シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
タイミングよく本作も新章突入! この調子で頑張っていきたいでっす!
第一話 心機一転新居建築!
《樹下誠二》
……凄いことになったな。
俺はそう思いながら、あるビルを見上げる。
そこそこな幅の道路が横にある、六階建てのビル。一階一階の高さがちょっと普通より高めの、そんなビル。
だがしかし、ただのビルではない。地下四階もあるとはいえ、そう言う方向性でもない。
このビルは、だ。
「凄いな樹下。これ、桃山警護事務所の持ちビルになるのか」
「テナント料は安いが、代わりに悪魔と契約していたりしている関係者だけが借りれるようになっている。あと異能系の仕事している者達のフロント企業も入る予定だ」
見物に来たイッセーに、俺はそう説明した。
そう、このビルは今後の俺達桃山警護事務所の新しい拠点でもある、雑居ビルだ。
異形パワーで一夜にして建てたことから、秀華がつけた名前は「スノマタ・ビル」。我ら桃山警護事務所の新たな本拠地であり、同時に異能に触れている者たち専門の雑居ビルとして機能する。
最新技術と異能を絡めた設計になっており、その頑丈さは軍事拠点の退避壕クラス。利権を使って欲しい老若男女貴賎を問わない悪魔達の要望に応え、滅茶苦茶金をかけている。
一応地下一階から地上三階までは、悪魔と契約しているのなら一般企業でも契約できるようにしている。逆に地下二階は異形側組織専用ブースであり、地上四階は俺達桃山警護事務所の事務所及び、祓魔省管轄のフロント企業などが事務所を構えている形だ。
ちなみに麗華さんも、近くに拠点を移す予定だった工場がいくつかあったので、まとめて土地を買って豪邸を新しく本格的に立てている。同時に趣味に全振りしたリバイバル上映専門の映画館なども手掛けるつもりらしい。冥界に趣味を広げるべく動くとか。
まぁそう言うわけで色々と動いているわけだ。
「ちなみに右谷達が関わってる三グループだが、地下二階に事業所を移すように交渉している。念の為、表向きの監視役を俺達事務所が行う形だな」
「色々大変だけど、昔馴染みと喋れて楽しそうじゃね?」
イッセーはそんなことを言うが、まぁそうなんだろうか。
あの頃は、波柴一族の目を欺いて牙を研ぐのがメインだったからな。それとないアドバイス程度はしてきたが、腹を割った交流はあまりしてなかった。
……もししてたら、別の形で波柴を潰せてたかもしれない。いや、逆に目立って潰されていたリスクもあるか。
まぁ、過去のことだ。苦笑いでだべるネタぐらいにした方がいいだろう。今更高得点を取る方法を考え続けるのも、あれではある。
「で、そっちはどうだ? 秀華の徹底教育、効果あったか?」
そしてあいつらと再会する理由になった、ブちぎれ秀華の調教はどんな成果があったのやら。
その辺を振ってみたが、イッセーの顔色が悪くなった。
「一周回って、怖いぐらい圧倒的に動けてるんだけど。失神している朱乃さんで出来心でパイズリしたら、精液掛かった瞬間にビックンビックン絶頂しているのは教えすぎだろ」
「徹底的にやったもんだな」
相当お冠だったからな。容赦しないとは思ってたが、とても雑魚雑魚にしたらしい。
まぁ、人格を歪めない程度には気遣っているしな。イッセーが大変だったしこれぐらいならいいだろう。
と、イッセーは顔色は悪いままだがちょっとほっとしている。
「ただ、最近はゼノヴィアの寝相で蹴飛ばされることはなくなったかな。ゼノヴィアは体力があるから、俺も最初の段階で徹底的に疲れるぐらいやるし」
そうか。ゼノヴィアがやらかしていたか。
……これは別の形で問題にするべきではないだろうか?
《空本麗夜》
ふぅ。新しい拠点の間取りも、大体は叩き込めたかな?
