シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
医療費が多く出てくる月だったぜぇ……!
それはそれとして本編!
《樹下誠二》
「……と、言うわけなんですが?」
『『本当に申し訳ありませんでした』』
俺がジト目で魔方陣越しに詰問すると、手を回していた秀華と小笠原長官が素直に頭を下げた。
『その辺りの情報共有が遅れていましたねぇ。言い訳になりますが、こちらも結構忙しいので、要請無しなら後回しにする報告だったので』
『波柴壊滅後にもらった利権の一部が絡んでたから、その辺り気にせず用意しちゃったよ……本当にゴメン!』
まぁ、その辺りは仕方ないことも多いだろう。
それにまぁ、悪いこととは言い難いしな。
そもそも悪い奴は波柴矢城だ。秀華や長官に責任追及するのも何かが間違っているだろう。
矢城のクソボケカスが、波柴若年層の基本形として義務教育後から社会人になるまでの間に、手練手管で異性をたぶらかして悪の道に引きずり込んで私腹を肥やすよう命じられるのはよく知っている。秀華が四年ほど前に一気に波柴壊滅を仕掛けたのも、それをさせられることそのものを嫌がっていたからだ。
そして糞矢城の手練手管にはまったのが、当時大学生で彼氏と熱愛だった信子さん。徹底的に調教された体は快楽中毒に近く、適度に放っておくことで我慢の限界に至らせることで支配権を獲得するという下種フルスロットルな真似だ。
真剣に調べれば女性用風俗で発散という絡め手も可能だったのだろうが、風俗店に女性向けが存在することはやはり男のそれに比べるとマイナーだからな。そこまで計算できるように波柴は教え込むのが下種っぷりだ。
そしてまぁ、自分でやったと思い込む形で一線を越えさせれば後は一気に転げ落ちるというわけだ。運の悪いことに波柴一斉摘発時に本家に向かっている途中だった矢城はお披露目も兼ねてお気に入りだった信子さんを連れて行っており、途中だったという質の悪い豪運を発揮して摘発から逃れてしまった。麗夜さんの自首によって明確なターゲットとして睨まれていたにも拘らず、逃げながら死んだ奴からコナユキまで抱き込む形で四年間も逃げられたという糞のような強運だ。なんでそんなところだけ波柴でもずば抜けたポテンシャルを発揮するんだあのちょっとだけ優秀どまりは……っ!
信子さんも正気に戻ってから日が浅い。両親ともろくに会話ができてない状況で、他の人間関係にまで配慮するのも困難だろう。
だがしかし、その彼氏が社会人活動をしながら趣味で映像作品を作っていた。で、今回のコンクールで最優秀賞を取り、この発表会に俺達が参加してしまったというわけだ。
信子さんも複雑だろう。罪悪感と安心感が混ざり合って、色々と揺れている。
今は海砂さん達に任せているが、とりあえず情報を取り戻したらその辺りを踏まえて離さないとな。
顔を合わせるべきかどうかは色々とあれだろう。合わせる顔がないというのもあるし、年下の彼氏を作った状態では、ケジメの為に謝罪するとしても説得力を感じない可能性は十分ある。それに、ある程度再出発もできている状態で謝罪をしに行くことも自己満足の偽善と取られる可能性はある。
こればっかりは俺がメインで動くわけにもいかないだろうしな。割と真剣に同情するが、さてどうしたものかといったところだ。
と、そこまで考えていたら小笠原長官が申し訳なさそうな顔になっていた。
「どうしました長官? もしかして、そちらからも何か伝えることが?」
『察しが早くて助かります。実は君達に依頼と言っていいことがありましてねぇ……』
と、いうと……?
