【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
「それでは行きましょうか。皆さん待ってますし」
事後処理を終え、エミちゃんが持参していた汗拭きシートで互いの体を清めると、俺たちは公園の茂みを抜けて屋台の並ぶ通りへと戻っていった。
サキたちが場所取りをしてくれているはずなので、グループチャットで位置情報を確認し、そこに向けて足を速める。
ドォン……バリバリバリッ!
花火が始まれば誰もが空に夢中になるものだと思っていたが、案外、打ち上げの最中でも屋台は盛況だ。通りには、焼きそばやたこ焼きを頬張りながら、夜空を見上げる浴衣姿の人々で溢れ返っていた。
すれ違う誰もが楽しそうだ。
ただ、俺の胸中にはちょっとした不安が渦巻いていた。原因はもちろん、絶頂直後のエミちゃんが耳元で囁いたあの一言だ。
――将来を決める、大事な話。
あの雰囲気なら、普通に考えてポジティブな話題だろう。
でも、もし別れ話だったりしたら?
隣を歩く彼女の横顔を盗み見る。エミちゃんは穏やかな笑みを口元に浮かべつつ、夜空の花火を見上げている。その心中は読めなかった。
不安を抱えたまま人混みを縫うように歩くこと数分。視界が開けて、川沿いの土手に出た。
草の生い茂るなだらかな傾斜には、多くの見物客が腰を下ろしている。
その一角に見慣れた顔ぶれを見つけた。
「あっ! やっと戻ってきた!」
土手の斜面に座っていたサキが、近づく俺たちにいち早く気づいて声を上げた。
「遅いよふたりとも! もうプログラム半分くらい終わっちゃってるじゃん!」
「すみません、少々野暮用がありまして」
「なんでいちいちボカすの? どうせセックスでしょ」
サキのド直球な指摘を、エミちゃんは艶やかに微笑んで受け流す。
「そうですね。おかげさまで肌の調子はすこぶる良いです♡」
「あたしのこと悪く言うくせに、神崎ちゃんも大概終わってるよね」
「一緒にしないでください。私は姫野先輩と違って、誰にも迷惑はかけていませんから。ちゃんと見えないところで致しましたし」
呆れたように突っかかるキョウカ先輩に、エミちゃんは涼しい顔で異議を唱える。
そんな中、一番後ろに座っていたお姉さんが、自分の隣のスペースをポンポンと叩いた。
「まっ、立ち話もなんだし座りなよ。突っ立ってたら周りの邪魔だし」
それもそうだ。他のお客さんの観覧を遮っては申し訳ない。
俺とエミちゃんは草の斜面に腰を下ろした。
前方には進藤、キョウカ先輩、サキが横一列に並んでいて、その後ろでお姉さん、俺、エミちゃんの順で座る形になる。
ヒュルルル……ドォォォン!
川の向こうでまた一際大きな花火が打ち上がった。
夜空を埋め尽くす柳状の鮮やかな光。さっきまでの淫靡な空気はどこへやら、エミちゃんはただ、その美しい景色に見惚れていた。
「綺麗ですね」
「だね」
俺は短く同意して、ぬるくなったコーラを喉に流し込む。
ふと、エミちゃんとは反対側の、左隣から視線を感じた。
「な、なんですか……?」
お姉さんだ。花火を見上げるでもなく、立てた膝に頬杖をつきながら、じっと俺のことを見ていた。
逆光で表情はよく見えないが、その瞳はどこか潤んでいるように見えた。
「結局、エミには叶わないなぁって」
「はい?」
独り言のようなつぶやきだった。
聞き返すと、お姉さんは視線を俺から夜空へと移した。
「もしさ。エミより先に私と出会ってたら、デカチンポくんはどうしてたかな?」
そう言われても、エミちゃんという媒体がなければ、たぶん俺とお姉さんの人生は交わることがなかった。
だから、真剣にその仮定を考えるのであれば『他人のまま何事もなく終わる』という答えになると思う。
ただ、お姉さんが求めているのはそういう理屈っぽい話ではないだろう。
「それは……」
エミちゃんの手前、返答に困っていると、
「別にそれで姉さんを選んだりしないから」
右側から落ち着いた声が飛んできた。エミちゃんだ。
花火を見上げたまま、視線も動かさずに言い放つ。
「たとえ姉さんとリョウタくんが先に出会っていても、リョウタくんは私を選ぶよ。運命、だから」
「あははっ。ロマンチストだねぇ、エミは」
妹の強気な宣言に、お姉さんは吹き出すように笑った。
「でもわかんないよ? 私、本気でいいなって思ったし」
「姉さん?」
