シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
体力方面に気遣わないといけないな~と思っております。体力付けたほうがいいということはよくわかった……!
それはともかく、本編!
《空本麗夜》
「……ぅ……そだろ……っ!?」
ここまで愕然としたのは久々だと、頭のどこかで冷静に見ている自分がいる。
いや、冷静じゃないね。自転車で勢いよくスピードを出した直後なら、手を放してもある程度まっすぐ進むのと同じ。やばい状態になっているが故の不安定な安定だ。
目を開けているはずなのに、何を見ているのかが分からない。そんな状態だ。
レイヴェル嬢が狙われたことも動揺している。小猫ちゃんやギャスパー君までもが誘拐される形になったのもショックだ。
だけどそれ以上に、同じように美子ちゃんが……美子ちゃんが……っ
「……生きて捕まってる連中はどこに?」
自分の声だと思えないぐらい、ドスが効いている。それがなんとなく客観的に分かってしまった。
「残念だが麗夜さん。全員昏睡状態に陥った。簡単な魔法契約によるものだが既に解けていて、それでも当分は起きない状態になっている」
誠二が首を横に振ったのがなんとなく分かった。
対策万全で何よりだよ、くそったれ!
……いや、落ち着け。せめて一線をきちんと引いて対応しろ。
衝動的に動くな、俺。深呼吸だ。息を大きく吸って、止めてから吐いて、止めてから吸え。
ボルテージを最低限下げてから、俺は壁に体重をかけてずり落ちるように座り込んだ。
「悪い。すぐにでも内臓を一つ潰して強引に起こしそうになってたよ」
「やるにしたって俺らがしちゃダメな案件だからな。暗部部隊の到着は待たないと」
誠二も相当キている。当然だ。
寄りにもよって美子ちゃんまで。いや、レイヴェル嬢達には悪いけど、かなりキてる。
「レイヴェルのおまけみたいな形でしょうけれど、美子達まで誘拐するとか……っ!」
「圧倒的に苛立ってきたね。元々容赦する理由はないけどさ」
歯を食いしばっている海砂や、静かに殺意を滾らせている流花も相当キている。
当然だ。桃山警護事務所初期からのメンバーの一人。四年近くの間、俺達は六人で動いてきた。
そして、俺にとっては救ってくれた大切な女の子だ。
あの子と出会い、助けて助けられた。あの経験があるからこそ、俺はここまでやり直せた。
分かっている。俺達には立場と責任があり、それに乗っ取って動いているんだってことは。
だけど、それはそれとしてだ。
……ここまで大規模な奇襲が成立している以上、裏があるのが分かり切っている。
そいつは、誰だ?
「……まずいことになった。どうやら、敵は相当の欺瞞能力を持っているようだ」
星斗さんが入ってきて、すぐにそういった。
「冗談はよしてください。ここまで完璧で大規模な奇襲、内通者なしに出来るとでも?」
駒王町には転移などの警戒のために結界が張られている。これは悪意を持つ者の侵入を感知することにも長けている。
以前似たようなことがあったけど、その時は絶花ちゃんとの戦いで力を奪われた奴が手引きしているからできたことだ。今回はそのあたりの対策も取っていると聞いているし、それを踏まえても規模が多すぎるうえに侵入している奴らが雑だ。
これをなすというのなら、それは内通者がいるということになる。しかも、相応に重要度の高いメンバーが、だ。
……正直信じたくないけれど、その可能性が非常に大きい。現実的にここまでの奇襲を成立させれるのなら、それぐらいしか考えられない。
結界そのものの精査で住人も含めて誰一人操られていないとも出ているんだ。消去法で考えても、現実的なものはそれぐらいしかない。
だからこそ苛立ちは更に大きい。
ただ、星斗さんは首を横に振った。
「結界機構を洗い直した結果、不自然な侵入反応が同一人物で多数確認されたが、殆どにおいてアリバイがはっきりしている。……グレイフィア・ルキフグス殿だ」
「はぁああああああっ!?」
イッセー君が呆気にとられるけど、俺も正直驚いている。
あの人がこんなことを? 操られる可能性を含めてシロ枠だろう。
