シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
九連休ですが何をしようか。ずっと家にいるのはかえってあれ鳴きもしますけど、じゃぁ何をするかって話でもありますからねー。
まぁしたいことといえば、貴族の邸宅とか豪邸とかを見学してみたい。秀華とか麗華とかの居住関係もあるし、ちょっとぐらい豪邸というのを目で見てみるのもいい影響になるかもしれないので。
それはそれとして本編!!
《兵藤一誠》
「めちゃくちゃ困惑してるわね。徹底しておいてよかったわ」
実技試験終了後で俺が自販機からドリンクを買って飲んでいると、雨宮さんが声をかけてきてくれた。
めっちゃ困惑してるのは本当だ。というより、肩透かしって感じが強い。
なんていうか、あれで終わり? って感じだ。
「なんかその、凄く……弱い?」
「そりゃそうでしょ。というか、この試験会場に私らレベルが別口で一人でもいる確率の方が低いわよ」
と、雨宮さんはドリンクを買いながら息を吐く。
「深呼吸して落ち着いて考えなさい? ここで行っている試験は中級悪魔に
……え、あ、え~っと。
ヤバイ。ちょっと理解が追いつかない。
「しかもイッセー達が戦った時のアイツは、蛇を使ったうえで専用の空間で大きく底上げされている状態。質問するけど、真女王を使っていいならアンタ、今から一対一して勝ち目すらないと思う?」
「いや、多分勝てるっす」
即答できた。
ディオドラは確かに厄介だけど、あの状態でもサイラオーグさんやあの時の兵野より強いとは思わない。
多分、俺が戦ってきた連中の中では弱い方だろう。そこは間違いない。
って待てよ?
「つまりディオドラって、あの状態じゃなくても悪魔基準だと強い?」
「あの会合*1がどういう意図だったか忘れてるわね。流石にちょっと可哀想になってきたわ」
めっちゃ呆れられたぁ!?
あ、でもそういえばそうだったな。
若手の優秀な悪魔と上役の顔合わせ……とかそんな感じだった。つまりディオドラって、蛇や設備無しでも優秀な上級悪魔だったんだ。
……俺、あの頃からめっちゃ強くなってたんだなぁ。
「なんか強くなってる実感がなかったんですけど、俺って強い方だったんですね」
「過ぎた過大評価も問題だけれど、過ぎた過小評価も問題って話よ。今まで戦ってきた連中っていうか……そもそも京都で英雄派が繰り出してきた魔獣、中級悪魔クラスを想定してるってアイツが言ってたでしょうに」
あれ、一対一の場合だったのか。
そっか。つまりあいつらを何体もどうにかできるのなら、普通の中級クラスならたくさん来てもどうにかできるってことなのか。
うわぁ。俺ってそんなに強かったのか。
「次から気をつけなさい。アンタその気になれば、人間の軍人とか下級悪魔の衛兵なんてビンタで即死どころか粉砕できるんだから」
あぶねぇ! ちょっと喧嘩した勢いで殺人事件になりかねねえのかよ!?
「これから気を付けます! 本当、アドバイスありがとうございました!!」
あのアドバイスが無かったら絶対やらかしてた。ワンパンで最悪殺しかねなかったよ。そしたら試験は失格だしあの相手の人に悪すぎる!!
今更ながらに、皆が実技に気合を入れなくていいって言ってた理由が分かったよ。
俺の場合、強すぎて気合を入れたら他の参加者を殺しかねなかったのか。
うわぁ。そこまで強くなってる自覚がなかったからびっくりだ。
「はっきり言うけど、アンタ既に相当ヤバイぐらい強いわよ? 現役の悪魔祓いの九割ぐらいは、一対一でアンタと戦うことになったら秒単位の時間稼ぎすらできずに死ぬと悟るわね」
「マジっすか!?」
めっちゃ凄い評価されてる!?
