【2巻11/14発売!】ずっと好きだった幼馴染にフられて始まる淫らに一途なハーレム生活 作:花染彩葉@幼馴染ハーレム2巻発売中!
お母様からの全面的なバックアップを取りつけたあとは、エミちゃんの部屋で明日の作戦会議を行った。その後、日も暮れたところで俺は神崎家を辞することに。
リビングに降り立ち、お母様に頭を下げる。
「急にお邪魔してしまい申し訳ありませんでした」
「せっかくなら夕飯食べてけばいいのにー」
「家族がご飯作って待ってるので……それはまたの機会に」
「つまんないなぁ」
そんな会話をしつつリビングから玄関へ。お姉さんを含めたその場の全員が俺の見送りに来てくれた。
「あっ、そういえば俺の荷物」
「車に入れっぱなしだったね。トランク開けるよん」
お姉さんがサンダルを突っかけて先に外へ出る。俺とエミちゃん、お母様もそれに続く。
お姉さんがトランクからキャリーバッグを下ろしてくれる横で、エミちゃんが一歩詰め寄ってきた。
「ではリョウタくん。明日の夜にお伺いますので、それまでに準備をお願いしますね」
「う、うん。わかったよ」
正直、まだ心の整理はついていない。両親になんて切り出すか、不安要素を挙げればキリがない。
ただ、エミちゃんはすでに勝利を確信しているのか、その表情は得意げだった。
ここまで来たらもう勢いでやるしかないか。
「サキさんにも伝えておきますから。みんなで力を合わせて、必ずご両親を口説き落としましょう!」
えいえいおー、と拳を掲げるエミちゃん。
上機嫌だなぁ……。
「またいつでも遊びに来てくれていいからね、リョウタくん」
頬に手を当てて、にっこりと慈母のような笑みを浮かべるお母様。
「は、はい! 恐縮ですっ!」
思わず照れながら返答する。
ほい、とお姉さんからキャリーバッグを手渡された。
「デカチンポくん、ついでだし家まで送ってこっか?」
「…………」
お姉さん、今お母様の前でなんて呼びました?
ギョッとしてお母様の方を見やるが、その顔は相変わらずニコニコしている。
やっぱり、この人もあちら側の人種なんだろうか……。
「……いえ、大丈夫です。駅近いですし、ちょっとひとりで歩きたい気分なんで」
たとえ僅かな時間でも、お姉さんとふたりきりになるのは少し怖い。
「そっか。ざーんねん」
お姉さんは飄々と肩を竦めた。
「じゃあエミちゃん、明日ね。また連絡するから」
「気をつけて帰ってくださいねっ♡」
熱い視線を背中に感じながら、俺は駅に向かって歩き出す。
空は茜色から群青色へと移ろいかけていて、街灯がポツポツと灯り始めていた。
*
自宅に帰り着いたのは19時を回った頃だった。
「ただいま」
玄関で靴を脱ぎ、リビングのドアを開ける。
「おかえりなさい」
「お帰り」
そこにはいつもの日常があった。テレビを見ている父さんと、キッチンで夕飯の支度をしている母さん。神崎家の、あの浮世離れした雰囲気とは違う、平々凡々の世界がそこにはある。
「うん、ただいま」
「旅行は楽しめた?」
「そこそこに」
他愛のない質問に、俺もまた何気なく返答する。
旅行で使った荷物を収納し直して、2日間分の衣類を洗濯カゴに入れようと洗面所に向かう。
「ご飯できたわよー」
そこでリビングから母さんの声が。
明日のことを話すなら、気が緩んでいる夕飯中が一番だろう。
洗面所の鏡に映る自分と向かい合う。
気持ち日焼けした肌。海と祭りの余韻で少し疲れた表情。でも、ここからが正念場だ。エミちゃんとの未来がかかっている。
パン、と両手で頬を叩いて気合いを入れる。
「……よし」
俺は覚悟を決めてリビングへと戻った。
*
箸を進めながら、俺は話を切り出すタイミングを計っていた。いつ言うべきか。どんなテンションで言うべきか……。
……ええい、後ろに引っ張るほど切り出しづらくなる。エミちゃんを見習って、ここはもう勢いだ!
