※この作品はR-18です。

シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 炊き込みご飯で洋風の者を作りたいグレン×グレンでっす!

 やはり弁当にする場合、コメを主食するのがいいのでね。気を付けてます。

 では本編!


第三十二話 反撃の覚醒

《Other》

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光とオーラを察知し、ニュクスは興味深そうに微笑んだ。

 

『これは禁手かしら? でも一斉にこんなところで至るなんて妙ね』

 

 好奇心で動いているニュクスが、それに惹かれるのは当然だろう。

 

 禁手とは、狙って到達できるようなものではなかった。今でも、自然な到達ではそうなる。

 

 英雄派が到達メソッドを確立し、意図的に流していることで人工的な到達を同時多発させることはできる。だが、それを戦場のど真ん中でする意義は薄い。

 

 だからこそ興味を引き、それゆえにできないことがもどかしい。

 

『もう少し準備しておくべきだったのかしら。いえ、貴女も十分ちょっかいのかけがいがあるけどね?』

 

「それはどうも」

 

 神聖糾弾同盟のロザリーは、砕けた仮面を投げ捨て、口の中の血を吐き捨てながらそう答える。

 

 赤茶色の髪と目を持つ少女は、ニュクスを睨みつける。

 

 今まさに、ロザリーはニュクスを抑え込んでいた。

 

 同胞達は深手や消耗で動けない。それほどまでの激戦だった。

 

 既に十数分はロザリー単独で戦っている。高位の神を相手にそれだけの偉業を成すなど、()()()()()には不可能。それを()()()()()が成している。

 

 その理由を、ニュクスは理解した。だからこそ、もどかしくも強引に振り切ることも選べない。

 

『恐れ入ったわ。ただの人間は禁手に至っても神と戦えない。だけど貴女はその逆で、ただの人間になる為に至ったことで成し遂げてる。……白龍皇ヴァーリが知ったら、色々な意味でショックを受けそうね』

 

「あの男とはいろんな意味で相性が悪いんだけど。それにこの禁手も、一番使いたい相手には通用しなかったし」

 

 うんざりした調子でロザリーはそうぼやく。

 

「楽しませてくれたのならチップでもくれない? なんで私の禁手ってこうなのに、一番効きそうな相手に効かないのよ」

 

『それはアザゼル辺りに言ってほしいけど、禁手そのものじゃなくて副産物だからで、貴女が多分弱いからじゃないかしら』

 

「……あ~……そういうこと。最初っからちょびっとだけ目覚めてたりしてたとかそんな感じか……体力だけはある方だったし」

 

 ニュクスとの会話で、納得できる答えに到達したらしい。ロザリーは思いっきり天を仰ぐ。

 

 そして同時に、気持ちを切り替えたのか腰を落として拳を構える。

 

「お礼がわりに投降は受け付けるけど?」

 

『あら、一対一で勝てるほどじゃないわよね?』

 

 ニュクスがそう軽口を叩いたその瞬間だった。

 

「三対一になってるもの」

 

 そうロザリーが告げると同時、ニュクスの後ろに二人出現する。

 

 片方は、聖剣を構えた小柄な男性。

 

 片方は、星辰体と感応する背の高めの男性。

 

 ニュクスは反応するが、同時にロザリーは一気に接近する。

 

「プルガトリオ機関リマ部隊所属、ロザリー」

 

「第七愛欲騎士団団員、パウロ」

 

「双星剣士隊、フランシスコ」

 

 三方向からくる猛威。

 

 圧倒的な身体能力を発揮するロザリー。

 

 明らかに強大なオーラを放つ聖剣を持つフランシスコ。

 

 そして最後、()()()にとってそれ以上の脅威たる、神殺しのオーラを放つパウロ。

 

 三方向から脅威が同時に仕掛け、うち二人が不意打ちをほぼ成功させた状況。

 

 注意が割かれていることもあり、ニュクスは状況が危険であることを悟る。

 

「「「貴様を討つ!!」」」

 

『これが、純潔十字連盟ッ!?』

 

 このに、趨勢が大きく動こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時期、冥界にて雨宮充二も反撃の意志を示していた。

 

「好きにはさせん。……そう、まだだ!」

 

