シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
エクスカリバー編の決戦スタートです!
《兵藤一誠》
慌てて俺たちが駆けだし、校庭にたどり着く。
そこには空飛ぶ玉座が浮かび、座っている凶悪そうな顔の堕天使が一人。
その下では、魔方陣を展開されていて、聖なる剣を前にした男が一人いた。
「奴はバルパー・ガリレイ。何かの儀式か」
樹下が舌打ちしているけど、儀式ってなんだ?
いや、ろくでもないことをしているんだとは思うけど、マジで何なんだ?
「待っていたぞ、リアス・グレモリー。それに教会の雑魚どもとアザゼルの飼い犬に……一人毛色が違うな」
そんな声に、俺たちは玉座に座ってる堕天使に視線を向ける。
……びりびり来るな。あいつ、めっちゃ強そうだ。
俺がそう思ってると、籠手から宿っているドラゴンであるドライグの意思が響いてくる。
『当然。奴は聖書に名を残し生き残っている堕天使だ。堕天使全体で見ても最強格だ。今のうちに全身を差し出す覚悟をしておけ』
そこまでの相手ってことか。
いいぜ、必要になったらすぐに頼む。
俺が気合を入れていると、リアス部長が一歩前に出る。
「ごきげんよう、堕天使の最高幹部コカビエル。実は堕天使総督アザゼルは天使長ミカエル様とともに魔王様と連携で対応しているのだけれど、これからどうするのかしら?」
部長が言ったことは真実で、多分牽制なんだろう。
お前のやっていることはもうどの勢力も把握して、対応するためにむしろ連携取ってるぞって言ってるんだ。
コカビエルが三大勢力の戦争再開を望んでいるのは知っているけど、今の状態で何かしても意味がない。そういうことで戦意を折ることが狙いなんだろう。
だけど、コカビエルは鼻で笑った。
「知ったことか。幸い、矢城の奴が手をまわしてくれていてな? お前を聖剣で殺せば、それをきっかけに同時多発的に火付けが起きる算段になっている」
なんだって。
ど、同時多発的に火付けって、つまり戦争を望んでいるやつとかに話がついているってことなのか!?
俺が慌てて波柴矢城を探すと、すぐに一人の男が出てきてにやりと笑った。
樹下や小猫ちゃん、空本さんたちの様子が変わったあたりアイツが波柴矢城だな。
「ま、波柴一族でも三大勢力を利用する計画があったみたいでな? 戦争を起こしたがってる奴だけじゃなく、何か起これば過激な動きをしたがるような奴は結構見繕ってんだよ。もちろん日本中心だが、ヨーロッパあたりにも繋ぎはついてるみたいでなぁ?」
「体のいい言い訳を用意してやれば、そいつらは勝手に動き出すだろう。そしてお前はそのための着火剤というわけだ」
コカビエルは矢城の言葉に続きながら、俺たちを見てにやりと笑う。
「準備運動も兼ねて、俺手ずから殺してやろう。俺が犯してから輪切りにして送れば一気に火が沸き起こるだろうしなぁ?」
こ、この野郎!
「てめえ! 俺の、俺たちの部長で何を考えてやがる!!」
「これだから堕天使は。汚らわしいものは多いということですね」
俺も朱乃さんもキレかけてるけど、それを見てコカビエルは楽しそうに笑っている。
「いいだろう。ついでに聖剣を使えば、キレた信徒共も勝手に動き出すだろう。外野の邪魔も当分はいらんだろうし、ゲームでもしようか!」
コカビエルの奴は立ち上がると、さらに指を勢いよくならす。
そのとたんに、校庭の隅々に転移の光が出てきて、なんか超でかい頭が三つもある犬が現れた。
「冥府の番犬、ケルベロス。……かつての大戦でオリュンポスの連中から分捕ってたわけね」
「俺のペットでな。まぁ、数合わせとしてはちょうどいいだろう?」
十体ぐらい表れてるけど、さすがに多いだろあれ!
ケルベロス達が俺たちをにらんでいると、コカビエルは視線をバルパーに戻した。
「で、そろそろ終わるか?」
「ああ、完了だ……っ」
なんかきもいぐらい陶酔の顔になっているバルパーは、光り輝いてオーラを垂れ流している剣を手に取った。
「現存するエクスカリバーは全て統合された! そしてその統合のエネルギーを利用すれば、このあたり一帯を吹き飛ばすことも可能だろう」
なんだって!?
この町を吹き飛ばす? 俺たちどころか、この町を!?
ふざけんな、ここには俺の家族も友達もいるんだぞ!?
「美子ちゃん、広域の人払い結界展開! リソース全部そっちに集中」
飛び跳ねるように秀華先輩が声を上げると、小笠原さんがハっとなった。
「分かりました所長! ダーリン、こっちは頑張るからそっちも頑張って!」
そういうと、小笠原ちゃんは目を閉じて気合を入れ始まる。
その瞬間、俺たちを飲み込むようにうすい靄のようなものが一瞬通り過ぎた。
それは生徒会長たちが気休めレベルでもと張った結界を通り越して、さらにどんどん広い範囲に展開していく。
それを見て、コカビエルは面白そうに小笠原さんのほうを見た。
「ほう? 小笠原ということは……貴様、アレの端末か。神器に興味がない俺以外なら、目の色を変えて迫っただろうな」
お、小笠原さんは何とかできるってことか?
「と、とりあえず半径4kmの人たち全員に「よくわかんないけど遠くに離れよう」って感じの影響を与えました! でもこれ以上は時間がかかるし、移動速度も事故無しだとキッツいよー!」
小笠原さんがそういうけど、マジすげえ!
こ、これなら被害はだいぶ減るか? でも、それでもまだ足りないところは多いよな!?