一通りの構造を見て回って把握して、俺は一旦下に降りる。
既に入店している喫茶店で、モーニングセットを頼んで一休み。
「これでこっちも心機一転。このままいい方向に行ってほしいけどなぁ」
ついそう言うけれど、難しい気もする。
禍の団が人間世界よりの犯罪組織に協力し、核兵器まで提供した。
もう色々と怪しいし、それ以外にも懸念点が多いのもあれだ。
それに何より、色々と聞かされてるからね。
多分、俺達の方が忙しいだろう。そうであった方がいいわけではあるけれど。
「……やぁ。流石オーナー側は入店が早いね」
と、少し前に聞いた声を聴いて俺は顔を上げる。
そこにいたのはクールな雰囲気の女性。難波栗須さんだったね。
「相席してもいいかな? 情報交換もしたくてね」
「どうぞどうぞ」
許可をもらった難波さんが向かい側に座ると、小さく苦笑した。
「監視役についてくれて感謝するよ。おかげで、こっちも木陰ぐらいの場所には住めるようになった」
「ま、こちらも色々と訳ありを抱えているので。異形や異能が介在するなら、ある程度は行けますよ」
便宜上の監視役として、俺達桃山警護事務所が彼らの監視を担当している。
まぁ、変な心配はしなくていいという認識だけどね。形だけでも監視役がいた方が都合がいいというわけだ。
他にも、風巻部長たちのBeautiful Bondsやヴェルギリウスもこっちに居を変える予定だ。誠二の同期である訓練生が絡んでいる以上、それなりの監視体制は取っておきたいってところだろう。
ただまぁ、それだけってわけでもないんだけどね。
「興宮君と海部くんは?」
顔役なのはあの二人らしいけど、そう言えばまだ見てないね。
「二人は君の所の同期と同じ予定もあって、情報提供に向かったよ。他の者達もそうだろうが……君の所は?」
ああ、なるほど。
「誠二は勉学が終わってからだよ。ま、部活は休むみたいだけれどね」
色々と、誠二も動きを改めるつもりなんだろう。
……その辺りの決着も大事だろうね。
さて、そうなるとだ。
「……相方の子は、うちの海砂と同じかな?」
「……ああ。彼女にとっては、辛いだろうけどね」
まったくもって、大変だよ。
もっとゆったりできる生活を送りたいものだねぇ。当分無理だろうけど。
《アザゼル》
俺は、仲介役の名目でこの部屋にいる。
ただまぁ、お通夜に近い雰囲気になってるな。
「……ぅぷ……ぇ……ごめん、なさい……」
そう俯く、金髪の女。
年齢は、二十歳。ただ二十歳になったばかりだ。
興宮右谷と海部テイカー。タッグを組んで波柴から脱出したアイツらは、持ち逃げした資産を生かして裏社会で活動していた。
といっても、堅気の連中に迷惑をかけることはしていない。どちらかといえば特に堅気に危害を加える連中を共食いして糧にしつつ、うっかり落ちそうになっている連中を追い返すセーフティネットのような立ち回りをしていたわけだ。
その一環として、波柴に敵対的だったりターゲットにしていた裏社会組織を破滅させて、火事場泥棒的に生活の糧を得ていた。
あの二人とつるんでいる連中は全員がその過程で助けてもらった連中だ。波柴一族に引きずり込まれた奴らなどもおり、十数名で活動している。
で、そのフロント企業的に使っていた店をスノマタ・ビルに移しているわけだ。
そして、その一人が呼びつけられた理由は比較的シンプルだ。
「……いいのよ。今は本当にいいの。会えてよかったわ、来夏ちゃん」
そう苦笑してるのは吹本海砂だ。
目の前の女は山成来夏。……だが、遺伝子検査でこいつの父親が本当は波柴一族の男だってところまでは確定している。
海砂と同じアイドルグループで活動し、一族の一斉摘発後行方不明。
だが、問題は俺が確認している資料に書かれている内容だ。
「お前さんが、まともな判断能力を持てないように洗脳的な教育を受けていたことは調べがついてる。……本命の奥さん以外に、内縁の妻に托卵させて優秀な奴を躾けて飼うとか、反吐の出る糞親父に当たったもんだぜ」
吐きたくなるわ……ったく。
ここまでの下種野郎もそうはいねえよ。ドン引きしてるぜ俺は。
しかもその波柴野郎、一族の中でも有力者だってのがやばいな。芸能方面の浸透担当、大幹部様だ。
秀華が正体を知ってものすごい顔になってたからな。危険度が高いんで殺害されてはずだが、思わぬところで尾を引いてやがる。
……だが不幸中の幸いか、一族の奔流に引き込まれなかった。
だからだろうな。一族壊滅後に敵対的な連中に確保され、有効活用する為の洗脳。その一環としてまず正気に戻してから、メンタルをやられたところで誘導する前の段階でそいつらが潰された。
だからこそ、再会した直後の海砂が面食らうほどに暗くなっている。一族壊滅から四年経ってなお、そこまでの傷を負っている。
当然っちゃぁ当然だな。流石にいい気分はしねえよ。
