シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
とりあえず、ディアボロス編最終話まで行きつきました。
感想・高評価はともに我が活力となるので大募集です!
《木場祐斗》
一瞬感じた凄まじい寒気に、僕は思わず教会の方を振り返った。
それは隙にはならない。というより、もう僕の敵である女堕天使は死にかけている。
「貴様……何をした……?」
「別に。僕は格上を倒したいものでね、同類を参考に独自の武器を作っていただけさ」
女堕天使の顔色が悪いのは、深手を負っているだけではない。
僕は知識としてしか知らないが、知っているからこそ本来は優しくするべき女性だけの状態に強引に持ち込ませているのさ。
「魔剣というのは強大だと呪いが発生するだろう? 僕はそれを逆手にとって僕に影響の出ない呪いで魔剣をブーストさせたんだ。……重度の生理は大変だろう?」
あまり使いたくない手段ではあるが、研究の一環としては有効だ。実際、危険な相手に対して勝利を掴む一手ともなっている。
イメージした魔剣を創り出すと言っても、魔剣創造の限界を超える魔剣を創り出すことは不可能だ。そしてイメージが曖昧だったりイメージそのものが魔剣として成立しなければ、当然魔剣として矛盾が生まれる。
ただ、最近になって参考にできる人達が多く関わってくるようになったこともあってね。僕は格上すら打倒できる為の魔剣の研究を進められるようになっていた。
その一つがこの魔剣だ。重度の生理という、女性でしか経験できない状態に持ち込む呪いによって、男の僕が影響を一切受けない形で反動といえる呪いを発生させる。
反動が発生するからか、魔剣創造の代物としては高性能。加えて相手が女性ならば圧倒的に有利に立てる。
まぁ、僕の仲間や主は女性が多いから多用はできないけどね。乱戦だと味方の自滅を招くという意味では、使いづらい魔剣だろう。
ただ、今回は役に立った。それだけだ。
そして、他の戦いも決着が進んでいるね。
「が……はっ!? なに、今の……!?」
「あらあら。勝利を確信してからの敗北でいい表情になってますわ。……思わずもっといたぶりたくなるぐらい」
むしろ意識すら曖昧になりかけている少女の堕天使を前に、彼女をズタボロにした朱乃さんが剣を消す。
流石は我らが
「朱乃さんの相手とは彼女もついてない。まぁ、あの人がいるからこそ波柴先輩達が来てくれたから助かったけどね」
身もふたもなく言えば、朱乃さんのあの力を警戒して、桃山警護事務所はこの駒王町に拠点を構えている。
ようは朱乃さんの監視として雇われた組織なんだ。というより、雇われたという体裁で任務を受けている国家機関といえるだろう。
もう一つの理由もあって、僕達はある程度の詳細を聞いている。最も、波柴先輩辺りは薄々勘づいているうえで任務を受けているんだろうけどね。
そして、小猫ちゃんの方も決着がついたようだ。
「……衝撃が吸収されるなら、握り潰す……っ」
「……~~~~~~~~っ!?」
……業を煮やしたのか、相手が油断している隙をついて占め技を仕掛けたらしい。
あと金的を押し潰すようにしている。一瞬だけ男の堕天使に同情したよ。
そして、それ以外の戦いはリアス部長が圧倒している。
残存しているはぐれ悪魔祓いはもう一割程度だ。最も、見切りをつけて逃亡した者もいるようだけどね。
「さて、本当なら全員滅ぼしたいところだけれど……時間切れね」
そう、部長がため息をついた時だ。
巨大かつ重量のある音が響き渡る。
その音に残った者達が振り返れば、教会の地下室がある地点に拳を叩き込んだ二十メートル近い鋼の巨人があった。
「じゅ、準
「オイちょっと待て!? あれって、確か神の子を見張る者じゃ一人しか保有者がいないはずだろ!?」
はぐれ悪魔祓い達が恐れおののく中、その巨人の頭部の上に立つ人影がある。
……特徴的な髪だ。襟足から下が赤茶色になっている、銀髪のロングヘアー。
そして眼帯をつけたその女性は、白い衣をなびかせて得意げに笑う。
「グゥリィイイイイイイゴリィイイイイイイイッ!
