(最近はなんだかんだ言って楽になってきてますねえ)
そんな事を考えながら、絹旗最愛は晴れた道を歩いていた。
茶のボブカットをふわりと揺らし、白いウール地で丈の短いワンピースを着ていて
脚は太腿が見えるほどに露出している。
色気ある格好なのだが、膝下のストライプソックスは子供っぽく、実際見かけは中学生に入ったばかりといった年齢。
表情には緊張など欠片もなくて、彼女が学園都市暗部に属している人間とは、にわかには信じられないだろう。
そろそろ着こうとするセーフハウス代わりのマンションを見上げながら、機嫌よく微笑んでいた。
(戦闘だと……まあ機転が利くぐらいでたいした事はないんですが、浜面がいるとパシリでもなんでも超捗ります)
楽になってきた理由というのは、新規『アイテム』メンバーとして浜面仕上が加入した事を指していた。
メンバー内の意見では地味に使える奴との評で、それは『アイテム』の活動としての
意味だけではなく、日常生活においての話でもあった。
(大体みんな超面倒くさがりなんですよ)
浜面の加入前、『アイテム』メンバー内でセーフハウスの掃除を担当するのは絹旗である事が多かった。
学園都市暗部に所属しておいて、掃除をする必要があるのかといえば、専門の正しい意味での清掃屋は雇える。
掃除どころか修繕、事件の後始末。血痕や破壊跡を一片だって残さないプロフェッショナルだ。
しかし、自分達の本拠地を任せっきりにするほど、学園都市を信用しているわけもない。
なので幾つかある暗部にも知られていないセーフハウスを利用する時は、自分達で掃除をするしかなかった。
向かっているマンションのセーフハウスはリビングと三つの部屋があるのでなかなかに広い。
一家族ぐらいは余裕で住めるだろう。
とはいえ、広ければ広いほど汚れは残りやすく、他メンバーは几帳面な絹旗に比べて片付けにそれほど熱心ではない。
あまりに散らかっていれば片付けはするのだが、その基準が絹旗に比べると緩めで、結局絹旗が掃除を行う事が多かった。
そういった流れを、ちょいちょい浜面に押し付ける事で生活の手間がかからなくなったのだ。
不憫ながら、新規メンバーで立場の黒一点の浜面にはメンバーのそういったお願い(強制労働)を断る事はできない。
今日も仕事がなくメンバーが休みを取っている中、セーフハウスの片付けなどを担当させられていた。
(それにあんなのとはいえ、男の目があると超気にしちゃうもんです)
一例としては浜面の目に触れるような所で、まとめてクリーニングに出す服――火薬の匂いが
染み付いたり、返り血混じりだったりするが――を放置する事がなくなった。
小間使いのような扱いだが、十代の少女達が同年代の男に汚れものを見せるわけもない。
(最近は仕事を頼みすぎたかもしれませんし、またC級映画巡りにも超連れて行ってあげましょうかねえ♪)
それは絹旗の純然たる趣味であったが、浜面も付き合いがよいし、たまには映画に熱中する事もあるのだ。
絹旗はそんな事を映画を考えながらエレベーターに乗って一室へと向かう。
「え」
「あ゙」
だがしかし、機嫌よくセーフハウスの玄関を開いた絹旗は頭の中が真っ白になった。
ソファとテーブルとクローゼットがあるフローリング張りのリビング中央で、浜面が膝をついている。
あろうことか、ズボンを下ろした姿勢のまま、女性の下着を股間のアレなモノに巻きつけて自慰に耽っていたのだ。
「なにをやって―――」
「こ、こここここれはその、ふげっ……」
浜面がズボンを履き立ち上がろうとするが、慌てていたため前のめりに転ぶ。
(なにっていうかナニをやっているって奴ですか! それにあのショーツ……!)
絹旗は動揺しながらも不届き者へと即処断を下した。
「浜面、超動かないでください。今からジャッジメントを呼びますので。逃げたらアレごと潰します」
「監獄or去勢!? ま、ま、まってくれ。これには訳が!」
「へえ……その超汚らしいモノを人様の下着に擦り付ける訳があるなら知りたいものですねぇ」
「ひぃ……」
浜面は怒気と共に轟と音がして空気の質が変わったのを感じた。
絹旗が窒素装甲を発動しているのが嫌でもわかる。
軽く労ってやろうと考えていただけに、絹旗がガチで怒っているのを浜面は知らない。
そんなつもりはなかった。ほんのちょっとだけ魔が差したのだ。
くそぅあいつらいつもこき使いやがって。お前らなんかこうしてやる!
みたいな事を考えていたら、手近のクローゼットから見つけたものでついついエンジョイ&エキサイティングしてしまったのだ。
しかしそれを正直に言ってしまったら、ジャッジメントを呼ばれる前に男としてゲームオーバーなのは間違いない。
浜面は3/60秒という、時間停止でもしたかのような速度で土下座った。
「俺が悪かったっ!!!」
「はぁ!? 謝ってすむ問題だとでも!?」
「こんな事するつもりはなかったんだ! ただ……」
「……ただ?」
「お前らみんな可愛いし、囲まれてるとすげぇいい匂いだし
色々思い出してきたらムラムラってしてきて……すんませんしたっー!」
「……ふっざけってんですか」
低い怒声を聞き、額を床にゴリゴリ擦り付ける浜面。なんとも情けない有様だ。
絹旗が睨んだままそのまま一分、二分と時が過ぎていく。
「…………はぁ~~~」
眼前で土下座したまま動かない変質者をみやり、深い、深い溜息をついた。
こうも情けなさ過ぎると呆れて、逆に怒る気がなくなってくる。
「よりにもよって私達のせいにしますかね普通。………まあ超猿で学園都市非モテ代表の
浜面が超美少女集団の中にいたら、こういう事もあるかもしれませんね……」
自分も超美少女枠にさらりと含める辺りいい性格だが、続く言葉に耳を傾ければ
誰だって天使と間違えるに違いない。
「はいはいもういいです。許してあげます。顔を上げてください」
「お、おおっ……」
寛大にも絹旗は謝罪を聞き入れた。浜面は滂沱の涙を垂れ流す。
「私で超よかったですね。麦野だったらあれで純情なとこありますから。
一秒かからず、股間を原始崩しで超焼かれてましたよ」
「げっ」
「フレンダだったら弱み握られて一生笑われ晒し者ですし、滝壺さんだとエテ公浜面が襲いかねません」
「お、襲わないぞっ。ってあれっ?」
「……ナニをおっ立っててるか!」
「うぎょっ!」
否定しながらも立ち上がった浜面のズボンとパンツが膝まで落ち、絹旗は超窒素パンチで跳ね飛ばした。
浜面がボヨンとソファでバウンドして崩れ落ちる。
「超露出狂の超変態め…………もー二度も見ちゃったじゃないですか……」
片手で隠した隙間から見える絹旗の頬は赤い。
やさぐれた暗部生活によって耳年増ではあるものの、男性の勃起したアレを間近で見た経験など流石にない。
「う、ううっ……だって……お前が脚見せすぎでエロいんだもん……」
「なっ!? 浜面の癖に、超変態行為をまたもや人のせいに!」
ソファに崩れ落ちている浜面から心外な表現を聞いて、思わず体育座りのような姿勢で脚を隠す。
見せるか見せないかで言うと、見せる前提の格好ではあるが直接的な表現は流石に恥ずかしい。
そして怒りや恥ずかしさと同時に、微かな疑問も浮かんだ。
(私の脚を、ということは……さっきのアレも、他のメンバーじゃなくて私で……?)
横目でチラリと浜面のほうを見ると、ダメージを食らってもなお、股間のモノはまだ主張していた。
自慰の最中、去勢の危機、窒素装甲の一撃と食らって本能が迸っているのかもしれない。
浜面の言葉が正しければ、野生の発露は絹旗のせいと言えなくもなかった。
フラフラになってるくせに、低い目線で絹旗の脚辺りを未だ見ている。
何故だろうか。それは見られる嫌悪感よりも、胸の奥にチリつくものがあって。
「……仕方ありませんね」
「へっ?」
(あれ? なんでしょう。私、なにか変なことをしようとしてますよ?)
