シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
いやマジでおいしい。ハーブってあまり手を出してなかったけど、損していた気になりました。
それはそれで本編!!
《Other》
「面倒な回復役から潰すぜ……っと速い!?」
「き、鍛えてますから!!」
速攻で振るわれる斬撃に対し、アーシアが取った選択肢は回避。
流花から教えられた聖母の微笑の応用技法。回復特性を流用する身体強化。
それによって底上げされた身体能力で、奇襲をぎりぎりで回避することはできた。
アーシア・アルジェントの回復力は間違いなく絶大。聖母の微笑という土俵においてなお、その回復力は上澄みといえるだろう。
そこに遠距離投射を可能とする為、敵対者である英雄派が妨害を試みるのは当然だろう。
だからこそ、事前にその対策として護身に特化した立ち回りを習得させられている。回復に集中しつつ、身の安全を最低限図るのが今のアーシアが持つ役割だ。
必然、そう簡単にやられるほど甘くはない……が。
「だが追い込めた……やっちまいな、
「分かっている、
それも相手も悟っている。
既に回り込んでいた大柄な男が、拳を握りこんでアーシアに振り下ろす。
躱されたとしても誘い込むことで攻撃を与える二段構え。アーシアは事実、反応が追いついていない。
だが、世の中はそこまで甘くはない。
「まだだぁっ!!」
滑り込む形で割って入った秀華が、蹴り上げて強引に跳ね飛ばす。
蹴りと拳がぶつかって爆発が起きるが、秀華は気合と根性でそれを無視。
そのままアーシアをかっさらって距離を取りつつ、砲撃を叩き込む。
自分の周囲から放たれる掉尾の海蛇龍による大火力砲撃と、準神滅具による包囲攻撃。
それによって二名の英雄派を抑え込みつつ、秀華はbackステップで距離を取る。
「アーシアちゃん。右足が亀裂骨折してるから回復お願い♪」
「だ、大丈夫なんですかぁ!?」
ウインクしながらでは断じて言うことではない要望に、アーシアは慌てて回復を行う。
骨折とは普通に激痛であり、した状態で走るなど本来論外。
だが、例外は常に存在する。
「痛さは別に。ガチになればそういうの基本的に無視できるし……まぁ、一度やっちゃうと止まれないから避けたいけどさ……っと!」
宥めている秀華が横に飛ぶと、即座に斬撃が叩き込まれる。
そして秀華は砲撃を放ち、回り込んでいた打撃を迎撃する。
「連携は中々だけど、読みやすいね」
「なるほど。相手が上澄みではこうもなるか……だが!」
大男は秀華の指摘に納得しつつ、再び拳を握り締める。
それを砲撃で迎撃する秀華だが、発生した爆発の強大さに強引に弾かれた。
「禁手……違う、神器の上乗せ……それも、これ麗奈の!?」
「ああ。放浪型の
その瞬間、振り上げられた蹴りを迎撃した秀華が爆発で弾き飛ばされる。
「
「……そういうわけで覚悟してよなぁ?」
そして回り込んでいた相方の男が、剣を片手に切りかかる。
アーシアを庇って攻撃を受けた秀華は、態勢を整えきれず―
「……まだだぁっ!!」
―それを気合と根性で強引に乗り越え、関節の負荷すら無視して回り蹴りで弾き飛ばす。
だがその蹴りの感触に、秀華は悪手を悟る。
「まずい、さっきより防御が上がってる!?」
「ご明察っ! これぞマゾヒスト向け神器筆頭……
即座に体勢を立て直した攻撃を回避しつつ、秀華は舌打ちする。
聖者の試練。その特性は「攻撃を受けるごとに防御力が向上する」という神器だ。
一撃で仕留められればそれで済む話だが、一撃で殺しきれなかった場合がしぶとい。更に聖母の微笑保有者がいる以上、難易度と脅威度は更に底上げされていく。
「……巴御前様や心寧が頑張ってんだ。俺達も気合入れて足止めぐらいはしねえとなぁ……?」
「ああ。山吹御前様や義仲様に顔向けできん」
油断なく、隙を見せずに左右からこちらを見据える英雄派の若者に、秀華は内心で舌打ちをする。
「大丈夫です。遠慮なく動いてください……!」
「そうするよ。気合入れてねアーシアちゃん」
アーシアに負荷が大きすぎ、遠距離回復の狙いも荒くなる。
だが、この二人の連携を前にして、無力化されないだけましとみるべきだろう。
「英雄なら名乗りを上げなよ。それとも、魔王と関白の血筋コンボは怖いかにゃ~?」
軽い挑発をかね、情報を少しでも得るべく誘いをかける。
それに対し、双方が好戦的な笑みを浮かべて応える体制を取る。
「木曽分隊所属、
「同じく……
左右から仕掛ける体制を取る男達を前にし、秀華は呼吸を整えながら気合を入れる。
これは間違いなく、強敵だ。