両手を交差して高笑いじみた状態になっているその女性は、はぐれ悪魔達を天井が壊れた地下室にいる者達込みで見据えた後、宣言する。
「今から投降して刑を受けるか、ここで無意味に討伐されるか選ぶがいい! 私はどっちでも構わぬぞぉおおおおおおおっ!!」
……ノリノリだね。
なんだろう。僕達より年上だと思うのだけれど、どうも精神年齢だと僕達の方が上回っている気がする。
というか、ポーズを数秒単位で切り替えている。完全にあれは趣味のノリだ。
「そういうことよ。ここで無駄死にするか、罪を償って再起できる可能性に賭けるか選ぶんだね。……きちんと償って今後戒めるなら、こっちは警戒はしても手出しはしないからさ」
そう言葉が違う方向から響き渡る。
そこではミニスカメイド服の波柴先輩が、メイド服の女性を三人連れてきていた。
桃山警護事務所はメイド服&執事服が仕事着だけど、徹底しているね。ボロボロのまま来てくれている辺り、急いでくれたんだろうけど。
「どうやら大体のところは終わったようね。仕事をしたかいがあるわ」
「そうだね。とはいえ、誠二と麗夜、あと兵藤君がいないのが気になるけどね」
吹本海砂さんと旗本流花さんが、周囲を警戒しながらも大概に少し楽にしている。
既に趨勢が決定づけられているしね。増援も来るだろうからもういいだろうといったところか。
と、最後のもう一人がキョロキョロと辺りを見渡している。
「それで、ダーリンはどこに!? あれ、どこにもいない!?」
だ、ダーリン?
状況がさっぱり分からないでいると、足音が響いた。
「はいはい、俺は此処だよ美子ちゃん」
苦笑している空本さんが、左右の肩にイッセー君と樹下君を支えて廃教会から出てきていた。
なんというか、苦笑は苦笑でももの凄く苦い笑いだ。
ほっとしているというより、明らかの困惑が上回っている。
「いったい何が―」
「ダ~リ~ッン!!」
リアス部長が何か言い切るより早く、最後のメイドの少女が勢いよく空本さんに抱き着いた。
……いや、勢いよくかと思ったけど直撃直前で地面を蹴って勢いを殺している。二人の男性を支えている空本さんを気遣った判断だろう。
意外と冷静だね。
「はは、心配かけたね美子ちゃん。ま、俺の疲労は戦闘よりそれ以外の方が重いから気にしないでくれるかな?」
「むぅ~。ダーリンが簡単にやられるなんて思ってないけど、やっぱり本丸に乗り込んでるとなると心配で心配で……こっち来ちゃったけど、怒る?」
「ま、心配をかけたのはお互いさまってことで流すさ。それに所長がOKを出しているのならね?」
結構仲睦まじい会話だね。美子と呼ばれた女の子は、小猫ちゃんと同じぐらいに見えるけど。
「あらあら。可愛らしい社員がまだおられましたのね?」
「社員というか準社員かな? 小笠原美子っていう子だから、よろしくね」
朱乃さんが波柴先輩と女の子について語っていると、リアス部長は軽くため息をついてから後ろの方を振り向く。
「それで、そちらの用事はもう済んだのかしら?」
『ああ。ターゲットの始末は済んだので失礼する。騒がせ賃は後で本社から郵送させてもらうさ』
……僕が接近に気づかないとはね。間違いなく手練れ中の手練れだ。
おそらく、この合成音声越しに語り掛けているのがアイアンローズから来たものなんだろう。
堕天使レイナーレ一派の中に、仕事にかこつけて民間人の殺傷をしている者がいたらしい。その報復を依頼として受けており、潜伏しているこの街を管理するリアス部長に接触を試みたようだ。
もっとも、神の子を見張る者側もレイナーレ達を流石に庇う気がなくなったようで処罰対象とみなしていた。それが、神の子を見張る者の依頼はおろか接触すら受け付けないアイアンローズが結果的に共闘する形になったようだ。
『ただ、例のシスターが神器を使うことがない生活を求めているのなら本社にメッセージをよこしてくれ。悪魔側では逆に扱いが難しいだろうし、こちらが手間賃込みで引き取ろう』
「人身売買じみた真似をする気はないわ。まぁ、一応話はしておくからその時は考えておくわね」
リアス部長がそう応えると、気配はすぐに消える。
むしろ意図的に大きな音を出しながら離れている辺り律儀なようだ。