自分で自分に疑問を覚えつつも、絹旗は立ち上がる。
ソファに座っている浜面を見下ろし挑みかかるような視線。
浜面がどのような反応をするのか知りたい。試したい。
「そーれ、ぴらーん」
「おおおっ!!」
ワンピースの丈を少しだけめくった。
内股の付け根と下着がギリギリ見える、そんな所まで一瞬晒されて戻る。
浜面はダメージを忘れたように身体を起こし、獣の体勢で絹旗の足元に近寄った。
「うっわ、超ドン引きですよ浜面。犬みたいに盛ってますね」
「だ、だって、こんな、途中だったのに……」
「ずりネタが欲しいんでしょう?」
「お前、そんな下品な……」
「人の下着でオナってた浜面が言えたもんじゃないですよね」
「…………」
絹旗の嘲る言葉に浜面は逆らえないようだ。
俯いたようで視線は今だ脚に固着していて、雄の本能を満たす事だけに思考し行動する存在に成り下がっている。
股間の疼きに耐えれず、蔑まれながらも均整のとれた太腿から視線を離せない。
「いいんですよ。そのショーツを使っても」
うっすらと笑みを浮かべている絹旗は、優しく子供に言い聞かせるように囁いて
床に放置されたままだったショーツを指差す。
「え、いやっ、そんな」
「それ私のなんですよ」
「なっ!? こんな大人っぽいの!?」
「そんなの履いたら浜面汁で妊娠しちゃいそうですから。使わないなら捨てちゃいますよ?」
「うっう……ぐっ」
浜面は唾を飲み込んで、地面に広がってるショーツを見つめた。
ワンピースと同じ色のそれはやたらと手触りがよかった。
レースが全体を装飾しており、所々は肌が透けて見えるほどに生地が薄い。
少し顔をあげれば、スカートに隠れて見えそうで見えないものが間近にある。
中を想像すると、頭の中が熱くなり汗が噴き出してきて、股間のモノがピクンと動く。
「が、我慢できねぇ……」
浜面は顔を真っ赤にしながらも欲望に逆らえず、膝立ちになってショーツと一緒に自分のモノを握り、扱き始めた。
「この浜面、ホントにオナりはじめましたよ。超猿いですね」
「はぁはぁ、お前が……しろって……」
「使えとは言いましたけど、浜面が勝手に私の前で始めたんでしょう。
やっぱり見られないとダメな超露出狂ですか?」
「ち、ちがう……」
浜面は恥じてはいるが止められないようだ。
立っている絹旗の前で膝立ちのまま、眼前の絹旗の下着を使った自慰を続けている。
(脚、ガン見してます……)
絹旗は突き刺さりそうほどの視線を感じて、内股を擦り合わせた。
見られるという状況に不思議と胸の中が熱くなってくる。
指をほんの少しスカートに引っ掛け、持ち上げるような動作を取ると
浜面の視線がより強くなるのがわかる。
犬に餌を投げる振りだけして、探し回るのを見ているかのようだ。
(浜面超興奮してますね……)
あまり目には入れないようにしてるが、黒々しいモノから摩擦の音が聞こえてくる。
浜面は荒く切なそうに息をついて見上げて口を開いた。
「なあ……頼みがあるんだ……」
「お願いなんてできる立場じゃないですよね。超変態の浜面は」
「わかってるけどさ、頼むよ……絹旗のパンツがすげぇ見たい……」
本人もどれだけ情けないのかがわかっているのだろう。
女の子の目の前で自慰をしながら頼み込む浜面の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「ぷっ、この浜面は、厚かましいを通り越して、もはや超勇者ですよ、ぷっ、くくっ」
「だって、こんな近くで見てたらよぉ……ううっ」
頼みが予想通りで絹旗は笑いながら浜面を嬲った。
ただ、泣きながら愚かしくも情けない様子に、どこか可愛らしいと感じていた。
暗部の仕事の都合上、男を泣かしたというか、痛めつけたり命乞いされたりなどの
経験は幾らでもあるが、このように欲情に染まった泣き顔を見たのは初めてだ。
それは絹旗の魅力によって引き起こされている。
胸の裡の種火が、ゆっくりと、ゆっくりと燃え広がっていく。
「それじゃあですね。質問なんですがさっきは誰をずりネタにしてたんです?」
「あ、うっ、その……」
「正直に言わないと超見せません」
「ま、待ってくれ、言うから。パンツが大人っぽかったから麦野を想像して……」
「へえ……じゃあ私は必要ないですよね。麦野呼んできましょう」
「ちがう、今見たい! 絹旗のパンツを見たい!」
「つまり私でオナりたいと。だったらちゃんとわかるように言ってくださいよ」
浜面は一瞬口ごもった。何を絹旗が要求しているのかわかったのだ。
それは年下の少女に頼むようなものではない。
まだ押し倒したほうが男らしいと言えよう。
けれども、無能力者の浜面では絹旗に勝てる訳もなく、内からの欲求にはすでに屈している。
答えは一つしかなかった。
「……絹旗の身体とパンツ見ながらオナニーしたい! お願いだからパンツ見せてください!」
雨に濡れた犬でもこうはなるまい。
そんな情けない、涙目の真っ赤な顔のまま浜面は言い放った。
はっきりと聞き終えた絹旗が目を瞑り、ゆっくりと開けた後に薄く笑う。
「ふふふ……しょうがないですねぇ。そこまで言うんだったら、もう少しかがんで近づいていいですよ」
「あ、っああっ!」
どもりながら浜面はモノを握ったまま、そうそう見えないように計算し尽された
スカートの下側へと顔を下げてから見上げた。
「エロすぎる……! なんでこんなエロいスカートでエロい下着履いてるんだよ!」
感極まったと言わんばかりの声。鼻血でも噴出しそう。
子供染みた野暮ったさなどはない下着は、薄い水色をしていて、股間から腰にかけて覆う部分が細くローライズに近い。
上から潰した、緩やかなVの字にも似たそれは、見ただけで布地がきめ細かいとわかり
海の色を通して絹旗の大事な所が透けてしまいそう。
形に沿ってわずかに窪んだ線のようなものが目に映る。
スカートの暗がりの中でもうっすらと見える臍や腰のくびれ、白い太腿のラインは酷く官能的で、モノが無意識にピクンと動く。
はたから見れば少女のスカートを覗き込む変質者そのものの姿なのだが、浜面は気にせず
気にはできずに、自慰を続行している。
「超失礼ですね……まるで私がビッチみたいじゃないですか……」
絹旗の声も熱を帯びていて、あまり否定になっていなかった。
浜面から嘘偽りの無い興奮が、表情と視線と呼吸から伝播してきている。
恥ずかしいのか、女の子っぽく膝と太腿を擦り合わせているのが浜面をまた昂ぶらせる。
むしゃぶりつきたくなるような太腿と股間の中心には小さな逆三角形の隙間がある。
痩せすぎでもなく、無駄な肉もついていない、幼くも均整のとれたスタイルのよさが伺えた。
「その、はぁっ……絹旗……オナニーしづらいから、スカートを上げててもらってていいか……? ぴらーんってさ……」
「この超浜面はっ……! 厚かましいにもほどがありますよ……!」
「お願いだから……」
声をあげながらも怒ってはいないのだろう。
絹旗は手持ち無沙汰だった両手を、西洋の女性が目上にするようにスカートの裾にかける。
一瞬動きを止め、期待に満ちた浜面を見下ろしてから
「ぴらーん」
「おおおっ!!」
臍辺りまでスカートを自ら捲り上げた。
大胆な行為で、内腿に少しの力が入り、左脚が引かれ右脚を交差させるように動かす。
恥ずかしさで左足だけ隠したのかポーズを取ったのか、どちらにしろ絹旗の脚と下着を
見ている浜面のボルテージはさらに上がるばかりだ。
「んっ……」
浜面の荒い鼻息が皮膚を撫でてきて声が出た。
興奮のあまり、鼻先が当たりそうなぐらい腹と股間に顔を近づけている。
「ち、超近いんですけど…………」
「もう少しっ…………だからちょっとだけ……」
「……は、浜面!?」
「すげぇ……すべすべで……気持ちいい……」
浜面が右手で自慰を続けながら、左手で絹旗の右膝と太腿へ触れたのだ。
(この野郎、超超超調子に乗ってます!)