「最初はただの興味本位だったけどさ。優しくて、可愛げがあって、そのくせ夜は野獣みたいで。私にとって超理想的じゃん?」
飲みかけの缶ジュースを口元で揺らしながら、お姉さんは遠くを見るように続けた。
「奪っちゃおうかなって、一瞬だけ本気で思った」
「っ……!」
姉妹の間にピリッとした緊張が走る。だけど、それも瞬きする間のことで、
「なーんてね」
お姉さんは憑き物が落ちたように肩の力を抜いた。
「やめとく。これ以上ちょっかい出して、可愛い妹を泣かせたくないし」
「……泣かないけど」
「ふふっ、強がり。でもまあ、そういうことだから」
そう言って、普段の妖艶な笑みを浮かべると、お姉さんは俺に向かってウインクした。
「私は都合のいい穴フレンドでいいやっ♡」
吹き出しそうになった。
穴フレンドって……せめてセフレと言って欲しい。語感が最悪だ。
「愛がなくてもセックスはできるしねぇ。お互い割り切って楽しむ、大人の関係ってやつ。これまでと一緒だね」
ケラケラと笑うお姉さん。
ほんの一瞬、その笑顔が無理をして作った仮面のようにも見えたけど――それを指摘するのは野暮だろう。お姉さんなりの、身の引き方なのだから。
「……はぁ。本当にどうしようもない人」
安堵なのか呆れなのか、エミちゃんのつぶやきには複雑な色が混じっていた。
「ところで――リョウタくん」
空気を切り替えるように、エミちゃんは俺の名を口にした。
「先ほどの話の続きですが」
「っ……!」
大事な話。ここで来たか。
俺は最悪の事態を想定して身構える。
エミちゃんは、花火の音が落ち着いたのを見計らい、真剣な眼差しで静かに口を開いた。
「私たち、同棲しませんか?」
どう、せい?
一瞬、思考が停止する。
……えっ。一緒に住むってこと?
「俺とエミちゃんが?」
「とぼけたことを言わないでください。他に誰がいるんですか。私とリョウタくんの愛の巣ですよ♡」
別れ話どころか、関係性がステップアップする提案だった。
朝起きたらエミちゃんが隣にいて、一緒のタイミングで大学に通い、夜はまた同じベッドで眠る。
そんな生活、想像するだけで夢のようだけど……。
しかし、冷静に考えると現実的な問題が山積みだ。
「でも、お互いまだ学生だし……今のままでもいいんじゃ?」
経済面、そして両親からの承諾。
夢のような話ではあるけど、このふたつをクリアするのは至難だ。だが、エミちゃんは引き下がらなかった。
「良くないから提案してるんです」
おもむろにスマホを取り出すと、エミちゃんは電卓アプリの画面を俺に突きつけた。
「これ、私たちがこの1ヶ月で使ったホテル代です」
「うげっ」
表示された金額を見て、俺は思わず仰け反った。
エミちゃんの懇意でホテル代は割り勘だったから、1回ごとの支払い額はまだ可愛かったけど……総額となるとギョッとしてしまう。
「サキさんじゃあるまいし、毎度毎度、青姦するわけにはいきません。外でエッチするたびにこの出費ですよ」
「えー? お金かかるの嫌なら外でヤればいいじゃん。公園とか路地裏ならタダだよ?」
聞き耳を立てていたサキが、さも名案のように口を挟んでくる。
しかしエミちゃんは、「あなたと一緒にしないでください」と一瞥もくれずに一蹴した。
「塵も積もればなんとやら、正直、ホテル代も馬鹿にならないということです。しかし!」
エミちゃんは演説でもするように片手を掲げた。まるでテレビショッピングの司会者のようだ。
「このホテル代を、そのまま家賃に切り替えたらどうなると思いますか? なんと不思議! 実質的な負担額ゼロで愛の巣が手に入るのです!」
……なんて強引な論法だ。喋り方もわざとらしいし。
将来エミちゃんがどんな職種に就くのかわからないけど、営業とかセールスには向いてなさそうだ。
いや、必死にプレゼンする様子は可愛いけども。
「なにより! 一緒に住めば、リョウタくんの『管理』がしやすくなりますから」
「管理!?」
なにそれ!?
物騒なワードだ。夢のような妄想に一気に影が立ち込めた。
「どこぞの女性たちがいつリョウタくんを誑かすとも限りませんしね」
お姉さんを横目で見たあと、エミちゃんは前に座るふたり――キョウカ先輩とサキの背中を見やった。
「門限の設定、そして毎晩の搾り取りによる量の把握。同棲すれば、これらがすべて可能になります」
「ひぇっ……」
徹底的な管理生活。ホテル代の節約云々は建前で、本命はこっちなんじゃないか?
