シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
《樹下誠二》
気づけば霧に包まれ、俺達は二条城まで転移していた。
「……独断の転移は謝ります。ですが、相手に反粒子使いがいる以上は形成を立て直す必要があります!」
コガネさんが謝りながらも理屈を告げるが、それより確認した方がいいな。
「……何があった? 明らかに二人揃って動揺が酷い……っ」
そこまで言いかけ、俺はふと気づく。
コガネさんとコナユキ。二人の心の傷にとって、深く関与する人物がいる。
ビルカ・シュバルツァーとアルティ・ブロウニング。コナユキが殺させられ、そこに至る過程でコガネさんが道筋を立ててしまった二人の少女。
……死体は砕け散っているはずだが、その細胞を利用したクローン兵器……?
突拍子もないし必要性の薄い仮説だが、そう考えると納得は行く。
「……少なくともとても似ています。彼女達が生きて育っていたのなら、ああなっているだろうと思えるぐらいには」
「となるとまずいな。……青蘭! コナユキを頼む、精神的に重傷だ!!」
「承知した!」
「……ぅ……げ、ぇ……っ!?」
既にやばいことになっているコナユキを青蘭がカバーするが、しかしこれはまずいな。
位置はつかめた。なので最悪はイッセーに砲撃してもらってまとめて吹っ飛ばすべきだ。だが避けたいのも事実という面倒なことになっている。
まぁどっちにしてもイッセー達の戦況次第だな。
視線を動かせば、そこでは呆気にとられているイッセー達がいた。
そして何より、曹操の腕が切り落とされている。
切られた方の腕が見当たらないが、処分しているのならありがたい。槍使いが隻腕なのは大きなデメリットだしな。
「……これは予想外。ただ困った困った、フェニックスの涙も再生はしないからね」
そう言いながら、曹操はフェニックスの涙を取り出すと切断部位にかける。
傷口は治るが、切断された以上はそれだけだ。新しく生えたりはしない。
ただまぁ、裏ルートで集めているとは思っていたよ。価値がでかいからな。
今後はその辺りの摘発も進めてもらいたい。そう思いつつ警戒するが、曹操には余裕が見える。
腕を切断されたうえに治癒の当てもないとなれば、もう少し衝撃を受けてもいいだろう。胆力があるということだろうか。
「……どうやら、思ったより手強いようだね」
すとんと、曹操の隣に木曽義仲……旗本鏡夜が着地する。
曹操は苦笑しながら旗本鏡夜にうなづいた。
「手痛い体験料だったよ……だけど、君がいるなら問題ないだろ?」
「はいはい。……創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌く流れ星」
小さく苦笑しながら、唐突に旗本鏡夜は星を開帳する。
自然体で流れるようだった為、俺達も反応が一瞬遅れる。
咄嗟に距離を取って警戒するが、しかしそっちの方が失敗だったかもしれない。
気づいた時、曹操の腕が生えていた。
切断面から膨れ上がるように、切り落とされていたはずの腕が生えていく。
その光景に思わず面食らっていると、俺達と曹操に互いの仲間達が集まっていく。
「あの再生……神滅具、
舌打ちするサリアローズ殿に、旗本鏡夜は微笑んだ。
「その通り。そして、色々と掴めたから―」
そして旗本鏡夜は微笑むと、全身を闘気で包み込む。
あれは、流花さんやサイラオーグ殿と同様の真似か。
おそらくは流花さんの技を幽世の聖杯で再現したのか。あくまで再現止まりの神滅具とは言え、流花さんより出力も大きいだろ、あれはっ!?
