※この作品はR-18です。

シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 食欲抑制にガムを噛みすぎて顎が痛くなっているグレン×グレンでっす!

 あちらが立てばこちらが立たない事態に困っております。実に面倒ですダイエット。

 それはそれとして本編!!


第三十話 紅の刻

《木場祐斗》

 

 

 

 

 

 

 

 都市部で暴れ回す巨大な人型兵器。

 

 この猛攻が、敵を薙ぎ払い新しい乱戦へともつれ込ませる。

 

「いくら何でも民間人がいる都市のど真ん中だと!? 誰がこんなバカな運用を!!」

 

 聖剣を振るうアイアンローズのトップエージェントがそうぼやくが、どうやらある種のアドリブらしい。

 

 ろくでもないアドリブだ。これは非常にまずい。

 

 奇跡の子がどこにいるのかを把握し切れていない状況下で暴れられたら、もしかしたら巻き添えになるかもしれない。それを除いたとしても、これだけの攻撃力では被害が甚大になる……!

 

「やばいことになってるわね。駄賃をもらおうとしている場合じゃないかもしれないわね」

 

「逃がしませんわよ!」

 

 離脱を考慮しているトキコ・アガレスに、朱乃さんが追撃する。

 

 朱乃さんの星辰光は、神祖や使徒の不死を断ち切れる。だからこそ、朱乃さんはそこに注力するほかない。

 

 純潔十字連盟との一時停戦は成立しているが、それはそれ。アイアンローズや不正悪魔が敵であることに変わりはない。

 

 だけどこの状況、あの巨大兵器の所為で一気に傾いてしまっている。

 

 どうする、このままだと……っ!!

 

 

 

 

 

 

 

《Other》

 

 

 

 

 

 

 雨宮充二。彼は純潔十字連盟の人間において、まごうことなく最強戦力である。

 

 現役最強の悪魔祓いが誰かと言われれば、僅かだがデュリオ・ジュズアルドに軍配が上がるだろう。だがそれは戦力という話であり、一対一の正面勝負ならば充二が僅かに上を行くこともまた、事実である。

 

 対応できる範囲があらゆる意味で幅広いからこそ、充二が戦力的価値として劣る。戦闘において便利屋であることと最強であることはイコールではないが、最強であることは便利屋であることとイコールなのだ。最強戦力を出せば基本的には最も勝利の可能性が増えるのだから、当然だろう。

 

 文字通り万能系の手札を持ち、その上で最強戦力であるのがデュリオ。逆に充二は、典型的な特化型の星辰奏者だ。

 

 手札が少ないということは、やることがシンプルゆえの強みがある。人間の戦争において兵器が基本特化型であることから見ても、充二が戦力として有用であることは間違いない。

 

 だが状況が変わることが数多い以上、どうしても対応できる幅の広さは無視できない。また本質が切り捨てることに特化している充二に対し、面制圧を得意とするデュリオは大軍を相手にできるという点で一枚上を行く。

 

 故に、教会が本気を入れる場合、最適解は二人の同時投入だ。戦場全体をデュリオが制圧しつつ、点の精鋭を一人ずつ充二が潰す。残りの軍勢を補佐に回すことで、不意打ちによる二人の退場を抑制する。

 

 そんな戦略が当然のように提案されるほどに、星辰奏者である雨宮充二は強者である。

 

 それはつまり―

 

「見事だ。神を相手にただの人間がここまで追い込めるとは」

 

「……ぐぅ……っ」

 

 ―神エレボスを相手に、全身を血まみれにさせた目の前で膝をつくだけで済んでいるという偉業を成し遂げるほどの力の持ち主であることの証明だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《兵藤一誠》

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだコイツ!? 強い!?

 

 俺は今、なんか神様が連れてきたやつにめっちゃ追い込まれてる!?

 

 襲い掛かってくる人造惑星に、俺は咄嗟に三叉成駒になりながら立ち回ってる。

 

 立ち回ってるというより、防戦一方だ。

 

 咄嗟に選んだのが龍剛の戦車でよかった。でなければ一蹴された。

 

 攻撃が重いうえに速い。動きも素早く、こっちの攻撃を綺麗に躱して当ててきやがる。

 

 しかも魔法攻撃や魔力攻撃まで織り交ぜている。正直、押し切られそうでヤバイ。

 

 そして何より―

 

「消え失せろ、狂いに狂った下劣な龍がぁああああああっ!!」

 

 ―俺に対して殺意がでかすぎるだろ!?