振るわれる斬撃に対し、斬撃をもって迎撃する。
それを繰り返すたびに、松森信子の心は軋んでいく。
相手が振るってくる剣は、聖なる炎を纏っている為、自分と相性が悪いのは間違いない。
だが、そこは大きな問題ではない。
何より心を軋ませるのは、それを振るうのがかつての親友だという事実だ。
「どうして……どうしてこんなことをしてるの、凛音!!」
振るわれる攻撃を迎撃し、そして信子は吠える。
大声を出さなければ心が保てない。そして、それだけでどうにかできるわけがない。
そしてその所為か、星辰光が上手く機能しない。
自分の星辰光ははっきり言って弱い。元々資質がないのを、秀華の眷属となることで無理やり会得していることも多いだろう。
だが、今回はかなり特殊な事態だ。もはや一種のPTSDなのか、凛音が攻撃を仕掛けてくるたびに星辰光の能力だけが不調になる。
「……思ったより強いわね、信子って努力家だし……だから?」
「お互い様でしょう? 貴女だって、いつも頑張っていたじゃない」
苦笑交じりの凛音の言葉に、信子は歯を食いしばるそう声を絞り出す。
信子が知る竹林凛音という女性は、芯が強い女性だった。
いまだに一見すると女子中学生でも通りそうな小柄な見た目だが、色々と苦労を経験しながらも腐らずにしっかりとした足で立っていた女性だった。
「それが、なんで……矢城達の、私の所為……?」
歯噛みするほかない。
既に調べは追いついている。日本政府はその点でも優秀さを発揮していた。
波柴矢城が大学時代に行っていた売春事業。大学有力者に繋ぎを作る優遇を取り、将来有望とされる学生達にも繋ぎを作ることで、それを餌と弱みにすることで波柴の覇権をより確実なものにすることを見越した計画。
その被害者の一角に、凛音がいることは発覚した。
関わっていた男の何人かに改めて尋問することで、タイミングもある程度分かっている。おそらくだが、自分が墜ちたことを悟ったのが原因だろう。
助け出す為に己の体を差し出し、逆に絡めとられる。捜索でよくありそうな展開が想像できる。
芯の強い女性だったと思う。心から尊敬しているし、見習いたいと思うところも数多い。
その片鱗は今も見えている。強い心をもって戦っているからこその強みを感じる。
だからこそ、だ。
「私が言えた義理じゃない。でも、昔の貴女が……こんなテロを容認するとも思えない。……矢城ももう討ち取ったのに、なんで……っ!」
「違うわよ、信子」
静かに、唸るようなその資格のない糾弾は否定された。
竹林凛音は、澄んだ声と澄んだ瞳でそれを否定する。
「私はもう、矢城のことなんてどうだっていい。……あ、でも気づかせてくれたことは感謝してる。そこを否定するのは色々ダメか」
「何を……言っているの?」
小さく大切な思い出を思い返しているような笑みを浮かべる凛音。
それに、信子は何かを認められない自分がいる。
そして凛音は、明るい笑顔をもって胸を張る。
「私は……パパが欲しかった」
そう告げ、そして確かにはにかむ。
「自分を全部預けられる人が欲しかった。頑張った後抱き着いて、ただ褒めて可愛がってくれる人が欲しくて、それをくれるならどんなことを頑張ってもいいと思えた。……幻滅した?」
その小さな苦笑は、自嘲のそれだ。
「疲れたのか、飢えてたのか。矢城は確かにそれを見抜いて、パパになってくれたし飼い主にもなってくれた。……多分その時から、私は信子のことも
その言葉に、信子は何も言い返せない。
自分もまた似たような者だ。
永礼に対する後ろめたさも愛情も、それ以上に矢城達に与えられる快楽がもたらす幸福のエッセンスに成り下がった。
持ったままそうである自分に比べれば、忘れ去ることができた彼女の方がよっぽどましだろう。少なくとも、裏切りの酷さで考えれば断言できる。
「あの安心感はもう忘れられない。愛玩されるっていうのがあんなに幸せなんて知らなかった。あんな風に頭をなでて可愛がってもらえるのなら、私は小便をひっかけられても飲まされてもお尻に注がれても構わない。……自分の尊厳が砕け散って誰かのモノにされるのが、あんなに心地いいなんて知らなかった……っ」
「……そういうことなの? やっぱり、矢城達が急に「こっちからは求めない」なんて言ってきたのは……っ」
顔色が悪いだろう。気持ちが悪いし視界は暗いし心臓は早鐘のようになっている。
思い出している。かつて心折れて矢城達の情婦に成り下がっていた時、矢城達が急に自分達から呼び出さなくなったことが二度あった。