 気合と根性に基づき、強引に肉体を限界以上に動かして反撃の刃を振るう。

 

 エレボスはそれを捌きつつ、怪訝な表情を浮かべる。

 

「理解しがたいな。それだけの力を持っているのなら、神に仕えることなく己の野心を叶えることもできるだろうに」

 

 その疑問に、充二は小さくため息を吐く。

 

 理解ができない。否、理解していないのだろう。

 

 そのような発言、全ての宗教家にとって罵倒に等しい。それが理解できていない。

 

 もしくは、オリュンポスを中心とするギリシャの神々にとって信仰とは野心を見せることのなのかもしれない。

 

 なるほど。すたれ物語の題材に留まるわけだ。そう思うほどだ。

 

「力があるなら好き勝手に振るえばいいという思想には辟易するな。俺は聖職者だ」

 

 断言を持つ。

 

「俺の人生は、世界に正義を広める為に使うと決めているのでな。最も、世界規模に影響を与えたいという意味では野心と見ることもできるだろうか」

 

「豪胆なことだ。我々はともかく、アイアンローズにはアイアンローズの正義があるだろうに」

 

 皮肉のつもりか挑発か。

 

 だが、充二からすればある意味で愚かだ。

 

「逆に問おう。正義とはなんだ?」

 

 即座にためらいなく問い返す。

 

 その言葉に、エレボスは怪訝な顔つきになる。

 

 意図が読めないのだろう。困惑すらしている。

 

 それを見て、充二は呼吸を整えながらも答えを示す。

 

「正義とはすなわち、()がどうある()()か。生きるということに対する大前提となる指標に他ならない」

 

 そう、気負いなく自然体で宣言する。

 

 それは彼の基本骨子。誇りでも責務でもなく、自然体で考える本能レベルの大前提。

 

「だからこそ、異なる正義が共存することはあり得ない。世界規模で一つでなければならないものだぞ、当然だろう」

 

 それが彼の基本中の基本。生まれ持った信念ならぬ芯。

 

「我々を打倒し自らの正義で世界を正すのならともかくだ。統一することなく正義を複数存在させるなど論外だ。そんな前提は成立せず、知性と社会の概念が成立しないと言っていい」

 

 そして彼は、魔法によって歪めた空間から、一振りの剣を引き抜いた。

 

「だからこそ、和平に異議を唱えているのだ。まったく異なる正義を存続したままでは、我々信徒は勿論世界全てにとって歪みになるから……そう、()()()

 

 ありえない負荷を、気合を根性で制圧する。

 

 いまだ試作段階の武装。自分達最精鋭ですら、自分以外は本領の発揮が困難な切り札。

 

 その奥の手をもって、充二は神の打倒を断定する。

 

「全人類がどうあるべきか。それをアイアンローズ(お前達)が示すというなら……その為に命尽きることを(ほまれ)として挑むがいい。少なくとも、俺はそう生きているぞ?」

 

 その絶大な気配に、エレボスは寒気を感じた。

 

 目の前の男は、まごうことなく滅私奉公で生きている。

 

 狂気の域まで研ぎ澄まされた精神を、生まれ持って持ち合わせた存在。そうでなければおかしい、あり得ない。

 

 このレベルで、神星鉄(オリハルコン)と感応するただの人間など、アイアンローズでも用意できていないのに―!?

 

「天賛せよ、我が守護星―――鋼の聖光(イノリ)で世界を統べろ」

 

 ここに邪神を討つが為、聖なる魔星が顕現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、あちらも本腰を入れたようですね」

 

「そうね。所長達が荒業を選ぶぐらいだもの……大詰めになっていると考えたいわ」

 

 互いに負傷しながら、コガネとアルトリーネが息を吐いて残心を解く。

 

 そこには崩れ落ちた多数に敵達が倒れていた。

 

「……いた! 大丈、夫?」

 

 そしてその二人を見つけ、軽傷に留まっているコナユキも着地する。

 

「合流し、ましょう?」

 

「少し呼吸を整えてからにしましょう、コナユキさん。……そちらの消耗が激しいようです」

 

 すぐにでも走り出そうとするコナユキを、コガネは押しとどめる。

 

 乱戦だったこともあり、互いに消耗が激しいのは明白だ。若干でも休息を挟んだ方が効率的だという判断もある。

 