 

 ここまで殺意をぶつけられるとは思ってなかった。そして、怖いぐらい打撃に殺意が籠ってやがる。

 

 なんだよ一体。こっちはこっちで色々と忙しいってのに……っ!

 

「今大変なんだよ、子供達が怖がってるから邪魔すんなっ!!」

 

 こっちもいい加減打撃が見切れた。

 

 だからこそ、遠慮なくカウンターで拳を叩き込む。

 

 撃鉄も入った。ラッキーパンチなぐらい、いい感じの攻撃が入った。

 

 ……だけど、効いてない……!?

 

「笑わせるなよ」

 

 静かに、そいつは拳を握り締める。

 

 それを見て、俺はまだこいつが本気を出してないことに気が付いた。

 

 そうだ。こいつは人造惑星。星辰光を発動値(ドライブ)にさせてからが本番だ。

 

 まさかこいつ、ここまでは様子見だってのか!?

 

「未来ある幼子に、お前達のような()()()()使()と迎合し……果てはいかれた色狂いの在り方で染めるなど、許されざる悪意と知れ……っ!」

 

 この殺気、俺に向けてくるどす黒い感情。

 

 俺はその時、人造惑星について思い出す。

 

 人造惑星は基本的に、素体として()()()()()に作られる兵器!?

 

「お前、まさか兵野か!?」

 

 兵野和正。アイアンローズのトップエージェントの一人だった、俺とアルトリーネさんが倒して死んだ男。

 

「今すぐ消し飛べ……創生せよ、天に描いた守護星を―――我らは鋼の流れ星!!」

 

 まずい、これはもろに食らったら……っ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Other》

 

 

 

 

 

 

 

 

 趨勢が大きくアイアンローズに傾く中、迎撃に動く悪魔達は大きな苦戦を強いられていた。

 

「あり得ない。……この出力、出力だけなら、魔王様と同等の……?」

 

 唖然となり、崩れ落ちそうになる上級悪魔。

 

 かつて、三大勢力の争いと冥界の内乱を経験し、魔王クラスの力をいやというほど知っていたその悪魔は、絶望すら覚えている。

 

 あれは明らかに科学を主体として組み立てられた兵器だ。裏を返せば、科学という理論的に再現することが可能な手段で、魔王クラスの力を振るう存在が生まれたことになる。

 

 たかが戦略核兵器どまり。それもうかつに乱用すれば自分達を滅ぼすような危険性と抱き合わせの物が限界の人類の技術、科学。

 

 それが魔王の域に到達したなど、信じたくもない。

 

 絶望すら覚えたその悪魔は、自分が狙われたことに気づいても動けない。

 

 胸部に備えた巨大な砲門。

 

 そこにある、間違いなく下手な最上級悪魔を超える力の奔流が彼を捉えたその瞬間。

 

「何を呆けているのだ!!」

 

 横から飛び掛かってきた影に、蹴り飛ばされる。

 

 骨にひびが入るが、それゆえに大きく飛ばされ射線からずれる。そして激痛で我に返ることも合わさった。

 

 合わさったからこそ、その庇った存在が、砲撃に飲み込まれることも分かってしまう。

 

 黄金に輝く獅子の鎧。それを身に纏って攻撃に飲まれるのは―

 

「サイラオーグ殿!?」

 

 ―この場における最強戦力の一角。サイラオーグ・バアルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《木場祐斗》

 

 

 

 

 

 

 

 突如として破壊音が響き渡る。

 

 誰もが注意を僅かに逸らせば、建築物を突き破って赤い鎧が吹き飛んでいく。

 

 龍を模した鎧は胴体部分が砕け、血反吐を飛行機雲のように残しながら、音速に近い速度でそのままほかの建築物を突き破っていく。

 

 そこまで理解し、余波に耐えながら、僕はそれが誰かを理解していた。

 

「イッセー君!?」

 

 イッセー君が、それも戦車を利用した三叉成駒を使ったであろうイッセー君が、深手を負いながら吹き飛ばされる。

 

