シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
それはそれとして中盤戦でございます。ここで思わぬ展開が待ってるかも?
《木場祐斗》
樹下君が廃教会に走り出し、それを妨害しようとするはぐれ悪魔祓いが数人は出てくる。
だが甘い。僕達だってただ突っ立っているでくの坊というわけではない。
素早く割って入ると、僕は魔剣を創り出して相手の一人を切り裂く。
神器、
強度や出力には限度があるし、確固たるイメージや神器の習熟がなければ性能も更に低くなる。だけど多種多様な手札を保有するこの神器は、間違いなく優れた性能を持つ神器の一つだろう。
創造系神器は神代晃星が発生してから特に増えている神器の種類で、保有者の数は二十年前に比べるとけた違いに増えている。神器が生まれ持つ者だという大前提を踏まえれば、若者が保有する神器の最大手といえるだろう。
それをもってして敵を断ち切れば、更に後方のはぐれ悪魔祓いが黒焦げになる。
「あらあら。こういう一騎当千も爽快感があってゾクゾクしますわ♪」
我らが
あとかなりドSだ。可愛がる程度なら問題ないけれど、敵に対しては本気で容赦がない。
そして小猫ちゃんが近くで倒れた木を投げつけ、教会入り口の障害物として機能させる。
あとは僕達が頑張って、妨害させないように立ち回ればいいだけだ。
とはいえ数が多いけれど、それでもこの程度なら問題ない。
「消し飛びなさい、下郎!」
リアス部長が消滅の魔力を振るえば、その破壊力にはぐれ悪魔達は翻弄されている。
当然と言えば当然だ。リアス部長はまだ十代とは言え、十代に限定すれば指折りの上級悪魔でもある。
グレモリー本家次期当主は伊達ではない。グレモリー家の名誉を彩る一人であり、
星辰奏者や神器保有者も数人いる上、併せ持つ者いる。だがそれでも時間の問題なのは確定だった。
とはいえ、ものともしない力量の持ち主は数人いる。彼らを上手く討ち取らなければ勝つのは困難だろう。
「チッ! 外部の連中とも連絡が一切とれん! 思った以上に戦力が豊富なようで何よりだな」
「やってくれる! だが、我らの栄光の邪魔はさせんぞ!」
「うざってぇ! だけど、こいつらを殺せればその分がおいしいってもんッスよねぇ!」
三者三葉に、堕天使達はそう吠える。
なめられたものだ。だが、厄介なのも事実か。
「部長、まずははぐれ悪魔祓いの殲滅を! この三人は僕達が倒します!」
僕はそう言うと、一番近くにいる女堕天使に切りかかる。
それに反応する女堕天使は、何故か光の力ではなく剣を引き抜いた。
一瞬、違和感を覚える。
そしてすぐに、その理由を悟った。
「「「創生せよ、天に描いた星辰を———我らは煌く流れ星!!」」」
ここで、星辰光を開帳するか!!
《兵藤一誠》
俺と空本さんが地下室に辿り着くと、そこでは光に包まれるアーシアがいた。
なんか機械っぽい雰囲気の十字架に磔にされたアーシアを、強い光が包んでいる。
「アーシアぁああああああ!」
「……あら、腐った転生悪魔風情がよく来れたわね」
そういう夕麻ちゃんは、俺のことを心の底から馬鹿にした目で見ていた。
あの笑顔が全部嘘だったって、嫌ッてほど痛感する。
マジでショックだ。だけど、今はアーシアが最優先だ。
「アーシアを放せ! てめえらに好き勝手させられるような子じゃないんだよ!」
「残念♪ もう手遅れよ? だってこれから神器を抜き取るのだもの」
神器を抜き取る?
アーシアの治癒の力が、神器なのはいいさ。多分そうなんじゃないかって思ってた。
ただ、それが一体なんだって―
「……アンタは! それがどういうことか分かってるのか!!」
―急に隣で、周りのはぐれ悪魔祓いを警戒していた麗夜さんが激高した。
急に一体何だと思ってると、レイナーレは得意げな表情を浮かべて受け止める。
「別に問題ないでしょう? 敬虔な信徒なのに教会を追放されて、それでも信仰を捨てれない哀れな小娘。一人殺したところでどうってことないし、私のような至高の堕天使の未来の為なら尊い犠牲だわ」
……は?
今なんてった?
殺す? 犠牲? アーシアを?