「ま、そもそも曹操とかヴァーリとかロキとか、兵野も含めてアンタがガチで挑まないといけない相手ってのは上級悪魔の群れ相手に無双ゲームできるレベルだけれど。未成年の若者に鉄火場へ向かってほしくないサーゼクス様達が、それでもアンタ達にある程度の独自裁量での戦闘を許してるってのはそういうことよ」
若者だからっていう理由で温存するのが逆に問題なぐらい、俺達は強いってことなのか。
雨宮さんに言われて、俺も大概自分に驚くよ。
そっかぁ。俺ってそんなに強かったのかぁ。
「あ、イッセー君に雨宮さん。そこにいたんだ」
と、その時階段の方から声がかけられた。
あ、あそこにいるのは安城さんだ。
「久しぶりっす安城さん! 挨拶が遅れてすいません……桃山警護事務所の就職、おめでとうっす!」
安城さんだけじゃなくて、霞城さんも桃山警護事務所の正規社員として活動中だ。
再就職できてよかったぜ。そうなったのが半分ぐらい俺の所為でもあるしなぁ。
「他の人達には伝えたけど、私達と一緒に少しだけ打ち上げをしたら……本命の会談にゲストを連れて行くってことになったから」
あ、もう話は通ってるのね。
じゃ、とりあえずリアス達に報告といくかね。
《木場祐斗》
レストランを丸ごと貸切って、僕達は試験終了の打ち上げをすることになった。
もっとも合格しているかはまだ分からないけれどね。とはいえ、手応えは十分にあった。
こと実技は自信がある。過信はいけないけれど、今の僕達は低く見積もっても上級クラスに到達しているから、戦闘という点においては問題なく中級に昇格できるだろう。
そうでないと僕達は死んでいる。そういう敵とばかり戦ってきた。
だから、ここで調子に乗るわけにもいかない。何せ僕達は、それだけの実力があっても油断したら死ぬどころかしなくても死んでいておかしくない相手とばかり戦ってきているんだから。
これはあくまでただの結果だ。そして過程でしかない。
ここから、更に成長を遂げないといけないからね。
「……思った以上に、私達って強くなってたのね」
「うん。でないと死、んでるし」
松森さんとコナユキさんがそう話しているけれど、本当にそうだ。
むしろ強くなってないと死ぬ案件ばっかりだしね。一切油断ができないよ。
「成長してるようで何よりね。まぁ、所長の眷属である以上は中級は最低ラインだけれどもね」
と、吹本さんがグラスを片手に二人に語り掛けている。
「確かに。魔王血族の末裔ですしね。しかもある種の特例となると、どうしても注目はされるでしょうし」
僕も同意すると、松森さんもすぐに頷いていた。
「それもそうね。それに、多分中級止まりで満足してもいけないでしょうし」
そう語る松森さんは、少し遠くを見つめていた。
「凛音達も、多分かつて戦ったより強くなってる。……中級止まりで終わってるわけにはいかないわ」
凛音……山吹御前のことか。
英雄派の独立部隊である木曽分隊。今はかなり大規模化していると聞いている。
今後を考えれば、彼等との激突も見えてくるだろう。元々、桃山警護事務所の者達にしかけてきているしね。
ただ、彼等だけに任せるつもりもない。
「その時は僕達も手伝います。無理して自分達だけで背負わないでくださいね」
露払いぐらいは僕達だってできる。
決着は自分達の手で付けたいだろう。でも、それ以外まで手を貸しちゃいけないなんて道理はない。
その時は絶対に手伝いますよ。そこは忘れないでほしいかな。
《アザゼル》
まさかイッセーの奴、本気で自信がなかったとはな。
雨宮が徹底的に指摘しておかなかったら、下手したら死んでたな。むしろ鎧を着たイッセー相手に、ジャブを何発も喰らって動けてるだけでも十分強いだろそいつ。
「……で、ヴァーリ達は何て言ってるんです? 薄々気づいてる人も多いでしょうけど、これって内紛の種ですよね?」
「ま、ヴァーリはそれを理由に内輪の強者と戦いたいってところもあるみたいだがな」
雨宮が薄々気づいてるんで、俺はまぁ肯定しておいた。
ヴァーリがオーフィスをイッセーのところに連れてきた最大の理由。それはオーフィスが禍の団内部から狙われているだろうからだ。
ヴァーリ自身がオーフィスと気安い辺り、おそらくオーフィスと個人的な親交が深いんだろう。それもあって、オーフィスを守る側に回っているって感じだな。
最も、オーフィスは最強だからこその象徴だ。俺達は勿論アイアンローズにとっても、その存在そのものが大きな脅威となっているからこそ、奴らは大勢力となっている。
それを内輪から潰すのなら、相当の被害が出るだろう。だから普通はしない。つまり普通じゃない手段がある。
「英雄派の連中が、
「それを身内に使うって感じですかね。……でも、それでオーフィスを滅ぼせても得することあります?」
雨宮の言い分は同感だ。だが、裏を返せばこうも言える。
「得する算段があるからこそ、ヴァーリが釣りに利用することを決めるぐらいにはその気なんだろうさ。それにまぁ、そういう札なら
「バトルジャンキーからすると、格上殺しの切り札は体験してみたいんですかねぇ」
そうぼやく雨宮だが、その上で軽くため息をついた。
「ま、そこは一旦おいておきましょう。……兄さんを相当ごり押しで酷使したみたいですねぇ、総督ぅ?」