そんなものは苦痛でしかない。当時の信子にとって、快楽を押し付けられることはもはや自分を保つの必須だった。だから、当時の彼氏と別れる選択肢を命令通りに捨て、愛しながら裏切り続けることすら選んでいた。
だから共に、一日経たずに泣きついた。当時はその時の悪意ある笑顔に、只のエッセンスと思い安堵したことを覚えている。
最初の方は自分にあえて行動させることが目的だったのだろう。一度自分の判断で踏み出させることで、調教を完成させるといったところか。だからこそ、二度目の理由はただの遊びだと思ってしまっていた。
その裏で何があったのかが確実になったことで、信子は崩れ落ちそうにすらなっている。
そしてその上で―
「だけど、今はもっと幸せ」
―凛音は信じられないような胸の張り方をした。
「矢城達は私のことを、どこまで行ってもいじりがいのある玩具としか見てなかった。それでもいいと心から思っていたけど、巴さまと出会ってその上を知ったの……♪」
抑えきれない喜びが笑みとなり、隠す気などない誇らしさが薄い胸を張らせる。
その感覚を、信子は知っている。
あれは自分の尊厳を他者に完全に預けられた喜び、青蘭が到達しているような感覚だ。
よく言えば忠義。悪く言えば奴隷根性。己の尊厳よりも大切な人物を見出し、そんな主の為に全てを捧げられる生き方を貫く者だけが持つ在り方。
「主が下僕を下僕として愛してくれる……。絶対的な存在が愛玩してくれて幸せすら願ってくれる……その想いに応えたい……殉じたい!」
だからこそ、この宣言は最低限の心遣いなのだろう。
「だから私は、山吹御前! 巴御前に仕え、共に木曽義仲を支える妾……その為ならば、いかなる者も討ち取ると知れ!!」
容赦してもらえると思うな。私は、貴女を殺せるのだと。
それを突き付けられ。信子は絶望すら感じ―
「……まだだ!!」
―その瞬間、流れ込む星を悟り、その背を押されることを選ぶ。
視界の隅で、黒き衣装を纏う主の姿が見える。
こちらに気を使ってくれたのだろう。アーシアをカバーしながら、猛攻を捌きつつの援護に感謝する。
……状況は不利だ。
星辰光は時々不調になる。そもそも戦闘技術において自分は劣悪側。
だが、それは足を止める理由にはならない。
自分がやる必要はないかもしれない。むしろ避ける方がいいのかもしれない。
だが、目の前の己の愚行の結実を、目を背けて終わらせるのは嫌だ。
「なら全員殴り倒して、監獄に叩き込んでても止めるだけよ!! ……私にだって、主はいるもの!!」
そう、それが今の自分を支えてくれている。
幸せになっていいのだ。幸せになれることから目を背けるな。
罪を償うという大前提の上で、その先が幸せであることを命じられた。
ただただ地の底を這いつくばるしかできないような自分は救われた。ただ引き上げられるだけでなく、いざという時終わらせてくれると、宣言してくれた黒き刃に恋をした。
そんな彼を、あのしっかりしていても幼かった子をそこまで導いてくれた銀の蛇龍が、自分すらも導き面倒を見てくれる。その上で、何もない私に使命をくれた。
今の菜緒全力で戦っている二人に恥じるわけにはいかない。少なくとも、自分の責任をただ放棄するような真似はできない。
だから剣を握り締め―
「なら、同病類哀れんだ方がいいかな?」
その隣に、先輩が降り立った。
「……梅木先輩!?」
思わず面食らう信子の視界で、梅木京花は苦笑いを浮かべていた。
「こっちはこっちで大変だけど、まぁ見捨てるのはあれだからね。……というか京都で同じ釜の飯を食べたならぬ、同じ男のケツの穴を舐めた女が三人も出くわすとか……何この運命?」
「「いやそうだけど!? そうだけどぉっ!?」」
思わず親友がハモるような発言に、空気が微妙になった。
「……ちなみにさっき、成れの果てが出てきて返り討ちにしましたけど、どうします?」
ふと思い出したので言ってしまう辺り、信子はだいぶ混乱していた。
「え、あいつもう死んだの!? お礼参りしたかったけど死体蹴りはサリアローズ様達の名誉が……ぅ~ん」
「パパ死んだんだぁ。……あ、でも面倒ごとなくてよかったのかしら?」
そして更に空気が微妙になった。
戦闘が再開するまで三分ぐらい経ったことを付け加えておく。
木曽分隊の後半も終了です。
さて、最近は書き溜めがたまってないのでちょっとインターバルが長くなるかもです。……興味のあったゲームブランドの最新作を買うので、プレイ分の時間が取られることもありまして。あとダイエットのために体が疲れているときも多いので、執筆の速度がどうしても……!
でも頑張って続けていきたいので、期待して待っていてくれると嬉しいです!!