シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
だいぶ作成にも慣れてきたので、この調子でいきたいところです!
では本編!!
《兵藤一誠》
リアス部長からサイラオーグさんが負けて集中治療室に送られたと聞いて、俺達は部長の伝手でバアルの病院に駆け付けた。
信じられねえ。あのゼファードルを圧倒したサイラオーグさんが、負けたばかりか集中治療室なんて!?
「こ、困りますリアス様! 意識は取り戻しましたし回復もしていますが、消耗が激しいので安静にしてもらえませんか!?」
看護師の人が止めるけど、そんなこと言ってられるかよ。
「どいてくれ! 信じられねえよ……サイラオーグさん!!」
病院で大声を上げるのはあれだけど、俺は声を上げるしかない。
あの人が負けるとか、一体何が起きたってんだ!?
ただ、看護師さんが明らかに首を傾げている。
「え?」
え?
なんかかみ合わない感じがして俺も首を傾げると、後ろから足音が響いた。
「どうしたリアス、兵藤一誠も?」
え?
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはぴんぴんしているサイラオーグさんがいた。
……え?
「さ、サイラオーグ!? その、縁ある魔王派の悪魔が、混乱しながらあなたが負けて集中治療室行きだって聞いたけれど?」
リアス部長も驚いていると、サイラオーグさんはちょっと首を傾げてからはたと手を打った。
「本当にその方は混乱していたようだな。その二つは別々だぞ?」
別々?
俺達が首を傾げると、サイラオーグさんは感心しているような呆れているような笑顔になっていた。
「決闘に負けたのは事実だが、集中治療室に送られたのはサリアローズだ。少なくともあばらを5本は砕いていたし、左の太ももは複雑骨折だったからな。……本気の拳も入ったので、内蔵も軽度の破裂が起きていただろう」
何がどうしてそこまでして負けたんですか!?
俺達が呆気に取られていると、俺と一緒にいたんで付いてきた吹本さんがサイラオーグさんの腰の辺りを見始めた。
「……もしかして、腰の辺りを痛めましたか?」
え、腰?
と、サイラオーグさんは感心したように頷いていた。
「ああ。サリアローズの一撃で背骨の付け根が外れてな。おかげで攻撃を捌けず、いいのを連続でもらって気を失ってしまい負けたわけだ」
こ、腰かぁ。
あれ、めっちゃ痛いって聞くよな。俺も腰はよく使うし気を付けないと。
あ、樹下もかなり同情してる。やっぱり樹下も腰は大事か。
「体術使いが腰をやるとか、もう削り殺されることが確定ですね。……つまり、サリアローズは負傷前提でその一点を狙った突貫を敢行する賭けに打って出たと」
あ、そっちか!? 御免なさい!
俺が心の中で謝っていると、生徒会長も呆れたように眼鏡を直している。
「レーティングゲームのシステムを利用して安全を図ったとは聞いていますが、それも踏まえての作戦勝ちでしたか。……リタイアしない程度の負傷は全て覚悟し、強引に反撃を不可能にする一撃を叩き込み、そこから一気に逃げ切り勝ちを狙ったと」
「そういうことだ。どうやら幾多の上級悪魔を下し、慢心していたらしい。一対一ならサリアローズはゼファードルよりはたやすいと油断したツケだ。……いや、魔王様すら倒しうるゼファードルを倒したからこそ、無自覚でも生まれるだろう隙を逃がさなかったサリアローズの戦略眼が俺を越えたということだろう」
な、なんかサイラオーグさんは全然応えてないな。
「よろしいので? バアル本家は大王派筆頭なだけあり、純血・血統・特性を誇る一族。ここで負けた以上、失う物があまりにも多いのでは?」
樹下がなんか物騒なこと言ってる!?
あ、でもサイラオーグさんはめっちゃ酷い扱いだったって聞いたことがあるような?