 何よりも、大きな点がある。

 

「所長のご判断を考えれば、私達は重要度が低いです。……中々に前代未聞でしょう、戦場で一斉に神器を至らせる……などとは」

 

「大概よね。所長達でないとできない荒業だわ」

 

 アルトリーネはコガネに頷きながらも、呆れと戦慄を隠せていない。

 

 圧倒的な精神力により、肉体の限界すら超えうる意志力の覚醒。そしてそれを他者にもある程度扱えるようにする星辰光。

 

 それを利用することにより、それを成せる()()()()()()()()()を一気に全員禁手に目覚めさせる。これができるような手合いはほぼいない。

 

 反則級のその精神力をもって、この戦いの趨勢は一気に決着へと流れるだろう。

 

 ただ、問題はだ。

 

「イッセー達が少し不安ね。あっちはあっちで同等の事態になっているみたいだし」

 

 既に各勢力が入り乱れる乱戦が起き、こちらと同様に巨大人型兵器が出現したところまでは情報が共有されている。

 

 こちらは意図的にできる反則級の札を切っているが、それがないあちらがどうしても不安になるのは仕方ないだろう。

 

 こと、アルトリーネにとっては大きな理由もある。

 

「イッセー君が心配ですか?」

 

「多分、大丈夫です」

 

「………それはどうも」

 

 二人にそう言われて、アルトリーネは咳払いをしながらも僅かな休息に意識を向ける。

 

 殺し合いに真っ最中に、男のことを考えて気が逸れている。普通に考えれば恥といった方がいいだろう。

 

 その様子に小さく笑いながら、コガネは呼吸を整えながらも言い切れることがある。

 

「まぁ私は断言はしません。ただ、彼は彼で色々と常識では測れません。こちらを片付けてから助けに行くぐらいのしぶとさは発揮することでしょう」

 

 それだけの化け物であると、コガネは悟っている。

 

 普通ではないのだ。いくら神滅具を宿して悪魔に転生したとはいえ、目覚めてから半年足らずで魔王クラスを相手に打倒まで成し遂げるなんて真似は、普通ありえない。

 

 常識では通じない存在とはそれだけで怖い。

 

「だから、少し回復したら一気に畳み掛けに行きますよ。その後冥界に助けに行けばいいんです」

 

 

 

 

 

 

 

 そう、ここからが大一番。

 

 この二か所の戦いの趨勢が、一気に傾こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《木場祐斗》

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘は更に激しくなっている。

 

 既に巨人までもがこちらに近づき、戦闘の趨勢はアイアンローズに傾いていた。

 

「……ぐ……っ!」

 

 そして、深手を負って崩れ落ちそうになる人物が一人。

 

 それに、明確な動揺をサリアローズ殿が見せているほどだ。

 

「兄上……っ!?」

 

 サイラオーグさんまで追い込まれている。それほどの敵か。

 

 純粋な出力なら、それこそロキに次ぐレベル。ミョルニルのレプリカも反粒子もない状況では、間違いなくこちらが不利……っ!

 

 だけど、ここで負けるわけには―

 

「……ぬ、ぅおおおおおおおおおおおっ!?」

 

「おぅ……りゃぁああああああああああっ!!!」

 

 ―そう思った瞬間、後方から凄い勢いで組み付き合いながら飛んでくるものがいた。

 

 それは紅のオーラを纏って突っ込んでくると、巨人に激突……揺らがせる……揺らがせる!?

 

 余波でそこまで!? 一体何が!?

 

「悪い皆、待たせた!!」

 

 組み付いた相手を振り払い、そして着地する人影。

 

 紅に染まる、見慣れない鎧。それを纏っている人の声は、僕達のよく知る人のそれだった。

 

「……イッセー君!?」

 

 え、なんだいその鎧は。三叉成駒とも違う鎧に見えるんだけど。

 

 僕達が若干呆気に取られていると、素早くアイアンローズやトキコ一派がイッセー君に攻撃を集中する。

 

 謎の強敵に反応したのだろう。鎧の色も違うから、一瞬イッセー君だとは判別できなかったのかもしれない。

 

「下がれ! 今のそいつは化け物だ!!」

 

