シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
ではいくぜヒーローズ編!!
《樹下誠二》
まず情報をまとめて、把握を試みる。
現状、冥界はあまりにも混乱状態になっている。
魔獣創造を強制的にドーピングして禁手にした、シャルバの憎悪によって作られた超大型魔獣。上位型七体に下位二十二体が、冥界の各地で暴れている。
小型の魔獣を時折生み出しながら、冥界の大都市に向かって侵攻している超大型魔獣の討伐戦は、小型魔獣の邪魔もあってうまくいかない。魔王クラスや最上級悪魔が徒党を組んで対応しているが、下位二十二体ですら遅々たる速度だが進軍を続けており、上位型七体に至っては遅滞戦術を取ってなお進行速度が数割低下する程度。
そしてこの窮地が精神的な余裕をなくしたのか好機と受け取ったのか。冥界各地で転生悪魔が主に対して禁手を武器として反旗を翻す事態が多発。これも混乱に拍車がかかっている。
それに対し、大きな敵対勢力の反応はそれぞれ分かれている。
まず純潔十字連盟だが、これは基本的に静観。まぁ多少の暗躍や諜報はしている可能性があるが、そもそも悪魔の内輪もめともいえる事態に手を出す理由が特にない。当然。
続いて禍の団。こちらの行動も散発的だ。旧魔王派の一部が便乗して動いているそうだが、あとは散発的な反旗に介入することがある程度。おそらくは新しいウロボロスの作成にリソースが割かれているとみていい。
そしてアイアンローズ。この事態に対して積極的に民間人の保護や散発的な反旗に対する支援を中心とする介入を行っており、いまだに民間の悪魔に対しては味方面している。
ただし、アイアンローズにおいては悪魔の戦力がかなり多いのが懸念点。中には最上級悪魔クラスの火力持ちも多数報告されているが、その詳細情報がこの事態とはいえあまりに見受けられない。
「……大体のところはわかった。冥界の外側はどうだ?」
まとめてくれた資料を確認しつつ、俺は資料をまとめた青蘭に確認する。
今冥界は未曽有の事態だ。多かれ少なかれ悪魔と接触が多い勢力にも混乱は波及するだろうし、人間界側で動いている連中が便乗して動く可能性は捨てきれない。
一応、駒王町にいる今現在は駒王町のことも考えないといけないしな。
ただそこで、青蘭が目を伏せた。
……何があった?
「これは資料整理後の報告だ。……アヴィが英雄派の分派から襲撃を受け、一命はとりとめて治療も終わったが意識を取り戻していない」
……こっちはこっちで面倒なことになった。
というか彼女が? ピンポイントで?
「サタナキア家が絡んでいる可能性は?」
「直接はないだろう。ただ、分派との会話で絶花が気になることを聞いていた。……アヴィの実母が、アガリアプレト家の者だとミケランジェロという英雄派が言っていたそうだ」
「……サタナキア家と分派にそれぞれリークした奴がいる可能性か。現アスモデウス様がシャットアウトしてたとみるべきだろう」
仮説にしかならないからあまり深入りするべきではないが、無視するわけにもいかない情報だ。
ここ最近のアモン家周りのゴタゴタだが、この様子だとアガリアプレト関係とみていいだろう。分派が陽動のためにサタナキア家にリークした可能性もあるが、推論通り越して妄想にしかならないからいったん保留だ。
「祓魔省の対応は静観か?」
「内閣の判断に伴い、一部要人の子息子女及び数人の従者に限り、祓魔省が確保している施設に一時疎開させるそうだ。小笠原一族の神滅具行使可能者が数人常駐しており、今の段階で即座に攻撃を受ける可能性は薄いとのことだ」
無理のない範囲で恩を売りつつ、今後の展開に備えているといったところか。
……なら、動くための情報も集めよう。
「秀華たちの動きは?」
「現在、所長たちは遊軍として避難誘導が遅れているところに移動しては士気高揚と戦闘支援を行うといった行動に終始している。……それとリアス・グレモリー眷属だが、グレモリー本城に到着したメンバーはほぼ動けていないな」