父さんがお茶を飲み干し、母さんがそのコップを手に取って立ち上がった瞬間、
「あー、あのさ」
俺は意を決して口を開いた。
「どうした?」
「実は明日、知り合いの女子が家に来るんだけど」
「女子? サキちゃんか?」
「サキも来るけど、もうひとり。……俺の、彼女」
「「――――」」
静寂。箸を動かしていた親父の手が止まり、お茶を淹れていた母さんが振り返る。
刹那の間を経て、ふたりは口を開いた。
「か……、彼女!?」
「付き合ってる子がいたのか?」
今まで隠していたし、彼女がいる素振りも見せなかったから驚くのは無理もない。
「うん。同じ大学の子で、神崎エミちゃんって言うんだけど」
「へぇ~! リョウタに彼女ねぇ! どんな子? 可愛いの?」
「まあ……可愛い、かな……」
なんだこれ。死ぬほど恥ずかしいんだけど!
親に男女交際を告白するのがこんなに照れることだとは。同棲なんて伝えたら顔が噴火するんじゃないか。
俺の羞恥を他所に、母さんは「やだー!」と嬉しそうに笑っている。一方、親父は腕組みをして「ふむ」と唸った。
「で、その彼女とサキちゃんが明日来るって?」
「そう」
「要件は?」
「ちょっとふたりに話したいこと――話さなくちゃいけないことがあって」
「話?」
父さんの目が鋭くなる。
ここで同棲と言ってしまうと、エミちゃんが来る前に反対されて終わる可能性がある。この場は言葉を濁すのが得策だろう。
「俺ひとりの話じゃないし、それはまた明日頼むよ」
「……わかった。まあ、彼女を紹介してくれるっていうなら無下にはせんよ」
父さんは渋々ながらも頷いてくれた。
第一関門突破。とりあえず、会談の場を設けることには成功したようだった。
*
自室に戻り、ベッドに倒れ込む。スマホを取り出すと、エミちゃんから大量のメッセージが届いていた。
『サキさん、明日はちゃんと来てくれるそうです』
『それとご両親への手土産はなにがいいですかね?』
『和菓子?』
『それとも洋菓子でしょうか?』
めっちゃ張り切ってるな……。
俺は『和菓子かな。まあ、なんでも喜ぶと思うよ』と返信してから別のトークを立ち上げた。そして通話ボタンを押す。
相手はもうひとりのキーマン。数コールのあと、軽い声が耳に届いた。
『もしもーし。どしたの峰くん?』
「明日の件で電話したんだけど」
『安心しなって! 私がいい感じに話進めてあげるから』
それは助かるのだが、しかし俺にはどうしても不安なことがあった。
声を潜め、真剣なトーンで告げる。
「いいか、サキ。援護してくれるのは助かるけど、本当に、マジで、天地がひっくり返ったとしても、明日だけは淫語を使うのやめてくれよ」
これが最大の懸念点だ。
父さんや母さんの前で『デカチンポ』だの『セックス』だの言われた日には、同棲どころの騒ぎではなくなってしまう。
『わかってるよ。峰くんの家に行くときはちゃんと猫被るって』
「約束してくれるか?」
『するする』
電話の向こうでサキがケラケラと笑う。
全く信用できない笑い声だ。
『まっ、そこは本当に安心していいよ。変なこと言ったらこっちにまで飛び火するからねぇ、さすがに気をつけるよ』
それはたしかに。
おそらくサキの両親は、かつての俺がそうであったようにサキの本性を知らない。親同士、特に母親同士は今も時折お茶しているらしいから、性獣であることはこっちの母親にも知られたくないはず。
であれば、サキが暴走する心配はない、か?