 そんな声をイッセー君と組み付いていた男が叫ぶけど、一瞬遅い。

 

 イッセー君は奇をてらわず、しかし基礎をしっかりと守った打撃で一蹴した。

 

 やはり三叉成駒でもない。性能が別物だ。

 

 速さ、硬さ、重さ。全てが一段上の域に達している。

 

「紅色の鎧か。主の髪色と合わせるとはな」

 

「……真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)といったところか……?」

 

 サリアローズ殿とサイラオーグさんが、感心した様子でそう呟く。

 

 そして同時に、悪魔祓いに支えられながらリアス部長がこちらに追いついた。

 

 それにまだイッセー君は気づかず―

 

「へへ。惚れた女のイメージカラーって奴ですよ」

 

 ―そう惚気た。

 

 あ、リアス部長の顔が真っ赤に染まっている。あと左右の悪魔祓いの女性がちょっと羨ましそうだった。

 

 ……ちらりと周囲を確認すると、戦闘態勢こそ取っているが朱乃さんも小猫ちゃんもゼノヴィアもちょっと羨ましそうだった。

 

 イッセー君は本当にモテモテだね。

 

 若干苦笑いをしているけど、その時巨人から絶大なオーラを感じる。

 

 見れば、胸部の砲台に凄い出力のオーラが凝縮されている。

 

 あの出力はまずい。下手をしなくても魔王クラスの火力じゃないか!?

 

 どうしようかと思った時、イッセー君からも絶大なオーラを感じる。

 

「おいおい。なんか知らねえけどこの街をやらせたりなんてしねえよ」

 

 その時、紅の鎧に一対の砲身が形成される。

 

 更に星辰体と感応し、聖なる光すら砲身に漏れ出てくる。

 

 間違いない。砲撃の出力すらこれまでを超えている。

 

「子供達や仲間達、惚れた女の前なんだ。これ以上好き勝手にはやらせねえ」

 

 イッセー君がそう呟き、そして互いの砲撃態勢は同時に完了した。

 

 放たれるのは、魔王クラスと言っていい大出力砲撃。

 

 そしてそれを迎撃するのもまた、魔王クラスに届くだろう大火力砲撃。

 

「この街は! 仲間達は! 子供達は!! そして俺の愛する女の子達も、まとめて俺がここから守る!!」

 

 その出力は、一瞬だけ拮抗し―

 

「俺の愛する女のまでこれ以上カッコ悪い所見せれるか……俺はリアス・グレモリーが大好きだぁあああああああっ!!!」

 

 ―イッセー君の砲撃が、巨人の砲撃を突き破って巨人に激突した。

 

 砲撃の火力に押し飛ばされ、巨人は数百メートルは打ち上げられる。

 

 というより、凄いことをこんなところで言ったね!?

 

 あまりの大火力砲撃に誰もが呆気に取られたその瞬間、イッセー君の拳がアイアンローズの戦力を薙ぎ払う。

 

 その直後、謎の魔星と思われる人物が攻撃して組合になった。

 

「ほざけ下種な覗き魔が!! 死んでも治らないとは本当らしいな!!」

 

「お互い様だよ、兵野!! お前こそ死んで魔星になっても治ってないんだな、そういう所」

 

 イッセー君が吐き捨てながら一旦振り払うけど、あれが兵野和正だって?

 

 ……いや、アザゼル先生の言っていた人造惑星(プラネテス)の性質を考えれば、むしろ納得か。

 

 アイアンローズは一種の狂信者によるテロ組織に近いところがある。そんな者達が人造惑星の基本理念を知った場合、あえてなることを選択する者はいるだろう。

 

「ロキ様から魔星についての情報を聞いた際、被験者となることを選んだのは、死してなお成すべきことを成す為だ。むしろそうでなくてはならないだろう?」

 

「妙なところで似てるのがムカつく。まぁいいさ」

 

 そう言い合いながら、二人はため息をついて―

 

「「ここで滅ぼせばいいだけだ」」

 

 ―本気の敵意をぶつけ合った。

 

「こっちもいい加減キレてんだよ。二度と復活できないぐらい、魂ごとぶっ飛ばしてやる」

 