心ではそう思っているのに
「ひゃんっ、んぅ、は、はまづらぁ……や、やめ……」
漏れ出たものは小動物のごとき、高く切なげな声。
白い太腿に左手の指全部が軽く沈み込み、上下に何度も動く。
そんな風に動きながら揉まれると、ピリピリとした感覚がある。
ただ脚を触られているだけだというのに、ふにゃりと崩れ落ちそうなくらい敏感になっている。
(あ、うそ……ですよ……これって……)
身体の内側から忍び寄ってくるものがあった。それはとても熱いもの。
じゅくじゅくで、じっとりしてて、ねっとりとした何かが腹の裡から溢れてきそう。
触られただけなのに。こんなにも浜面の顔が近くにあるのに。
身体が反応して、少女の身体が男を受け入れたいと濡れてしまっている。
「んっ……? うぇ、弾かれた!?」
「……踊り子さんにお手を触れないでください。本当なら超出入り禁止なんですよ」
絹旗の判断は早かった。
普段よりかなり弱めながらも窒素装甲を即座に展開して、視覚以外をシャットアウトした。
防がないと浜面の興奮に引きずられて、絹旗のほうもダウンしてしまいそうなのだ。
「あ……じゃあもうダメだったり……?」
情けない顔の浜面を見て、絹旗はまたため息をつき、スカートをピラピラさせる。
「いいから早く終わってくださいよ」
「わかった、すぐに終わるから……!」
絹旗が冷静を装っているとは知らずに浜面が自慰に集中する。
触れれないなら触れれないで、絹旗の下着を凝視しながら右手と下着を必死に動かす。
眼前にある女性の部分をきゅっと覆っている布地と、その中身までを射殺すように見つめ、右手をひたすらに振り立てる。
きっと、その視線で一分も見つめられれば、下着越しでも濡れてしまっているのがわかっただろう。
幸いにも、そうなる前に浜面は終わりを叫んだ。
「いく、……イクから……!」
「……!」
見下ろす絹旗は男が絶頂に至るシーンを初めて見て驚く。
本当に、人体からこんなものが作られるのかと思えるほどに濁った白色の液体。
いや、液体と言うにはあまりに粘性を持ったものが、モノの先端から絹旗の膝や脛に
そして床へと飛び散り付着していく。
「あっ、はぁっ……まだ出る……!」
屹立したモノが何度も跳ねて、マーキングでもするかのように絹旗の足に飛び散る。
生臭い匂いを部屋中にまき散らしてから、やっとその動きを終えた。
白濁の残り汁が自慰に使っていたショーツもたっぷりと汚している。
「くっ、はぁ……すげぇよかった……」
「人様のショーツどころか脚まで汚しておいて、超だらしない顔してますね」
「あ、ああわるかった……拭くから……ってあれ?」
すでに用意してあったティッシュを取り出すが、絹旗の脚には白濁の残滓はなく、床に残っているだけだった。
「気分の問題ですよ。浜面のドッロドッロの超欲望鬱屈モテナイ汁だからと言って窒素装甲を貫通できるわけないでしょう」
「……そりゃそうか」
倦怠感や絹旗で抜いた罪悪感とで、浜面はろくに言い返す事ができない。
途中までは必死だったものの、今は顔を合わせるのも恥ずかしいぐらいだ。
「いい加減パンツぐらい履いてください」
「わ、わかってるよ」
股間をティッシュで拭いてズボンと一緒にあげてから、床に付着したものも拭いていく。
絹旗に見下されながら―――実態はともかく浜面はそう感じた―――掃除しているのはなんとも情けない。
「……みんなには黙っておいてあげますから超感謝しなさい」
「助かります……」
「ただし! オナるのは浜面の勝手ですけど、次見つけたら超全ゴロシですからね。
っていうかメンバーが集まるところでしないでください。いいですか?」
「はい!」
「よろしい。ショーツは始末して部屋も綺麗にしてくださいね。この件は貸しにしときますよ」
「きっと返しますです……」
玄関を開けて出て行く絹旗をまだ見れずにいて、浜面は俯いたまま返事をした。
(何やってたんですか私ー!!!)
バタンと玄関を閉めた直後、絹旗は胸中で叫んだ。
真っ赤な顔のまま、出たばかりのドアに背中を預け胸を両手で押さえている。
心臓の中で、何かが暴れているように鼓動が早く落ち着かない。
今まではノリというか、流されてやってしまっていたのだ。
浜面の前では取り繕っていたものの限度がある。
(おかしいじゃないですか。あんな超サービスしちゃった上に
浜面なんかを可愛いとか思ったりするわけないんです!)
常識的に考えて、およそ最悪な部類の光景を目撃したはずだ。
浜面本人もよくわかっていたから土下座したのだろう。
ボロクズにされて路地裏に投げ捨てられるか、省略してマンションの窓から強制ダイブさせられてもおかしくない事態。
絹旗ならば片手で実行できたろう。
にも関わらず絹旗は、単純で馬鹿な浜面が泣いたり自分の脚で興奮するのを見て、何かをしてあげたくなってしまったのだ。
(……ま、まぁ、超セクシーとはいえ中学生の私に超興奮するなんて所詮童貞野郎です。
私が相手してあげなきゃ、一生非モテ人生でしょう。
少しぐらいはいい事ないと絶望で死んじゃいそうですからね。
んー、だとしたら、あんなに切なそうで嬉しそうな浜面を見たのは、私が
最初で最後になるんでしょうね……って超違うんですからー!)
ゴンと額を横の壁にぶつける。
窒素装甲のおかげで痛くはない。むしろ壁が欠ける。
突拍子も無い想像をして何故か得意げになってしまった。
この調子では浜面が更に何かを要求してきたら、もしかして応えてしまったかもしれない。
(それに、なんでザーメンついてるんですよう……)
引いていた左膝横とソックスの境目に、ほんのわずかだが精液が付着している。
窒素装甲は基本的に自動防御してくれるものであり、不意の攻撃なども通用しない。
もし通じるとしたならば、絹旗自身が無意識に、もしくは意識的に発動しないように
しているか、能力発動ができないぐらいに肉体と精神が弱っている時ぐらいだ。
(これじゃ私が、かけられるのを望んでたみたいじゃないですかぁ…………)
今は健康そのものなので前者。
絹旗自身が、射精に合わせて能力を弱めてしまった可能性が高い。
戦闘中どんな状況であっても、そんな事態に陥った事はなかったのに。
ポケットティッシュを取り出し拭いて、一瞬だけそれを見やったあと丸めて外に投げ捨てる。
どこかで洗おうと考えながらも自分の姿を見下ろし、口元をむにゅりと歪めて困った顔を作った。
望んでいるといえば、今の服装も気になったのだ。
浜面参入前は男の子と見間違えそうなボーイッシュな格好だったりしたが、今は際どいワンピースの着こなし。
以前着ていなかったという訳でもないし、意識していたつもりはなかった。
けれども。
(浜面が来て……私が超はりきってるように見えてたんじゃないんですか、これ? ……もー)
誰も張り合っていないだろうに、絹旗一人が突っ走ってしまっている。
そうとられてもしょうがない。
「超熱くなってますよ……」
絹旗は赤くなった頬に手をあてる。
自分では気付いていないだろう。
浜面が『アイテム』に参入してから、以前より柔らかく、楽しそうな表情をするようになっただなんて。
窒素が燃えるよりも在り得ない事だと。
今の絹旗では、そう笑え飛ばせないに違いなかった。
それから数日の間、暗部メンバーらしく非合法活動は行っていたものの、取り立てて問題はなかった。
他のメンバーはもちろん、浜面も絹旗も仕事を実行しており、どちらからという事もなく、あの時の話はしないようにしている。
数日前の出来事など引きずっておらず、表面上は何も変わりないように思えた。
もっともそれは浜面の中だけであったが。
「あのですね浜面。もう少し自然にしててくれませんか?」
「え、ええっ? なんのことだよ」
仕事も何もない日、浜面と絹旗は今度こそC級映画を見に行った。
絹旗に誘われるのを当然断る事はできないし、楽しめる時もある。
しかし肝心の映画は、つまらなすぎてネタにもできない内容で、もし初デートで
見ようものなら、喧嘩から破局に繋がってしまいそうな出来だ。
結局途中で切り上げて、映画館を出て歩き出した絹旗が、浜面にかけたのは呆れを含むそんな言葉だった。
「超つまらなかったですし、映画に集中できてないのはまあいいんですけど
いつもだったらもっと騒いでるのに、喋らないじゃないですか。
ハズレもハズレすぎて、つっこみ入れずらかったですけどね」
「……いや、ほら映画は静かに見ないとな」
「私達以外誰もいなかったです。静かに人の顔をチラチラチラチラ何度も何度も、超見てたじゃないですか」
「なっ……! 見てねぇ! 自意識過剰だろっ」
「だったらいいんですけどね。ここ数日みんなから、超からかわれるんですよ? 浜面が私の事ばかり見てるって」
「うぇっ!?」
女性の視線に対する敏感さは、男よりもずっと高い。過敏と言ってもいいだろう。
ましてや浜面は小間使い扱いとはいえメンバーで唯一の男だ。
視線という明確な意思表示は、仕事中でも私生活でもあまりに目立つ。
それを隠し通せるほど達者ではなかった。
(ば、ばれてるっ! さりげなく見てただけなのに!)
