【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
第5話『期待』
神崎さんと付き合い始めてから2週間が経過した。昼休みになると俺たちは一緒に食堂に出向いて、昼飯を共にするのがお決まりの流れになっていた。
俺は生姜焼き定食を、神崎さんはかけうどんを頼んでテーブルに座る。いただきます、と半分ほど食べ進めてから神崎さんは言った。
「峰川くん。良かったら明日の土曜ウチに来ませんか? 溜まってる映画を消化したいんですけど、ひとりで観るのは味気なくて」
彼女とふたりで映画鑑賞。しかも神崎さんの家で。
これはいわゆる「おうちデート」というやつだ。断る理由などあるはずがない。
「俺で良かったら!」
と、即答してから「あっ……」とつぶやく。
今、俺と神崎さんは交際関係にある。あるいはその場の雰囲気で、そういう展開もあり得るのではないか。
「どうかしたんですか?」
「あぁっ、いや!」
挙動不審な俺に気づいたのか、神崎さんが気遣わしげにこちらを見た。ここで下心を丸出しにするのは男らしくない。邪な考えを捨て去り、冷静なふうを装う。
「迷惑じゃないかなって。付き合ってるって言っても、ほら、家族とかの兼ね合いもあるわけだし」
咄嗟に取り繕ったにしてはもっともらしい言い分になった。
神崎さんは俺と同じく実家から大学に通っている。恋人同士とはいえ、男の俺が家に上がり込むのはマズいのではないか。
「それなら心配ご無用です。土曜は家に誰もいませんので」
「え? そうなの?」
「はい。父は遅くまで仕事で、母は友達と昼から出かけるらしいです。姉さんも同僚の友達と飲み会に行くと言ってました。夕飯は適当に食べてと言われてるので、3人とも帰りは遅くなると思います」
「そ、そうなんだ……」
肉を箸で掴んだまま、俺はしばし固まる。ふたりきりの家に招かれるなんて、想像するなという方が無理な話である。
「もしかして嫌ですか? ……無理にとは言いませんが」
「全然嫌じゃない!」
せっかくの「おうちデート」がなくなるかもしれないと焦って、俺は即座に否定の言葉を口にした。その不自然さを誤魔化すように箸を進める。
「それなら良かったです。楽しみにしていますね」
神崎さんは柔らかく微笑むと、髪を耳にかけてからうどんを啜った。その仕草に見惚れてしまい、箸を持つ手がまた止まる。
「あの、なにか?」
つい凝視してしまったらしい。
「ごめんごめん、可愛いなぁと思っ――」
「――話は聞かせてもらったわ!」
神崎さんへ素直に好意を伝えようとした矢先、背後から突然声がかかった。真顔で俺の後方を見つめる神崎さんを見て、俺も首だけ後ろに振り返る。
まあ、振り返るまでもなく正体はわかっているのだが……。
「サキ……いい加減付きまとうのやめてくれよ……」
そこに立っていたのはやはりサキだった。
肉体関係を断って以来、こうして事あるごとに絡まれているのだ。
「またあの子来てるよ」
「懲りない人……」
とまあ、ほぼ毎日食堂にも来ているわけなので、当然辺りからはそのような陰口が寄せられる。それをまるで意に介した様子もなく、サキはぴしっと人差し指を突き出した。
「ふふっ、話は聞かせてもらったわ!」
「2回言わなくても聞こえてるし。話そらすなよ」
「親がいない家でデートだなんてセックス確定演出じゃない! 私も混ぜて!」
聞く耳を持たないどころか、とんでもないことを言い始めた。捲し立てるようにサキは続ける。
「大丈夫! 安心して! ちょっとチンポを貸してくれるだけでいいの! 峰くんと神崎さんの恋路を邪魔するつもりはないから! ねっ!? いいでしょ!?」
俺と神崎さんの間に立ち、サキはテーブルをバンっと叩いた。
「静かにしろよ……周りにも迷惑だ」
「お願いよ! オナニーしても全然気持ち良くなくて……溜まりすぎて頭おかしくなりそうなの!」
頭云々は手遅れのような気もするが。
「私、峰くんのデカチンポじゃないともうイケないの……!」
床に膝を着き、サキは俺の右脚にしがみついた。
どうしてこんな狂った人間に成り下がってしまったのか。
俺が好きだった幼馴染はもっと純真な女の子だったのに。