 直後、それを追いかけるように破壊跡から人影が飛び出す。

 

 反射的に聖魔剣で切りかかるが、そいつはさらりとそれを躱す。

 

 間違いなく手練れだ。何より動きが尋常じゃない。

 

 おそらく人造惑星。それも手練れが素体となっている。

 

「そんな、イッセー!?」

 

「イッセーがやられただと!?」

 

「イッセー君!?」

 

 リアス部長もゼノヴィアも朱乃さんも、理解が及んで動揺している。

 

 そしてそれは当然、悪魔全体に広がっている。

 

「赤龍帝がやられた!?」

 

「そんな馬鹿な、主力だぞ!?」

 

 動揺は当然だろう。

 

 間違いなく三叉成駒を使ったイッセー君は、この場における最強戦力の一角だ。ある意味で精神的支柱と言ってもいい。

 

 それが、今まさに倒されたかもしれない。動揺は激しく―

 

「……何をやっている!!」

 

 ―それに反応しようとしたアイアンローズの一人を、舞い降りた女傑が文字通り両断する。

 

 強引に叩き飛ばされた死体に混乱が生まれる中、獲物についた血を振り回して吹き飛ばし、その人物は声を張り上げる。

 

「我らの動揺はそれが戦に直結すると心せよ!! その程度の無様をさらすような者を、この作戦に投入させたつもりはない!!」

 

 吠え上げたのは、サリアローズ・バアル殿。

 

 彼女がここで来てくれたのか。

 

「……リアス嬢、吹き飛ばされた方向には避難所がある!! ……何人か連れていい、カバーに向かってくれ!!」

 

「サリアローズ? でも、この場は……」

 

 素早く飛ばされる声にリアス部長は躊躇するけれど、サリアローズ殿は石突を地面に叩きつけてそれを遮る。

 

「気が散っている今の貴殿では足を引っ張りかねんと言っている!! さっさと拭ってから戻って来い!!」

 

 確かに、今のリアス部長達は動揺が大きすぎる。

 

 僕も冷静さを失いかけているのだから当然か。イッセー君のあの状況は、無視できない。

 

「……分かったわ。すぐ戻るから、それまで耐えて頂戴!!」

 

 リアス部長も図星を突かれ、一瞬ためらうが頷いて走り出す。

 

 と、そこで神聖糾弾同盟からも何人か走り出していた。

 

 状況的にイッセー君が主力になると見て、補佐に回ったのか? ある程度鷹揚な判断ができる様で助かるね。

 

 とはいえ、ここからが厄介だろう。

 

 ……この状況、一歩を間違えるとこちらが死ぬ……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Other》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 避難所となっている集会所。その壁が突如として砕け散った。

 

 驚き下げ期越えも上がる中、砕いた鎧が地面に落ちる。

 

 鎧の方も砕けており、その内側にいる人物が見えるほど。

 

 そして、その姿を見て何人かが愕然となった。

 

「嘘だろ……おっぱいドラゴン……?」

 

 兵藤一誠。冥界で知らぬものがほぼいないだろう、若手の転生悪魔。乳龍帝おっぱいドラゴンのモデルでもある為、その知名度は圧倒的。

 

 彼は神との戦いに巻き込まれても生き残ってきた実力者。それはもはや知れ渡っており、スイッチ姫ことリアス・グレモリーの伴侶だと思っている者が大半だった。

 

 だが、その彼が血を流し倒れている。

 

 あまりの事態に、老若男女が愕然としてしまった。

 

 そして、その砕けた壁を通り越して立ち止まる者がいた。

 

「……しまった。民間人の避難所に害をなすとは……迂闊だった」

 

 その男は、まるで鋼の怪人だった。

 

 そんな男は避難民を見て、ほっとしたような感情を見せる。

 

 おっぱいドラゴンを殺しかけている者が、悪魔に対して安堵を浮かべる。その意味不明さに、警護の衛兵達ですら動けなくなる。

 

 だが、()にとってその二種は全くの別であった。

 

「済まないな。民間人に危害を加えるのは本意じゃない。怪我人は……いないみたいでよかった」

 

「……ふざけないで!!」

 

 安堵する男の後ろから、消滅の魔力を纏った拳が降りぬかれる。

 