「……ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさ―」
「もういいのよ、本当に」
絶望の表情でそうつぶやくしかなかった山成を、吹本は抱き寄せる。
「色々あった。今でも傷だらけ。でも、それはあなたも同じことだった。……なら、今は生きてやり直せるチャンスがあることを喜びましょう」
「……海砂さん……っ」
振るえる山成を抱きしめながら、吹本は苦笑する。
「それとも詫びる為なら何でもするっていうの? そうなると、おバカなことをしている女性陣の再調教の準備してもらうことになるけど? アナル責めるの得意だったわよね?」
「ふぇっ!? え、それはその、暗黒というか忌まわしき記憶というか!? テイカーさんが真剣にソムリエしてくるのでもう十分っていうか!?」
吹本、ジョークの方向性はどうなんだ。あと海部の奴は何を真面目にやってんだ。
俺もさすがに呆れるが、あっけにとられてパニくってる山成を見てればまぁ結果オーライでいいんだろうか。
と、吹本はちょっと寂しそうだった。
「私はしてほしいけどなー。色々されたの思い出して、ケツマンコうずいちゃってるけどなー?」
「すいません! 海砂さんって今どうなってるんですか!? 昔の私と別の意味でやばいことなってません!?」
「お前さんとこの次期当主様による、
助けを求められても困る。
ま、ひと段落付いたし本題に入ってもらうがな。
「それはともかくだ。いい機会だからあんたにも確認を取ってもらいたいことがある。……このファイルに乗ってる連中に覚えはないか?」
もう本題に入り、俺は顔写真が乗ったファイルを見せる。
それを見た山成は、少し考えてからいくつかの写真を指差した。
「この五人は見たことあります。ぱ……あの男の知り合いでした」
「そうか。……やはり当たりだな」
頭痛い展開になってきたぜ。
「……波柴藤花が旧中国圏の独立表明国家にいるという話ですけど、それ関係ですか?」
「ああ。秀華も完全には把握しきれてない部分の、血族外の要人を洗いなおしてたんだが……結構な人数が満漢王国に国賓待遇で保護されてることが分かった」
舌打ちしたくなる事態だが、吹本に悟ったようだ。
問題は、今になってあっさり調べ直しただけで分かったという点だな。
「満漢王国に引き渡し要請をしているが、断られたうえに敵対姿勢を取られている。露骨に攻撃態勢を向けてるが、どこまで本気かがちょっと分からん」
「結構な数の核兵器を確保してるって話ですしね。……でもあの国だけで世界を敵に回す足場に出来ますか?」
当然の意見だな。
核ミサイルは確かに脅威だが、迎撃ミサイルという対抗策は存在する。こと日本はその手の技術に長けており、最近は波柴一族のおかげで武闘派一歩手前レベルで戦力が増強されている始末だ。
国家としてなりたての未成熟であり、中国とはにらみ合う関係である満漢王国にそんな余裕があるわけない。最悪、中国と連携を取って圧殺する余地すらあるんだからな。
だが、こうも考えられる。
「満漢王国だけじゃないって可能性はあるだろう。北東側の戦国状態になってる地域や、関連国の不穏分子と組んで、一斉クーデターなどで大勢力かされちまったら、こっちもそう簡単には潰せねえよ」
そういった類の新興国は、元の国より先に星辰奏者技術に目を付けて動いているから、星辰奏者方面では強国側だからな。
戦奏教団の存在もある。三つ巴の世界大戦をしてる余裕はこっちにもねえ。
だが、これで情勢はほぼ確定だな。
色々ある国を後ろ盾にして、蜜月関係になる。やってくれる。
こりゃ禍の団、まだまだ終わらねえなぁ……畜生!
《兵藤一誠》
ふぅ~。そろそろ放課後かぁ、名残惜しいなぁ。
学校の授業が終わるのを名残惜しいってのも、なんか変な気がするけどな。
大人になると学校の授業を真面目に受けてなくて後悔する。そんなことがあるらしい。
桃山警護事務所の社員の人達からは、まぁちゃんと受けて卒業した方がいいって意見を聞くことも多い。あの人達、高校中退どころか除籍処分で中卒扱いもいるからだろうな。かなり実感籠ってる。
ただ、それ以外にも理由はある。
……戦いが多すぎるんだよ、それもレベルの高いのが。
あれ? この業界って、実戦よりレーティングゲームの方が多いってぐらいじゃなかったっけ? 俺、レーティングゲームらしいレーティングゲームを経験してないんだけど!?
しかも敵にしたって、悪神、魔王血族、人造惑星に英雄の末裔! どいつもこいつもやばいのばっかりじゃねえか!!
ああ、俺ってこの半年ちょっとで、どんどん酷い戦いを経験してるんだけど。
平和って……貴重なんだなぁ……。
「イッセー、しっかりしろ。それとあっちを見とけ」
あ、樹下が肩を叩いてアーシア達の方を指刺した。
少し見てみると、熱っぽい視線が向けられている。
……やりすぎた?
