【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
キョウカ先輩から来るように指定されたのは、バイト先の最寄りから3駅分離れた降りたことのない駅だった。
約束は14時からなので、自宅で昼飯を食ってから身支度を整える。スマホと財布をズボンのポケットに入れ、俺はほとんど手ぶらの状態で家を出た。家具の組み立ての手伝いなら荷物は少ない方がいいだろう。
電車に揺られることしばらく――無人駅の改札を抜けると、田畑が点在する長閑な風景が俺を出迎える。駅前の舗装された細い道には、桜の枝が数本揺れていた。もう春である。
そして、駅前にぽつんと立った自販機の隣に、見慣れた姿を捉える。アッシュブラウンの長い髪を一本にまとめた女性。あちらも俺に気づいたらしい。
キョウカ先輩は、白いブラウスの上にアイボリー色のカーディガンを羽織り、下は脛辺りまで伸びたひらひらのスカートを合わせていた。足元は歩きやすいスニーカーで、生活感と大人っぽさが絶妙に混ざり合ったコーディネートだ。
「やっほー。ごめんね、今日は」
「いえ、気にしないでください。先輩にはいつもお世話になってますし、そのお返しをできるなら喜んで尽力しますよ」
色々と懸念は尽きないが、それはそれとして、恩を返せるのは個人的にも嬉しい。
「大体歩いて10分ぐらいかな。こっち」
ほんのり笑い、キョウカ先輩は身を翻す。風に揺れるスカートの裾が、先輩の細く長い脚線をちらりと際立たせた。
そのあとを俺はゆっくりとついていく。
季節は4月の中旬。降り注ぐ陽光はすっかり春の暖かさを含んでいて、道端の雑草には花が咲いている。寒くも暑くもない心地良い気温の中、穏やかな住宅街を進んでいくと、やがて少し開けた道路に出た。
栄えているとは言えないが、コンビニとドラッグストアが視界に入る。
「いい感じのところですね。程良く静かで、買い物にも困んなさそうですし」
「でしょ? まあ、おかげで食生活はだいぶ終わってるけど」
意外だ。その辺きっちりしていそうなのに。
「自炊とかしないんですか?」
問いかけると、キョウカ先輩はどこか得意げに口角を上げた。
「峰川くんはひとり暮らしを舐めてるね。バイトして洗濯して自分のやりたいことやってたら、あっという間に一日なんて終わっちゃうよ。自炊?」
自嘲するように、キョウカ先輩は肩を竦める。
「そういうもんですか」
「そういうもんだよ。てか今のウチ、自炊できる状況じゃないからね。主に整理整頓的な意味で」
「ご飯作れないぐらいとっ散らかってるんですか?」
要望は家具の組み立てだったが、そこに掃除も追加されたりするのだろうか。いや、片付けるのは全然構わないのだが、女性の部屋の掃除するのはちょっとゾッとする。見てはいけないモノがたくさんありそうだし……。
「見てのお楽しみだね。――あそこだよ」
先輩は通り沿いにある5階建てのマンションを指差した。入口付近には手入れされた植栽が並んでおり、女性の住まいらしいオシャレな雰囲気が漂っている。
しかし、そんな外観に反して先輩の家の中は――。
玄関の扉が開かれると、俺たちを出迎えたのはリビングにぎっしり詰まった引っ越し用のダンボールだった。床には紙袋やら収納箱やらが散乱しており、足の踏み場にも困る。
「ごめんねぇ、汚くて」
「…………」
普通なら「いえいえ、そんなことないですよー」と笑いながら応じるところだが、お世辞を言ったら嫌味に聞こえてしまうほど部屋の中は散らかっている。マジで笑えないレベルで汚い。
隙間を掻い潜って足を進めるキョウカ先輩に倣い、どうにか俺も寝室に到達する。おそらく間取りは1DKといったところだろう。
寝室にはキョウカ先輩が嘆いていた通り、布団と毛布が直で床に置かれていて、部屋の隅には大型のダンボールが立てかけてある。外から取り込んだ洗濯物だろうか。ベランダの扉付近には衣類が山盛りになっており、カーテンレールには部屋干し用の吊るしがぶら下がっていた。
そして瞬間、俺はそれを目撃する。
「――ッ!」
洗濯バサミに挟まれたブラジャーとパンツ。紫色の大胆な下着が不意打ちで目に入る。
下着類を部屋で乾かすのは女の人なら当然の配慮だと思うが……それが今は裏目に出ていた。
俺は目を背けつつ、吊るしの方に指を指した。
「せ、先輩……それ……」
「おっと」
先輩は飄々とした声色でそう言った。
「一回外出てるんで、見られたらヤバい物は押し入れかどっかに隠しといてください!」
キョウカ先輩の返事を待たずにマンションの廊下に退避する。
あれが先輩の……。
下着姿のキョウカ先輩がイメージとして頭の中に浮かぶ。胸は小さめだが、すらりとしたスタイルにあの下着を身に着けたらさぞや映えるに違いない。
ただその直後、イメージ映像に亀裂が走った。真っ二つに引き裂かれた光景を写真のように掴むのは、ピキピキと青筋を浮かべたエミちゃんで……。
「……っ」
危ない危ない。一体なにを考えているのか、俺は。
「――もう大丈夫だよ。ごめんね、見苦しいもの見せちゃって」
軽く開いた玄関のドアの隙間からキョウカ先輩は申し訳なさそうに笑った。
「いえ、見苦しいなんて……」
「あれ。じゃあ、もっと見たかったりした?」
「……からかわないでください」
突き放すように言って、再び家の中にお邪魔する。変なことになる前に、さっさと用件を終わらせた方が良さそうだ。
「これじゃベッド組み立てるスペースもないんで、とりあえず部屋の掃除をしちゃいましょう」
「おっけー」
家の中に戻った俺は、気合を入れるように袖を捲った。