 追いついたリアス・グレモリーによる、周囲の被害を考慮した上での最大火力。

 

 だがそれを、男は何の感慨もなく受け止める。

 

 それを成すのは圧倒的な魔力。

 

 控えめに言って最上級悪魔クラスの魔力を手に纏わせることで、上級悪魔として上位に到達しているリアスの消滅を抑え込むと、男は民間人に気を使って投げ飛ばそうとする。

 

 それを強引に振りほどき、リアスは兵藤一誠を庇う位置に回り込む。

 

 更なる追撃を果たそうとしたその瞬間、迎撃態勢に入った男の後ろから二人の女性が切りかかる。

 

 それに気づいて裏拳で迎撃した男に、しかしその瞬間獣達が襲い掛かる。

 

 聖なる光を纏う……否、聖なる光そのものである獅子と猟犬。食らいつき組み付いたそれらに、男の動きが封じられた。

 

「私達ごとやれ、リアス・グレモリー!!」

 

「時間がないから、早く!!」

 

 そう叫ぶ二人の女性に、リアスは一瞬迷うが決断する。

 

 そもそも、三叉成駒状態のイッセーを、それも戦車状態の彼を拳で瀕死にするような敵だ。この好機を逃せば、リアスでも太刀打ちできなくなるのは読めている。

 

 故に躊躇せず魔力を込め、なるべく収束させたうえで放つ。

 

 例え最上級悪魔でも、直撃すれば深手を負うだろう。

 

 その火力を、しかし男は受け止めた。

 

 魔力を纏い、それを盾にして防ぐ。言葉にすればたったそれだけであり……だからこそ、敵が強大であるということが分かってしまう。

 

 そしてその防御の魔力は、取り押さえていた女性達すら強引に振りほどく。

 

 手加減していたわけではない。ただ、その出力でそれを成した場合、繊細な制御を行わなくては避難所や避難民に被害が出てしまうという、たったそれだけの事。

 

 間違いなく格が違う。それを痛感する。

 

 至った神滅具。それも扱いに習熟した使い手。例えるならそれほどの領域に、目の前の男は到達している。

 

 そして、その敵意は兵藤一誠とリアス達の計四人にのみ向けられている。

 

 避難民に対する意識は徹頭徹尾、慈しみと哀れみのみ。彼らを庇護対象と見るその視線は、しかし三人に向けられた瞬間怒りと敵意に染まる。

 

 まるで、自分こそが避難民を守る側。そう確信しているそれだった。

 

「既に亡き聖書の神に縋りつきながら反旗を翻す狂信者に、最も忌むべき神器を利用する愚か者が。色狂いの悪龍を配下にして、未来ある子供達までもを洗脳するなど言語道断だ……ここでまず赤龍帝を討ち取り、これ以上染められないようにするべきか」

 

「言ってくれるわね。その言い草、アイアンローズと見ていいのかしら?」

 

 立ち上がり、魔力を練りながらリアスはそう聞く。

 

 今の言い草でほぼ確定だが、今のままではすぐに負けるのが見えていた。

 

 間違いなく、目の前の相手は圧倒的な戦闘能力を持っている。その時点で油断できる相手ではない。

 

 相応の魔力を込めたこともあり、こちらの消耗も大きい。荒れた息だけでも回復しなければこちらがすぐに殺されてしまうだろう。

 

 ……否、これはもはや悪あがきであることは分かっている。

 

 動きに隙は無く、出力は桁が違う。

 

 三人掛かりでも本気を出さずに圧倒された。むしろ、多少あちらも消耗しているからこそ回復まで手を抜ける部分は抜いているといったところだろう。

 

 圧倒的に各上。この人数で挑めば秒で殺されても不思議ではない。

 

 だからと言って、無様に膝を屈する理由はない。

 

 リアスにとっても、リアスを助けた二人にとっても。

 

 三人ともに無意識に彼を庇い、その光景に男は嘆きすら見せている。

 

「そこまでその色狂いが大事か。……二天龍を宿す者は異性に困らなかったと聞くが、相当の呪いでも持ってるのか」

 

 そう吐き捨てると共に、息を吸い。

 

「失せろ」

 

 その言葉と共に、リアスの鳩尾に重い衝撃が走り、衝撃によって兵藤一誠の向こう側にまで飛ばされる。

 