浜面の中でさりげないものだとしても、原因となった数日前の出来事は視線に熱を加えてしまっている。
直接的接触はなかったとしても、絹旗の痴態は脳の奥底にまで刻み付けられており
ふと脚に視線がいったりするのを、浜面は無意識の内に行っているのだ。
今日も白のミニワンピースなので、知らず知らず見ていたりした。
「視姦してくるんでキモイって答えときました」
「俺の視線はそんないやらしいものじゃねえ……!」
「超説得力ないです。私の目の前であんな事しておいて」
「うっ、くっ……」
浜面の顔が羞恥の色に染まる。
もっとも恥ずかしい行為を、見られたというか見せ付けた記憶と一緒に、恥ずかしさもぶり返したのだ。
浜面は、女に身体を見られる生活など慣れていない。
仮に恋人がいても、自慰を見せ付けるというのはあまりないだろう。
絹旗もツンとしている表情ながら、ほんのりと耳が赤くなっているのに浜面は気付かなった。
「ちょっと。変な顔しないでくださいよ。恥ずかしいのは私なんですから」
「……そうだよな。あんなエロいパンツを見せてくれて――」
「大きな声で言わないで下さい!」
「うぉっ! …………こえぇ……」
ドンと震脚のごとき踏み込みで浜面は黙った。
窒素装甲により、小さな足跡がくっきりとアスファルトの地面に残っている。
もしこれで胴体を踏まれようもんなら、腹と背がくっつきかねない。
「浜面が泣きながら超土下座するからしょうがなくです」
「め、面目ない……」
「浜面はどうだか知りませんが、私は初めて男に見られ―――」
失言に口ごもる絹旗。
「そ、そうなの? じゃあ俺にだけ―――」
「く、くくぐぐぐ、この超浜面があぁぁぁぁぁぁぁ! 脳細胞ごと超死になさい!」
「待て待て待てっ! お前が勝手に喋ったんじゃねーか!」
今度こそ顔を真っ赤にした絹旗が、破砕音を響かせながら浜面を追いかけ回した。
「はぁっはぁっ、もうついたから止めにしねぇ……?」
「くっ……やるじゃないですか浜面。その逃げっぷりに免じて超許してあげましょう」
浜面が捕まったら、ぎゅって潰れたトマトになってしまう鬼ごっこは
幸いにも数日前と同じセーフハウスに到着して終わりになった。
絹旗が手加減をしているというのもあるが、何気に浜面の運動能力が高く逃げ延びたのだ。
くたびれ顔の浜面と、なんだかいい顔の絹旗は揃ってマンションのエレベーターに乗った。
「疲れた……日常生活がデンジャラス過ぎて映画にできるんじゃね俺……」
「やめてくださいよ。人をピンク映画に巻き込むの」
「どう聞いてもアクション映画だろ!」
エレベーターから降り、セーフハウスにしている部屋へ向かう。
「超似合わないを通り越して映画への冒涜ですって。……到着です。あれ? 鍵かかってますね」
「あいつらもフリーだから出かけるって言ってたよ。俺達は映画を切り上げたしな」
絹旗は玄関を開けソファに座ると、浜面は部屋の隅へと向かった。
家族で住めるセーフハウスなのだが、浜面の私物が置ける場所は狭く、そこにバッグが置いているだけだ。
そこで浜面はおもむろにシャツを脱いだ。
「何脱いでるんです! やっぱり超露出狂ですね!」
「お前俺をどういうキャラにしたいんだよ! 着替えるだけだって。こんだけ走ったら汗かくだろ」
「実際そういうキャラじゃないですかって……あれ……」
タオルや着替えを取り出し裸の上半身を浜面は拭き始める。
(むむっ……浜面の癖に超意外と……)
絹旗の瞳が感心と驚きで開かれた。
想像もしていなかった事だが、浜面の体つきと筋肉は十二分に立派なもので
一朝一夕では為しえない、鍛え抜いた身体というのがわかる。
窒素装甲発動時の絹旗から逃げ回れるのもこの身体ならと納得できるだろう。
それこそアクション映画に出れそうなくらい逞しい。
線の細い奴よりは、そういう男のほうが絹旗は好みなわけで。
(……やばいです。なんかまたおかしくなってますよ私……)
背を向けた浜面への視線が熱っぽい。
絹旗は音も立てずソファから立ち上がった。
なにをやっているのか自覚しているのに、胸の奥から溢れる熱を手繰り寄せたくなっている。
「……よくて最後まで生き延びつつも、主人公かヒロインを庇って死ぬ役って感じですね」
「お、わかってくれたか。主役じゃなくてもいいからそれぐらいくれよ」
「ふんっ、超良すぎるキャストでした。浜面には十年早いです。
大体あれだけ顔に出やすくて演技ができるわけ無いです」
そっけない言葉を放ちつつも、浜面のほうへと忍び寄る。
「うっ……つってもあんな事やっちまったらさぁ……」
「超変態と言えど、露出オナニーの経験は少ないと?」
「あんなもん初めてに決まってるだろ! って、え……き、ききき絹旗……!?」
「やっぱりそうなんですか」
浜面は背に触れた感触に声をあげた。
絹旗がぴったりと抱きついてきたのだ。
ウール地のワンピース越しからでも伝わる華奢で柔らかな感覚は、嫌でも異性を感じさせられる。
「な、なななんで……!?」
「動揺しすぎでキモイですよ浜面。追いかけっこの続きみたいなものじゃないですか」
そう言う絹旗の頬に赤みが差している。
悪戯っぽい笑みは、浜面の慌てっぷりを楽しんでいるためか、それとも抱きしめた喜びのためか。
「もう終わりのはずだろ!?」
「二回戦という奴ですね。先ほどは浜面の勝ちだったので、次は私が……」
言葉が途切れた。
予めそうしようとして行ったものではなく、不意にそうしたくなったから、理由なんて用意していないのだ。
「まあ、その、なんでしょうね…………」
言葉を濁しながらも、絹旗は抱きついたまま離れない。
背が違いすぎるため絹旗の顔は浜面の肩より低い位置にあって、腹に回された手は
割れた腹筋の上で戸惑うように動いている。
緊張しているのだろう。絹旗の指には鋼のように硬い感触があった。
「その、絹旗……くすぐったいつーか、ゾクゾクするつーか……」
「へんなこと言わないでくださいよっ! お腹で超感じちゃう変態ですかっ」
「いやだって、お前の指が柔くて……」
「ひゃっ! な、なななに触ってるんですか」
「お前は抱きついてきてるじゃん」
浜面は、絹旗の両手に手を被せると、疑問で頭を捻った。
抱きつかれた瞬間、慣れない女の子の感触に慌てたというのもあるが
窒素装甲ありのプロレスでもされるのかと、戦々恐々だったのだ。
でもどうやら違うというのが絹旗の様子でわかる。
能力は使っていないし、使う気があるのならすでに投げっぱなしジャーマンでも食らっているはずだ。
(からかわれてる? でも絹旗も慌ててるっぽいし…………にしてもちっちゃいくせに
いや、ちっちゃいからかな? 手も身体もすげぇやわらけぇ。
……こんな小さい中学生の絹旗をオカズにしちゃったんだよなぁ……)
手の中にある絹旗の手はやたらと小さくて、軽く握っても何か抵抗があるわけでもない。
より縮まって腹に触れているだけだ。
手触りのいい肌と、背に密着した肢体の触感に、腹の奥から欲の欠片が少しだけ顔を出す。
数日前に触れた脚や、大人っぽい下着の記憶が蘇っている。
(えーい、どうせなら勢いに任せて! …………でも俺がそんなんしたら、貸しを作ってしまうどころか今度こそ殺されそう……)