あ、これ結構キレてる。
「あんまりめちゃくちゃしないでくださいよ? 兄さん、私の時とかも色々苦労懸けてるんですから。総督はそういう無茶ぶりがめちゃくちゃ酷いって自覚してください」
あ、軽くマジだ。下手すると一発貰うレベルだ。
「そんなにめちゃくちゃやっちゃいねえぞ? つーか、お前は結構迷惑かけてたんだな」
「当たり前でしょう。大司教の妹が犯罪教唆で少年院ですよ? 醜聞以外の何物でもないですって」
雨宮はそういうと、盛大にため息をついた。
この面子の中でも常識人よりなんだが、変われば変わるもんってことかね。
人間の成長にちょっと感心しちまうが。雨宮は思い出しただけでため息をつく案件だな。
「波柴一斉摘発案件での大忙しもあって、長期は免れたんで四か月で済みましたけどね。……出た時はまだ懲りてすらいませんでした。全部他責にするって大概ですよね」
昔のことを思い出したのか、雨宮はそう吐き出した。
ま、事情は大体聞いちゃいるがな。
シュテルン・フランメになる前の波柴矢城。そいつの趣味を兼ねた一族の試練として、女を中心に誑し込んで飼い主として活動するってのが奴らの基本的な活動だ。そのターゲットになったのが、当時何も知らない女子中学生だった麗華。
だが麗華が矢城に誑し込まれていると悟ったことで、逆に矢城にモーションをかけに行ったのが麗奈だ。本人としては麗華がおもちゃのように扱われていることも見抜いたうえで、自分が飼い主側に回ることを目論んだようだがな。実質的には年季の違う矢城に誑し込まれて、おもちゃの中で上の立場って感じに留まってたみたいだが。
で、当時はまだまだ年相応の未熟さのあった麗夜に見切りまでつけた麗奈は、その辺りをぶった切る為に麗華のハメ撮りで動揺させ、多感な時期の性欲に目をつけて何も知らない麗華を犯させるように誘導。矢城と共にプランを修正して、矢城の調教と思わせる形で麗華とヤらせたわけだ。
で、その辺があえてばれるようにしたことで騒ぎにしつつ、映像を取っていたことで口止めも完成。そこですべてが奴らの思い通り……になるかと思ったら、大誤算が二つ発生。
一つは麗夜がショックのあまり山籠もりを選び、その最中に誘拐された美子を助けたこと。厳密にはその時の美子とのやり取りで、麗夜自身が「二人と縁が切れてでもけじめをつけないといけない」と心に決めて、美子を保護させる為に来た地元の警察署で即座にレイプをしたと自首したわけだ。
で、もう一つが波柴の一斉摘発。羽柴一族のもろもろの悪事と国家転覆計画を、蔓延っている根も含めて一網打尽するべく秀華と誠二が動いた一見。これはモンタギューの奴も動いていたことで、上手いことハマっておりどう転んでも壊滅的打撃は与えられる段階となっていた。
のちに祓魔省となる対応チームも動いており、麗夜の自供はあの辺りの一件においてとても大きな助力となった。なにせ証拠物件を相手が持ってることまで詳細に伝えていたからな。矢城本人はともかく、いいように利用している女子高生達まで隙をなくさせることは不可能。被害者の自供一つで簡単に一網打尽に出来るレベルでしかなかったわけだ。
結果として一斉摘発と合わせる形で、雨宮周りの案件は完璧に裏が取れてあっさり補導。そこを起点に周辺における奴案件は、確認できる限り完璧に対応できた。本人を取り逃がしたのがあまりに大きすぎる知ってんだがな。あの小物を始末するのに四年かかるって大失態レベルだろ。
そして空本と雨宮は少年院送り。相手が相手で自首をしたこともあって空本は比較的早く出れた。雨宮も、波柴が絡んでいたこともあって年単位は免れたが、自発的に暗躍することを選んでいたこともあって、こっちは四か月もかかっている。少年院送りと考えれば長いほうだろう。
そしてその頃には、麗華は両親の離婚もあって遠くに引っ越して一人暮らし……というより、体よく捨てられたみたいだな。姉妹である二人もそれぞれ両親とは離れ、その後は行方知れず……から片方が大王派の傀儡ってのが中々だが。麗華自身は神の子を見張る者の勢力圏内にいたことから、俺達が目をつけてスカウトってことになる。
空本は少年院を出た後、波柴一族案件だったこともあって祓魔省の預かりとなり、桃山警護事務所のメンバーとなった。美子がその流れで当時は準社員としてついてきて、あの事務所の初期が形作られたわけだ。
そして雨宮はデュリオの虹色の希望とかいう技を食らったことで、漸く改心。その後は空本や麗華と会えなくなったこともあってか、十代後半の状態で悪魔払いとして訓練を受け、外注として行動している表向きのPMCで活動するようになる。
「ま、未熟な若者が道を踏み外すのはよくある話だ。きちんと罪償って今真面目に頑張ってんだから深く考えんな。少なくとも、
「これをおいたって言っていいのかは微妙ですけど。ま、素直に甘えさせてもらいますよ」
ため息ついてるところ悪いが、そんなにかねぇ。
……さて、問題は英雄派の動きだな。
この街のど真ん中に絶霧が展開できるならやれるだろうが、そうなるとサーゼクスと合流した後でも結局は同じことだ。
最もこのメンツを相手にするってんなら、向こうも相当の札を切るだろう。さて、どう出るかねぇ?
