【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
行為の後処理を終え、俺はベッドの脇に座りながらズボンを身に着けていく。先輩は、体の汚れた部分だけティッシュで拭き取ると、下着とキャミソールを着直して天井を見上げるように仰向けになった。
まったりとした雰囲気が生まれたところで、俺はどうしても聞きたかった問いを投げかけた。
「先輩は、なんでこんなことしてるんですか?」
「ん? どゆ意味?」
「男を略奪して取っ替え引っ替え、みたいな。いやまあ、エミちゃんから聞いた話なんで本当かどうかはわかりませんけど」
「自分の彼女を疑うんだ」
ちょいちょい痛いところを突いてくるな。いや、ひょっとしたらこれも作戦なんだろうか。エミちゃんへの疑惑を自覚させ、俺たちの仲に亀裂を入れるための。
考えすぎかな……しかしそう勘繰ってしまうほど、キョウカ先輩の真意は不透明だった。
質問の答えは、しばしの沈黙を挟んで訪れた。
「――あたし、愛って絶対的なものじゃなくて、相対的なものだと思うんだ」
「はい?」
「相手が自分をどれだけ好きかなんて、究極的にはわからないことじゃない? 相手の気持ちが目に見えるわけじゃないんだから」
なんだろう。似たような話をどこかで聞いた覚えがある。
「まあ、ええ」
結局は思い出せず、俺はそれっぽく相槌を打った。
「だからだよ。世に溢れてるカップルなんてみんな嘘だらけ。どんなに愛の言葉を囁き合っても、裏側では別の異性とイチャコラしてる。してないかもしれないし、してるかもしれない。わからないんだよ、他人の心なんて」
ああ、思い出した。たしかお姉さんが似たようなことを言っていた。足湯に浸かっていたときにエミちゃんとのこれからを相談して、キョウカ先輩と同じような話を聞かされたのだ。
――他人の本心はどうやってもわからない。
根底の考えはお姉さんと似ている。ただ、その考えに対するキョウカ先輩の向き合い方はまるで違った。
「でも」
そう言って、キョウカ先輩は続ける。
「誰かが愛してた人があたしのものになったら、それはその誰かよりあたしの方が愛されてるってことになるでしょ?」
「…………」
誰かひとりをパートナーに選らばなければならない以上、たしかにその通りではあると思う。仮に、仮にだけど、俺が恋愛対象をエミちゃんからサキに乗り換えたら、当然それはエミちゃんよりサキの方を愛しているということになる。
キョウカ先輩的には、そういった構図が重要なのだろう。
一対一では完結しない関係。相対的な愛、か……。
「だから誰かの彼氏を寝取るんですか?」
「そっ。しかも誰かの彼氏なら、ある程度の価値は保証されてるしね。あたし、見る目ないから。誰かが求めた人を狙った方が効率がいいんだよ」
やべえ……とんでもないモンスターを先輩に持ってしまった……。
効率重視の超絶自己中な恋愛観。こんなのほとんど災害じゃないか。
「なんていうかあれですね、先輩は闇が深そうです……」
軽く恐怖を覚えるレベルだ。
「そんなことないと思うけど。普通だよ」
「それが普通なら俺は人間不信になりますよ……」
しかし、だとしたらキョウカ先輩は最終的になにを求めているのだろう。
寝取ってもすぐに別の男に乗り換えていたとエミちゃんは言っていたし、キョウカ先輩が求めているゴールがわからない。
「先輩はどうなりたいんですか? どこかで相手を信用しなくちゃ、イタチごっこになると思うんですけど」
寝取ることで自分の方が愛されてると証明しても、一対一の関係になったら比較対象が消えてしまう。だからこそ関係が長く続かないのだと思うが、それだと問題の解決にはなっていない。いや、そもそもキョウカ先輩は問題とすら考えていないのか。
「答え辛いこと聞くね」
「俺の今後にも関係ある話なので」
サキとお姉さんの枠にキョウカ先輩も入るなら、寝首を掻かれる可能性もゼロじゃない。エミちゃんと結んだ協定を、この人は簡単に破りそうな危うさがある。
「どうなんだろうねぇ……」
キョウカ先輩は頬に垂れた自分の髪を耳にかける。はぐらかしているわけではなさそうだ。自分でも答えが見つかっていないのか、遠い目をしている。やがて先輩は、訥々とこう言った。
「あたしに落とされないぐらい誰かを好きになれる人を、あたしは手に入れたいのかもね」
「……矛盾してますね」
「だねぇ」
俺たちは同時に苦笑する。
「だから悪い先輩に落とされないよう、後輩くんも頑張ってよ? もしかしたら君は、あたしの運命の相手かもしれないんだから」
「死ぬ気で食い縛りますよ」
俺の彼女はエミちゃんただひとり。先輩のことは嫌いじゃないけど、やはりそこだけは譲れない。
「よっと」
と、そこで寝そべっていた先輩が体を起こした。
「じゃあ、あたしの記念すべき挑戦を祝して――」
言いながら俺の体を引っ張り、急に顔の距離が縮まる。マズいと思ったときにはすでに手遅れで――頬に
「なっ!」
一瞬のことで避け切れなかった。キスを、キョウカ先輩にキスをされてしまった。
「ちょっ! なにしてくれてんですか!」
サキやお姉さん相手には死守していたのに、こんなところで約束を破ってしまうなんて!
完全に油断していた。
「宣戦布告ってやつかな」
「エミちゃんに殺される……」
「ヤンデレじゃあるまいし、そんな大袈裟な」
半分は勢いで言ったが、それを冗談と言い切れるほどウチの彼女は普通じゃないんだよな……。
「まっ、安心しなよ。ふたりだけの秘密にしといてあげるからさ」
「いえ……後日ちゃんと説明します。先輩と秘密を共有すると危なそうなんで……」
怒られるかもしれないが、口と口じゃないから許してもらえる……はずだ。共有した秘密がバレたときのリスクを考えるなら、素直に謝った方が傷口は少ないだろう。
「すっかり飼い慣らされてるねぇ。俄然奪いたくなっちゃった」
妖艶に細まった眼には、からかうような光が宿っていた。
――姫野キョウカ。
めでたく、なのかはどうかはわからないけれども、その日から先輩は俺たちのハーレムの仲間入りを果たしたのだった。