そしてサイラオーグさんは大したことがないように肩をすくめていた。
「まぁ、元々次期当主を懸けた決闘だからな。既にサリアローズの次期当主は確定だ。俺も繋いできたコネクションはほぼほぼ失っただろう」
凄いこと言ってるですけど。
え、その割にはぴんぴんしているような……。
と、サイラオーグさんの視線が俺に方に向いた。
「あまり気にするな、兵藤一誠。そも、俺もここに至るまでに幾多もの貴族達の心を折り、再起不能にしてきたわけだ。そうなってないだけ御の字だし、俺がされる側に回って文句をつける道理もないだろう」
す、凄い人だ。
俺がなんというか感心していると、サイラオーグさんは胸を張って宣言した。
「少なくとも、眷属を含めて付いて来てくれる者はいるし、俺はいくらでも戦えるからな。この程度でへこたれてはいられんさ」
つ、強い人だ。
体だけじゃねえ、心もすげえ。
そして、かなり一点集中のやり方みたいだったけど、サリアローズさんはこの人に勝ちはしたんだ。
多分あの人も凄いんだろう。
「その、サリアローズさんって確かその……サイラオーグさんの妹さんですけど、親が違うんでしたっけ……」
ちょっと気になって聞いてみたけど、その時後ろでドアが開いた。
「その通りだ。私は妾の子でな。これぐらいの手柄がないと次期当主の座は得られんのでな」
その声に振り返ると、サリアローズさんが苦笑していた。
「……ふ。いいのをもらったぞサリアローズ。この一敗はいい教訓になったが、そっちの方は大丈夫か?」
「悪いが再戦は受け付けないから、勝ち逃げさせてもらうぞ兄上。……というよりその腰……涙を使ってないのか?」
な、なんか穏やかな会話になってるんだけど?
俺が間に挟まれて困惑していると、サリアローズさんは呆れたような表情になってなんか魔方陣を浮かべる。
そしてそこから現れた小瓶を、サリアローズさんはサイラオーグさんに投げ渡した。
「使っておけ。体が資本過ぎる兄上にとって、傷の回復は最重要だろうに。……腑抜けた嫌がらせをしている奴らは探し出して厳罰に処さねばならんな」
不機嫌そうに言うけど、サリアローズさんってサイラオーグさんのこと嫌ってないのか?
「……意外ね。もっとサイラオーグを馬鹿にしているかと思っていたけれど」
リアス部長も困惑しているけど、サリアローズさんはそれを鼻で笑った。
「馬鹿にしている相手との決闘に、勝ち逃げ前提の一点賭けなどする貴種がいるわけがない。バアルとしても純血悪魔としても欠陥品である兄上の評価はまごうことなく事実で否定の余地はないが、戦士としての兄上は一切の偽りない傑物中の傑物であり、同世代最高峰。これを理解できぬ愚者と同列に扱われるのは罵倒に等しいぞ」
リアス部長にそう言い返すサリアローズさんだけど、その分ちょっと笑っていた。
「最も、おかげで後援者には困らなかったがね。彼らの後押しもあり私はバアル次期当主確定だ」
「なるほど。あまりに早い決闘承認でしたが、サイラオーグに心を折られた者達の関係者を抱き込んで、好機を見出し次第できるように根回し済みでしたか」
生徒会長が眼鏡を整えながらそう言うと、サリアローズさんは小さく微笑んで頷いた。
な、なんか色々やっている感じがするなぁ。
「まぁ安心してくれ兄上。貴方ほどの戦力をそれに見合った待遇にしないなど論外だ。……既にバアル本家次期当主としての初仕事として、貴方の最上級悪魔承認を求める嘆願書を、私及び私が眷属としている魔王末裔二人の署名付きで魔王様に送っている。……バアルとしての地位は許さんが、貴方が魔王様に認められる形で手柄を名声を得ることまでは止めん。……ついでに魔王派との折衝員の一人となってくれないか?」
「……ふむ。俺が魔王派と手を組んでのし上がる分には構わないと?」
サイラオーグさんとサリアローズさん、静かに視線をぶつけ合う。
そしてサリアローズさんは、あっさりと頷いている。
「そも貴方の理想は魔王派の方が合致しているだろうに。わざわざバアルの長になって面従腹背を増やすよりそちらの方が手っ取り早いだろう。こちらも最初からそうだと分かっている方が楽に立ち回れる」
こ、これって俺みたいな下っ端が聞いてていい話なんですかね?
「……確かにそれも一つの手か。……一つ聞くが、マグダランはどうするつもりだ?」
マグダラン……っていうと、誰だっけ?