何がどうなってるのかさっぱり分からない。
だけど、あの装置と光がその原因だということは分かる。
くそ! よく分からないけど、あれからアーシアを引きはがさなけりゃまずいってことか。
俺は駆け出そうとするけど、その瞬間はぐれ悪魔祓いの連中が一斉に銃を撃ってきた。
流石に戦車の昇格でも、あれだけ当たるとまずいかもしれない。
だけど知ったことか。アーシアがまずいんだぞ!?
俺は駆け出そうとするけど、それを空本さんが羽交い絞めにして止める。
目の前にはなんかデカい剣が生えて光の銃弾を防ぐけど、そんな場合じゃない。
「離してください! アーシアが!?」
「ダメだイッセー君! この数を強引に突破して助けに行こうとしても、確実に君が死ぬ!!」
それがどうしたってんだ。アーシアが殺されるかもしれないんだぞ!?
「い……イッセー……さ……」
光に包まれたアーシアが苦しそうにしているのが見える。
まずい、これは!?
「アーシアぁあああああああああ!?」
「……あれ?」
「「「「「「「「「「……え?」」」」」」」」」」
キョトンとした声に、俺達全員が呆気にとられた。
なんかアーシアがぴんぴんしてる。
いや、ちょっと痛そうにしているけど、命に別条がありそうには全然見えない。
神器を奪われると死ぬっていうけど、これ絶対死にそうにない。馬鹿な俺でもそれぐらいは分かるっていうか。
「え……どういうこと!? アーシア、なんともないの!?」
レイナーレがもうすっごい動揺している。
あ、これ絶対予想外の事態だ。俺はもう確信できてる。
「あ、はい。少ししびれた気がしますけど……あ、肩の周りがどことなく軽いような気がします」
なんか逆に健康になっているようだ。電気マッサージ的な?
それはそれでいいことだけど、なんかもう何が何だかさっぱり分かんねえよ。
「……レイナーレ様、機械の不調のようですので、修復するべきかと申し上げます」
と、何時の間に上がっていたのか、アーシアの隣にいるはぐれ悪魔祓いがそう言ってきた。
「え? で、でも私はこの機械は専門外で、どうしようもないわよ!!」
完璧にあたふたしているレイナーレの様子を見る限り、これは当分大丈夫そうだな。
はぐれ悪魔祓いの連中ももれなく困惑してるし、直せる奴がいなさそうでよかった。
あ、でも俺達が突破してアーシアを助け出さないといけないって状況は変わってない。いや、でも上の皆が来てくれればいけるかもしれないな。
そう思っていると、何故か上のはぐれ悪魔祓いが胸を張った。
「ご安心ください。この国では古来より斜め四十五度で叩けば機械の問題は解決すると伝わっております」
それかなり古い話だと思う。
あと外人さんのようだけど、なんでそんなこと知ってんだよ。
もうレイナーレも見るからに呆れてるし。その顔が可愛いからなんか腹立つ。
「いや、そんな馬鹿な……ん?」
と、何故かレイナーレは怪訝な表情になった。
「そもそも貴方、別動隊のはず……まさか!?」
急に慌てるレイナーレを無視して、そのはぐれ悪魔祓いは斜め四十五との角度で構える。
でも、チョップじゃなくて剣なんだけどぉおおおおお!?
「こんな風にね!!」
「まてぇええええええ!?」
レイナーレが咄嗟に光の槍を放つけど、其れより早くその件が十字架の根元を断ち切った。
更にその悪魔祓いは、もう片方の手で裏拳を放つと爆発と共に光の槍を打ち砕いた。
え、もう状況がさっぱりなんだけど!?
「麗夜援護! スパっと行くわよ!!」
「……!? 分かった、牽制するからこっち来て!!」
え、空本さんがはね飛ぶぐらいの勢いで反応するけど、俺もうさっぱり分からないんだけど!?
置いてけぼりになっている俺を前に、倒れる十字架事アーシアに滑り込んで背負ったその人は、裏拳を地面に叩きつけながら飛び上がる。
爆発が起きてその反動で飛び上がった二人は、そのまま天井側に反転した悪魔祓いが天井を足場に走ってこっちに飛び降りた……ってアーシア投げたぁああああ!?
「キャッチしなさい!」
「あああああアーシアぁああああ!?」
「きゃぁあああああ!?」
慌てて悪魔祓いの言うとおりにアーシアをキャッチするけど、衝撃が! 衝撃がきつい!?