うーん……でもサキだしなぁ……果てしなく不安だ。
「頼むぞ、マジで……」
なんにせよ、俺には念を押すことぐらいしかできないのだが。
『プレッシャーかけてくるねぇ。任せなよ、成功報酬だってかかってるんだから私も頑張るよ!』
「そっちじゃなくて……いや、そっちも頼むけどさ」
『じゃあまた明日ね〜』
通話終了の音が鳴り、スマホの画面が暗転する。
これで賽は投げられた。
*
翌日の夜。約束の時間は19時。
夕飯後のリビングは、昨日とは打って変わって張り詰めた空気が満ちていた。
父さんは普段着ではなく襟付きのシャツに着替え、ダイニングテーブルで忙しなく貧乏揺すりをしている。母さんはお茶菓子の準備をしつつ、玄関の扉をチラチラと気にしていた。
息子の彼女が来る、それも幼馴染のサキ同伴で改まって話があるという――両親なりに、当然ただ事ではないと感じ取っているだろう。
そんな中、19時になったそのタイミングでちょうどインターホンの音が鳴った。
「…………!」
俺を含め、家族全員の体が竦み上がる。
ついに来てしまった……!
「とりあえず俺が応対するよ」
玄関へと小走りに向かう。
扉の前で深呼吸をひとつ。
大丈夫。エミちゃんならやってくれるはず。サキだってやるときはやるやつだ。
俺は祈るような気持ちでドアを開けた。
「こんばんは」
「やっほー!」
エミちゃんはAラインワンピースに、透け感のあるカーディガンを羽織っていた。メイクもナチュラルで、手にはかごバッグと和菓子店の紙袋。どこからどう見ても『育ちの良いお嬢様』である。
一方その隣には、謎の英字がプリントされたTシャツにデニムショートというラフな出で立ちのサキ。足元はサンダルだ。ウチから西宮家は徒歩5分もかからないので、コンビニでも行く感覚で部屋着のまま来たのだろう。
「ふたりとも上がって」
来客用のスリッパをふたつ並べる。
「おっ邪魔っしまーす」
「ここがリョウタくんの……。では、失礼します」
サキは遠慮なしに、エミちゃんはキョロキョロと物珍しそうに玄関を見回しながら俺のあとをついてくる。
リビングに入るなり、待ち構えていたふたりがテーブルから立ち上がった。
「初めまして。私、リョウタくんとお付き合いさせていただいております、神崎エミと申します」
エミちゃんが先手を打つ。それに対して母さんが「あら~!」と感嘆の声を上げた。
「まあまあ、丁寧なお嬢さんねぇ。初めまして、リョウタの母です」
「父です。わざわざありがとう」
父さんも満更でもなさそうだ。硬かった表情が少し緩んでいる。
掴みは上々だろうか。
と、そこでサキがひょこっと顔を出した。
「おばさんおひさ~!」
「サっちゃんもいらっしゃい」
「も、っておまけみたいに言わないでよー」
「ごめんごめん。でも、リョウタが彼女よ? 未だに信じられないわよー」
ご満悦とばかりに母さんが破顔する。やはりサキへのガードは緩い。昔から知っている子、というのはそれだけで強力なアドバンテージだ。
ただ、同時に疑問も浮かぶようで。
「でも、どうしてサっちゃんも一緒なの? リョウタの彼女さんの紹介なのに」
彼氏の家に彼女が来るのに、幼馴染がついてくるのは普通じゃない。
質問にはエミちゃんが答えた。
「その方が都合がいいと思いまして」
「?」
母さんがキョトンとする。エミちゃんは核心には触れず、「その辺も込みでぜひお話を」と場を仕切り始めた。
というわけで、俺たちはダイニングテーブルを囲んで座ることに。
対面に両親、隣にエミちゃん、そして誕生席のような位置にサキが陣取る。
出されたお茶を一口飲むと、エミちゃんは優雅な仕草で湯呑みを置いた。
「本日はお父様とお母様にお願いがあって参りました」
「お願い、とは?」
父さんが居住まいを正す。エミちゃんは一度俺を見て頷いてから、真っ直ぐに両親の方を見据えた。
「リョウタくんと同棲をさせていただきたいのです」
数秒の沈黙。その間、俺は父さんの顔を盗み見ていた。
昨日改まって話があると伝えた時点で、両親もそれなりの話をされることは覚悟はしていたと思う。だからこそ、父さんは動揺を見せず、じっくりと咀嚼するように口を開いた。
「……同棲、か」
背もたれに体を預け、腕を組みながら天井を仰ぐ父さん。そして低い声で言った。
「反対だ」
予想通りの反応だった。
「ふたりともまだ学生だろう。付き合うのは結構だが、一緒に住むというのは責任が伴う。生活費はどうする? 学業がおろそかになるんじゃないか?」
さすが親子なだけあって、俺が思っていたことをそのまま口にしてきた。
ただ、エミちゃんはそれで怯まなかった。
「仰る通りです」
肯定した?
