※この作品はR-18です。

転生したら、百合の間に挟まる女になってた件。   作:匿名

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2.ガール・ミーツ・ガール

『ホテルエアリアル……』

 

 呟かれる言葉は大層、悲壮感に満ち溢れている。

 だけど気にすることはない。だって、これはエアリアルの中の人ことエリクトが、僕こと私がコクピットの中に入る度に揶揄う謳い文句のようなものなのだ。実際問題、私とスレッタの関係は、スレッタ経由で筒抜けである。『君達って何時になったら籍を入れるの?』と溜息混じりの冗談を言われるのも何時も通りだ。

 案外、私は、エリクト程ではないけども、データストームに耐性を持っているので、スコア5程度なら普通に耐え切れたりする。

 ぶっちゃけた話、データストーム耐性だけに限れば、パーメットお化けであるエリクトのリプリチャイルドであるスレッタよりも高かったりする。まあ私にはモビルスーツを操縦するセンスがないので結局、スレッタがエアリアルを操縦した方が良いんだけど。宝の持ち腐れというやつである。

 精々、耳年増のエリクトと会話する程度の事でしか活用法がない。

 だけどまあ近頃、スレッタはエリクトの声を聞き取る事が難しくなってきたようで、愚痴や不満を語る相手としては適任だ。見た目以上に精神年齢も高く、会話に飢えているので相談相手としては丁度良かった。常日頃から私とスレッタの性事情を聞かされて辟易するエリクトとしても私と話している時の方が気晴らしになるようだ。

 スレッタの精液を食パンに塗るジャム代わりにしてるのとかも知られてるけど『スレッタの惚気話と変態娘のまともな会話、果たしてどっちがましかな?』と遠い目で呟いていた。お労しい。

 ちなみに私は、スレッタと一緒に居る時よりもエリクトと一緒に居る時の方が安心する。

 

『……それ、絶対にスレッタの前で言っちゃ駄目だよ?』

 

 へーき、へーき。スレッタには、勝気で可愛いお嫁さんができるの知ってるから。

 まだ恋心も知る前に死んだエリクトの方が地雷がなくて安心できる。ガンダム世界の女性なんて厄ネタを抱えているか、地雷を敷き詰めているかの二択である。その点、エリクトは存在そのものが見えている厄ネタだ。色眼鏡なしに接することができるし、軽口を叩き合えるエリクトとの関係は好きだった。『もしかして、アンヌってロリコンなの?』と私の愛称のひとつを口にする彼女に「24歳児が何を言ってるの?」とスレッタには見せない笑顔で肩を揺らす。

 複雑そうに眉間に皺を寄せるエリクトに触れることは出来ないけど、彼女の柔らかそうな頬を両手で支える仕草をする。

 

「時代は、おねロリでは?」

『ねえ、アンヌの知識って何処から仕入れてるの?』

 

 訝しげに問うエリクトに「内緒だよ」と私は澄まし顔で答えてやる。

 私、僕の前世での初恋は、近所に住んでいた大学生のお姉さんでした。

 

◇

 

 アスティカシア高等専門学園へ向かう道中。エアリアルのコクピットの中で、私はスレッタの足の間に挟まる形で彼女の懐に収まっている。エルノアもといプロスペラが特別にあしらってくれた二人乗り用の操縦席、食料などの小物類を周囲に漂わせながらスレッタが背中越しに私の事を抱き締める。そして私は懐に収まるエリクトを抱き寄せる仕草を取る。

 エリクトは、少し難しそうな顔をしている。彼女の母親であるプロスペラの目的が、復讐と、娘のエリクトを取り戻す為の戦いにある事を知っている為だ。『それだけじゃないんだけど?』とエリクトが視線だけで私に訴えかけてくるけど、私の知ったこちゃあない。詳しい事は知らないけど、エリクトの生きられる場所を作るのは私としても同意だし、その為にパーメットスコアを引き上げる事が必要であれば、協力を惜しまないつもりだ。

 

『どうしてこうなった?』

 

 と頭を抱えるエリクトの事を優しく抱き寄せる。

 今のスレッタにはまだエリクトの姿を明確に見ることは出来ない、けど。エリクトの感情を感じ取ることは出来た。戸惑いと困惑を抱えるエアリアルにスレッタは「大丈夫です。みんな、一緒です。エアリアルの登録も済ませています」と優しく語り掛ける。『全然、大丈夫じゃない』とエリクトは項垂れた。ニッコニコの私にニッコニコのスレッタ、そして難しい顔で溜息を零すお姉ちゃん。やっぱりエリクトは可愛いなあ、と私は心の内で語り掛ける。年上の女の子の困った顔を見るのが好きだ。本当に困っている訳ではなくて、ちょっと困らせる感じの。『良い性格してるよ』とエリクトが溜息を一緒に吐き捨てる。

 エリクトは、私とスレッタが一緒になるのを望んでいる。

 別にスレッタに好意がない訳ではないのだけど、やっぱり原作通りに事を進めた方が良いに決まってる。

 

「メリーさん、やっぱり……駄目ですか?」

 

 縋る様な声。より一層、強く抱き寄せられる。

 

