【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
そんなわけで当日の朝。
午前8時にターミナル駅前に集合して、そこからお姉さんが借りたレンタカーで海に向かうことになる。
俺とサキは近所が同じだから、他の面子より先に自宅最寄り駅で待ち合わせ、一緒に集合場所へと向かった。
水着やらショッピングモールで買った甚兵やら、今回の旅行で必要な物を詰めたキャリーバックを引きずりながらターミナル駅の改札を抜ける。駅前の、乗車待ちの車が並ぶ列に見慣れたシルエットを捉えた。
「よっ。進藤」
無造作な金髪に長身のイケメン――ミニバンの横に立っていた進藤に挨拶する。
「おう。お前らが最後だぞ」
進藤は軽く手を上げて応じると、立てた親指を車内に向けた。
「みんな揃ってるよ、とか言えないわけ? なんでそう責めるように言うかなー」
不満げなサキに、進藤はぶっきらぼうに言った。
「気を遣われたいならもっと女らしく振る舞うんだな。神崎を見習って」
「うわぁ……このご時世で女らしくとか言っちゃうんだ。下半身と同じで矮小な価値観してるね、ミニポくん」
「その呼び方やめろ!」
お姉さんのミニチンポくん呼びをサキが悪ノリで短縮したという経緯があって、以来、進藤のあだ名は可哀想なことに『ミニポ』で定着してしまった。
それを本人はえらく気にしているらしいから、俺とエミちゃんは普通に進藤呼びしているけど。
「初っ端から喧嘩すんなって」
間に入って仲裁すると、進藤は頭を掻いた。
「……ったく。トランクいっぱいだから荷物は座席にな」
乗り込む進藤に続いて、俺とサキも車内に入っていく。
エアコンが効いていて涼しくはあるけど、車の中は少し狭さを感じた。6人乗車に加えて、それぞれ2泊3日の荷物を抱えているから仕方ないだろう。
とはいえ、不快に思うほどの狭さではない。
助手席は荷物で埋まっていて、真ん中の列にエミちゃん、一番後ろの列にキョウカ先輩が座っている。進藤とサキが一番後ろに行って、俺はエミちゃんの隣に腰を下ろした。
「狭くてごめんねー。もうちょっと大きいの借りれば良かったね」
「いえいえ! 座れないほどじゃないですし十分ですよ」
申し訳なさそうに謝るお姉さんにそう伝える。
そも、自費で借りてもらっているのに文句を言える立場じゃない。普段から頼りっぱしで、お姉さんには感謝しかなかった。
なにかで恩を返したいところだが……お姉さんが喜びそうなことなんて性的なことしか思い浮かばない。
ただ、自分からそれを言うのは憚られるため、俺はせめてもの思いで別の提案をした。
「あの、お姉さん」
「ん?」
「いつも任せっきりですし、俺が運転変わりましょうか?」
春に免許を取ったばかりの完全ペーパーだが、免許は免許だ。バン車を触った経験はないけど、同じ普通車なら運転できない道理はない。
だが、俺の提案に反応したのは、お姉さんとは別の人間だった。
「えっ!? 私まだ死にたくない……!」
と、サキが即座に否定の声を上げる。
「お前……」
「やだやだ! シズクさんの運転がいい! 峰くんの運転とか絶対危なっかしいよ!」
「…………」
将来的に車を買うかどうかはわからないけど、買ったとしても絶対にサキは乗せてやるまいと心に誓う。
「リョウタくんは優しいですね」
隣に座っていたエミちゃんが、くすくすと笑いながら口を開く。
「でも、ここは姉さんの運転に任せましょう」
彼女であるエミちゃんにまで言外に否定されてしまった。
俺ってそんな信用ないのかな……。
やや落ち込んでいると、バックミラー越しにお姉さんがキョトンとしているのが見えた。しかし、途端にその表情は目尻を落として、
「ありがとね、デカチンポくん」
柔らかい笑みに変わる。
今の間はなんだったのか。
「けど大丈夫! 運転好きだし、これでも年長者だからね。任せて任せて」
疲弊など感じさせず、お姉さんは気丈に語る。
本人がそう言うなら食い下がるのは野暮だけど……年長者だからという理由で責を担っていたら、いずれガタが来たりしないだろうか。
まあ、お姉さん相手に無用な心配かもしれないが。
「よーし、みんな乗ったね! それじゃあ、レッツゴー!」
お姉さんの元気な掛け声と共に、車は海に向かって発進した。
*
高速を降りて海沿いの道を走ること30分ほど。
左側の眼下に海水浴場が見えてきた。
「峰くん峰くん! そっちの窓開けてよ!」
一番後ろは窓が開かないため、サキに頼まれて半分ほど中央列の窓を下ろす。
夏の悶々とした熱気に紛れて、海の匂いが車内に流れ込んだ。
「んぅ〜! 潮の香りだー! あっ、私のじゃないよ?」
「どんな思考回路してるんだよ……。暑いから閉めるぞ」
サキの頓珍漢な発言を適当にいなしつつ、窓を閉める。
天気予報によると今日の気温はピークで38度を越えるらしい。まだ昼前だが、それでも一瞬で車内の冷気を掻っ攫うほどに外はすでに熱暑だった。
海水浴場には客の数もチラホラ見えて、パラソルやらレジャーシートが並んでいる。海真っ盛りの時期だし、時間が経つにつれて人はどんどん増えていくだろう。
――海水浴場指定の駐車場に車を停める。
レジャーシートなど共用の荷物は俺たち男が運んで、各々が着替えを持って更衣室に向かう。
「じゃあまたあとでね〜」
「場所取りよろしくお願いします」
更衣室の前で女性陣と別れて、俺たちも男子更衣室に入る。
疎らに客が点在する中、俺と進藤は隣同士のロッカーで服を脱ぐ。
ふと横を見ると、割れた腹筋が目に入った。
「鍛えてるのか」
「そりゃな」
ミニポミニポと揶揄されているから忘れそうになるが、やはり外見偏差値だけはめちゃくちゃ高い。もし俺に彼女がいなかったら、心の底から嫉妬していたと思う。
「峰川みたいに選り取りみどりじゃないんだよ、こっちは。今日のために戦闘力は上げてきた」
「ナンパでもするつもりか?」
「当然。海でやることなんて他にあるのかよ!」
極端な思想である。
俺も上半身裸になって、そのままなんの気なしにパンツを下ろす。すると、横から寂しげな声がかかった。
「なあ、峰川。筋肉って優しいよな」
「は?」
なんだ急に。
筋肉が優しい?
そんな日本語あったっけ。
「タンパク質を摂って筋トレすれば、筋肉は勝手に育ってくれる。なのに」
進藤は、自分のズボン越しの下半身を見下ろしながら憂うように言った。
「コレはなにをしても育ってくれない。……世の中厳しいぜ」
またワケのわからないことを……。
「馬鹿なこと言ってないでさっさと着替えろよ。みんなが来る前に設営済まさないと」
「峰川の前で脱ぐのは恥ずかしいな」
「男同士でなに言ってんだよ……」
こちとら今年の冬に、進藤の目の前でサキとヤらされたというのに。
実際に見たことはないから進藤のミニポとやらも少し気になるが、無理やり見るのは嫌がらせでしかない。
俺は海パンを穿いてロッカーを閉めた。
「んじゃ先に行ってるから。すぐに来いよ」
「おう」
ビーサンを履き、ロッカーの鍵を腕に巻く。
持参した折りたたみ式のパラソルを抱えて更衣室を出る。
降り注ぐ強い日差しが、剥き出しの肌に突き刺さった。
これは日焼け確定だな……。