「は、あ、あ、……」息を吐きながら、御坂は腰を沈めていく。ぐちゃぐちゃとぬかるみを混ぜるような音が、彼の思考をハックする。
まず熱い。皮膚よりも、ずっと高温だ。熱い。溶けていく。それでいて、安心感があった。触れて確認するにやはり細い腰。けれども、包まれている感覚はどこまでも広がっているようだった。すでに自身の芯も溶け出しているんじゃないかと思う。しかし、感覚は依然として鋭い。
御坂は根本まで収めると、倒れ込んでくる。
青年はソファの背もたれについている。御坂を抱きしめた。体温が腕の中にある。日光浴しているみたいだ、と彼は思う。
彼女の呼吸は乱れている。
「ごめん、ちょっと変」
「痛む?」
「そうじゃなくて……」言葉の代わりに締めつけるものがあった。棒の表面にざわり絡みつく。
内部のくすぐったさと、耳元で熱く乱れている吐息に、彼はみじろぎした。
「あっ」
甘い、声。
――この声だ、と青年は思う。
昨日までとは違う。絡みつきかたも、声の調子も。また聞きたくて、青年はわずかな隙間が許す限りの浅さで、彼女の体を揺らした。その度に彼女は甘い声をあげる。
「あっ、あっ、は――ちょっと、待って」
左手で軽い体を支えながら、汗をかいている彼女の頬に手を添える。火照った頬には、自分が感じていることに対する戸惑いが混じっていた。彼女の髪は明るく色素が薄い。今日は髪を下ろしているが、額の髪の片方をかきあげた。手ではなくヘアピンだが、昨日と同じ髪型。
昨日との連続性を感じた。
「な、に……?」
振動の中で、問うように潤んだ目を向けてくる。
今だけは、そこに失恋の影はない。快楽とそれに対する戸惑いに蕩けていた。
「なんでもないよ」
彼はグッと彼女を抱きしめる。
御坂もそれに応える。浮いていた背中とソファの間を埋めるように、細い腕が入り込んで、吸いついてくる。豊満とはいえないが、それでもわずかな柔らかさが彼を楽しませる。固くなった先端が二人の胸の間で擦れていた。互いの鼓動が電気刺激となって、ピリピリと伝わる。
「ほんと、変なの、よ」
嗜虐芯に火がついた。
「待って、はむ、なんか変だから」
「いいんだよ」
彼は動くスピードを上げる。
「ん、ん、ん、うぁ、あ、は、」
目を閉じながら、彼女は吐息を吐く。一音節聞くごとに、愛しさが込み上げてきた。この子の奏者が今や自分だった。ひとりの女の子を自由にしている――そんな考えがちらつき、いや人間はそんな簡単なものじゃないはずだ、と囁く誰かの声がする。
――だが、それがどうした。
今の彼は強気だった。何も恐れることなどなかった。なぜならこうして無限ともいえる広がりの、熱い柔らかさに包まれているからだ。圧倒的なまでの安心感、充足感が腕の中にあって、少女の形をしている。矛盾しているし、卑怯な話かもしれない。だがそれすらも、些事に思えた。
ふと、この子となら生きていけるかもしれないと思いつく。天啓だった。上下する中で、その先のことが閃いた。ちらちらと、未来の想像がチラつく。たとえば、彼女と共に街を歩いたり、何かを食べたり、朝起きたら彼女がいたというような散髪的な妄想だ。
――生きてえな、と彼は思った。
死にてえが口癖だった自分が、そんなことを思うとは思えなかった。
自分の鼓動が莫迦みたいに大きく聞こえたが、それはひょっとすると彼女のものと重なって聞こえたのかもしれない。
「ああ、とてもいい」
「わたしも、ん、いい、かも」
適切な言葉を得たかのように彼女は断言をする。
快楽の波は次第に大きくなっていく。高まっていく。後退する側から吸いついてくる彼女の内側にいじらしさと、愚直に前進する自分を受け止めてくれる優しさに、彼は絆されていく。彼は、貪欲にその先を求めていた。更に先に進みたい。
彼女の先に未来があると思った。
それは確信だった。
頭の奥底が爆ぜる。
「あっ」
快楽に溶け出した全身が、御坂の中に発射された。
ほどなくして御坂の体が震え出す。
「ぅああぁあ」
すべてが吸い上げられるようだった。
互いを抱きしめる力が強くなる。
・・・♪・・・
その後、彼らは少し話をした。御坂はシャワーを借り、彼の服を借りて帰っていった。
青年は最中に妄想した未来の話をしなかった。
ただ、夜景の中に見える