自己評価が低く、思い切れない浜面は手を握ったまま動けない。
後ろから女の子に抱きしめられる、そんな甘酸っぱいイベントが自分に降りかかっている。
それを素直に信じる事ができない。そこまでおめでたくはない。
ましてや相手は最も恥ずかしい所を見せた少女なのだし。
(うー、どうしましょう……私、もう少しクールなつもりだったんですけれど……)
そして絹旗のほうも悩んでいた。
絹旗自身でもそんな面があると知らなかったぐらい、直情的な行動に出てしまったのだ。
生殺与奪と主導権を握っているのは絹旗のほうなのだが、進むに進めない。
素直になれる性質でもなく、自分から抱きついて、更に何か決定的な事をできるほど思い切りがよくない。
軽く見られるんじゃないかという不安もある。
となると、浜面からの動き待ちなのだが、それはそれで恥ずかしい。
二人はとても近い距離なのに、色々とすれ違い空回っていた。
「……浜面。何か言ったらどうですか?」
「なにかっつてもさぁ……」
「色々あるでしょう。絹旗様に抱きしめられて超嬉しい、超幸せで天国にいっちゃいそうだとか」
「ええと……つまり、その、絹旗は俺が喜ぶような事をしてくれてる?」
「な!?」
言質を取られた絹旗が、驚きの声を上げたのを聞いて浜面はなけなしの勇気を振り絞る。
ダメで元々と覚悟を決める。
「あのさ、もし嫌だったら、俺をぶっ飛ばしていいから、いくぞ」
「な、なななにがいくんですか!?」
その動揺につけ込んだ、というわけではないが、浜面は息を強く吸ってから
「えいっ」
「ふひゃぅ……!」
くるりと反転して、正面から絹旗を抱きしめた。
「わわわっわっ! と、とと突然なんなんですか!? 超変態なんですか!? 超超変態にグレードアップ!?」
「突然抱きしめた変態はお前からだって。背中からだとなんか不安なんだよ」
「私はこっちのほうが不安です! 汗臭いを通り越して超獣臭いんですよ!」
「ちゃんと身体拭いたから! そういうのマジ傷つくんでやめて!」
言葉の応酬をしながらも絹旗は暴れたり窒素装甲を発動させたりはしなかった。
大きな目を見開き、頬を林檎色に染めて浜面を見上げているだけだ。
すっと整った鼻梁に、細い筆を走らせたような眉。
驚きと戸惑いを含みつつも、瞳は何かを期待して輝いている。
蕾を横にしたような唇は、紅を差してなくとも朱の色をしていた。
造形は変わらないのに、いつもとは表情が全然違っている。
それとも。
浜面の意識が大きく変わっているからそう感じるのか。
(顔小さくて、やっぱ可愛いな。すげぇ女の子っぽい。戦ってる時はめちゃめちゃ頼りになるのに)
「っ……」
少しだけ抱く力を強める。嫌がっているそぶりはない。
それどころか、絹旗からもうっすらと抱きしめ返しているのが伝わる。
追いかけっこをしてるうちに絹旗も汗をかいたのだろう。
絹旗の匂いがより強く感じられて、浜面は唾を飲み込んだ。
性的な欲求と言われれば否定はできない。
でも、それだけとは決して言えない。
足りていない。
初めは肉欲だったとしても、無意識のうちに好感のパラメータも上がっている。
かといって恋愛しているかといえば、そういった手順を踏んでるとも言えなかった。
絹旗の歩み寄りが突然過ぎて、準備が足りていないのだ。
浜面は足を止めているのに、絹旗だけが踏み込んできている。
これでは一方的な領域侵害だ。
だからこそ浜面は、言葉で伝え腕で抱いて、絹旗を囲うしかない。
「お前の事好きかもしんない」
「ふぇ……!」
ストレートな物言いにしゃっくりのような返事。
畳み掛けるように浜面は言葉を重ねる。
「どうしてこうなったのかわかんないだけどさ、勘違いしてもいいか?」
「う、うう……超勝手にすればいいじゃないですかぁ……」
「ああ、そうする」
この状況で嫌われている、からかわれていると思うほどに、浜面は鈍くも人間不信でもない。
否定されていたとしても、齧り付かれるのを待つ果実を味わうのを我慢できやしない。
絹旗のほうも、窒素装甲を使わなかった時点で気持ちは固まっていたのだろう。
密着していた身体に少しの隙間が開いた。
浜面が絹旗の顔を上向かせる。
(浜面の癖に、こんな、超真剣な顔できるんですね……)
そう考えている絹旗の顔は、浜面の想像でなくとも求めていると思えた。
赤い蕾はもうふっくらと開かれていて。
惹かれるように、薄くリップが塗られた唇へと自身のそれを重ねた。
「んっ、んんっ……」
唇と唇を触れ合わせる、ライトなキス。
それは、世の恋人達が行うありふれたもの。
(絹旗の唇やわらけぇ……)
(……キスって気持ちがいいんですね……)
だとしても新鮮な、初めて味わった感動が二人にあった。
心の片隅で想像していたキスという行為。
思い描いたものよりもずっと強烈で、気持ちがよく、陶酔感があった。
夢中に唇を触れ合わせてから、呼吸のために一時離す。
「ん、あっ……ん、ちゅっ、むっ…………、はぁっ……いきなりキスするなんて……超ケダモノです……」
どうにも素直になれていない。
けれども表情が言葉を裏切ってる。
嬉しそうな微笑を浮かべながら、囁いても男をより獣に変えるだけだ。
「あ、んんっ……」
浜面が無言で絹旗の細い腰を引き寄せる。
右腕で腰を、左腕で背中を。
抱いた腕は力強く、感動を離したくないとでも言うよう。
二つの鼓動がドラムを打ち鳴らし、唇を擦り合わせ、貪るように吸い合う。
もっと触れ合いたくて、開いた唇から舌を絡めあい
『ん?』
そこで止まった。
新鮮な感覚の中に混じった、覚えのある味に気付いたのだ。
「これってポップコーンと―――」
「……コーラですね。初めてなのに超しまらないキスです……所詮超浜面ですか」
甘く、少しだけしょっぱい。
先程映画館で食べたばかりの風味が残っていた。
ファーストキスというにはなんとも風情のない味だったが。
「どっちかつーと絹旗のせいだろ。俺も初めてなのに」
「また私のせいですか。浜面の癖に超生意気です」
お互い表情を緩ませてまたキスをする。
フレーバーなど、男女の熱に煽られては吹き散らされるだけ。
浜面が唇を塞ぎ舌を差し入れると、絹旗も応えて絡ませあう。
ぞくぞくっとお互いの身体が震えた。
粘膜と粘膜の触れ合いは擬似的な性交のようだ。
口の触れ合いだけで足の力が抜け、崩れ落ちそう。
「んっ、あ、はまづ……! んむぅっ……ん、ふぁ……」
浜面が絹旗の口内に差し入れたまま、腰を抱いていた右手を下へと滑らせる。
ワンピース越しに丸い膨らみへ触れて、驚きの呼びかけをキスで黙らせた。
(こっちもやわらけぇ……小さいのにどこもかしこも女の子してる……)
(触っていいなんて、言ってないんですよぉ……)
そう考えても絹旗は止めようとはしていない。
本当に止めたければ幾らでも方法がある。
けど今は、左手だけを浜面の腕にあてて、制止しているようなしていないような、曖昧な動きだけだ。
「ぁ、ふっ、んぅ……」
浜面が小ぶりの尻を撫で回し、揉むようにするとピクンと身を震わせ、キスとはまた違った吐息を漏らす。
(もしかして……絹旗も気持ちいいのか?)
