【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
おそらく待機していたのだろう、応答は一瞬だった。
『はい』
「助けてエミちゃん! 先輩に襲われる!」
スマホに向かってSOSを叫ぶと、
「人聞きが悪いなぁ。あたしはただ、お互いをもっと知りたいだけなのに」
キョウカ先輩はもっともらしいことを言ってしらばっくれた。
この人はぬけぬけと……。
『この通話、姫野先輩に聞かせられるようにできますか?』
「そりゃあ、もちろん」
スピーカーにするだけだ。耳元からスマホを離し、スピーカーをオンにする。
「変えたよ」
『――ようやく本性を現しましたか、先輩』
「本性? なーんのこと?」
キョウカ先輩は尚も知らんぷりを貫く。そこにエミちゃんが切り込んだ。
『言っておきますけど、リョウタくんは知ってますよ、先輩の過去』
「あれ、そうなの?」
馬乗りになられたまま見下されたので、俺は肯定をしめすように頷いた。
「いけない子だなぁ。人の、それも先輩のプライバシーを勝手に話すなんて」
『自衛のためですよ。案の定でしたし』
「まあ、なんとなく壁作られてる感あったから、バレてるのかなぁっとは薄々思ってたけどね」
キョウカ先輩の過去を聞かされてから、俺としては表に出さないよう意識していたつもりだが、先輩なりに違和感は感じ取っていたらしい。
『ということは、認めるんですね? 私からリョウタくんを寝取ろうとしたこと』
「いやあ、寝取るっていうのは大袈裟じゃない? ちょっとつまみ食いしようとしただけっていうか」
『彼女持ちの男の人に迫るのは、一般的には寝取り行為と言うんです』
「冗談が通じないな。はいはい、認めればいいんでしょ」
認めてしまうのか……。
人は誰しも二面性、三面性、下手をすればもっと他人に見せない一面を持っている。それを教えてくれたのは他でもないサキだ。
俺が今日まで見ていた先輩はすべて嘘だったのだろうか。
「あーあ。じゃあ、最初から全部わかったうえで今日は来たわけだ。あたしが仕掛けると踏んで、鎌かけるために」
「違うと言えば嘘になりますけど、それとは別に、本心で先輩の役に立てたらって気持ちもありましたよ」
何事もなく終わるのが本当は一番だった。しかしそうはならず、エミちゃんの懸念は的中してしまった。俺としては悲しい結果だ。
『さて――』
と、エミちゃんが話を切り替える。
『先輩の本性を暴いたところで、今後の対応についてですが』
「怖い前振りだねぇ。なになに、あたしは打首獄門にでもされちゃうのかな」
『先輩にはふたつ選択肢があります』
先輩の冗談には付き合わず、エミちゃんはあくまで粛々と続ける。
……てか、重いから退いてくれないかな、先輩。
『ひとつ目。リョウタくんのことは諦めて、二度と私たちに近づかないと誓うか。その際は、もちろんバイトも辞めてもらいますよ』
「えー、それはヤダなぁ。今のバイト気に入ってるし。ふたつ目は?」
俺はそのふたつ目の選択肢を知っている。先輩に襲われた際のプランは事前に共有済みだ。
それは実にエミちゃんらしい、歪んだ選択肢ではあるけれど……。
『私の軍門に下るか、です』
「へ?」
迂遠な言い方だ。先輩が首を傾げるのも無理はない。
『つまり、私の管理下でリョウタくんと体の関係を持つか、ということです』
そう。それは要するに、サキとお姉さんに続いて『3人目』にならないかという提案だった。
当然キョウカ先輩はポカーンとした表情になる。
「あの、ごめん峰川くん。神崎ちゃんの発言、翻訳してくれないかな? ちっとも意味がわからないんだけど」
『単純な話ですよ。私公認の愛人みたいなものです』
「いやいや、だから意味がわかんないって。愛人って、神崎ちゃん彼女でしょ?」
『その彼女から彼氏を寝取ろうとしたのはどこの誰ですか』
「その寝取られそうになった相手に自分の彼氏を提供するのも大概おかしな話だと思うけど」
そこはキョウカ先輩も常識的な考えを持ち合わせているらしい。
『提供? なに言ってるんですか。あげませんよ、私のなんですから』
「なんか言ってること支離滅裂じゃない?」
『縦列の話です。私が最優先なら、リョウタくんと関係を持つことを許容しましょう。すでにふたり、そういう女性がいるので』
「えっ、マジ?」
問いかけは俺に対してだった。
「それって、神崎ちゃんがいるのに他の子ともヤッてるってこと?」
「我ながら異常だと思いますけど……はい」
「うわぁ……ヤバァ……」
わかりやすくドン引きされてしまった。当然の反応ではあるが、押し倒されている現状を考えると、あなたも同類でしょうと言いたくなる。
そこでエミちゃんが、俺を擁護するように口を挟んだ。
『勘違いしないでくださいよ、この関係は私から提案したものです』
「なんでそんなこと……」
この人の狼狽えた表情を、俺は初めて見たような気がする。エミちゃんが先輩のヤバさを知っていた一方で、キョウカ先輩はエミちゃんのヤバさを知らなかったらしい。
『誰かの一番になるには、二番手三番手が必要でしょう? ピラミッドを築いていくように、私はリョウタくんとの関係値をより深くしたいんです♡』
歪んだ性癖を吐露され、先輩が頬を引き攣らせる。
「神崎ちゃんってこんなヤバい女の子だったんだ……」
『それよりどうします? 私としてはどちらでも大歓迎ですよ』
「…………」
俺の上に乗ったまま、先輩は考え込むように俯いた。長い金髪がバサッと滝のように垂れ、先輩の表情を覆い隠す。
しばしの沈黙。やがて先輩は、髪を耳にかけながら言った。
「それ、君も承知の上ってこと……?」
先輩の小さな声は、ドキリとするほど熱を帯びているように感じた。
「ま、まぁ……先輩綺麗ですし、ふたりがいいなら俺も……って感じです」
今だって本当は煩悩と戦っている。露出した太ももに触れないように注意していたり、二の腕と脇の間の素肌が艶かしくて目のやり場に困っていたり……ああ駄目だ、気にし出すと否が応でも下半身に意識が向いてしまう。
思えば今の体勢は騎乗位みたいなもので、そう考えるとこの重みも快感に思えて――。
「先輩、一度離れて……」
俺は這い出るように腰を引いた。だがそれでも体は解放されず、動いた際に圧迫感が腰にかかる。
「ん?」
それで先輩も気づいてしまったらしい。
俺の下半身が高鳴っていることに。
「――ッ」
そしてその表情が一瞬だけ赤くなる。しかし、それは見間違え疑うほどに刹那の出来事で、先輩は取り繕うようにそっぽを向いた。
「愛人……、ね」
自分に言い聞かせるようにつぶやくと、先輩は俺のスマホに顔を向けた。
「神崎ちゃん、冗談じゃないんだよね?」
『もちろんです』
エミちゃんの即答を受け、先輩は息を呑む。だが、次に先輩が声を発したとき、そこに迷いは一切なかった。
「いいよ。乗った、その話」