とはいえ、これで終わったということなんだろう。
やれやれ。まだプロのレーティングゲームにもデビューしてない上級悪魔とその眷属が扱うには、中々に大ごとな案件になったものだよ。
《樹下誠二》
意識が戻ったかと思ったら、なんか別件での話し合いが始まっている。
離れたところでイッセーは治療を受けているが、ここはプロとして頑張らないとまずいだろうな。
そう思いながら起き上がっていると、なんというか凄い微妙な空気になっていた。
「……むぅん。分かっていたがこんな形で再会するとは……む~ん」
なんか唸り声をあげている珍妙な髪色の女は、チラチラと麗夜さんの方ともう一人の女を見ている。
麗夜さんは麗夜さんで、いたたまれないような頭痛を感じているかのような微妙な表情だ。時々抱き着いている美子の頭をなでているけど、現実逃避を兼ねている気がする。
そんな微妙な空気の中で、最後の一人が咳払いをした。
「とりあえず、リアス・グレモリーに改めて自己紹介を。——カトリック教会、司祭枢機卿ヴァスコ・ストラーダ殿の依頼で派遣された、
「う、うむ! ……
元気よく威厳を感じさせたいような口調で挨拶するが、完全に雨宮麗奈に主導権を握られているなこれ。
この一瞬で力関係というか、関係性がよく分かったというか。
「……知り合いなのかしら?」
「高校一年生まで同じクラスだった幼馴染です。まぁ、会ったのはそれ以来ですけど」
リアス先輩に麗夜さんが答えると、麗夜さんは非常に複雑そうな表情を浮かべながら首を傾げた。
「で、基本的にどういう流れになるのかな? レイナーレは誠二と兵藤君が討伐したけど」
「……ふむ。主犯レイナーレ及び、この町で殺人や強盗行為を行った者はリアス・グレモリーの裁量に任せる代わり、他は神の子を見張る者で引き受ける手はずを整えるという話だったな?」
「そうなの? ま、こっちはその辺はきちんとやってくれるならどうでもいいけど」
麗夜さん達三人がそう言うと、視線が秀華の方に向いた。
「一応伝えたけど、どうするの?」
「フリード・セルゼンとかいうはぐれ悪魔祓いはこちらに引き渡して頂戴。私達の依頼人を猟奇的に殺したうえ、可愛いイッセーを傷つけたのだもの」
秀華にリアス先輩がそう答えたうえで、二人の視線ははぐれ悪魔祓い達の方を向いた。
ただ、少ししてリアス先輩は首を傾げた。
「いないわね。もしかして滅ぼしてしまったかしら?」
「そういえばそうですね。特徴的な白髪でしたし、狂気が段違いだったので見間違えないと思うんですが」
木場もそう言って辺りを探るが、やはり見つけられてないようだ。
「……情勢不利を悟って逃げたとかか?」
俺はそう考えるが、だとすると厄介だな。
退き際を見極めて逃げに徹することができるやつは厄介だ。戦いとは頑張って準備をすれば必ず勝てるわけではない以上、負けると悟った時に上手く対処できるのが優秀さの証拠といえるからだ。
ここで逃がしたことが尾を引かないといいんだがな。とりあえず、上に頼んで警戒網の見直しぐらいは頼むべきか。
それから代表として動いている者達がある程度話を終えた後、雨宮麗奈がちらりと視線を別の方向に向ける。
「で、ある意味で事の発端といえるアーシア・アルジェントについていいかしら?」
その瞬間、少し空気がピりついた。
教会側が既に追放をしている以上、教会側からその話を蒸し返すような展開はややこしいことになるのは当然。相手だってそれは分かっているはずだ。
そのうえで、必要と判断すればズバッと切り込むか。中々に女傑だな、あの女。
「一応言っておくけど、強引に連れ戻すつもりはないわ。……要点だけをかいつまむと、ストラーダ猊下は隠棲先を用意するべきと進言していた側でね。間に合わなかったことを気に病んでいて、せめてものフォローができないかと動いていたのよ。で、日本人で縁があって、直接的に聖職者ってわけじゃない私が都合がいいってことで追跡調査を主体として派遣されたわけ」
「……なるほどのぉ。なら、神の子を見張る者は真っ先に手を切るべきだろう。この流れでうちに来るということはまずないしな」
雲川麗華がそう言うと、リアス先輩は頬に手を当てる。