マッサージでもするかのように指を少し立てて押すと、マシュマロのように沈み込む。
撫でている右腕をぎゅっと絹旗が握ってきて、絡ませあった舌の動きが鈍い。
指の力を抜き、また入れると、そのリズムで絹旗の呼吸も不規則になっている。
薫りたつというには、まだ幼く小さな身体なのに、男に触れられて感じている。
「ん、あっ……!」
驚きが口中で響いた。
我慢できない浜面が、短すぎてめくるという表現も必要ないスカートの中へと、直接手を入れたのだ。
薄手の布地一枚から伝わる感触はより鮮明で、浜面はぞくっとした感覚に囚われる。
ぎゅぎゅっと五指を沈み込ませた尻肉が形を変えて、柔らかいのに驚くほどの反発を指に返す。
抱きしめたウールのワンピースはさながら毛皮。
内にある柔らかさとしなやかさは、どこか猫を連想させるものがあった。
浜面がキスをしながら絹旗の抱き心地を味わっていると、ほんの少しだけ胸板を押される。
「……っはぁ……少し待って、ください浜面……首が痛いです」
「あ、わ、わりぃ……夢中になってた……」
「超がっつきすぎなんですよ……」
身長差が大きくあるため、立ちながら抱きしめ合うと絹旗は真上を向くような形になる。
浜面がぐいぐいと来るので、少し首に負担があった。
「なんか嬉しくてさ……絹旗はどうなんだよ」
なんともデリカシーのない問い。
キスならともかくとして、お尻を触られて嬉しいとは素直に言いづらい。
触るのを許していないのに、当たり前に聞くとはなんて男だろうか。
「もー本当に超勝手なエロ浜面ですね……ご想像に任せます」
だから悪態混じりの返事をする。
ただ、その表情は苦笑交じりながら優しい。
潤んだ瞳はどこか色っぽく、嫌がっているなんて想像すら許さない。
「お任せされてやる」
にやけた顔の浜面が更に相好を崩して喜んだ。
受け入れられている。
無能力者も能力者も、超人足り得ない人間には、それだけで世界が輝いて見えるだろう。
「―――きゃっ」
「こっちでしよう」
浜面は軽々と絹旗を抱き抱えると、合皮のソファへ寝かせた。
背もたれが倒れるようになっており、即席のベッドへと変わる。
「脱がせていいか?」
「あ、……はいっ、自分で脱ぎます」
動揺で絹旗の声が揺れている。
初めてだから。いや浜面も初めてなのだが完全にペースを握られている。
もしこれが戦いだとしたならば、主導権を奪われたまま、なす術もなく攻められてしまっている状況。
普段の絹旗からすれば、在り得ない事だ。
窒素装甲を持つ絹旗は、受け身ではなく蹂躙する立場こそが相応しい。
けれども、そうされるのを不快とは感じず、高揚感が先に立つ。
浜面が何をしたいのか、何をしてくれるのか、未知が期待へと変わっている。
「おぉ……」
上半身を起こしてワンピースを一気に捲り上げると浜面が感嘆の声を漏らした。
細い身体だが痩せているというわけではなく、引き締まった身体つきをしており傷一つない。
窒素装甲が難関を廃してではなく、難関を受け、守りきっているのだろう。
下着は上下とも同色の白。
デザインは少女らしい年齢相応のものだ。
「……浜面はもう少し大人っぽい下着のほうがいいですか?」
茶のボブカットがふわりと浮いてワンピースが両手から抜き出されると、少し不安げに問うた。
「えっ? あ、いやエロいよ。絹旗のパンツもブラジャーも身体もエロい!」
「つまり超どっちでもいいんですね……」
半眼で睨む絹旗。
数日前の件もあって、控えめな下着を履くようにしていたのだが、浜面にはあまり関係がないようだ。
どちらにしろ興奮している。
「ブラも外した方がいいですよね?」
「おう」
返事は軽いが、何度も頷く様子はどうにも余裕が無い。
(浜面め。本当に超童貞ですね、これは)
あまり好印象というわけでもないが、ほんの少し安心する。
言葉の平常さほどに絹旗には余裕があるわけではない。
自分だけ戸惑っているのだったら不公平じゃないかと思う。
やはり役者になれるような男ではないのだ。
そもそもそういう男ならこんな関係になっていないのだが。
「どう……ですか?」
フロントホックのブラを外すと、小柄な中学生にしては若干大きく、片手で覆えるほどの膨らみがさらけ出された。
丸い膨らみは登頂辺りが少しだけ尖り気味で、まだまだ成長途中というのがわかる。
乳首の部分は薄い桃色をしていて、小粒の実がぷっくりと主張している。
普段、スタイルがいいと嘯いている絹旗だったが、数年のうちに事実へと変わるのを予感させた。
「……っ。すげぇ綺麗でエロい。思ったよりも胸があるんだな」
「みくびっていましたね。超崇めてもいいんですよ?」
しかし男を。
浜面を漲らせているのは現在の絹旗だ。
恥ずかしげに頬を染めながらも、絹旗は浜面の返事を聞いて女の表情で笑う。
「触っていいか?」
「いいですけど、超敏感なんで超優しくしてくださいね」
「ああ」
「んっ、くぅ……」
二つの大きな手が精一杯優しく乳房を包んだ。
わずかに汗ばんだ肌はきめ細かく指に吸い付くよう。
しっとりと指が沈み込み、柔らかさと同等の反発を返してくる。
(優しくってこれぐらいでいいかな……)
浜面は絹旗の顔を見ながら五指でくすぐるようにする。
絹旗はきゅっと目を瞑ったままだ。
「ひっぅ……!」
「ごめん、痛かったか?」
「いえ、平気で、すから……」
指が固くなっている乳首を掠った。
反応の大きさは、乳房そのものより強く感じているのがわかる。
ちょんと指先で軽く押しただけで、吐息が乱れている。
言うとおり敏感で、優しく揉みながらたまに乳首を触ると1オクターブ高い声が漏れている。
「絹旗……」
「あ、ふぁ……んふ、ちゅっ、ん……」
可愛らしく思って、浜面は横から抱くようにしながらまたキスをする。
同時に胸を弄るとくぐもった喘ぎを何度も響かせる。
(やっぱりキス気持ちいいです……一つになってる感じが堪りません……)
大きく口内のどこもかしこも味わってこようとする浜面。
絹旗は暴れる舌を、同じく舌を踊らせて歓迎する。
舌が蕩けてしまいそうに気持ちがいい。
「んっくっ、んんぅ! はぁ、んぁ、んっんん……!」
必死に舌の動きを合わせようとするが、胸も責められると一方的に責められてしまう。
(浜面の癖に……ぁっ、ちょう……いえ、なかなか上手いじゃないですか……)
優しく胸を撫でられて、乳首を摘まれて。
時折力が入るのか、揉むようにされても痛みよりジンジンとした快感があった。
「ぁ、はぁはぁっ……ひゃぅっ!」
浜面がキスを止めると、絹旗が息を整える暇もなく、胸へと吸い付いた。
口寂しさと引き換えの激感。
絹旗はぞくぞくぞくっと背筋を震わせ仰け反った。
「は、ま……づら……そ、れ、んぁっ! 超激しすぎ、ます……! あ、ああっ!」
「ん、れろっ、きもち、いいんだな……」
れろれろと舐め回され仰け反ったままの絹旗から喘ぎが漏れる。
そのままちゅぅっと音が出るほど吸われた。
「ふあぁぁ……!」
「んっぷ、あぶね……」
快感のあまり、絹旗は浜面の頭を抱え込んで倒れこむ。
浜面が潰さないように手で支え身を起こすと、絹旗の瞳はどこか霧がかっているように見えた。
「……もしかして絹旗いっちゃった?」
「……はぁはぁ……んっく、そんな事知りませんよう……」
絶対的防御を纏っていたはずの絹旗が、浜面の舌と指でいいようにされたのだ。
まるで、堅い殻はそうならないためにあったかのよう。
剥かれてしまえば果肉は蕩けそうなほど柔らかくて、簡単にしゃぶられ吸い尽くされてしまう。
「いや絶対そうだって。目茶苦茶感じてたもん。ちっちゃいのにすげぇ感じやすい」
「うぅ……超不覚をとりました……」
自分で超敏感と言っていた通り、自覚はあったのだがこんな簡単にイカされるとまで思っていなかった。
(私、自分で思ってるよりも浜面が超好きなのでは……?)