「学生の身分で、とお考えになるのは当然です。ですがお父様、どうかこちらの資料をご覧ください」
エミちゃんがバッグから取り出したのは、クリアファイルに挟まれた数枚の書類だった。
なにあれ。いつの間に作ったの。
テーブルに広げられたのは、家計のシミュレーション表だった。
「現在、リョウタくんは大学までの通学に往復1時間半ほどの時間を要しています。同棲をすれば大学近くに住むことになり、この時間と交通費を有意義に使うことができます」
エミちゃんが生活費の欄を指で差し示す。
「また、家賃などの生活費に関しては、私もバイトを始めますし、質素な生活を心がければ親に頼ることなく十分に賄える計算です。学業に関しても、私たちは同じ学部ですから、ノートの貸し借りや試験勉強も効率的に行えます」
理路整然としたプレゼンに、父さんが「む……」と唸りながら資料を覗き込む。
「平たく言えば、同棲はいいことずくめということです!」
ニコッと華やかな笑みを浮かべ、エミちゃんはそう話をまとめた。
「金銭面や効率の話はわかった。だが若い男女が一緒に住めば、その……間違いも起きるかもしれんし」
父さんが口ごもる。要するに、性方面の心配をしているのだろう。
「大丈夫だって、おじさん!」
今まで黙っていたサキがそこで口を挟んだ。
「神崎さんってば、すっごく真面目だから。それに、峰くんの管理に関してはプロ級だよ?」
「管理?」
「そう! 峰くんってさ、ちょっと優柔不断なとこあるじゃん? でも、神崎さんがそばにいれば安心だよ。ガッチリ手綱を握ってくれるから」
すごい。なにひとつ具体的なことを言っていないのに(本当のことを言ったら即家族会議だけど)、やけに説得力のある物言いだ。
「それに、私もちょくちょく遊びに行くつもりだし! 第三者の目があれば、そんなハメ外したりできないでしょ? ね?」
勢い任せにサキから同意を求められる。
その第三者の目とやらが一番ハメを外す原因なのだが、当然そんなこと両親は知らない。無論、言えるわけもないし、俺は頷く他なかった。
「私が監視役として目を光らせておくからそこは安心して!」
「そう……サっちゃんがいるなら、安心かしらねぇ」
母さんが懐柔された!