「昔から、見取りは本当に上手だよね……っ」
歯噛みしている流花さんの言葉に、旗本鏡夜はニコリと微笑む。
「至って星が振るえることで、体が本当に凄く軽くてね。……そして、こんなこともできる」
さらに好戦的な笑みを浮かべた時、旗本鏡夜の質が変わった。
星辰体との感応がおかしいぐらいに高まっていると、俺ですら分かる。
これは俺の反粒子や秀華の結晶体……いや、そこまでじゃない。
どちらかと言えば、ディオドラや矢城のそれに近い。
「……疑似
好戦的な微笑みを浮かべるのも納得。それほどの凄みを奴は見せている。
静かに微笑み、そしてそれに応えるように巴御前がにやりと笑う。
「味方全体は私が担当して、点でやばいところを義仲がカバー。これが私達の本気モードよ」
「正直とっても助かるよね。おかげで少ないサンプルで禁手に到達する手段を確立できたしさ」
曹操もにやりと笑いながら、聖槍の切先を突き付ける。
まずいなこれは。
間違いなく、状況は不利だ。
回復という点においてこっちが不利になることがあるとは思ってなかった。完璧にやばいぞコレは―
「―ふざ、けるな……っ!!」
―その瞬間、俺は寒気を覚えた。
視線を向ければ、そこではもはや血涙を流さんばかりに激高している九重嬢が、曹操達を睨みつけている。
「母上をさらい、母上を操り、母上を利用して……っ」
「世の中なんてそんなものだよ、お嬢さん」
木曽義仲は、俺すら一瞬寒気を覚える怒気を前に平然としている。
ただし、笑みは消えている。馬鹿にしている様子もない。得意げになっている様子もない。
恐ろしいほどに、真摯な向き合いで九重の怒りを切って捨てている。哀れみからの同情心をもって、丁寧に過ちを教えているかのようだ。
それが現実だと知った方がいいと、親切心すら感じさせられていた。
「結局世の中なんて、弱い奴は強い奴の気まぐれに振り回されるだけだ。君の周りがそうでないのは、気まぐれで弱者を虐げない強者の庇護下にいたからでしかない」
寒気すら覚えさせるその言い分は、確固たる確信に支えられていた。
「弱い奴の意見や言い分が通るのなんて、後ろに強い奴がいるときだけさ。文句があるのなら、自他に関わらず強者の恩恵を持つべきだ。……自分より強い奴に愛玩されれば、人は命か信念が容易く失われるんだから」
その言い分に、流花さんが拳を握り締める。
反論ができないんだろう。流花さんからすれば、奴がああなったのは自分の責任でもあるのだと思ってしまうだろうし。
実際問題、奴の言い分と理念はその経験があってのモノだろう。そして、残酷なことにある種の真理だ。
平和とは、優しさとは、それを守る強さがあって初めて維持できるのだから。
だが、それ以上に九重の怒りが強かった。
「ならいいだろう……勝てばいいんじゃな……っ!」
そう言うなり、九重は懐から金属製の護符のようなものを取り出す。
更に呪符が重ねられていたが、九重はそれを引きちぎった。
……おい、それまさか発動体……っ!!
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌く流れ星!!」
ここからか……っ!?
《アザゼル》
「……あぁ!? 九重の奴、星辰奏者だってのか!?」
「はい。少なくとも、この京都で彼女を超える星辰光の持ち主はおりませぬ」
一旦前線を味方に任せ、水分と栄養を補給していると、そんな話を聞いて面食らった。
資料を確認すると、確かにやばいな。
能力そのものも当然だが、各性質も総じて優秀。星辰奏者としては破格だろう。
能力と性質を考えれば、星辰奏者としてはヴァーリ以上。シャレにならないぞ、オイ。
「だが、それならサリアローズでもあっさりどうにかするってのは無理があるんじゃねえか?」
「それは簡単なことです。初めて使用して以来、八坂様からも万が一の護身以上の使用を禁止され、彼女自身が使うことを躊躇しているからです」
教えてくれた星辰体研究者は、悲しげな顔をしながら性質の一点を指で差す。
基準値と発動値だな。基準がCで発動がAAと出ている。
一番低い性質でCで、更に一つAAがある。この時点で星辰奏者としては破格だろう。
ただ、言われてもちょっとピンと来ねえな。
「格差がでかいと反動が酷いとは聞いてるが、そんなになのか?」
「格差が同等な星辰奏者がおりますが、酷いですね。発動値を維持しながら戦闘するのもそうですが、解除してなお反動でのたうち回ることも十分あり得ます」
……樹下や雨宮、イッセーも格差はどっこいどっこいのはずなんだが。その所為でどうもピンと来ねえ。
というか、大抵の使い手は格差が大きくても扱える奴はいるからな。星辰光の性質か、本人が好むかどうかはともかく絶対に扱えない星は得られないと仮説を立ててたんだが。
いや、九重はまだ幼いガキンチョだったな。死線を何度も潜り抜けている二人と比べるのもあれか。
「となると、戦力としては計算しない方がいいか。むしろ使うような事態になった方がまずい」
イッセー達には頑張ってほしいがな。
……だがなんというか。
あいつらがらみだとこういう時こそやばいことになるんだよなぁ……。
《兵藤一誠》
九重が、星辰奏者!?