「もちろんおかしな話だ。アリバイを証明しているのがサーゼクス様である以上、彼女が下手人とするなら彼も協力者。万が一実際にやっていたとして、どう考えてももっとスマートな方法が取れる上にそれを考え付かないわけがない」
「そう、よね。あの人なら、レイヴェル嬢を直接呼び寄せる方法も理由もいくらでも用意できる」
「そもそも態々レイヴェル嬢に拘る必要もない。他のフェニックス関係者にした方がもっと楽だ」
海砂と誠二もそう口にするけど、その通りだ。
どう考えても態々こんなことをしてレイヴェル嬢を誘拐する意味がない。
純粋な個人的な理解による情もあるけど、そもそもあの人達の立場や能力から言ってこんな手段を取る意味がかけらもないんだ。必要性が思い当たらない。
美子ちゃんのことでいっぱいいっぱいだというのに、更に訳の分からないことになってきた。
「だから欺瞞情報……もしくは偽装した、ということになる。そう簡単にできることではないはずだが、な」
星斗さんもよく分かっていないようだ。
「逃げる時も転移に頼らず、移動を行っているようだ。もっともその点についてはかなりランダムにジャミングを仕掛けて誤魔化しており、追跡中だが―」
「……ご主人様! 美子達の居場所が分かったぞ!!」
と思ったら、青蘭専務がなんかとんでもない情報を!?
《樹下誠二》
なんか急に美子達の位置が分かったんだが、何事だ。
混乱気味で集まれば、そこにいたのは麗夜さん達の同窓グループ、Beautiful Bondsのメンバーだった。
「おう! うちの千也が大手柄だ……後でなんかご褒美をくれてやってくれ!」
サムズアップするのは店長の風巻竜太郎だったか。
というか、千也が?
あ、そうか。
「あいつ元々忍者の家系で、諜報技術は同期一位だったな。つけてたのか!」
俺はそれに気づいた。
雷銅千也は諜報部門においては同期最高。忍者というかつての日本における諜報組織としての立ち位置がそれをなす土壌を作ったのだろう。
「おうよ! で、文字通りで鼠を送り込んで探ってたんだが……抜け目がねぇなぁ、お前さんの幼な妻」
と、風巻さんは一枚の写真を取り出して麗夜さんに見せる。
……あ、これ美子だ。
「千也が動かした鼠は調教で動かしてたんだが、カメラを括り付けてたからそれに気づいたんだろうな。で、いざって時に備えてメモを書いてたんだろう。それを見せてきたのを拡大して……これな?」
と、それを見せてくれた。
「……何語?」
「日本語だよ。とっても達筆で書いてるだけ」
思わず混乱するが、流花さんが教えてくれた。
なるほど。そういえば美子はあれでもいいとこのお嬢様だからな。その辺りの技量も高いと。
下手に暗号にするより、達筆の権化にした方が文字と思われにくいと思ったんだろう。あいつ本当に抜け目ないな。
これ、どさくさ紛れにさらなる転移とかに備えて残しとく気だったな?
さて、なんて書いてるのか。
「……あ~……そういうコトか」
「なんて書かれてるんです?」
額に手を当てた流花さんに、ナミネさんが質問する。
「敵を率いているのはイケメンの上級悪魔。全体的な特徴から、グレイフィアさんの遠縁ではないか……って」
と、それを聞いた雨宮先生が何かに気づいたようだ
「確かグレイフィア殿には生死不明だが弟がいたはずだ」
「可能性は高いですね。血を分けた姉弟なら肉体情報も近いので、誤魔化す難易度は格段に下がります。冥界政府ではグレイフィアさんが最後の生き残りと目されていたので、生きていたのなら警戒は裏をかけるかと」
会長もそういうなら、その可能性が大きいか。
死んでいると思われていた、グレイフィアさんの肉親。実際に生きていて禍の団側についているのなら盲点にはなる。
「誰だか知んないが、グレイフィアさんの弟だってのにグレイフィアさんに迷惑かけやがって……!」
「そいつが美子ちゃんを誘拐した首謀者か。……腕の一本ぐらいいいかな……?」
イッセーも麗夜さんもキレてる。これは俺がいつも以上に頑張らないとな。
イッセーはともかく麗夜さんが切れてるのがまずい。普段大人しい側だからなぁこの人。
とにかく、だ。
「敵の位置が分かってるなら相手の出方を伺うまでもない。……こちらから強襲することを提案します」
「そうですね。すぐにでも動きましょうか」
さて、会長も乗り気だしここからが反撃だ。
覚悟しやがれ、くそ野郎ども!