サキに対する謎の信頼感が、ここで最大限に発揮されている。
エミちゃんも畳みかけた。
「ふたりで生活費を出し合いながら、学生として節度ある生活を心掛けるつもりです。ですのでどうか、同棲を許可していただけないでしょうか。リョウタくんのことが大好きなんです」
頬を染め、恥じらうように俯くエミちゃん。
計算なのか本音なのかわからないが、その可憐な姿に、頑なだった父さんの表情に亀裂が走った。
美人の女性に『息子が大好き』と言われて、悪い気のする父親はいないと思う。
さらに、だ。
「私も保証するよ、おじさん! ふたりなら絶対、お互いを高め合えるいい関係になれると思う!」
家族ぐるみで付き合いのある、信頼する幼馴染による援護射撃。
もちろん父さんは知らない。この幼馴染が裏で淫語を吐きまくっている性獣ということを。今のサキはどこからどう見ても、幼馴染の恋路を応援する清廉潔白な女子大生だった。
外堀が物凄い勢いで埋められている。
父さんは腕組みをしたまま、唸るように息を吐いた。そして、
「……リョウタ。お前はどうなんだ。まだお前の口からなにも聞いてないぞ」
父さんが最後に俺を見た。
「ちゃんと彼女の人生を預かる覚悟があるのか」
問われ、俺は隣に座るエミちゃんを見る。
不安そうに、縋るように俺を見つめ返す瞳。でもその奥には、決して俺を逃がさないという、底知れない執着と独占欲が見え隠れしている。
束縛と隣り合わせの毎日。普通なら尻込みするかもしれない。
でも――そんなエミちゃんに人生を授ける覚悟も、授かる覚悟も、俺は両方とも持ち合わせている。
「あるよ」
父さんに向き直り、腹の底から声を絞り出す。
「経済的なところはギリギリになるかもしれないけど、ふたりならちゃんと生活できると思う」
「…………」
父さんはしばらく俺を凝視していた。俺の目を見て、それからエミちゃんを見て。
やがて、大きくため息を吐いた。諦めにも似た息遣いだった。
「……わかった。そこまで言うなら認めよう」
「ありがとうございますっ……!」
いの一番にエミちゃんが喜びの声を上げて、ぺこりと頭を下げる。父さんは照れ隠しのように頭を掻き、咳払いをひとつした。
「ただし、単位を落としたり、問題を起こしたら即解消だ。それと」
「はい」
「一番大事なことが残ってるだろう。向こうのご両親……神崎さんの親御さんはこのことを知ってるのか? まさか、若いふたりの暴走ってわけじゃないだろうな」
父さんの懸念はもっともだ。こちらの親が許しても、相手の親が許さなければ話にならない。大事な娘さんを預かるわけだし。
ただ、それは済んだ話。
エミちゃんは涼しい顔で即答した。
「それなら大丈夫です。ウチの親はもう了承済みですので」
「えっ」
「まあっ」
父さんと母さんが同時に目を丸くする。
「母はもちろん、昨夜父にも話しましたが『エミが選んだ相手なら』と快諾してくれましたから」
準備万端過ぎるエミちゃんに、両親は苦笑いするしかないようだった。
*
エミちゃんを駅まで送る道すがら、住宅街の路地を3人で歩く。家から離れたところで、それまで清純を演じていたサキが吹っ切れたように伸びをした。
「あー疲れた! 猫被るのも楽じゃないねー」
「サキにあんなにまともな演技ができるなんて見直したよ」
「失敬な。やろうと思えばこれぐらい余裕だし」
不服そうな顔から一転、サキは流し目で俺を見ながら口角を吊り上げた。
「でも良かったねぇ、峰くん。これで念願のセックス生活スタートじゃん」
「言い方……」
「追加報酬は弾んでもらうからね? 合鍵も絶対に頂戴よ?」
「渡しませんよ、なんのための同棲ですか」
サキの図々しい要求を、エミちゃんはぴしゃりと遮った。
「リョウタくんの貸し出しは必ず私を通してお願いします」
「けちー」
と、そこで西宮家が視界の先に入る。
サキは一歩前に出て、こちらを振り返った。
「まっ、とりあえずふたりともおめでとさん。これで峰くんも晴れて籠の鳥ってわけだ」
「だから言い方……」
せめて愛の巣と言って欲しい。……この表現もどうかと思うけど。
「あはは! 『一番搾り』の件、忘れないでよ? じゃあ私はこれで!」
快活に笑うと、サキは手をひらひら振りながら西宮家の玄関へと消えていった。
俺たちはまた、並んで歩き出す。
ふと、手が触れた。自然と指が絡まり、恋人繋ぎの形になる。
「リョウタくん、覚悟はできていますか?」
「えっ?」
「私の管理は厳しいですよ? 朝起きてから夜眠るまで、全部私色に染めてあげます。最後の一滴まで私が管理して」
管理される毎日。搾り取られる生活。
まあたぶん、大変なことは山ほどあるんだろうけど、それも含めて楽しんでいこうと思う。
「望むところだよ」
「ふふっ♡」
エミちゃんの顔に花が咲いた。それは今日一番の、この夏一番の笑顔だったかもしれない。
「これから忙しくなりますよ、リョウタくん! 物件探しに家具選び、やることは山積みですっ!」