ちなみに慌てて反応した他の連中が止めようとするけど、空本さんが剣を振るって牽制しているから近づけてない。
と、空本さんと並び立つようにはぐれ悪魔祓いの人が俺達を庇う様に前に立った。
「はい解決。これで可哀そうな女の子が殺されるような悲劇が回避できて万々歳ね」
「貴様ぁああああああ! 何年も前から私に仕えておきながら、どういうことだ!?」
レイナーレがマジ切れしてるけど、そのはぐれ悪魔祓いはちょっと困惑してた。
「……あら、そんな古株の直臣だったの? 危なかったわね、気づかれるリスク高い奴を選んじゃったわけか」
え、どういうこと?
もう困惑している俺達の前で、麗夜さんがその人にため息をついていた。
「俺も正直困惑ものなんだけど? どういうことかな、麗奈?」
え、麗奈? 女の子っぽい名前だけど、そいつ男―
「ま、つもる話はあるけれどその余裕もないわね」
―と思ったら、何時の間にか女の人になっている。
神父服を着た男のはずが、サマーコートを羽織った白髪のお姉さんになっている。
え、え、どういうこと!?
「幻惑の魔法で成りすましていたのね!? やってくれる……っ!」
レイナーレがかなりキレてるけど、そんなことまでできるのか。っていうか魔法もやっぱり実在してるのか。
俺が感心していると、そのお姉さんが剣を突き付けながらため息をついていた。
「まったく。デュリオもストラーダ猊下も兄さんも、こんな大ごとになるなんて思ってなかったでしょうね。しかも麗夜が此処にいるとか、割とメンタルがゴリゴリ削れてるんだけど」
え、えっと……え?
「知り合いですか!?」
「あ、幼馴染です……じゃなくて! 味方でいいの!?」
空本さんもいっぱいいっぱいで、俺の質問に困り顔だった。
ただ、お姉さんの方はなんかため息をついている。
「安心しなさい。私の仕事は「アーシア・アルジェントのその後の動向調査及び、悪意に翻弄されるようならその救助」よ。とりあえずあの堕天使をどうにかするまでは共闘するわ」
あ、なんか訳ありっぽい。
ただ、二人とも頼もしい雰囲気を見せてくれるから安心できるところがある。
「ふざけやがってぇええええ!」
「ぶち殺してやる、この糞がぁあああ!」
切れたはぐれ悪魔祓いが一斉に襲い掛かってきたけど、空本さん達が真っ向からそれを迎え撃つ。
「少しずつ下がって! 入り口側まで行ければこっちでカバーできる!!」
「アンタはアーシア・アルジェントをしっかり守ってなさい!!」
「は、はい!」
俺は言われた通りにアーシアを抱えて後ろに下がり、二人も少しずつ後退しながら戦っている。
そして地下室の入り口を通る。そこで初めて俺は二人の言うことが分かった。
そうか。入り口は部屋より狭いから、二人が警戒する範囲も相手にする数も減るんだ。
これなら、外のみんなが敵を全滅させて終わらせるまでの時間は稼げる。
そう思った時だった。
「創生せよ、天に描いた星辰を———我らは煌く流れ星!!」
「「っ!?」」
その瞬間、二人を強引に突っ切ってレイナーレが突進してきた。
なんか手にやばいオーラの剣を持ってるけど、そんなことはどうでもいい。
「逃がさないわよ、アーシアぁああああああ!!」
まずい!? 二人とも吹っ飛ばされかけたうえに、はぐれ悪魔祓いの方が相手で手いっぱいだ。
だったら、俺がやることなんて決まってる。
強引に前に出て、俺はアーシアを庇う楯になる。
「させる分けねえだろうが!」
「アンタ如き腐った猿に何ができる!!」
分かってんだよそんなことは。
俺は弱っちい。皆がいなけりゃとっくの昔に殺されてるだろうし、多分いてもいなくても変わらないぐらいの戦力だ。
だけどなぁ……っ
「友達に為に体張るなんて、当たり前のことだろうがぁ!!」
そこは譲っちゃなんないだろ、アーシアの友達としてな!!
「よく吠えた!」
その瞬間、レイナーレの剣を真っ向から受け止めるやつがいた。
「……樹下!?」
間違いない、樹下だ。
来てくれたのか、樹下!
「麗夜さんと……よく知らない人! この堕天使は俺が引き受けるんで、有象無象の方を頼んだ!」
樹下はそう言うと、にやりと俺の方を向いて笑ってくる。
「今の一瞬でギリギリ間に合った。この戦い、漢気を見せたお前の勝ちだ!!」
そうか。ちょっとぐらいは……役に立てたんだな。
……頼む、樹下。
あいつを何とかしてくれ!!
さぁ、思わぬ展開で動揺する堕天使を、その勢いでどうにかできるか?
明日、大作戦最後の話となります!