「刮目せよ。我より伸びて神威に届く、我が九つの尾の威光を」
マジギレしているのが俺でも分かる九重は、星を発動させながら飛び出していく。
慌ててカバーに入る俺だけど、俺の視界には九つの宝玉を具現化させる九重の背が見える。
「天の時すら支配せし、九尾の
ヘラクレスが反応して、星で具現化したっぽい十二本の剣を具現化して放っていく。
数では九重が不利だけど、それを九重はひっくり返す勢いで暴れていく。
「今この場こそ百鬼夜行。丑三つ時はこの時なれば、恐怖と悲鳴が巻き起こる」
というか、九の宝玉がそれぞれ炎を巻き起こしながら竜巻を作って、ヘラクレスの星を面で迎撃しやがった。
「逃げまどうがよい凡俗達よ。我らの怒りを悪意を引き出して、生きて帰れる余地などないと、今更ながらに知るがよい」
息を荒げながら九重は、更に宝玉の周囲に落雷を落としていく。
迎撃をする曹操達だけど、俺達がカバーに入っているから若干押され気味になっている。
「いざ天高らかに吠えようぞ。化生の長の出陣だ」
マジで納得できるような詠唱を唱え、九重は汗を流しながら凄い勢いで攻撃を放っていく。
「天すら犯す嵐を起こし、我らに逆らう咎を下せ」
九の宝玉を齎し、九重はヤバイ星で曹操達を見下ろした。
「裁きの時だ、息絶えろ」
当たり前だけど、マジギレしているな九重。
「
九重
基準値:C
発動値:AA
収束性:A
拡散性:A
操縦性:A
付属性:B
維持性:C
干渉性:A
「へぇ。ヘラクレスと真っ向からやりあえるような星辰奏者が、妖怪にいたとは思わなかったね」
コハヤ・リバーが感心しているけど、同時に肩をすくめている。
「でも、大体読めた。……やりようはいくらでもあるね」
そういうコハヤは、一本の薙刀っぽいのを具現化する。
いや、これはついさっきやりあったやつが似たようなのを持ってたな。
でもアイツ、魔器創造の保有者じゃなかったっけ……放浪型か?
「あいつの相手は私がするよ。……人造惑星、こっちでも研究したかったんだぁ~……っ」
仮面越しに、その表情が何となく分かって寒気を覚えた。
これは、マジでやばい……っ!?
まさかの九重強化。それもかなりガチ目。
いえ、当初の予定では九重を星辰奏者にする予定はなかったんです。
ただこの作品、原作キャラの星辰奏者化があまり進んでないなぁとは思ってまして。
そこに「グレンさんの作品って魔改造する割には京都の妖怪は対象になってないなぁ」的なご意見をもらったので「ならいっそのこと、九重盛りに盛るかぁ」と思い、まだそこまで書いてなかったこともあって半分即興で煮詰めました。
もうその分めっちゃ強力です。何が怖いってこれでも性質に限れば原作の方に