……息を吸って、ためてから吐き出す。そして数秒。
なるほど。この懸念点は大きかったな。
「眷属初の戦死者が、寄りにもよってイッセーだからな」
「幸か不幸か、リアス嬢は前線には出ていないが手続きなどをいくらかやっているらしい。最もあまりに無理をしている点から、従者たちからも精力的な活動は止められているようだ」
それはそれでまずいな。
「イッセーのMIAだが、情報は漏れているか?」
禍の団が戦略に組み込んでないところを見るに、シャルバはどうにかできたのかもしれない。
だが、そのあたりは不明だ。イッセーなら何とかするという期待を持ちたいが、根拠が戦死した可能性が高すぎる男の性格に対する信頼では薄い。物的証拠のあるイッセー死亡説のほうがまだ確信を持てる。
まぁ奴の正確なら、生きていれば堂々と犯行声明を上げるだろうな。そういう意味ではただでは済ませてないんだろうが。
……さて。俺たちはどう動くか……だな。
「現状は不明だ。シャルバ・ベルゼブブが生きているなら大手を振って宣言しているだろうから、禍の団でも確定はできてないのだろう。現政権においても大王派には漏れないようにしている」
「考える頭がないアホなら、ここで嫌がらせにリソースを盛大に振るだろうからな。サリアローズ殿ならしないだろうが、彼女の派閥内にもアホの一人二人はいると考えて警戒するべきだろう」
もっとも、各種状況証拠から呼んでいる可能性はあるが……な。
《冥界バアル領 対業獣鬼前線拠点》
「……兵藤一誠が動いていない? それも、リアス・グレモリー眷属もか?」
「ああ。俺の眷属にゃぁ特化型の眷属もいるからな。どうもリアス・グレモリーが書類仕事をいくつかした程度で、グレモリー側の防衛戦にも参加してないらしい」
「解せんな。波柴・秀華・レヴィアタンたちが動いている以上、ともに動く可能性は大きい。何より兵藤一誠がこの状況下で何もしない手合いとは思えん。上が止めるにしても、おっぱいドラゴンの知名度は避難民の慰安には動かすべきだろう」
「……となると答えは一つ」
「だな。兵藤一誠は動けない。それも、相当のやばい状態だということっつーわけだ」
「ならば情報統制を急げ。この情報、大王派に漏れれば必ずバカが動く」
「なかなか手厳しい」
「下僕や民を道具や家畜程度には扱っているなどと気をやっているようなことを宣う馬鹿なら余計なことをするだろうさ。道具や家畜なら、引き出す価値に見合った手入れや世話が必要だということも理解してないのだぞ? いい機会だし介入するのは殺されてからでもいいかもしれん。裏方には邪魔が入らないように立ち回らせるか?」
「腐敗部分切除してから恩を売って暗部ってか? 怖いねぇ?」
「我らの手が届く範囲内の掃除は大切だろう? 癌細胞は切除すべきだし、自滅による自浄作用が働くに越したことはあるまい。……それはともかく、さっさとバアル領の超大型魔獣をつぶしに行くか」
「俺らの領地が襲われてないからって、わざわざ呼びつけた理由はそれかい」
「初代殿や現当主殿は?」
「格下とはいえ真っ先に超大型魔獣をバアルが倒し、浮いた余力の一部で大王派や魔王派の民を非難させる手助けをすれば、バアル家の名は民や魔王派にとっても輝いて見えると伝えたまでだ。ロイヤルピースの四部隊を集中投入すれば、確殺はできる。……出ないとアモン領の下劣な害獣駆除に関与できんからな」
「「これが俗世で言うブラコンか……」」
「なんとでも言え。マグダラン兄上によってバアルにもたらされるだろう新たな豊穣を文字通り焼き払った報い、バアルが下さなくてどうするというのか……っ」
「「これがブラコンの暴走か……っ」」
《空本麗夜》
実に厄介な連中だよ、この大型魔獣は。
戦闘を行いながら、俺は内心で舌打ちする。
非常に頑丈。すぐ傷が再生。さらに時折面倒な雑魚が複数出現。実に厄介。
基本性能も実に強い。下手な神仏を超えるだろう出力を持ち、おかげで最上級悪魔まで複数参戦している戦いであるにもかかわらず苦戦している。