今更ながら考えてしまう。
身も心も、というのは言いすぎだろうが、あまりに悦んでしまっている。
今だって得意げな浜面の顔は気に入らないのに、不思議と愛おしい気持ちが止まらない。
「パンツも濡れてるし」
「え!?」
と、絹旗の葛藤を置いといて、さらりと恥ずかしい事を言われる。
身を起こそうとするけれど、浜面の顔も身体も位置が近い。
「触るぞ」
「え、まままってくださ―――ひぅくっ……!」
湿った下着は絹旗の形になっていて指がなぞる。
腰の辺りがピクンと跳ね、ぎゅっと内腿が強く擦られる。
「気持ちいい?」
「だからっ、ぁ、んんぅっ、そんなの聞かないでくださいよぉ……」
涙を瞳に溜め、泣きそうな表情なのにどこか恍惚としていた。
浜面の指には下着越しでもとろみが伝わっていて、何より雄弁な答えとなっている。
「んぁ、あぁっ、……そこ、あん……まり……くぅ、いじるとぉ……おかしくなっちゃいます……」
「ほぐさないと駄目だろ」
下着をずらされ指が入れられる。
指で押し広げられる感覚の気持ちよさに、シロップのような甘い嬌声。
その様子に、浜面も興奮が増してしてきたのか息が荒くなってくる。
一つになりたいと、本能も理性もくしゃくしゃに丸まって転がっていくよう。
「……そろそろいいよな」
「ぁ……はぁはぁ、……はいっ、その多分超大丈夫です……」
「どっちなんだよ」
「うぅぅ……わかるわけないじゃないですかっ」
「……ごめん、そうだよな。でももう凄く絹旗とやりたいんだ。ほら」
「ぅっ!?」
気付けば浜面はズボンもパンツも脱いでいて、雄雄しく猛ったモノを露出させていた。
「ソレ……オナってた時より超大きくなっていませんか……?」
「かもしんない」
絹旗は、自分の腰の上辺りにあるそれを見てあわわといった顔をしている。
体格に見合った浜面の物は大きく、小さな絹旗の身体にはあまりに凶悪。
触ってもいないのに、先走りが漏れ出し射精したいと訴えているようだ。
「グロいです……それにそんなの私が壊されちゃいそうですよぉ……」
「グロいってオマエさぁ……その、優しくするから頼むよ」
「痛かったら承知しませんからね。窒素装甲を超発動させちゃいます」
「ど、どどうなるんだよそれ、そこは我慢してくれ」
「昔そんな映画ありましたよね。女のあそこで食いちぎられちゃうの。
エイリアンでもモチーフに使ってるっぽいですし。…………あ、少し小さくなってます」
行為の最中での怖い光景を想像して浜面のがちょっと萎える。
冗談を言っているが不安なのだろう、絹旗の笑みはわずかに固い。
しかし望んでいるのも確かなわけで。
「冗談ですってば……本当に大丈夫ですから。来て下さい浜面……」
「わかった」
絹旗はショーツを脱ぐと、恥ずかしげに身をくねらせる。
毛も生えていないそこは色素が薄く、すじめいた部分はうっすらと開いており
艶めくほどに濡れているそこは、パールピンクに輝いて見えた。
幼いながらも精一杯男を受け入れる準備ができているのだ。
笑顔の中に隠しきれていない不安を抱えつつ、浜面を迎え入れようとしている。
(俺がしっかりしないとな)
「ん、……子供扱いしないでくださいよ」
「わかってるって」
年下の少女を不安がらせないよう頬や頭を撫でると、憎まれ口を叩きながらも目を細めている。
「あっ……」
「いくぞ……脚をもう少し開いてくれ」
撫でながら勃起したモノを絹旗のそこへぴとりと触れさせる。
密着という言葉が生温いほどに近い距離が、零を通り抜けた。
「んんあぁぁぁぁっっ……!」
「絹旗の中すげぇきつい……ぞ……!」
わずかな隙間しかなかった膣口を、剛直が割り開いていく。
先っぽを入れただけで強く締められいきなり出してしまいそう。
「ちょうっ……い、たいじゃないですかぁ……」
「ごめんな。我慢してくれ」
「ううぅん……浜面のくせに、超許せません……」
柔らかいのに固さすら感じる膣へ腰を推し進めていく。
幾ら濡れていても流石にきつい。
身体が小さいのに加えて、引き締まった身体は膣回りも強いようだった。
「できるだけゆっくりするからさ」
「わかり、まし――あっむ、ん、ちゅっ……」
入れたまま前屈に折り曲げてキスをする。
そのまま頭を撫でたり、胸を触ったりして少しでも痛みから気をそらそうとする。
とはいえ腰を進めるのは止めれない。
絹旗に我慢を頼みつつも、浜面は我慢できていなかった。
それだけ絹旗に魅力を感じていて、欲求を抑えきれないのだ。
「はっっ、ちゅぅっ、ふっ、んぶっ……んぇ……」
(ヤバい……持たない……)
二律背反に囚われながら、早くも限界が近づいていた。
キスを好んでいるのか、絹旗は痛みの中でも舌を絡めてくる。
密着すればするほど、深く挿入されて苦しいだろうに、伸ばされた両腕で抱きしめようとしてくる。
そんな健気な絹旗の様子は可愛らしいし、浜面も積極的なキスが気持ちいい。
満たされた器は快感の圧力で破裂してしまう。
「あ……出る!」
「ふぇ……ひゃうんっ……!? んぅ……あ、あぁ…………超射精してます……」
慌てて腰を引き、腹の上にぶちまけてしまった。
二度目の射精は隔てるものがなく絹旗の肌を白濁したもので汚す。
びくんびくんと何度も震えて、白い肌に濁った白を上塗りしていく。
「すまん、気持ちよくて出ちまった」
「……浜面のザーメン、ゼリーみたいに超濃ゆいですね」
「ああ。目茶苦茶興奮してた。……その早かったな俺……」
「そうですね。超早漏ですよ」
「くっ、ぅぅうぅ……情けない……」
一分も立たずの射精に浜面はがくっと頭を下げる。
リードしようと思っていた矢先のこれはなんともショックだ。
「……いいですって。初めてなんですから。まだしないんですか?」
しかし告げられたのは暖かな言葉だった。
「えっ……いやだって、絹旗が辛いだろ」
「そりゃあ痛いですよ。けれど浜面が超落ち込んだ顔しているほうが嫌です。
浜面は私とセックスしているんですよ? そんなの許せるわけないでしょう」
「あっ……」
思わず声が出た。
それはそうだ。
もしも絹旗に行為後落ち込まれたら、浜面だって耐えられない。
難しくとも満足してほしい。
浜面は絹旗を見くびっていたのかもしれない。
幼くとも、目の前の少女がこれ以上ないほど女だということを、わかっていなかった。
「悪かった。俺もそんな風に終わりたくない。もう一度いいか?」
「いいですよ。きてください。私に満足しないと超許しませんから」
「……こういうのも変かもしんないけど、お前すげぇいい女だよ」
「今更気づいたんですか。本当に、浜面は超オロカモノですね」
絹旗が浜面を迎え入れようと、しどけなく足を開く。
「きゃっ……」
絹旗の足を抱えこむように浜面はのしかかった。
俗にいうM字開脚の形になっていて、幼くも性交の残滓を残すそこが開かれている。
「腰動かしてもいいか?」
「はいっ、やりたいようにどうぞ。……ん、はぁ、あっ! うっ、ぅあぁっ! んっくぅっ!」
挿入し、先端が子宮口に当たるほど深く入り、浅い所まで引かれて、また突く。
ぐじゅぐじゅと体液が混ざり合う。
(ぅ、あっはっあぅん……入ってます……それに、さっきよりも超激しいです……)
それほど速くはないが、遠慮の無い腰の動きでじくじくとした痛みがある。
折りたたまれた自分の脚と浜面の体重で重みを感じる。
