【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
買い出しを終えた俺たちは、そのまま日が暮れる前に撤収する流れとなった。みんな片手に紙袋を抱えつつ、出口に向かって1階の通路を歩いていると、
「――あら」
突如、女性の声が俺たちの輪に入った。
「エミとシズクじゃない」
対面から近づいてきたのは、茶髪をミディアムボブにした中年女性だ。インナーの上に薄手のカーディガンを羽織っていて、下はワイドパンツという夏らしい出で立ち。
穏やかな雰囲気を身にまとったその女性に、エミちゃんとお姉さんが同時に反応した。
「あっ」
「お母さん」
神崎家のお母様!?
マズいマズい。つまり将来の義母じゃないか!
たまに親の話を聞いてはいたけど、実際に対面するのはこれが初めてだ。挨拶するのはまだまだ先だと思っていたから、なにを話していいのか全然わからない。
そもそもお母様が、エミちゃんに彼氏がいることを知っているのかどうかも俺は知らない。
俺が刹那に困惑する中、サキは驚いたように声を上げた。
「えっ、この人が神崎マザー!? ヤバッ! めっちゃ綺麗なんだけど!」
「あらあら、素直でいい子じゃない。男の子だったらご褒美あげたのに」
「おお……なんか言い方がエロい。神崎さんたちを産んだだけありますね」
うっとりと目を細めながら応じるお母様に、サキは出鼻を挫かれていた。褒められるのが好きなのか、綺麗という評価を変に否定しないところがちょっとエミちゃんに似ている気がする。
実際その所作は、清楚の中に色気があって、成人女性を娘に持つ親とは思えないほど綺麗だった。
エミちゃんも歳を重ねたらこんなふうになるのかな。
「ところであなたは? エミの友達? シズクの友達?」
「両方ですよー。神崎さん、ていうかエミさんの方と同じ大学通ってて、その縁でシズクさんの方とも」
「じゃあ、他の子もそんなところなのかしら」
そこでキョウカ先輩が口を挟む。
「あたしは違いますね。高校時代の先輩後輩ですから」
「なるほどなるほど。なら――」
途端、お母様の瞳が俺を捉えた。
「あなたがリョウタくんかしら?」
「――ッ!」
名前を呼ばれ、反射的に肩が竦み上がってしまう。
自己紹介はしていない。なのに名前がバレている。ということは、エミちゃんかお姉さんから俺のことを聞かされているのだろう。
「そ、そうですけど……」
ああ! 俺の馬鹿!
なんでもっとハキハキ喋れないのか!
こんな甲斐性のない男に娘を任せてくれるはずなどないだろうに……。
しどろもどろになる俺に、お母様は悠然と言い放った。
「聞いてる聞いてる、エミの彼氏くん。立派なんですってねぇ」
「へ?」
……立派?
脈絡のない単語が飛び出して、俺は一瞬固まってしまう。
なにを吹き込まれているのか。
まさか下半身の話……?
いやいや、母親だぞ……。
でも、他ならぬ神崎姉妹を産んだ女性だし、以前ふたりからこんな話を聞いたことがある。
――お母様は昔、アダルトな女優をやっていたと。
その辺の事情も割とオープンな家風らしいから、親子でシモの話をしていても不思議じゃないが……。
内心で動揺しながらも、俺は曖昧に微笑みを作る。
「えっと……ありがとうございます?」
「エミのことお願いね。また落ち着いたときに腰を据えて話しましょう」
穏やかな笑みで返されて、俺は呆気に取られながら頷くしかない。
エミちゃんに肩を寄せて、耳打ちで尋ねる。
「なに言ったの……?」
「さあ」
「またそうやってトボけて……」
「リョウタくんとの惚気話をしてるだけですよ♡ 変なことはなにも言ってません」
エミちゃんの主観は正直信用ならない。疑うようで悪いけど、変なことしか言っていない気がしてならなかった。
「シズクにも早く身を固めて欲しいんだけどねぇ……」
今まで微塵の揺らぎも見せなかったお母様に、やや憂いの色が浮かび上がる。視線を向けられて、お姉さんは珍しく気まずそうにしていた。
「いつまでも遊んでないで、ちゃんとした人を見つけないと。エミを見習って」
「えー、私はまだいいよ。そこそこ幸せだし、今」
唇を尖らせ、話をはぐらかすように肩を竦めるお姉さん。普段は達観しているお姉さんでも、母には強く出られないらしい。
「全く、誰に似たのやら」
お母様は呆れたように眉を寄せると、俺たち全員に微笑を向けた。
「邪魔しちゃ悪いわね。じゃあふたりとも、あんまり遅くならいようにね。私は買い物してから帰るから」
手をひらひら振りながら、お母様が横を過ぎ去っていく。ただ、見送る俺たちの中で唯一お姉さんだけが浮かない顔をしていて――。
「はぁ……」
そう、小さくため息を吐いたのを、俺は意識の片隅に捉えていた。
*
そんな準備期間を経て、日々は刻々と巡っていく。
エミちゃん主体のグループチャットでスケジュールを詰めていくうちに、俺たちの大学は夏季休暇に入っていた。
今年の夏は、神崎姉妹、サキ、キョウカ先輩、そこに俺と進藤を加えた計6人で海近の旅館に2泊3日で泊まることになった。
1日目の昼に『海』へ、2日目の夕方に『夏祭り』へ、3日目にチェックアウトというのが大まかな予定だ。旅館にはバーベキュー付きの夕食プランがあって、海を感じながらビアガーデンを楽しめるという。
正直、めちゃくちゃ楽しみだ。遠足前の子供みたいに内心ワクワクしている。
しかし、同時にこれはトラップ満載のイベントでもある。
性の権化であるサキに、誘惑という概念を擬人化したようなお姉さん。さらに破壊神のキョウカ先輩や、巨根狂いの進藤までいるのだ。
一歩踏み間違えれば、そこには地雷が埋まっている。エミちゃんの機嫌を損ねないよう、細心の注意を払わなければ。
――そうして迎えた8月の上旬。
2泊3日旅行の前夜。
天気予報によると、明日から3日間は晴天が続くらしい。絶好のイベント日和である。
この夏、果たして俺の理性が持つのかどうか。
不安がないといえば嘘になるが、まあ、せっかくの夏休みなんだし、それも込みで楽しもうと思う。