フェルシーの心はもう、半ば折れてしまっている。
便器の中に頭を突っ込まれた事もあるが、必要以上に浣腸の回数を重ねた事で身心共に疲弊していた。汚れた身体を洗う為に一度、シャワールームで口枷とラバーフェイスを外される。喉まで犯していたディルドを抜く時、フェルシーは生理的現象として噎せた。食道を圧迫される事で気道も押し潰されていた。取り込める酸素は少量で、トイレでミオリネに攻められている時も彼女の意識は徐々に遠のいていた。新鮮な空気を取り込む為に噎せつつも大きく息を吸い込んだ。
口から唾液がだらしなく垂れる。
彼女の瞳には、もう、光が失われていた。
あー、とか、うー、とか、俯き呟く彼女の姿を見て、スレッタは、ミオリネがトイレの中で結構、酷い目に合わせた事を察する。とりあえずスレッタは、彼女の汚れを落とす為に頭から洗い始める。こうして椅子に座らせたフェルシーの髪を洗っていると昔の事を思い出す。水星に居た頃、メリーと二人で風呂に入る時によく頭を洗ってくれた。ワシャワシャっと泡を立てる。無気力になったフェルシーは抵抗せず、背中に脇の下とスレッタの為すがままにされている。
フェルシーの育ちは良い。彼女の首筋に鼻先を近付けると良い匂いがする。
マリアンヌ、メリーの肢体しか知らなかったスレッタからするとフェルシーの身体は極上の味がする。
愛情という調味料がなければ、今すぐにでも靡いてしまいそうな程に綺麗で美しかった。にも関わらず、情欲の味を知り、自らの意思で身を堕とす彼女は、とても惹かれる。言ってしまえば、メリーによって歪められたスレッタの性癖にフェルシーは合致していた。ミオリネの然り、自分だけの色に相手を染める事が、スレッタは舌舐め摺りする程に好きなのだ。
壊したい訳ではない、虐めたい訳でもない。
スレッタがメリーの事を乱暴に扱うのは、性欲処理の道具として扱われてる時の方が反応が良いからだ。スレッタには、背徳感に欲情する性癖はない。互いを求め合って、気持ち良く性欲を満たすのが一番、興奮する。本音を言えば、愛する人とは四六時中ずっと繋がっていたい。メリーは性を貪るだけの退廃的なセックスを好むのに対して、スレッタは、おはようからおやすみまで、なんなら寝食をしている時もずっと繋がり続けるような爛れた性生活を営むのが好きだ。
この微妙な性癖の擦れ違いに対して、水星に居た時は、なんとなく妥協して、互いに相手が望む行為に寄り添うことで性欲を満たしている。
背面座位で、退屈な再放送の番組を見ている時がスレッタにとって一番、幸せな時間だった。
スレッタは、フェルシーの背中に陰茎を押し付けながら抱き締める。
ビクリと身体を強張らせる愛犬の後頭部に顔を埋めて、すんすんと匂いを嗅いだ。シャンプーで洗ったばかりな上に濡れているのでよくわからない。だけどスレッタは愛犬のお腹に両手を添えて、子宮のある付近を優しく撫でる。此処を、軽く押してマッサージをして上げると、メリーの目はとろんと蕩けて股下から愛液が溢れ出す。滑りけのある透明の液体、口に含むと少ししょっぱい癖になる味。彼女の愛液を陰茎に塗り付け、準備の整った彼女の膣に陰茎を挿し入れる。相手が酸欠になるくらいギュウッと力強く抱き締めてやれば、キュンキュンと膣が締まる。そのまま小一時間、腰も振らず、射精まで達するのが彼女の好きなセックスのひとつだった。長く楽しみたいのだ。長く感じて欲しいのだ。時間を共にし、感覚を共有したいのだ。メリーもまた、特に意味もなく、スレッタの陰茎を膣に収めているのが好きだった。
あの時の事を思い出し、軽く腰を振る。
勃起した陰茎の裏筋をフェルシーの綺麗な肌に擦り付ける。背骨のゴツゴツとした箇所が、少し物足りないけど、スレッタの性感帯を刺激した。ふうっと息を零す。先端から溢れ出す我慢汁、少し精液が混じってしまったのか白く濁っている。まだだ、まだ。自分は射精する訳にはいかないのだ。
鈴口から溢れる我慢汁を、指先に掬い取り、少し正気を取り戻し、俯き、目を見開いて、強張った笑みを浮かべる愛犬の口元に指先を添える。
最初、愛犬は、何か、葛藤するように動かなかった。
だからスレッタは、お尻の穴にキュッと力を入れて、勃起した陰茎を持ち上げてから、彼女の背中をペタンと裏筋で叩いた。ビクリと反応した愛犬は、大きな口を開いて、我慢汁に塗れた御主人様の指を咥え込んだ。
「偉いですよ、賢いです」
彼女の背中に優しくもたれかかり、人差し指と中指で彼女の舌を弄んだ。
フェルシーの半ば、壊れたような笑みは、スレッタからはとても嬉しそうに感じられた。
白い湯気がシャワー室を覆う中、微かに瞳の光を取り戻した愛犬をスレッタは俯せにする。
お尻を大きく突き出させる。脇に置いた洗面器には、アナルビーズにローション。とりあえず人差し指を口に咥えて、愛犬の綺麗に窄んだお尻の穴を指先に押し付ける。随分と解れているようで、すぐ押し込むことができた。お尻の穴に抵抗はない。メリーに舐められた時は勃起が収まらなくなるほど気持ち良かったし、メリーのお尻の穴は飽きる程に舐めている。スレッタは、お尻の穴を排泄口としてではなく、性感帯のひとつとして理解していた。少なくとも、メリーは排泄する度に甘イキしてることをスレッタは知っている。