《Other》
「さぁて。そろそろ検査も終わったみたいだし暴れるかね?」
「赤龍帝に挑戦状送るんだろ? どうすんだ?」
「んなことより狩り大会だろ狩り大会。俺達は女も多いんだから、赤龍帝相手だと大変だろ?」
目を伏せ、小笠原美子はそれを聞く。
敵の動きは大体読めた。更に妙な動きをするカメラを括りつけたネズミがいたので、そっと排気口にメモを置いていると、それを回収するネズミが出てきていた。
情報はある程度送れている。最悪、このまま連れ去られても情報が届く可能性は高いだろう。
異能を添え物のように浴びているだけのネズミが、態々科学的な小型カメラを使ってわりと適当に動いている。
これがこちらを騙す為の策だとは思えない。最悪こっそりメモを仕込んで情報を残すつもりだったが、既に相当動いているようだ。
そして、読めてきたことがある。
この場にいる者達は、禍の団の中でも外れている連中。ただ集まっているだけで組織的な行動力に乏しい者達だ。
シャルバ達旧魔王派を主導していた年長の魔王血族が全員討ち取られ、英雄派は首魁の曹操が捕らえられたことで求心力が低下している。
旧魔王派は、若い者達が今の盟主に対して好意的であることから、比較的対応はできている。逆に英雄派は曹操が失ったことで独立した組織との緩いネットワーク化を行っているようだが、実態として独立組織を制御しきれず弱体化が進んでいる。ジャーク団に関しては「相当デカいバック」と言及していたが、やはり主導権を握っているわけではない。
そんな中、新たな首魁は掌握の最中であり、同時にジャーク団主催で今回の作戦を一種の競技大会として実行。一定以上の成果を上げた者達から、更に成果順で上位チームに報奨金や残存する蛇が送られるという話になっている。
遊びがかなりあるが、これは組織を掌握する為の作戦だろう。
真剣に考えれば色々と怪しいこの任務を、強制ではなく景品で釣る形で行わせる。これであっさり便乗するような組織は不適格として、自分達に排除させる目論見だったのではないか。
実際、神滅具保有者がいるという温泉街で動いていた組織らしき者達はいない。この辺り、情勢をある程度読みながら対応できる者達は参加しないように立ち回っていると見るべき。そしてそれを理解していない彼らは組織として弱い。
……つまり、組織の大規模刷新とリストラを、対象に気づかれない形で進めている。
実際、自分達が叩き込まれたこの廃工場には、かなりの人数が集まっている。更に異空間と繋げて別の場所にも繋がっており、そこにも相当数がいる様だ。
これはもはや、一地方都市を丸ごと落とす戦争を仕掛ける直前だ。動員人数が世界大戦の作戦レベルであり、これだけの数を失えば禍の団の規模は大きく縮小されるだろう。
裏を返せば、それだけのことをしてもいいという何かが起きた。
そこまで悟り、そして美子は鼠が何かを置いたのに気づく。
そっと小型の鏡で確認すれば、それは時計であり、更に上の方に時間が刻まれている。
その時間まで、あと五分。
「そろそろ仕掛けるってことかな。あ、鼠ちゃんについてるの……マイクだ」
しかもご丁寧に、太い糸のようなものが括り付いている。
つまり、これは小型のマイクなのだろう。こちらに声だけでも送れるようにする形だ。
「時間が来たらこっちも暴れます。あと、狙いだったレイヴェルちゃんに抵抗して気を失ったギャスパー君が連れていかれました。小猫ちゃんも連れていかれてます」
小さい声で告げ、そして呼吸を整える。
「時間が来たらこっちも反撃するので、急行してくれると嬉しいです」
さて、ここからが反撃だ。
空本麗夜、ガチギレ中。
次からは戦闘タイムです!!