 直後、暴風が吹き荒れ周囲の埃はおろか小さな道具類までもが吹き飛んだ。

 

 その謎の猛威に崩れ落ちるリアス。光景に恐怖すら覚える避難民。

 

 そして、女性の一人―霞城真那月は悟り、愕然となる。

 

「……ありえない」

 

「どういうこと?」

 

 もう一人の女性―安城伊緒が、警戒心を男から離さずに問う。

 

「奴は、今息を吸って声と共に吐いた……それだけだ、その風圧でリアス・グレモリーは崩れ落ちるほどの衝撃を食らったんだ」

 

 その答えに、誰もが戦慄を覚えた。

 

 息を吸って吐く。その生物の基本動作で、上級悪魔を悶絶させる打撃の代わりとする。

 

 ありえない。生物の機能を逸脱している。龍神でもそこまでできるかどうか。

 

 誰もが寒気を覚える中、男は拳を構えつつ、気遣うように避難民に視線を向ける。

 

「下がっていろ。君達は、愚かな上役に振り回されているだけ……余波に巻き込まれないように気を付けるんだ」

 

 心からの慈悲がにじむその声が、むしろ避難民や衛兵にとっては恐ろしい。

 

 彼は味方のつもりなのだ。自分達を慈しみ、できることなら助けるべき庇護対象とすら見ている。

 

 狂っている。そう思えてしまえてならない。

 

 アイアンローズ。彼らが敵となったことに、違和感を覚えている者が何人かはいた。

 

 魔王派を中心に、アイアンローズとの契約を行っていた上級悪魔は多い。彼らは魔王派に対して好意的であり、多少恩のある民間人もいた。

 

 だから、天使や教会、神の子を見張る者との和平を結ぶ際に縁を切ったと聞いて、不満を覚えたものも多少はいた。

 

 ……正解だった。彼等とは縁を切る以外の選択肢なんてなかったんだ。

 

 そう手のひらを返すぐらい、彼らはアイアンローズに恐怖を覚えた。その狂気に狂いそうになるほどだ。

 

「ぅ……ひっく……」

 

「怖いよぉ………っ」

 

 幼子達が耐え切れず泣き出し、男は自分が成している側の自覚を持たず哀れみを浮かべる。

 

 リアス・グレモリーはその一撃から何とか立ち上がるが、状況は圧倒的。

 

 間違いなく、目の前の存在は神や魔王でも手こずるレベル。歴代の神滅具保有者でも、半端な物なら一蹴される。前人未到の進化を遂げた兵藤一誠が倒されるだけの存在なのだ。

 

 その圧倒的な猛威に、鉄火場の心構えを持たない市井の者達が耐えられるわけがなく―

 

「……泣いちゃ、ダメー!!」

 

 ―だからこそ、その言葉は英雄に届く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《兵藤一誠》

 

 

 

 

 

 

 ヤバイ……意識が飛んで……あれ?

 

 目を覚ますと、そこはだだっ広い空間だった。

 

 歴代の赤龍帝、その残留思念がいる空間だ。覇龍に頼らず強くなる為、何度も潜り込んでたから思い出せる。

 

 ただ、残留思念の人達は大半が虚ろな状態だった。だから会話も全然できなかったんだけど……あれ?

 

 なんか全員、こっちにしっかり目線を向けてるんだけど?

 

「……覇龍だ。覇龍を使え」

 

 喋った!?

 

 いや、覇龍は使わないけどなんでだよ。

 

 なんか訳が分かんないでいると、口々に同じことを言ってくる。

 

「あれはもはや、神や魔王でも手こずるだろう。赤龍帝が負けるわけにはいかぬ」

 

「さよう。おごり高ぶるあの人擬きに、天龍の力を見せるのだ」

 

「共に見せてやろうではない、赤き龍の覇道というものを」

 

 そう口々に言われて、記憶もはっきりしてきた。

 

 そうだアイツ。もしかすると、確かにやばい奴だよ。

 

 でも覇龍なんて使わねえ。

 

 というより、ぼんやり映像が浮かんでるけど民間の避難民までいるじゃねえか。

 

 暴走状態になんてなったら絶対に余波で死人が出るだろ。使うわけにはいかねえよ。

 

 そう思ったけど、俺の周りに急に黒い靄が立ち込めてきた。

 

 なんだこれ。憎しみや殺意が湧き上がってくる……やばい奴だろ……!?