故にスレッタは、綺麗に洗ったお尻の穴に口を付ける。
尖らせた舌先で緩くなった穴を突いて、押し広げて中まで入れる。メリーの舌は短いので、お尻の中に入れることは出来ない。未知の感覚にフェルシーは無意識に腰を引こうとしたが、御主人様の腕力が彼女の腰をがっしりと掴んで離さない。お尻の穴を食べられている。羞恥と擽ったい感覚に身悶えし、フェルシーは静かに涙を零す。人間の尊厳は地の底も等しい。心は既に折れている、というよりも折れてしまいたかった。ラバーマスクで顔を覆い隠し、フェルシーとしてではなく、一匹の犬になりたかった。
お尻の穴の奥まで解し終えて、スレッタは彼女のお尻の穴から口を離す。
洗面器の中に入れてあるアナルビーズ、ローションで濡らしてヒクヒクと疼くアナルに押し付ける。
フェルシーはギュッと拳を握って目を瞑る。力を入れるよりも抜いた方が苦痛が少ないのは分かっていたので「フーッ、フーッ!」と犬がするように必死に息を吐いた。卵ほどもあるサイズのビーズに、ぐっとお尻の穴を押し広げられる。自分で入れる時とは、また別の恐怖がある。スレッタは、お尻の穴の抵抗感に「幼い時の事を思い出します」と力を緩めたり、押し込んだりする。ずっと力を入れっぱなしにすることもできなければ、緊張し続けることもできない。フェルシーが無意識に緊張を解いた瞬間、ズリュッとビーズが中まで押し込まれた。
身体の中の異物感、目に涙を溜めながらパクパクとする愛犬にスレッタは、二個目も一気に押し込んだ。
二度目ともなると抵抗感も少ない。
奥の更に奥まで押し込まれた未知の領域にフェルシーの頭は真っ白になり、一瞬、自身に何が起きたのか理解できない。一度、通すことが出来れば、二度目も大丈夫。二度目が大丈夫であれば、当然、三度目も大丈夫。スレッタの配慮は一度目を通した時点で消えている。二度目を通した時点で万が一の可能性も排除した。故にスレッタは、愛犬が力を緩めたタイミングを見計らって三個目以降も次々と押し込んだ。腸壁を押し広げる分には問題ない。だけどS状結腸の更に先までは考えが及ばなかったようである。感覚的に届いてはいけない場所まで押し広れられる感覚にもフェルシーは顔を青褪めさせる。
異物感に嗚咽を零す中、それでも彼女は計六個もある玉を全てお尻の中に収め切った。
フーッ! と荒い息を吐いて、奥歯を噛み締める。
「これならラバースーツを着せた後に入れても大丈夫そうですね」
そんな言葉と一緒にお腹の中に収めた卵程のサイズの玉が六個、一気に引き抜かれる。
「お゛ッ!」という汚らしい悲鳴、フェルシーは腸ごと引き抜かれた感覚に目の前でパチパチと火花が散った。ビクビクと痙攣する全身に意識が持っていかれて、気付いた時には床の上に崩れ落ちている。お尻の穴が閉じていないのがわかる。穴の中にまで流れ込んでくる空気の感覚に、とりあえず脱腸まではしていない事を理解した。
その情けない姿を前にスレッタは、好奇心のまま、人差し指の指先で愛犬の腸壁を軽く引っ掻いた。
ビクッと身を震わせる姿が可愛かった。
◆
気付いた時には、シャワー室の外に居てラバースーツを着せられようとしている。
フェルシーは、既にもう気力が尽きてしまっていた。背中から股下まで大きく開いたラバースーツに右足を通し、左足も入れる。太腿まで締め付けられる感覚に、包まれる。というよりも束縛される意識の方が強かった。裸体を晒す以上に露になるボディラインに気恥ずかしく思える。お尻の穴に、細い何かが当たる感覚。卵程のサイズの玉を入れることができる程、解された穴は容易く受け入れる。長さは括約筋を貫通する程度、これがラバースーツを着たまま、お尻の穴で楽しむ為のものである事を本能的に理解する。戸惑い半分、残り半分は受け入れてしまっている。ほんの数日前までは考えられない心境の変化、御主人様に誘われるまま両腕を通す。指を入れる穴はなく、腕の先端は鍋掴みのようになっている。ジーッと背中のチャックが上げられる。サイズは小さめのようで、少し息苦しい。首の裏まで上げられて、カチッと何かが掛けられる。恐らく、南京錠。もう自分の意思で脱ぐことも出来ない。視界の端に映るのは、目隠しと喉を犯す口枷、手足を縛るベルトの拘束具。六個の玉が付いた尻尾付きのアナルビーズ。最後に犬耳のカチューシャをジッと見て、フェルシーは、自分が人ではない。犬になるのだと知る。
震える声で、御主人様に問い掛ける。
「……何時まで、っすか?」
スレッタは笑顔で返す。
「休みは日曜日まであります」
今日は金曜日、フェルシーは自分が心を手放すまでの時間を考える。
そして、ちゃんと自分が戻って来れるかどうかを考えて、何も説明せずに寮を出てきてしまった事を今更になって後悔する。
だけどもう後戻りをするには、踏み込み過ぎてしまっている。
最後まで続けたい。好奇心を伴う性欲に頭を縛られたフェルシーに選択の余地などなかった。