俺が首を傾げそうになっていると、樹下がスマホに日本語で「二人の間のバアル本家。側室の子だ」と書いてくれた。
空気読まない質問しないですんだよ。マジでありがとう。
「個人的には、マグダラン兄上の復活させた植物や論文には価値があるだろう。冥界において最も尊い大王バアルの栄光が、植物学の領域まで照らすというのは十二分に価値があるだろうに、父上達は毛嫌いまでしているのはどうなのだろうかと思うな」
「……そうだな。マグダランの研究は、きっとバアル領にとって価値あるものだ。日の目を見るに越したことはない」
なんか、二人揃ってそのマグダランって人に気を使ってるって感じがするな。
俺馬鹿だから分かんないけど、もしかして結構この関係って複雑?
と、サリアローズさんはため息をついた。
「悪いが、内臓破裂三か所に、亀裂五か所複雑一か所通常七か所粉砕三か所の骨折は、フェニックスの涙数個を使っても消耗までは消せん。勝者にしてバアル次期当主命令だ……見舞いに来たつもりだが無用なので、休ませろ兄上」
「フッ、そうだな。その胆力があるなら問題ないだろう」
お、俺達……凄いもの見てるのかも……?
意外と仲良いな、この二人!?
《木場祐斗》
その後、リアス部長達は冥界に来たのだからとちょっと貴族としての仕事をすることになった。特に秀華さんが色々やった分の書類仕事を求められたらしい。
そして、護衛としてついてきていた僕達数人がサイラオーグさんと談笑する形となっている。
「どうだ? 弟のマグダランが品種改良に関わったリンゴから作ったアップルパイなんだが、中々に美味いだろう」
「……真剣に美味いですね。何よりこれ、素材が良くないと出せない味ですね」
樹下君は意外と舌が肥えているようだ。相当酷い環境で育ったと聞いているけどね。
とはいえ、本当にこのリンゴは風味も香りもいい。間違いなく上質なものだ。
「その、マグダランって人とは仲が良いんですか?」
「いや、言っては何だが俺はあいつには恨まれているからな」
イッセー君に対してさらりとサイラオーグ氏は答えるけど、さらりと答える内容ではない。
もっとも、その辺りを知っている悪魔も数多いだろう。かなり有名な話になるしね。
「サリアローズも言っていたが、俺はバアル本家にとって欠陥品でな。その流れもあり、側室の息子であり消滅の特性を受け継いでいるあいつが次期当主に据えられていた。……それを、俺は俺の夢の為に地位を懸けた決闘を挑み打ち倒したからな」
そう。その辺りは相応に有名な話だ。
大王派にとって欠陥品とされていた無能のサイラオーグ氏が、消滅を受け継いだマグダランを打倒してバアル次期当主の座に就いた。
こと家の特性や純血に拘る悪魔にとって寝耳に水の騒ぎだったはずだ。それだけの事実があるからこそ、サイラオーグ氏はその力量に反して毛嫌いし見下す上級悪魔が数多い。
「己の夢の為に打ち負かした手前、俺はあいつに対してどうすればいいのか分からんところもある。なんならマグダランからは盛大に恨まれており、それなりに嫌がらせも受けている。……それに言っては何だが、あいつは植物に対する造形は目を見張るものだが、戦士としての力量においては俺はサリアローズに明確に劣っていながら、バアルの次期当主につけられていたからな」
「特性を継いでない長兄や、継いでいても妾の娘である末娘より、凡庸であろうと相応の血筋の生まれで特性を継いだ次男がいいと。……業が中々に深いお家なことで」
樹下君が呆れ気味だけど、多分波柴にも似たようなのがいたんだろうね。
相当実感が籠っている。サイラオーグ氏もイッセー君も若干引いているレベルだ。僕もちょっと気圧されている。
気圧されてないのは付いて来ていた吹本さんぐらいだ。多分、多少は愚痴を前から聞いていたんだろう。
「まぁ、権威に染まると腐る奴はいるものね。恩恵がある所為で自制心が緩むといったところかしらね」
とげんなりし始めているけど彼女も似たような相手に心当たりがいるらしい。
ある程度は知っているけど、彼女も相応に重い物を背負っているそうだからね。
事情を知っている樹下君は勿論、ある程度知っていたらしいイッセー君も同情の視線が向いているしね。
あ、樹下君が咳払いをして切り替えた。
「……ですが、その割にはむしろ応援しているようですが?」