『ぼくは構わないけど? 例え、ホテルエアリアルの誹りを受ける事になったとしても……!』

 

 台詞の後半に、若干の葛藤を滲ませるエリクトに今度は私が溜息を零す。

 姉妹揃って頭がピンク色である。

 

「学園寮に入ってからって約束だよね?」

 

 スレッタを色情魔にした責任くらいは取るつもりでいる。

 

「じゃ、じゃあ……キス、してください!」

「……やだ」

「デートしてください! やりたいことリスト、いっぱい作って来ました!」

「勝手に埋めれば良くない?」

「一緒に埋めましょう!!」

 

 何時もよりも図々しい気がする、と懐に収まる25歳児を見つめる。

 懐のエリクトは「してやったり」と卑しい笑みを浮かべていた。スレッタとは友達で、肉体関係を持っていたのも娯楽のない水星での事。もっと電子機器の娯楽が普及していれば、あそこまで性行為に嵌ることもなかったと思っている。スレッタとは、性行為もする友達って感覚が強いし、そうあるべきだ。スレッタが、確か、ミオ……ミオミオ? という女の子と婚約した際には、エリクトに慰めて貰うのだ。

『あれ? ぼくが最大の障壁だったりする?』と私の全てを読み取れる訳ではない勘の良い合法メスガキが首を傾げたので、わしゃわしゃっと彼女のお腹を撫で回す仕草をしてやった。

 エリクトがケラケラと擽ったそうに笑う傍らで、モニター越しに外の様子を眺めていたスレッタが「あれって?」と困惑した声を上げる。

 

「人ッ!?」

 

 水星では、作業中の事故は勿論、日常的に機器の故障が発生する。

 その為、ほんの少しの躊躇で人は簡単に死んでしまうのだ。逡巡する間もなく、スレッタはエアリアルを輸送する船の船長に映像を通達、スタッフの制止を振り切ってエアリアルを起動。機体を固定する機器を破壊し、格納庫から扉の外へと身を乗り出す。水星だとスレッタは多くの命を預かる立場にあった。中には、スレッタの判断でなくなった人もいる。だから彼女は、決断が早く、迷うよりも先に行動する。逃げれば一つ、進めば二つ。そのプロスペラの教えは、水星という過酷な環境で人が存続し続ける為に必要なものだった。

 スレッタの足の隙間に収まっていた私のシートがガクンと下がり、私の頭が丁度、スレッタの股間の隙間に収まる位置に調整される。これは、スレッタの操縦を邪魔しないようにする為の配慮、私の懐に収まるエリクトの表情も真面目なものへと豹変し、そのギャップに私の胸もときめくのだ。普段、だらしなく見える先輩が、修羅場で凛々しくなるのって素敵だよね。

 宇宙の無重力空間に放り出された一人の少女、水星なら何時、太陽に焼かれてもおかしくない。

 実際、意図せず船外に放り出されて死んだ人も居る。

 

 全身火傷で肌が爛れた仲間の姿を見たスレッタは、初めて私に乱暴を働いた。

 暴力は振るわなかったけど、それに近しいことをされたのは覚えている。髪を掴まれて、根本まで陰茎を喉に突っ込まれた時の私は精液と一緒に吐瀉物を撒き散らしたけど、だけど、スレッタは容赦をしてくれずに何度も気絶と覚醒を繰り返すほど激しく犯された。それだけ、あの時の事はスレッタのトラウマとして刻まれている。私が、初めて、絶頂を体験した時もこの時で、普段のスレッタは、優しいから、欲求不満が溜まる毎日を送る羽目になった。

 欲望を抑えない方が、私が良い声を上げていると気付いてからは時折、意識して乱暴してくれるようになったけど。

 やっぱりスレッタ的には、愛し合いたいようだった。

 

 兎も角、スレッタは一目散に宇宙空間に放流する少女を救出する。

 迅速な救助作業は、スレッタの十八番。繊細な機体コントロールで抵抗する漂流者を固定し──ここでエリクトは違和感を感じ取った──スレッタは外に出て、要救助者を半ば力尽くでコクピットの中に引き込んだ。錯乱状態にある相手の救助も経験した事もあるスレッタに、あんなか弱い抵抗は意味がない。暴発する可能性のあるバックパックを迅速に切り離す手際も手慣れたものだ。

 そしてコクピットに保護された彼女は「大丈夫ですか!?」と心配するスレッタとは裏腹に頭突きをかました。

 

「邪魔しないでよ、もう少しで脱出できたのに! あんたのせいで台無し! 責任、取ってよね!」

 

 彼女の言葉からエリクトは、漂流していた彼女の事情を察する。

 

「は、はい」

 

 しかし銀髪の彼女の言い分も知らず、困惑しつつも二つ返事で承諾するスレッタにエリクトは不機嫌な顔を浮かべる。お可愛いこと。

 スレッタの股間に収まる私は、やっぱり理不尽だよねえ。と口には出さず、クスクスと肩を揺らす。

 

 典型的なボーイ・ミーツ・ガールの応用形、ここからスレッタの物語は始まるのだ。

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