「リョウタくんは危なっかしいですから。常に私の目の届くところに置いておきたいんです」
「信用ないなぁ……」
「ありますよ? リョウタくんの下半身の節操のなさに対する信用なら絶大なものが」
「それはもう許してよ……」
「サキさんに言われて思ったんです。リョウタくんには『管理』が必要だと」
ああ……そういえば、サキに妙な入れ知恵をされてエミちゃんは得心した様子だった。
つまり、これも身から出た錆なわけか。
「嫌ですか? ずーっと一緒にいられるんですよ? 家でも、外でも」
上目遣いで問われる。
正直に言うと、それ自体はめちゃくちゃ嬉しい。
束縛が激しいのは、それだけ愛されているということの裏返しでもあるし、俺自身、エミちゃんとずっと一緒にいたいと思っている。
ただひとつ、大きな懸念があるとすれば――。
「俺は嬉しいけどさ。でも実際問題、お互いの家族がなんて言うか」
俺の両親とエミちゃんの間に関係性は築かれていないし、エミちゃんの両親と俺の間でもそれは同様だ。
俺に至っては、彼女がいることすら両親に伏せているから、いきなり同棲を許してもらえるかはかなり怪しいところ。
「ウチの家族は大丈夫だと思います。母はリョウタくんに好意的でしたし、父のことも私に任せてください」
短い時間だったけど、ショッピングモールで神崎家のお母様と遭遇したときは、たしかに好意的に見られていたという自覚はある。お父様のことは未知数だが、エミちゃんがこれだけ自信満々に言うのであれば、それなりに勝算はあるのだろう。
ちなみにお姉さんも「私は全力で賛成するよー。いつでも遊びに行けるし♡」と親指を立てていた。それはそれで不安要素だが。
そうなると、残るは俺側の問題か。
「一応聞いてみるけど、あんまり期待は――」
言いかけた、その瞬間だった。
「――話は聞かせてもらったわ!」
俺たちの会話に突如、サキが乱入してきた。
前列から体を捻り、こちらに顔を寄せてくる。
「ふたりの同棲、私は応援するよ! みんなのヤリ部屋ができるのはいいことだし、ここは幼馴染として一肌脱いであげる!」
なにをするつもりだろう。不安しかない。
「と、言うと?」
エミちゃんの問いに、サキは自信満々に胸を張った。
「これでも峰川家とは家族ぐるみの付き合いがあるからね。峰くんのパパやママとも仲良しだし、私を交渉の場に連れてってくれれば、上手い具合に話を運んであげる!」
「それは……!」
エミちゃんが嬉しそうに目を見開いた。
俺の両親、特に母親は昔からサキのことを可愛がっている。実際、サキの口添えがあれば、説得の難易度は少なからず下がると思う。
「まさかサキさんに心から感謝する日が来るとは思いませんでした。ぜひお願いしたいところです」
「ふふん、任せなさい! 私にもメリットある話だからねー。いつでも転がり込んでセックスできるし!」
サキはニヤリと笑った。
「あっ、もちろん『デカチンポ一番搾り権』の約束も忘れないでよ? なんなら交渉成功のあかつきには、もうひと権利追加してもらいたいところだね!」
「……まあ、必要経費ですね。承知しました」
「やった!」
無邪気にVサインを作るサキと、してやったりといった顔のエミちゃん。
俺の貞操が通貨のように取引されている。人権侵害な気もするけど、嫌な気分ではなかった。
同棲か……。
急な話ではあるけど、お姉さんに流されてしまったことを思うと、俺の下半身にはエミちゃんの言うように『管理』が必要なのかもしれない。異常な環境に身を置いているからこそ、余計に。
それになにより――管理と共にある、彼女との暮らしを想像すると満更でもない自分がいる。
なし崩し的かもしれない。飼い犬になるようなものかもしれない。
でも、エミちゃんに首輪を握られるならそれも悪くない。
俺は隣に座る彼女の手を、痛くない程度に握り締めた。
「エミちゃん」
花火の光に照らされた横顔が、ハッとしたようにこちらを向く。
「はい?」
「管理、お手柔らかにね」
轟音に負けないよう、語気を強めて伝える。
エミちゃんは一瞬キョトンとすると、俺の意図を察したのか、とびきりの笑みをその顔に咲かせた。
「はいっ! 後悔しても逃がしませんから♡」