《空本麗夜》
さて、護衛の俺と一緒の所長も到着っと。
「どうします? サーゼクス様は他の準備もあってまだかかりますけど、待合室まで移動させるとか?」
「一応護衛は周囲に配置してもらったから、まぁそこまではしなくていいでしょ。絶霧対策は気になるけど、それを言ったらあの人達がいても流すってことができるわけだし」
所長の読みはまぁ正しいね。
絶霧は、今の使い手であるゲオルグの腕も良い為テロにとって有効だ。
霧に包んだうえで適切に取捨選択して転移させることができる以上、絶霧を使うほかないだろう襲撃状況下では護衛が多くても決定打にならない。護衛だけこしとれるから尚更だ。
ただまぁ、それだけのことをするなら相応の準備もいるだろうし、そう簡単にはできないだろう。
何よりこっちにオーフィスがいるっていうのが大きい。戦力という意味では彼女がいる時点で圧倒的だ。下手な護衛も意味をなさないのは間違いない。
それも考えると、もう開き直っておいた方がいいんだろう。
ターゲットになるとするならオーフィスだ。オーフィスを狙うのなら当然、それ以外は巻き込まないぐらいでちょうどいい。だから俺達もスルーされる可能性が大きい。
それぐらいの開き直りで考えるしかないだろうね。うわぁ、頭痛い。
こっちはこっちで、アヴィ嬢周りで色々大変だっていうのに。
「そういえば英雄派案件で思い出しましたけど、木曽分隊って今戦団とかになっているって話でしたよね」
「なんか専用の軍艦が与えられるとか何とかだよね。あの辺り、リルベットちゃんも詳しくは知らないみたいだけど」
まぁ、英雄派でもつまはじき側みたいだしね。
卑怯上等の英雄派にとって、神器や騎士道を重んじるリルベットちゃんみたいなタイプは好かれないだろう。そういうところもあるんだろうね。
「ま、最悪の場合はこっちだけでなんとかしないといけないだろうしね。その辺りは気を付けながらいろいろと頑張ろっか」
「頭が痛い展開ですけどね。まぁ、オーフィスを狙う為に動くっていうなら……俺達は置いてけぼりにするのが妥当でしょけどね」
楽観的な意見な気がするけど、考える頭があるのならそこまでアホなことはしないだろうさ
……しないといいなぁ。ある意味アホなんだよなぁ、英雄派って……
《樹下誠二》
さて。そろそろ秀華が麗夜さんと一緒に到着するころか。
色々と懸念点が多いが、まぁ仕掛けるならこのタイミングよりよっぽどいいタイミングはあるだろう。
このタイミングで仕掛けるのならもはやアホだろう。問題は、英雄派はある意味でアホの集まりだという点だが。
「……で? 英雄派が仕掛けてくる可能性はどれぐらいあるのかぐらいは教えてくれてもいいんじゃないか?」
「あらぁん? どうしてそう思うのかにゃ?」
あえて隣に座って警戒していた黒歌達に鎌をかけるが、まぁ流すだろうさ。
とはいえ、こっちも巻き込まれる以上は素直に言ってもらわないと困る。
「俺が英雄派やジャーク団なら、お前らだけにオーフィスを任せて敵地になんて送らない。独断で連れ回しているってことはどっちにしてもお前らは狙われるってことだ。それぐらいのリスクは教えてくれてもいいだろう?」
「……確かにその通りです。でも、そこまで危険ではないですよ」
と、ルフェイの方がそう返した。
若干警戒心を向けられているのには気づいているだろうが、こっちはこっちでのほほんとしているな。
とはいえ、まだ表向きの態度は協力的だから良しとしよう。
「今、ヴァーリ様とお兄様は、スティラさんやゴっくんと一緒に、オーフィス様に化けた美猴様を連れています。狙うとするならまずそちらになると思いますし、私達が皆さんと一緒にいることは伝えてませんから」
