気にしませんよ? 峰川くんとサキさんが、その……そういうことをしていたとしても」
「え?」「は?」
サキと疑問の声が重なる。
神崎さんはあくまで淡々と続けた。
「だってそれは、私と付き合う前のことじゃないですか。今この瞬間に私を想ってくれてるなら、過去になにがあっても気にしませんよ。これから私だけを見てくれるなら、それで構いません。現に今、あなたは拒絶されていますし」
「……は、えっ、はっ?」
神崎さんのあっけらかんとした態度に、あれだけ狂暴だったサキが圧倒されていた。それを好機と捉えたのか、神崎さんも神崎さんで畳みかけるように口を開いた。
「それにヤッたと言っても、どうせあなたが誑かしたんでしょう? 西宮サキさん――あなた、一部で噂になってますよ、ウリをやってる売女だって。本当かどうか知りませんし、あなた個人のことなんで好きにしたらいいと思います。ただ」
そこで神崎さんは言葉を区切る。そして、射抜くように鋭い視線をサキに向けた。
「以後私の、わ、た、し、の、峰川くんに手を出すのは、金輪際やめてください。大変迷惑なので」
にっこりと笑って神崎さんは締め括る。
この子、見かけによらず少し怖いな……。
しかし、それはそれとして……ウリをやってる?
売女?
つまり、サキは売春をしていたってことか?
そんな馬鹿な、と否定したい気持ちはあったが、
「誰がそれを……」
サキの顔色が一瞬にして蒼白へと染まっていく。
事実、なのか……。
手慣れているふうではあったが、まさか売春をしていたとは思いもしなかった。俺の知る限り、サキの家は裕福な部類に属する。金に困っているとは考え難いが、どうして売春なんか……。
いや、俺が責められることじゃないか。
金銭のやり取りこそなかったが、ある意味で俺はサキを買ったようなものだ。責める資格などあるはずがない。
「たしかに私はちんちくりんです。でも、ヤリマンよりはマシだと思います」
「うっ……」
仕返しとばかりに揶揄されて、サキはバツが悪そうに口ごもった。押し一辺倒だったサキが初めて一歩後退る。
「こんな人は放っておきましょう」
「う、うん……」
神崎さんに手を引かれ、足を進める。肩越しにサキへと振り返ると、親に説教された子供みたいに項垂れていた。
しかしそれでも、最後に力強く顔を持ち上げたサキは、離れていく俺たちに向かって声高に宣言した。
「絶ッ対の絶ェッ対! デカチンポ諦めないんだからァァァッ!」
――悲嘆に暮れた絶叫なのか、はたまた執念のこもった宣戦布告だったのか。
神崎さんは動じた様子もなくサキのそれを聞き流し、呆れるようにため息を吐いた。そして小さく笑って一言、
「でかちんぽ……楽しみです」
「え?」
「なんでもありません。行きましょう」
聞かせるために言ったのか、無意識に言ったのかはわからない。ともあれ、神崎さんのつぶやきは、はっきりと俺の耳に届いていた。