《空本麗夜》
「たっだいま戻りました~! あれ、お姉様達は?」
リーナちゃんが帰って来て早々、辺りを見渡して首を傾げた。
ま、このタイミングで帰ってくると大抵どっちか入るからね。
「今はちょっと忙しくなっているみたいでね。というか、色々と忙しいことになりそうだよ」
俺としても苦笑するほかない。
「なんでも、アースガルズ主神のオーディン様が来日するとか。で、泊まるところとしてイッセー君の家のVIPルームを希望してるらしいよ」
本当に、もうちょっと前もってほしい。
フットワークが軽すぎるのも困ったものだ。こういうところも、人間世界に異形を公表しない理由かもしれないね。
人間界の方が固いというかなんというか。神々の世界って、神が定めたルールが厳格だったりする印象なんだけど、柔軟すぎるというかなんというか。
まぁ、悪いことばかりでもないんだろうけどね。
その辺りの色々で忙しくなったのか、専務補佐の麗奈に小笠原一族の美子ちゃんも呼ばれた形だ。他のメンバーも仕事があるし、俺は一人で地道に事務仕事をしていたわけだ。
「お土産貰ったのに残念です。あ、でも仕事はこれから頑張ります!」
ビシリと敬礼までしてくれるのは、ちょっとこっちの元気が出てくるね。
さて、色々と頑張らないと。
それから少しの間、黙々とデスクワークを二人でやっていた。
ただまぁ、年若い少年少女は沈黙してのデスクワークはやはり苦手なことも多いだろう。
仕事はしながらだけど、そわそわし始めたリーナちゃんはこっちをちらりと見た。
「……世間話でもしながらでもいいけど、何かあるかい?」
「あ、だったらお姉様達との思い出話を聞きたいです」
なるほど。確かに麗奈はあんまり俺達とのことを話さないだろうね。
色々あったからね。ただ、それまではやっぱり良い思い出だったりするしね。
「ちょっとヘビーなところから始まるけど、俺って元々両親からネグレクト気味でね」
「初っ端から胃もたれしそうですね!」
イヤホンと、最初の方を話すとそうなるんだよね。
両親はまぁ、定期的に顔を見せてくれるけれど二人同時ってことは滅多にないしね。
「体裁をとっているというか、最低限の義務は果たしてくれているって感じだったね。生活費はちゃんと送ってくれるし適度に様子を確認してくれるし、なんなら誕生日プレゼントもくれたけど……ちょっと冷めていたかな?」
本当にそこはね。
面倒はきちんと見てくれていたともいえるけれど、なんというか親として見てくれていたのかについては疑問があるよ。
実際、自首してからは会ってないしね。
ま、そこは導入でしかないさ。
「ただまぁ、それで結構小さい頃は虐められててね? それを助けてくれたのが麗奈で、麗奈とは家が隣だった麗華ともその縁で知り合った形だよ」
「その頃から面倒見がよかったんですねぇ」
そうなんだよねぇ。
まぁ、だからこそ妙なところで強迫観念も出てきたのかもしれないね。自分がリーダーとして相応しくないとって感じで。
だけど、今の麗奈はいい意味で肩の力が抜けているかもしれない。
でもまぁ、本当にあの頃は良い思い出だよ。
「あの頃は俺も麗華も麗奈に引っ張られてたからね。おかげでだいぶ楽しい毎日を送れてたよ」
まぁ、高校生ぐらいではすれ違いにすれ違ってあのザマなんだけど。
ただ、今は違う。
「今はお互いに上手くサポートしたり、茶化したりって意味だと距離感も近づいたというか落ち着いたというか。いい意味で大人になったんだって……麗華はなんか違うな」
麗華は本当に違うね別の意味で。
以前から、フィクション系統の趣味は少年のそれだったけどね。まさかあそこまではっちゃけるとは。
ショックのあまり引き籠ったりしてないのはいいんだけれど、それはともかくどこから突っ込んだらいいのかと思う時は何度もある。
……どうしてああなった……っ!