なるほど。確かに理にかなっている。
ただ、おかげで嫌な予感が的中したな。
「つまり、オーフィスをターゲットにしている可能性があると?」
「はい。私達はそう考えてますね」
ルフェイは俺のカマかけに対し、即答だった。
やはり内輪もめの案件か。とはいえ、それだけのことができるということは相応の手段があるというコトだろう。
オーフィスを害する手段に、オーフィスという象徴を害しても問題ないようにする手段。この二つが提示できなければ、英雄派だろうとジャーク団だろうとOKを出すとは思えない。下部の連中も反対するだろう。
まったく恐ろしい話だ。
気分転換もかねてドリンクバーに向かうと、そのタイミングでイッセーと出くわした。
「樹下。俺達って凄かったんだなぁ」
「マジで本気出そうとしたのか、お前」
一周回って若干引くぞ。
「お前、はっきり言って素の禁手ですら最上級悪魔クラスと戦闘できるんだぞ? 中級悪魔になれるかもしれないクラスの悪魔がタイマン張っていい相手じゃないからな?」
謙遜を通り越してもはや害悪レベルだな。
自分が一年足らずで中級試験を受けれることと、ハイレベルな連中ばかりに関わってるから感覚がおかしくなってるな。
一応、俺からも言った方がいいだろう。
「言っとくが、大半の転生悪魔は何十年かけて頑張っても今のお前と一対一で戦えるような性能発揮できないからな? 俺の八年を半年そこらで瞬く間に追い抜こうとしているお前がイレギュラーなだけだからな? 赤龍帝の一人な時点でお前は最上級悪魔狙える素質を持っていることを自覚しよう」
「……うん。なんならみんな、めっちゃ余裕をもって実技事件を攻略してたし……松森さんなんて至らず勝ってたし」
まぁそれはそうだろう。
むしろ俺達クラスが出張ってくるとか、一緒の試験に参加した人達にとってこそ地獄だろう。
若手の化け物どもがごろごろいるんだ。精神的に来るのは間違いない。
ただまぁ、それだけでもないんだがな。
「信子さんの場合は使うなって言明されてるんだ。……あの人の場合加減が難しいしな」
封印されていた神器を目覚めさせたタイミングで禁手に至り、更に封印の仕組みだったもう一つが既に至っている。付け加えるなら、上位の神器でだ。
はっきり言って加減に慣れてないからな。見合った相手じゃない限りうかつに使えば勢い余る。
「確かに。雨宮さんはたぶん、一番上手く戦えてたしな。コナユキが上手かったのは意外だったけど」
「一応、あいつは俺と同じ訓練課程は受けてるからな? 手加減の辺りも練習されてるからな?」
そのあたりは一応言っておいた方がいいだろう。
ま、それはそれとしてだ。
「ロスヴァイセさんとギャスパーがいないのが痛いか。……あの二人はそれぞれ成長目的で動いているって?」
「ん? ああ、ロスヴァイセさんは防御魔法を学びに戻ってて、ギャスパーは神の子を見張る者の施設で自分を伸ばそうとしてるんだよ」
イッセーはそう答えてくれるが、今のままにとどまらずに成長しようってのは良いことだ。
問題は、万が一の可能性があるってことなんだが。
まぁ、可能性はそこまで大きいわけでもない。必然的に優先順位は低いわけだが。
「おっまたせー! サーゼクス様は準備にもうちょっとかかるってー!」
「とりあえずはあと30分ほどここでのんびりしておこうか。それぐらいあればだいぶまとまるはずだよ」
と、秀華と麗夜さんが来たタイミングだった。
「……あらら。ヴァーリってばまかれちゃったにゃん?」
黒歌のその呟きに、俺は瞬時に戦闘態勢に入る。
どうやら、最悪のケースを考慮しないといけないようだ。
さて、ここからがウロボロス編の本番だ……っ!!