「ほざけ害獣……いや、害龍。ロキ様によりもたらされたこの福音で、貴様を……討つ!」

 

 互いに強大な怒りを向けて、二人は此処に激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Other》

 

 

 

 

 

 

 

 状況は、一瞬で変わった。

 

 彼ら以外の誰もが驚愕する。

 

 桃山警護事務所特務社員。その最大の特徴は、誰もが波柴秀華の()()だということ。

 

 眷属とは本来、日本語において血のつながっている親族や一族のことを指す。

 

 そして桃山警護事務所の特務社員にとっては、後天的にだが事実。波柴秀華の、己の血肉を触媒に他者を自分に近しい存在―星辰奏者適性を持つ魔王レヴィアタンの血筋―に変貌させる星辰光により、彼らは全員が疑似的なレヴィアタンとなっている。

 

 そしてもう一つの星辰光により、彼らは秀華と想いを合わせることで意志力で限界を超える。

 

 だからこそ、それをよく知る者なら即座に理解できる。秀華を基点とする形での、神器を保有する特務社員による一斉禁手到達は、理論上可能でありだからこそ断行できるのだと。

 

 だが、それをよく知らない者からすれば異常事態と言ってもいい。

 

 英雄派の齎したメソッドを、添え物にしかしない形での同時多発禁手到達。それは異形に詳しい者であればあるほど戦慄する事実だ。

 

 そして、その一瞬は大きすぎる隙だった。

 

 一瞬で、鮮血の花が舞い踊る。

 

「……試し切りは大成功だな。予想以上に再現できてる」

 

 そう呟く樹下誠二の隣で、一瞬の空気が揺れると共に空本麗夜が着地する。

 

「同感。我らが所長は恐ろしくも頼もしいね」

 

 そう麗夜が苦笑いをした瞬間、神祖の眷属たる弱兵達が崩れ落ちる。

 

 誰もが腱や骨を断たれ崩れ落ちる。更に麗夜が対応した約四割は、魔剣を急所を避けて突き立たれたことで磔にされている。

 

 本来なら、ごく僅かとはいえ不死の恩寵を受けた彼らはこの程度ならすぐに復帰できる。

 

 だが、できない。

 

 片方はいい。無力化に特化した麗夜の魔剣、ネイルGが突き立っているから。

 

 治らない。その事実を悟り、向精神薬物で麻痺している思考に恐怖が浮かぶ。

 

 一瞬。たった一瞬で数十人が無力化された。

 

 戦慄が走る。恐怖が浮かぶ。

 

 特に、高野創氏は一筋の冷や汗を流し、零れ落とした。

 

「……は?」

 

 今彼は、正しく己の死が迫っていることを自覚する。

 

 そこに冷徹な視線を向け、樹下誠二は一対の剣を構える。

 

 それは彼の禁手。アームユニットによって手甲と一体化した、一対の剣。

 

 その名は―

 

「魔剣創造の亜種禁手、創造の闇之尾羽張(ソード・ザ・リッパーウルフ)。魔剣創造で俺の星辰光から剣の要素を抽出させてもらった」

 

 ―彼の決意表明。

 

 これから倒される愚か者達に、至った存在に倒されたのだから仕方ないという、僅かな慰めという情けをもって先制する。

 

「じゃぁ慣らしは終わったし、()()()タッグを組まないと意義が薄いからそっちは任せるよ」

 

「オーケーだ麗夜さん。……で、だ」

 

 麗夜と短く言葉を交わして散開し、誠二は視線を三人の女性へと向ける。

 

「援護、いるか?」

 

「「「大丈夫!」」」

 

 それだけで十分。

 

 誠二は視線を高野創氏へと向ける。

 

 気圧されたのか、一歩を無意識に下がる創氏。

 

 彼こそが、この戦闘における最大級の脅威。殺せる存在が極僅かな、正真正銘の神祖。

 

 故に、躊躇も遠慮も一切ない。

 

「悪いが投降以外の選択肢は死だ。……殺される前に懸命な判断をするんだな」

 

 足から延ばした黒き刃に、手甲から伸びる魔剣。更に投擲も可能。とどめに反粒子。

 

 殺害手段をあまりにも多数獲得した誠二は、神祖の死神として戦場に改めて踏み出した。

 

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