 

「さぁ、覇を使う時だ……!」

 

「あの男に見せてやるのだ……天龍を……!」

 

「赤龍帝を愚弄する者に……死を……!」

 

 くそ、ヤバイ、このままだと―

 

『泣いちゃ、ダメー!!』

 

 ―どこかで聞いた、声が響いた。

 

『おっぱいドラゴンが言ってたもん。男の子は泣いちゃだめって、女の子を守らなきゃだめって!!』

 

 そう言って、俺達の前に立つ子がいた。

 

 そうだ、少し前のイベントで泣いてた子だ。

 

 名前は、リレンクスだったな。

 

『下がるんだ。そんな男達の為に、君の様な胆力ある子供が命を粗末にするな』

 

『うるさい! 僕は、おっぱいドラゴンは好きだけどお前なんて嫌いだー!』

 

 目に涙を滲ませながら、リレンクスは一歩も引かない。

 

 ……凄いよこの子は。本当に。

 

『そうだ……お前なんて嫌いだー!!』

 

『おっぱいドラゴンとスイッチ姫をいじめるなー!!』

 

 他の子供達も、リレンクスと一緒になって俺達の味方になってくれている。

 

 ……うん。やっぱり違うよな。

 

「……すっこんでてくれ、先輩達」

 

 気合を入れて、俺は憎しみや殺意を否定する。

 

 いや、あいつはぶっ飛ばすけどな。そういうわけじゃないんだ。

 

「あの声援が聞こえねえか? 俺は覇道なんてまっぴらごめんだ……いや、違うな」

 

 そうじゃない、そうじゃない。

 

「やるならもっとエッチでムフフで……皆と笑い合えるような道がいい。だから、覇龍は俺には必要ねえ!!」

 

「何を言っている。覇龍こそが天龍の道だ」

 

「そうだ。覇を持たずに二天龍を名乗ろうなど……」

 

 先輩達は食い下がって靄を強くするけど、後ろから足音が響いた途端にそれが半分になる。

 

 これは、白龍皇の半減か!?

 

「いいじゃないか。少なくとも、白龍皇(こっち)には響いたよ」

 

「お前は、白龍皇……!?」

 

 なんか先輩の一人がびっくりしているけど、俺の隣に白龍皇のオーラを放った男の人が庇う様に前に出てくれた。

 

「以前今代同士で戦った時に、宝玉を彼が取り込んだ影響かな? 残留思念の一部だけど、彼が白龍皇の力を使えるならこれぐらいはできる」

 

 そう言って憎悪を半減してくれる白龍皇の人は、俺に微笑みかけた。

 

「いいじゃないか、彼の道も。今の赤龍帝は彼なんだから……だろう?」

 

「うっす! っていうか、ついでなんだしみんなで目指そうぜ!」

 

 ああ、そうさ。

 

 なんかいろんな人生をしてきたんだろうけど、だからってそんな覇道なんかに拘る必要ないだろ。

 

「どうせならもっと夢にあふれた人生にした方がいいじゃねえか。俺は歴代最弱なんだし、いっそのこと手伝ってくれよ」

 

 そう言いながら、俺は顔を上げる。

 

 ああ、だからこそ、子供達には答えないとな……っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Other》

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、目覚めるは―」

 

 その言葉と共に、紅の輝きが灯された。

 

 問題は、その光がリアス・グレモリーの胸から放たれたことだ。

 

「……え?」

 

 リアスが困惑するが、他の者達も同様だ。

 

「―王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり……」

 

 この状況下で、あまりに意味不明な光景に、思考が停止する。

 

「無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を往く」

 

 そして起き上がるのは、赤龍帝兵藤一誠。

 

 紅の輝きを鎧として具現化し、目に意志を宿して立ち上がる。

 

「我、紅き龍の帝王となりて―」

 

 そう、今ここに―

 

「―汝を真紅に光り輝く天道へと導こうっ!!」

 

 ―赤龍帝は、前人未到に到達した。

 




 本当は二話分あるんですが、一話分のところが少なかったので、下げてから上げまくる形で統合しましたー!
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