こっちも現状は足止めの遅滞戦術だ。勝算がないでもないが、ここで無理に倒すと身の程知らずの暴走が出かねない。全体に勝ち筋をもたらしてから一気に反転攻勢をかける予定だ。
避難することになっている人たちには悪いけれど、目先の勝利にこだわった結果、収拾のつかない被害を起こすようなまねはできない。
これは文字通り、冥界の……悪魔全体の危機だ。対応を間違えると多大な犠牲者が出る。それを避けることこそが今の最優先だ。
「ダーリン、こっちの避難は完了したよ」
「わかった。じゃ、こっちも後退しようか」
非難完了までの結界担当をしていた美子ちゃんの連絡を受けて、俺は前衛としての役目を終えて後退する。
……思った以上に時間がかかっている。
二十を超える超大型魔獣は
どれもこれも厄介だけど、超鬼獣は本当に面倒だ。魔王クラスですら眷属を率いてなお足止めするのが手一杯。おかげで冥界最強戦力である、魔王クラスの悪魔が対応しきれない。
七体なのはそこまで計算していたのだろう。今の冥界で魔王クラスの悪魔は、現四大魔王様及び、レーティングゲームトップランカー三人に、グレイフィアさんの合計八名。加えて現魔王の四人は政治的指導者でもある以上、全員が前線に出るのはなるべく避けるべき案件だ。
今はアジュカ・ベルゼブブ様が対抗術式、ファルビウム・アスモデウス様が対抗戦術の構築に時間を取られている。全体の統率にサーゼクス様がかかりきりで、セラフォルー様も外部からの協力体制を取るために忙しいことがあって超鬼獣の相手に人を送れない状況だ。
レーティングゲームトップランカーの三名が、持ち回りで追い込まれているとことに派遣されての遅滞戦術を取る形で、現状被害を最小限に抑えている。
俺たち桃山警護事務所もだ。秀華所長と麗華の、魔王血族というネームバリューで士気向上と慰撫を行いつつ、俺たちが遊撃で立ち回る形だ。
……英雄派が存在をちらつかせてるのが特に厄介だ。おかげで和平を結んだ神々がうかつに動けない。これも超大型魔獣の討伐が進んでない原因ともいえる。
武闘派の神クラスが数人参加してくれれば、すでに数体打倒することもできただろう。だが神クラスでも一対一どころか数人でもてこずるだろう化け物だ。奴らを基点とする形で、曹操が神殺しを使った奇襲を仕掛けることは十分できる。それも、破格の立ち回りを可能とする禁手に二つの星辰光の鬼札だ。
超大型魔獣の片手間に相手ができる相手ではない。これもまた、うかつな三線画できない理由となっている。
攻勢を仕掛けるとするのなら、対抗術式と対抗戦術が確立した後。同時タイミングで魔王クラス及び神話勢力の集中投入を行い、一気に減らしていく。これが重要だ。
戦力の集中投入で一体か二体はいいだろう。だけどそれ以上は必要とされる戦力の質も数も、今の悪魔社会にとって大打撃になる負担を強いるレベルで要求水準が高すぎる。
まぁ裏を返せば、一体や二体なら倒す戦力を用意はできる。そのほうが、戦力に余裕ができてより安定して対応できるところはある。
ただその後の政治的な立ち回りなどでややこしいことになるだろう。こんな時でも後のことを考えないといけないというか、こんな時でも後のことばかり考えるだろう連中に備えないといけないという世知辛さというか。
やるとするなら、それこそ大王派筆頭のバアル家関係者ぐらいじゃないと無理だろう。ただ魔王派側のバカが余計な警戒心を生み出すだろうから、あえて足並みをそろえている……というところだろう。
ただ、そういう政治的なやり取り以外でも個人的に無視できないところ上がる。
「……確か、ここが終わったらいったん後方待機だったね」
「グレモリーの本城に行く予定だね。……リアス部長たち、大丈夫かな……?」
美子ちゃんもため息をついて当然だろう。
今のグレモリー眷属は、ほぼほぼ抜け殻だ。
懸念が最悪のタイミングで的中した。寄りにもよってイッセー君が生死不明で、生還も絶望的ときている。
……まったく。年長者としても正直きついよ。彼はまだ学生だってのに……さ。
現状は底辺まで言っている。あとはここから上がるだけ。
さぁ、反撃準備……スタート!!