「改めて聞くがどうなんだ、ここ最近のベッドは」
器用に俺にしか聞こえないはっきりとした声で聴いてくるけど、俺も小さい声で答えるしかない。
「秀華大先生の教えが凄すぎて、もう毎日こっちが物足りないぐらい弱くて弱くてメロメロになってて」
「それぐらいした方がいいとは思ったが、やっぱりやりすぎたかもしれないな……」
正直、俺もそれは思った。
なんとなく二人でため息をついてると、ジト目で睨んでくる奴らが二人。
「おいイッセー、樹下……! お前らなぁ!」
「お前ら、モテない俺達の前でモテるみたいな会話しやがって!」
松田と元浜の殺意が怖い!? 絶対に勝てる自信があるけど怖いものは怖い!
と、松田が樹下にかなり迫っている。
「最近ちょっと付き合いが悪くねえか? 悪くねえか? エロいお姉さんの紹介はどうなってんだよ? なぁ?」
そして元浜も凄みが怖い!? 樹下も冷や汗をかいてる。
ただ、樹下は一呼吸を入れて一枚の名刺を出した。
「そんなお前達に、将来設計の一環もかねて紹介したい企業があるんだ。俺の……昔いた私塾的なところで一緒だった奴が警備部門担当で就職しててな。二十代前半の女性比率がめっちゃ高い」
あ。
二人がその名刺を取って少し読んだ。
あ、目の色変わった。
「ヴェルギリウスだと!?」
松田が白目をむいて驚いている。
分かる。とっても分かる。もの凄く分かる。
樹下がヴェルギリウスの社員と知り合いだなんて知ったら驚くだろ。
「ちょっとイッセー達と温泉に行った時に再会してな。ついでで頼まれたんだ、男手を増やしたいのでバイトしてくれる信頼のおける奴を知らないかと。……大マジで適任だから、ぜひとも受けてくれないか?」
「嘘だろ、マジで!? 期待しちゃうぞ!?」
元浜の眼鏡にひびが!!
「い、いやいやいや。いくらヴェルギリウスだからって、そんなエロビデオみたいな展開なんてあるとは限らないよな?」
「そ、そうだな。コナを駆けたら裁判沙汰とかあるよな!?」
二人が我に返ったけど、そんな二人に樹下は微笑んだ。
「ちなみに絶対条件として「誘ったら高確率でセックスフレンドになってくれるスケベな人」が入ってるんだ。流石にこんなことを堂々と頼めるのはお前らしかいない」
「「マジでございますか!? え、本当にエロ会社社員とエッチなことできるの!?」」
声大きい! 声大きいよ二人とも!?
ほら、久々に全力スケベな展開で皆驚いてるし。
樹下も呆れた顔になったけど、ため息をついて気持ちを切り替えたみたいだ。
「あの会社、スローガンを本当に徹底している奴しか社員にしないんだよ。だからバイトに関してもスケベは必須で一致してるんだ。……頼む。一人二人は紹介しないと絶対に俺に臨時バイトの誘いをかけてくるのが目に見えてる……!」
というか結構追い詰められている!?
宇連さんだっけ? よくやるよ本当に!?
「なら、別に兵藤でもよくない?」
「なんで兵藤じゃないんだ?」
あれ? なんかひそひそ声が聞こえてくるぞ?
なんだろう。凄い嫌な予感が。
「失礼な。いやそういうコトもあるのだろうが、それでわ―」
「あ、そういや忘れてた! 俺、今日は用事あるからオカ研いかないから!」
樹下が早い判断で、ゼノヴィアの声を遮れる声量でそう言ってきた。
ナイス! 真剣にありがと。
そして俺も乗っかろう。話を逸らさないとまずい。
「そうなのか? そういやそんなこと言ってた気もするけど、なんでだっけ?」
「さっき言ってた私塾的なところの奴らと結構再会できたんでな。連絡のつくメンバーで一度集まってカラオケ大会だよ」
俺の質問にそう答えた樹下は、少し寂しげだった。
「……二度と会えない奴も何人もいてな。ちょっと躊躇してたんだが、いい機会だと思ってな」
………。
樹下。お前な。
「そういうの、駆け引き半分で言わなくていいぞ?」
こっちの気が引けるよ……!
ウィザード編はそろそろ駒王学園が襲撃されるところをかき出そうという感じまで書き溜めております。
あと本社の仕様上、最低でもひと月は休養期間も続きます。
……つまりまだまだ連投は続くぜ! 喜べ諸君!!
ではまた後日!