「そうだな。俺はあいつが持っているものを俺の都合で奪ったこともあるから、俺にだけ向いている分には全て受け止める気でいる。そしてそれとは別に、あいつの優れたところを多くの者が知って評価してくれることを望んでいる。……だから、マグダランとのことについては手出し無用だ。頼む」
サイラオーグ氏は樹下君にそう答え、僕達に頭を下げる。
仮にも上級悪魔の一人が、他種族からの転生悪魔かつ上級にもなってない者達に頭を下げる。それだけの高潔さを持っているということなんだろう。
ただ、中々に大変な人生をこれからも歩むのだろう。その覚悟もあるということか。
「……あなた方は……」
そんな時に掛けられた声に、僕達は振り返る。
そこには、銀色が所々で混ざった赤茶色の長髪を持った女性。確か雲川さんの姉である、リンカ・ルシファーさんだ。
何人か護衛と思われる者もいるが、隣には茶色の髪を伸ばした悪魔の女性がいる。
確か、彼女もまた魔王末裔の一人だ。アスモデウスの先祖返りであるマリヤ・アスモデウス様だったろうか。
「……これは、魔王末裔の御方々とこのようなところで会えるとは思いませんでした。会合の場以来ですが、お元気そうで何よりです」
流れるように樹下君が立ち上がり一礼している。ちなみに動きがゆっくりで、僕達が反応する余裕を作っている辺りができる人だ。
ただ、リンカ様は手を前に出すとそれをとどめた。
「気にしなくていいわ。妹ともよくしてくれる子にそこまでさせるわけにはいかないし……何より、私は魔王ルシファーの血脈である前にサリアローズ様の下僕ですもの」
こちらはこちらで、中々にくせ者の気がしてきたよ。
と、リンカ様は隣の女性に微笑んだ。
「紹介するわ。私と同じくサリアローズ様の下僕であり、アスモデウスのマリヤ・アスモデウスよ」
「よろしくね。派閥は対立するけれど、それでも私達は同じ悪魔だもの……仲良くすることが主の為にもなるものね」
穏やかな人達のようだけど、どこか儚さすら感じるのは僕の気の所為だろうか。
傀儡とは言え魔王の名を告げる以上、旧魔王派からヘイトを買うことも多いだろうし、冥界の性質上戦場に出ないわけにはいかない。弱いだけの人に務まる立場ではないだろうにね。
……とはいえ、そういうできる人が大王派にいるのも、サーゼクス様の妹君であるリアス部長の仕える身としては頭痛物だろうかな……?
《Other》
「「……失礼いたします、サリアローズ様」」
「ふむ。リンカとマリヤか。……多少無様な姿を見せただろうか?」
「滅相もありません! あのサイラオーグ・バアルを相手に、通常の星辰奏者と上級悪魔の身だけで勝たれるなど、生涯誇るべき栄光です! ねぇ、リンカ?」
「マリヤの言う通りです。私達では一対一でも太刀打ちできるかどうか……!」
「そう言ってくれるのはありがたいが、あれは一点懸けの勝ち逃げだ。兄上が大王派から嫌われてなければ、批判が評価を超えることは間違いあるまい」
「ですが、これで次期バアル本家の当主にサリアローズ様が成られたわけです。我ら二人の主足りえる箔が付いたも同然です」
「そうだな、マリヤ。さて、ここから本格的に動くわけだが……いちいち父上の了承を取っていくとなると、更に手間がかかるな。……まとめて草案を送り、その辺りの独自裁量を得られるかどうかにするべきか」
「資料作成はお任せください。私達の名を使えば、魔王派からも応援のお言葉をもらえるはずです」
「だといいがな、リンカ。まぁいい、お前達も案があるならまとめておけ、有効なものは私の責任に基づいて実行する」
「「……はいっ! サリアローズ様の御心のままに!」」
現場も混乱だったので、情報が混同されていたというオチ
血統そのものはサリアローズが試合に勝つために勝負を投げるような勝ち逃げじみたやり口でした。サイラオーグはそれだけの戦士であり、彼の株を下げる気はありません。
サリアローズは間違いなく強者ですが、生身同士でサイラオーグと戦えば不利になります。そのため己の戦闘スタイルを対サイラオーグを前提にし、無意識にでも慢心が生まれるだろうタイミングで一気に付き、逃げ切り勝ちを達成した形です。
そしてその結果が集中治療室送りです。致命傷レベルは回避したのでゲームシステム利用もあって勝ちましたが、死なない程度の負傷度合いは圧倒的に上といった感じです。ゲームなら評価は絶対に分かれるような戦い方です。
ですが、サイラオーグの敵を抱き込んだこともあって勝ちは勝ち。ここからがサリアローズたちの本番です