「とにかく、俺とサキはなんでもないんだ。これ以上迫ってくるのは本当にやめてくれ。迷惑だし、一緒にいると恥ずかしいんだよ」
憚りもせずに下品な言葉を連呼して……サキと一緒にいたら俺と神崎さんまで変態扱いされてしまう。
「ほんとですよ。あなたは元カノ……、ですらありませんが、どこまで行っても峰川くんにとっては過去の人なんです。今は私の彼氏なんですから、誘惑するのはやめてください」
「やだぁっ! 欲しいの、デッカいのが欲しいのぉぉぉぉッ! 挿れてくれないと割とマジで死ぬ!」
「そんなにデカいのが欲しいならサツマイモでも突っ込んでろよ……」
俺としては冗談というか嫌味のつもりで言ったのだが、
「試したわよ! サツマイモもニンジンも大根も全部試した! でも駄目だった! 野菜はチンポじゃない! もっと温かくて、ウネウネしてて、それでいて芯のあるしなやかな棒が欲しいの! 峰くんのカリ太デカチンポで私のオマンコほじほじファックして欲しいのッ! セックスなのおぉぉぉぉ……ッ!」
どうやら体験済みだったらしい。
狂人としか思えない台詞が声高に響いて、騒然としていた食堂内に一瞬沈黙が訪れる。
止まった時間が動き出すと、俺たちの周囲に座っていたカップルが疎ましそうに席を離れていった。
気持ちは痛いほどわかる。恋人との楽しい一時にこんな会話が聞こえてきたら俺だって場所を移す。その渦中に自分がいるのだから、穴があったら入りたい気分だ。
しかし神崎さんの顔には、不快感とは別の感情が浮かんでいた。
「温かくて……ウネウネ……」
神妙な顔で唾を飲み込み、直後、右手でハッと口を塞ぐ。
「うどんのことですからね!」
そう言って、神崎さんは残りのうどんを啜った。鞄を肩にかけ、お盆を手に持つ。
「行きましょう、峰川くん。こんな人と一緒ではせっかくの昼休みが台無しです」
「うん……」
勿体ないので残りの定食を急いでかき込む。脚に抱きついたサキを引き剥がし、お盆を持って立ち上がる。
「待ってぇぇ! このままだとマジで死ぬ! 本当に死んじゃうよ!? この人殺しぃぃぃぃ――っッ!」
立ち去ろうとする俺たちを、サキは絶叫で呼び止めた。また俺の脚を掴んできて、それでも歩みを進めると、サキは引きずられるようにして床に倒れ伏した。だが、決して手だけは離そうとしない。
振り払うのは簡単だが……あまりに必死なその姿が気の毒に思えて、俺の体は固まってしまった。これは罪悪感なんだろうか。
もっとも、神崎さんは一切情けをかけるつもりはないらしく、
「どうぞお好きに死んでください」
スニーカーを履いた足でサキの腕を払い除ける。
そのまま歩き出す神崎さんに、俺も続かないわけにはいかない。金切り声を背後に聞きつつ、俺たちは逃げるように食堂を後にした。
*
そんな一日を過ごし終えて迎えた翌日。
昨日話していた通り、今日は午後から神崎さんの家で映画鑑賞だ。
俺は神崎さんの家の場所を知らないので、最寄り駅まで行って迎えに来てもらうという運びになっていた。
「良し……」
外出前に、ネットで密かに購入した巨根用のコンドームを財布に忍ばせる。あくまで万が一の備えである。
サキとは当たり前のように生でしていたが、あれはサキがピルを常飲していたからであって、学生の俺たちが妊娠なんてことになったら人生が破滅しかねない。
かといって、そういう状況になったのにゴムがないから最後までできません、というのは絶対に嫌だ。下心丸出しと罵られようと、俺は神崎さんとエッチがしたい。
それに、これは俺の勘違いかもしれないが、神崎さんもそっち方面への関心は強いような気がする。時折こぼれる発言が、俺にそういった憶測を抱かせている。希望的観測というやつだろうか。なんにせよ、持参して損はない。
「準備完了っと」
パーカーにチノパン、上にコートを着て、懐にスマホと財布を突っ込む。1階に降りて洗面所へと向かい、最後に軽く髪を整えてから俺は玄関の扉を開けた。
肌寒い風が頬を打つ中、家の鍵を閉める。
「ん……?」
戸を抜けたところで視線を感じた。だが、辺りを見渡しても人影らしきものは見当たらない。
もしかして――いやまさか、いくらなんでもそこまではしないだろう。
「気のせいだよな」
頭に過った懸念をかき消すように首を左右に振る。
俺は改めて神崎さんが待っている駅へと足を進めた。