「ちなみに、爆発まで一時間もかからんぞ? 影響範囲ももっと広いがどうにかできるかね?」
バルパーらしいおっさんがそんなこと言うけど、なら俺たちが頑張るしかねえな!
「遠慮なくぶっ潰します」
「同感。出し惜しみ無しで行きましょう」
小猫ちゃんと吹本さんが一歩前に出ながら、戦闘態勢に入った時だ。
波柴矢城の奴が、にやりと笑った。
「そっか、君らが最初か―」
「―させるか」
その瞬間、二人に横合いからとびかかった女二人を、樹下が強引に押し飛ばした。
すでに星辰光も出して、強引に足のブレードで引っ掛けて吹っ飛ばしていく。
あ、水色の髪にモデル体型。つまりあの二人がそういうことか。
「樹下!」
俺が声を上げると、樹下は歯を食いしばって苦い顔だった。
「悪い! 出し惜しみ無しで行くから―」
そういうことは言わなくていい。
「こっちは任せろ! そっちは何とかして見せろよ!!」
「―」
樹下は一瞬だけ惚けそうになって、だけどすぐにちょっとだけ笑顔の入った顔になった。
「分かった任せる!!」
ああ、任せとけ!!
樹下がそのまま木々の中に入っていくのを見てから、俺は波柴矢城のほうをにらみつける。
「このクソ野郎! てめえがろくでもねえことはいろんなところから聞いてんだよ! ……樹下の知り合いに何をしやがった!!」
相当えげつないことをしてるのは俺だってわかってる。
だけど、樹下の前の前にあんなむごい雰囲気の知り合いを連れてくるなんて許せねえ!
そして波柴矢城のほうは、面倒くさそうにぼりぼりと頬をかいていた。
この野郎、緊張感がねえな!!
「つってもなぁ。俺だってそんなこと想定外だっての。特にコナユキの奴は、ガサイレのどさくさで主になってる奴が死んだんでな。手間暇かけて俺を主に移し替えるのは大変だったんだぜ?」
そんなことを言ってきやがるけど、十分すぎるほどむかついたよ。
ああ、目の前の野郎は本当にただのクソ野郎だ。遠慮なくぶっ飛ばせるし、死んでも気にならねえよ。
むしろ雲川さんたちを見て、懐かしそうな顔になってやがる。それも、悪党が悪事をしゃべるときの顔だよ。
「しっかし懐かしいねー。三人そろってるとか、まぁ元鞘ってことでいいのか?」
「そういうわけにもいかないけどね。……まったく、勘弁してほしいもんだわ」
茶化すような矢城に、雨宮さんは苦々しい顔でそう返す。
雲川さんは敵として見ているけど懐かしそうだ。この人は大概すごい感性をしているし、参考にはならないだろう。
そして空本さんも、かなり痛そうな顔になっている。
それを見ながら、波柴矢城の奴はにやりと笑った。
「別に、波柴一族なら似たようなことは一度はやってるぜ?
「だよね。だからこそ、高校に進学する前に動くって決めてたんだけどさ」
秀華先輩が、本当に醜いものを見るように波柴矢城の奴を見ている。
それに対して、波柴矢城はつまらなさそうに肩をすくめた。
「大したことはしてねえけどなぁ? なんたってなぁ?」
そう言って、波柴矢城はまず雲川さんを見た。
「恋に恋する夢見がちな女の子を玩具にして」
そして今度は、からかうような目で雨宮さんを見た。
「嫉妬心からNTR狙いの女を、嵌める側と思わせながら同じようにして」
そして、見下す視線で空本さんに視線を移す。
「碌に手も出さないでヘタレ童貞を
……本当に、本当にろくでもない連中だよ。
「……ひどい……」
「ここまで外道だとは思わなかった……っ!」
アーシアは両手で口を押えて絶句しているし、リーネさんも歯を食いしばって波柴矢城をにらみつけている。
「ここまで酷い外道とはね。人間からたまに出る醜さには反吐が出そうだわ。異形を悪く言えないわね」
アルトリーネさんも、ものすごく嫌そうな顔になっている。
「フン。くだらないゴミを有効活用する程度で騒がしい。が、これ以上時間をかけるのはそちらにとっても不都合ではないかね?」
バルパーの野郎はそういうと、統合されたエクスカリバーを手に取った。
「私は聖剣、特にエクスカリバーが好きでね。こうして限界まで本来に近づけ、扱う才能も持てるようになるほどのめりこんだ。もっとも、その分剣士として技術を磨くことはできなかった……が」
そういうと、バルパーの奴はにやりと笑った。
「創生せよ、天に描いた星辰を———我らは煌く流れ星」
おいおいマジかよ。
あの野郎も、星辰奏者だってのか!?
《樹下誠二》
俺は呼吸を整え、向こうのオーラの高まりをあえて無視する。
本当は、今すぐにでも向かうべきだろう。
だけど、秀華もイッセーも俺にこっちをするように任せてくれた。
イッセーの激励を思い出す。
同時に、視界に映った秀華の無言の応援も思い出す。
だから呼吸を整える。だから、殺さない呼吸で戦う覚悟を完了する。
「ご主人様の邪魔をしないで」
「敵、倒す、命令」
うつろな目で、心が壊れているといってもいいような表情を向けてくる。
見当違いの罪悪感はある。こうなってしまったことに対する寂寥もある。
だが、今は―
「殺さずにどうにかするのが絶対条件。……ただ、手足は全部折るつもりで行くぞ。恨んでいいさ……っ」
―そのすべてを超え、二人への僅かな親愛と、秀華やイッセーの期待にこたえたい決意で動く。
「死なない程度にぶちのめして、治療できる施設に叩き込む……っ!」
さぁ、気合を入れて戦わせてもらう!!