「な、なんか考えたら駄目なことを考えてないですか!?」
「ソウダネ。オチツクヨ」
割とメンタルがおかしなことになりかけたね。
気分を落ち着けていると、リーナちゃんは小さく微笑んでいた。
「でも、麗奈お姉様はやっぱり麗奈お姉様ですね。あと、麗夜さんにも親近感沸きました」
親近感?
この会話の内容で俺に親近感。内容があまりいいものではないだろうね。
「聞かない方がいいかな?」
「いえいえ気になりますよね? それにまぁ、だいぶ割り切れてるんで」
さらりとそう答えるあたり、本人の中で決着はついているんだろうね。
リーネちゃんはちょっとため息をついたけど、さほど気にしてないようだ。
「ほら、私って神の先祖返りなわけですよね? その所為で両親から恐怖されてまして、縁はとっくの昔に切られちゃってて」
割り切れるかな、それ。
……ただ問題なのは、俺の周りには似たような立場の子が何人もいるってことだろうね。
祐斗くんやアーシアちゃんは孤児らしいし、ゼノヴィアちゃんも多分そうだろう。ギャスパー君に至っては、家族から虐待されていたそうだし。
とはいえ、そこをさらりと語れる当たり大概の経験を積んでいるんだろうね。
「……ちなみに、麗奈とはどんな出会い方をしたのかな?」
ちょっと踏み込んだ方がいいだろうね。
俺が麗奈と今度こそしっかり向き合う為にも、麗奈に絡むことはよく知っておきたい。
「いや~。実ははぐれ魔法使い組織をお姉様達が追っていたんですが、その組織に生贄になりかけてまして」
「軽いよ!? 流石にもうちょっと重く語るべきじゃない!?」
流石にちょっとびっくりなんだけど!?
「助けに来てくれたお姉様の雄姿の方が焼き付きましてぇ。いやホント、人生がアガるきっかけはあれですね!」
熱く語ってくれるけど、麗奈っていったい何をしたんだろうか。
昔っから要領がいいイメージだったけど、実際のところは基礎をまず徹底的に鍛えることでどの応用に入っても要領がある程度よくなるように頑張ってる感じだったんだ。
ただまぁ、裏を返せば熱心な努力家で呑み込みも悪くない。
きっと死に物狂いで鍛えたんだろう。その結果、有数の使い手になっていた。
「……今でも思い出します。あの時の、まるで自分が救われたような表情に……ときめきました」
……そっか。
「きっと、明確に目の前で人を助けた初めての任務だったんだろうね」
「そうみたいです。で、私の面倒も色々見てくれて、それで一緒に活動していってこんな感じですね」
お互いに小さく微笑みながら、当時の麗奈に思いをはせる。
……きっと、その経験はいい方向にかみ合ったんだと思う。
「こういうのはおかしいかもだけれど、麗奈に助けられてくれてありがとう」
俺はリーナちゃんに感謝する。
誰かを助けることを実感できた。その経験は、麗奈にとってきっと光だったに違いない。
かつての麗奈を知っている者として、あの時の麗奈を分かってなかった者として、そして今の麗奈と確かに絆を結んでいる者として。
言い方はおかしいけれど、麗奈に助けられてくれたリーネちゃんに心から感謝したい。
「本当に……ありがとう」
涙すらにじむほどに、俺は心から感謝を告げる。
雨宮麗奈にとって彼女は恩人だ。そしてだからこそ、俺にとってリーナ・スターレインは恩人だ。
本当に、本当に感謝してしまうよ。
「………え、あ~……照れますねぇ……」
リーナちゃんは照れくさそうにポリポリと頬をかくけれど、でもまぁまんざらでもないだろう。
ただ、思った以上に顔が真っ赤なのが気になるけどね。
「お茶を入れるよ。多分後で忙しくなるだろうし、一息入れようか」
そっとした方がいいだろうしね。
「……やば、麗奈お姉様の気持ち分かったかも……っ」
今リーナちゃんが何か言ったような……?
いろんなところでフラグが立っておりますですはい。