※この作品はR-18です。

ディアボロモンの虐襲 ―電牢の竜戦士―   作:キバガミ

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デジタルワールドから帰還し、平和な日常生活を送っていた選ばれし子供たち。
しかし、突如ネットワーク上に未知のデジタマが出現するのだった――。


電脳の凶獣

「やれッッ!! ウォーグレイモンッ!!」

 

 ゴーグルを付けた少年の言葉に呼応するように、金色の竜戦士は悪魔のような電脳生物に突撃する。

 白と灰の入り混じった電脳空間を駆ける竜は一本の稲妻の如し。

 

 ウォーグレイモンの眼中にいるのは血のような長い爪を揺らし、

ぎょろりと感情のない瞳を動かす正体不明の究極体デジモン、ディアボロモン。

 

 突如、現実世界(リアルワールド)のネットワーク上に謎のデジタマが出現し、

生まれたデジモンは存在するデータを食い尽くしながら肥大化していった。

 

 未知のデジモンの成長速度は凄まじく、一日と経たずに幼年期から究極体――

ディアボロモンへと進化してしまい、ネットワーク上に大混乱を引き起こし、

それは現実世界(リアルワールド)にも普及し、甚大な被害をもたらそうとしていた。

 

 それを食い止める為に今、選ばれし子供達とそのパートナーデジモンは懸命に戦っているのだ。

 

「…………!」

 

 電脳の悪魔は竜弾を静かに受け入れる筈もなく、伸縮自在の腕を振るう。

 

 際限が無いのでないかという程に伸び続けて

鞭打の様ににウォーグレイモンへと振るわれ、

彼の命を無慈悲に刈り取ろうとする。

 

「あ、あきまへん……!」

 

 弱々しく地面に横たわっているテントモンが叫ぶ。

 

 あの技でなすすべもなく彼はやられ、

戦闘不能にまで追いやられてしまったのだ。

 

「…………グッ!! アァァァァアァァァッッ!!」

 

 ウォーグレイモンは伸ばされた腕に対し、超合金クロンデジゾイド製の爪形武装、

ドラゴンキラーを大きく横に凪いで攻撃を弾くが、どういう強度をしているのか

ディアボロモンの爪が砕け散る事はなく、むしろ、ドラゴンキラーが接続されている

篭手の方が耐えきれずに破壊され、電子の海へと沈んでいく。

 

 しかし、その程度でウォーグレイモンの勢いは止まらない。

 

 武装が剥がれても尚、拳を強く握りしめると腕を大きく振り上げ、

渾身の力を込めてディアボロモンの頭部を殴りつけた。

 

「…………ッッ!?」

 

 その凄まじい衝撃で空気が波紋となって波打ち、

ディアボロモンの巨体はきりもみ回転しながら吹き飛んでいき、

白い電脳空間の壁にぶつかって爆発し、電子の澱が煙のように舞い上がる。

 

「トドメだッ! メタルガルルモン!!」

 

 メタルガルルモンのパートナーであり、選ばれし子供の一人、

石田ヤマトが電脳に映し出されたモニターから叫ぶと同時に

メタルガルルモンの全身の射出口が開き、冷凍ミサイルと言った

ありとあらゆる武装兵器をディアボロモンに向けて発射する。

 

 目を覆ってしまいそうな閃光と共に強烈な爆発が連鎖し、巨大な氷結晶が無数に花開く。

 いくら究極体デジモンと言えども、ここまでの集中砲火を受ければタダでは済まないだろう。

 

「やったか!?」

 

 その戦いを見届けたのは選ばれし子供たちの一人、八神太一。

 

 ずっと、パソコンから彼らの戦いを鼓舞し見守っていた彼は、

ディアボロモンを圧倒したウォーグレイモンとメタルガルルモンの姿に安堵する。

 

 これで、現実世界(リアルワールド)の被害を抑える事が出来た。

 これ以上、データを喰われて電子機器が暴走し、阿鼻叫喚する事は無いのだと。

 

「……マダダッ!!」

 

 ウォーグレイモンがそう叫ぶと、電子の塵で霧がかっていた水晶が割れ、

中からディアボロモンの腕が飛び出す。

 

「ガ、アァァァァッッ!?」

 

 突然のディアボロモンの奇襲に、ウォーグレイモンは回避しきる事が

出来ず、鋭い爪撃が脚に命中してしまう。

 

 ウォーグレイモンの脛当てが砕け散り、大きく体勢を崩しながら吹き飛ばされ、

敵と同じように電脳空間の壁に激突して夥しい量の塵を舞い上げる。

 

 ウォーグレイモンがどうなったのか、やられてしまったのか、

太一にはその様子を窺い知ることが出来ない。

 

「ウォーグレイモンッッ!? お、おい……!?」

 

 太一はパソコンに齧りつくようにして画面を揺らし、その光景を見つめる。

 

 しかし、荒々しくパソコンを扱ってしまったせいなのか、

突然画面が真っ青になってしまい、太一が何をしようが

うんともすんとも言わない。

 

「ど、どうなっちまったんだよこれ!?」

 

「何やってるんですか! 太一さん!!」

 

 お手洗いから帰ってきた光子郎が真っ青になりながら太一を突き飛ばし、

ブルースクリーンになってしまったパソコンを直そうとする。

 

「なんにもやってねぇよ!」

 

「パソコンに慣れてない人は、みんなそう言うんですよ!」

 

「大体、お前こそなんでこんな大事な時にトイレに行くんだよっ!!」

 

 年齢相応と言った、低次元な売り言葉に買い言葉が飛び交う。

 

 太一の指摘ももっともだったが、光子郎は異変が起きた時には真っ先に行動し、

この真夏の炎天下の中、太一の家まで全速力で走ってきていたのだ。

 

 水分を欲するのは至極当然で、麦茶を何杯もガブ飲みした彼が

トイレに行くのも時間の問題であり、自然の摂理。耐えろというのが酷な話である。

 

 もし、太一の言う通りにトイレを我慢し続けていたのならば、

光子郎の膀胱は無惨にも破裂していた事だろう。

 

「ダメです、完全にフリーズしてます……」

 

 光子郎がいくら頑張ってもパソコンの画面は戻る事なく、

やむを得ず彼は最終手段である強制終了を選び、電源を押した。

 

 このパソコンはいわば、デジタルワールドと現実世界(リアルワールド)の

ネットワークとの中継地点であり、それが途絶えたウォーグレイモン達が今、

どういう状況になっているか――二人は想像すらしたくなかった。

 

「ウォー……グレイモン……」

 

 光子郎がパソコンを直すまでの間、太一が出来る事と言えば、

陽炎揺らめく街と蒼い空を窓越しに見つめる事だけだった――。




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