「さて、教会関係の揉め事である以上そっちに任せるのが筋なのでしょう。ただ、そう簡単にいきそうもないわね」
そう言って困り顔で振り向くと、視線の先ではイッセーの治療をしているアーシア・アルジェントの姿があった。
イッセーも既に体調が良くなって二人で話しているが、その表情は華やかだ。
……これ、確実に惚れているだろう。
ま、あそこまで体を張って助けようとしていたんだ。あいつが自発的に動いているからこそここまでのことになったんだし、こうなるのは必然か。
さて、その辺りを説明した方がいいんだろうが―
「ま、その必要はまずなさそうね」
―なんて思っているうちに、雨宮麗奈は肩をすくめて苦笑した。
「あの状態で無理に引き離すのも無粋でしょう。ま、慈愛あふれるグレモリー家の次期当主様なら、役に立ちまくる神器使いはきちんとした待遇で保護してくれるということにしましょうか」
「あら? スカウトはするつもりだけれど信徒が悪魔になってくれるかしら?」
リアス先輩はそう言うが、雨宮麗奈は寂しげな笑顔で返す。
「愛の力は偉大でしょ? ただ、歪まない様にきちんと見守ってあげなさい」
そういうと、雨宮麗奈はサマーコートの内側から手紙の束をとメモを取り出し、メモに字を書き込んでから一枚破って手紙と一緒にリアス先輩に渡した。
「私の仕事用メールアドレスを渡すから、結果を伝えて頂戴。万が一こっちに戻るのなら保護するけど、まずないだろうからこっちの手紙の束も渡してもらえるかしら?」
結構な数の手紙だな。海外のそれっぽいのは間違いないが、何なんだ?
「麗奈、それは?」
「あの子が追放された後でも送られてくる、彼女に癒された人の感謝の手紙よ。ま、悪魔側に一々届けるわけにもいかないから、今後の分は諦めてもらうけどね」
麗夜さんにそう言うと、雨宮麗奈は踵を返す。
「じゃ、私はさっさと帰るわ。……どの口が言うのかとは思うけど、会えて良かったわ二人とも」
そう苦笑と共に告げて、雨宮麗奈は去っていく。
「お姉様ご無事ですかぁああああああああっ!?」
「ッカフッ!? この、もうちょっと待ってなさい!」
あ、なんかグダった。
「……ふむ。なら私もこやつらを連れて退散するとしようか。一応、後日刑罰については伝えるが……駒王学園宛てでよいか?」
「そうね。オカ研宛てにしてくれれば届くようにしておくわ」
雲川麗華もリアス先輩と言葉を返してから、でかい巨人で投降した連中をとっ捕まえて転移の光に包まれる。
そして消えるより前に、寂しげに笑いながら麗夜さんの方を振り向いた。
「会えて良かったぞ、麗夜。次は敵同士だろうが息災でな!」
そして転移の光と共に、雲川麗華もその場を去る。
ちらりと、俺は麗夜さんの方を見る。
秀華も海砂さんも流花さんも、美子も事情を知っているからちょっと気づかわし気になっている。
ただ、麗夜さんは寂しげだけど確かに微笑んでいた。
「うん、確かに。元気でやってるって知れたのは良かったよ」
……本当に、この人も大概難儀な人だ。
《???》
小さな端末を介して、俺は一連の戦いを多角的に確認していた。
さて、面白いことになってきたな。
彼らの救出は手間が掛かるが、まぁ神の子を見張る者に送られてからでいいだろう。
俺達はともかく、俺達がいる組織はあそこの内通者も数多い。メッセージの一つや二つは伝えられるだろうから、救出そのものはタイミングを計るべきか。
中々に面白い組織であるアイアンローズ。三大勢力の結果的な共闘。そして、桃山警護事務所か。
面白い連中がゴロゴロいるようだ。まだまだ花は咲いていないが、花開けば英雄譚の主役を張れそうなものがゴロゴロいる。
……ああ、
俺と彼女の物語は、もっと壮大なものでなければならない。それまでに討たれる可能性はお互いにあるが、そうだとするならそれまでの話だ。
待っていてくれ。愛する俺のジュリエット。
英雄譚の幕開けは、あと半年もないのだから。
その時こそ、殺し合いを始めよう。
お互い、
闇夜も照らす煌くヒカリ。万象全てを照らす英雄譚は、もうすぐそこに迫っている。
次回よりフェニックス編。
そして次回、ガチ目のエロ話となっております。