行為に慣れていないため、無理矢理体内を押し開かれているようにも感じる。
身体の内も外も圧迫感でいっぱいになっている。
けれどもそれが嬉しかった。
痛みよりもずっと強く、触れ合いたいという気持ちが高まっていた。
こんなにも、触れ合う事に餓えていたとは自分でも気付いていなかったのだ。
「浜面……もっと……もっと、激しくても大丈夫ですから……私のおまんこをぐちゃぐちゃにしてください……!」
叫び、自分のいやらしい言葉にゾクゾクと身を震わせる。
「……そんな事言われたら、ホントに無茶苦茶やっちまいたくなるだろうがっ」
「ひっ、はっ……あぁっ! んっ、あぁぁ!」
浜面が更に速度を上げて抽挿を繰り返した。
ごちゅ、ちゅくっ、ちゅちゅっ、くちゅる。
狭隘な膣壁から肉棒が濡れ擦れる音を鳴らす。
身体の反射というには、絹旗はたっぷりと濡れそぼっている。
「あっ……なんだか、うぅん、超痛くなくなって、はぁぅっ……きました」
「そうなのか?」
その代わりにじんじんとした痺れのようなものが、全身に広がりつつあった。
「ん、あぁっっ……それ、少しいいです……」
浜面が前後だけではなく、腰で掻き回すように動かしてくると、また違う所が
触れ合って刺激されて、声に甘さが混じりつつある。
涙はまだ流れているが、痛みで顰められていた眉は緩んできており表情も苦痛の色が薄い。
「きゃっ……あっ……? 浜面……? あぅ、んんんっ……」
浜面が絹旗を抱き上げると、対面座位の姿勢となったまま繋がった。
体重がかかって子宮まで突き上げられても、快感のほうが勝りつつある。
「抱っこなんかして、はぁ……子供扱い……しないでくださいよぉ……」
「してねえって、ほら」
「あ、んっぷ……んぁ……んむぅ……んちゅ、ろっ……」
唇と舌でもまた繋がりあう。
お互いの快楽を送りあうかのように深いところで粘膜を絡ませあう。
汗まみれの肌が溶け合い、混ざり合っていく感覚。
求めて、求められているのがお互いに伝わっていくよう。
(超溺れちゃいそうです……いえ、もう駄目です。こんなの知っちゃったら私……ハマっちゃいますよぉ……)
「んんっ、はぁ、んっくっうぅっ……っく、はぁっはぁっ……くぁ、はまづらぁ……」
唇が離れて唾液の糸が垂れ落ちる。
そのまま折れよとばかりに強く抱きしめられて、苦しげな、でも嬉しそうな息を吐く。
「もう出るから……!」
「はい、私も、もう……おかしくなっちゃいそうですっ……!」
絹旗も強く抱擁を返した。
抱きしめあったまま、結合部だけが揺らされ快楽を貪りあう。
「いくっ!」
「びくびくして……ぅぁあっ! んぅぅつっ……!」
浜面のモノが心臓のように鼓動を打ち、膨れ上がった感覚と共に奔流が放たれた。
びゅくびゅくとモノが脈動して、灼くように熱い精液が注がれていく。
腹の内から頭の中、いやもっと上のほうまで、貫くような快感に襲われた。
背筋が勝手にしなって、ぎゅぅっと身体の端々に力が入る。
なのに、捉え処のない痺れにも似た感覚ばかりが五感を満たしていく。
壁も天井も浜面も、視界の中がモノクロームに薄れて真っ白に消えていく。
(あっ、いや……)
何も見えなくなるのが怖くて、すがりつくように抱きしめて。
ただ浜面の感覚だけを頼りにして茫洋の海を漂っていく。
けれど精が打ち出される度、押し寄せてくる快感の津波に絹旗の意識は流されていって。
「ぁ……」
絹旗は、胸を吸われた時よりもずっと深い絶頂を迎え、浜面の腕の中で気を失ってしまった。
「……ぃ」
「…………んぅ」
呼び声。
「おい、おいってば絹旗」
「あ……浜面……私、どうしてました……?」
千々に乱れた心が集まっていき、霧が取り払われた。
意識が無かったのは、ほんの数十秒ぐらいだろう。
挿入はされていないが、まだ抱きしめられたままだ。
「気を失ってたみたいだ。すまん、やりすぎちまった」
「いえ……なんだかおかしくなっちゃいました……少し、怖かったです……」
「本当に大丈夫なのか?」
「はい……ぎゅってしててほしいです……」
言葉に応じて、文字通り包み込むように抱きしめられる。
心配げな浜面の顔を見ると安心してきて、頬ずりをしながら絹旗も腕を回す。
身体には痺れが残っていて、頭はぼんやりとしていて、不思議と甘えたくなっている。
しばしそのままでいたあと、絹旗が胸の中でもぞもぞと動き浜面を見上げた。
「浜面……超やばいですよ……私、ハマっちゃいそうです……」
うっすらと微笑む表情は酷く官能的。
愛し合い、二人で気持ちよくなれる幸せはさながら麻薬のよう。
心も肉もドロドロに融けて溺れる感覚に依存してしまいそうだ。
「ああ。俺もやばい。こうしてるだけですげぇ気持ちいいし幸せかも」
「私もです……」
「エロい事してなくても、こうやって絹旗を抱きしめてるだけで、嬉しいし満足だ」
「……とかいって、お腹に超固くなってるのが当たってますよ」
「若いからなぁ」
とぼけた顔の浜面を見て絹旗が楽しそうに笑い、少しの間の後、俯き逡巡しながらも問いかけた。
「……あのですね、もう一度聞きたい言葉があるんですが」
「何をだ」
「……ええとですね。超好意を表してる表現的なものでして……」
「…………? あぁ、絹旗はエロいとかか」
「どういう好意か!」
「うぉっ」
がうっと噛み付きそうな顔で睨み、一瞬窒素装甲を発動してしまいそうになる。
「嘘々。なんつーかな、流された感があるし、エロい事したのも理由だけどさ、俺は絹旗が好きだよ」
「あ、ありがとうございます…………」
(どうしましょう。超嬉しかったりしますよぉ……)
また俯く。
にやけてしまっているのを恥ずかしくて隠す。
「俺ばっかりじゃなくて、絹旗も言ってくれよ」
「ふぇ……!?」
「返事聞きたい」
「は、い、ええとです、ね……んぅっ! 触られると……いいづ、らいです、から……!」
急かすように腰やお尻の辺りを撫で回された。
絶頂して数分しか経ってない身体は敏感過ぎて、言葉すら覚束なくなる。
「わた、しも……ですね、浜面の事が……すき、です……」
「――――――うん……すっげぇ嬉しい。もう一回聞かせてくれ」
「浜面……大好きです……」
「あーもうお前目茶苦茶可愛いなこんちくしょう!」
「きゃっ!?」
押し倒してきた浜面が獣のごとき眼光を光らせる。
「まだヤリたい。我慢できねぇ」
「……だ、だめですよ。みんな帰ってきちゃいますって」
「じゃあラブホだラブホ。エロい事に使えるカラオケでもいい!」
「え、ええ……? カラオケはともかくラブホは流石に私ぐらいの年では超入れないのでは―――」
「なんでもいい。どうにかする」
「こういう時は超頼もしいんですねぇ……」
「任せろ!」
否定気味の絹旗だったが、太腿を擦り合わせるようにして先程の快感を思い返していた。
浜面の熱にあてられて、絹旗もまた欲しくなってしまう。
(浜面の事言えませんね。私も超ケダモノになってます……)
自嘲しつつも止められないし、止める気がないのはしょうがないわけで。
「もーわかりましたから。まず着替えましょう」
「おう!」
そそくさと新しい下着に着替えたりして、後始末もそこそこに、マンションから出て行く。
その時、手を繋いだまま足早に歩いていく様子を、アイテムの仲間達に目撃されていて
後日、裁判のごとき詰問会が開かれる事になるのはまた別のお話だった。