※この作品はR-18です。

シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 最近ちょっと集中力が低下気味のグレン×グレンです! ゆっくり休んで頑張りたい!!

 それはそれとして、本編!!


第四話 変人、バーゲンセールです!

《樹下誠二》

 

 

 

 

「ひどい時間だった」

 

「なんかゴメン。ホントすまん」

 

 盛大にため息をつくと、イッセーが謝ってきた。

 

 イッセーは謝るし、まぁあんなものを作ったイッセーにも責任はあるが。

 

 そもそも英語の授業で紙粘土をこねて作品を作るっておかしいだろう。完全に暴走しているとしか言いようがない。

 

 教育委員会に真剣に垂れ込もう。同じことがないように厳重注意ぐらいはしてもらわないと。

 

 さすがイッセーが覗き初手で退学になってない学園だといったほうがいいのか? 変人率が高いのではないだろうか。

 

「おぉ~、さすがの再現率。さっすが揉んで見て入れただけあるよねぇ」

 

「ふふ、ここまで忠実に再現されるとちょっと誇らしいわね」

 

 秀華とリアス先輩が感心しているけど、先輩は怒っていいと思う。

 

 無断で裸婦像作られてその反応はおかしい。いや、悪魔相手で、日本の人間と同じ感性を求めるのも傲慢かもな。

 

 ところ変われば品変わるとはよくいったものだ。種族が違うのなら価値観や感性にもズレがあるのは理解しておかないと。

 

 そんなことを思っていると、木場が通りかかった。

 

「へぇ。リアス部長の像ですか……さすがに似てますね」

 

「その反応でいいの? それでいいの?」

 

 木場すら感心が先に立っているため、信子さんが軽く困惑している。

 

 社会復帰してわずか数日でこの状況は、さすがに厳しいのではないだろうか。

 

「ま、この学園は愉快な子が多いから。あんまり気にしないほうがいいよ?」

 

 秀華が信子さんをフォローしているけど、本当にな。

 

「で、木場はこんなところで何してるんだ? イッセーたちと合流か?」

 

 俺がそのあたりを聞くと、木場は体育館のほうを指さした。

 

「いや、魔法少女が撮影会をしてるということで、見てみようかと」

 

 ……?

 

 なんだろう。壮絶に嫌な予感がする。

 

 具体的に言うと、悪魔案件。

 

 魔法少女、そこに生徒の関係者となるとドンピシャが一人いるんだが。

 

「ちなみにリアス先輩。ソーナ先輩のお姉さんは来てるんですか?」

 

「いえ、教室が違うから見てないけど……まさか」

 

 俺の言わんとすることに気づいて、リアス先輩は足早に移動する。

 

 俺も速足で向かうと、案の定だった。

 

「はいはいお嬢ちゃん? どこの生徒の関係者か知らないけど、TPOはわきまえてくれないか?」

 

「え~? これが私の正装なのよん?」

 

 すでに匙が対応しているが、件の魔法少女は全く聞く耳を持たない。

 

 というか対応しているのが匙なのはまずいかもしれない。

 

 リアス先輩はさすがにぎょっとしているし、ここは俺が動くべきだろう。

 

「匙待て。お前がその方に口うるさくなるのはさすがにまずい」

 

「樹下? いや、なんでだよ?」

 

 俺に止められて匙が困惑するが、まずは俺が動くべきだろう。

 

「申し訳ありませんが、この国的に魔法少女の格好で参観するのは非常識で眉を顰められかねません。妹さんの生徒会長としての立場が危うくなるので、自粛なさっていただきたい」

 

 俺がそういうと、隣の匙が固まった。

 

「……え? そんなに? 人間か……じゃなかった、日本って残念なところがあるのね」

 

 本気でショックを受けているが、多分人間界全体で見渡しても半分届かないと思うぞ、その感性。

 

 とはいえあまり強く言うのも、俺の立場では難しい。下手をすると外交問題になる。

 

 と、いうことで俺は即座に土下座を敢行した。

 

 こういう時、俺のような立場が彼女のような立場に相対するなら、徹底的に下出に出るほかない。そうしないと処罰の可能性が跳ね上がる。へりくだりまくらないと。

 

 大丈夫大丈夫。こんなの講習で男のチンポをなめるのにいやいやなのを押し殺して元気よくやったのに比べれば大したことない。あの頃の経験が俺の糧になってくれているのは感謝しないとな。

 

「お願いいたします! 敬愛する生徒会長の名誉に泥を塗り替えない行為は、控えていただけませんか!?」

 

「え!? ちょ、ちょっと待って? レヴィアたん困っちゃう!?」

 

 困惑する魔法少女が相手だが、俺は土下座を崩さない。

 

 そして聴衆がまだ散っていなかったので、周りのほうがどよどよしはじめる。

 

「ど、どうする? これやっぱり問題?」

 

「まぁ確かに、学園だしなぁ」

 

「っていうか、生徒会長が妹さん? あの人、つまり大学生以上?」

 

「子供だと思ったから問題ないとしてたけど、いい歳こいた大人がこれは……」

 

 よし、周りが非難する方向になっている。これなら俺が直接的にやったわけじゃないからリスクも減衰。

 

「お願いいたします! 靴をなめろというなら舐めますから!!」

 

「待って待って待って!? 魔法少女がそれはコンプライアンスが!?」

 

「大丈夫! 最近の魔法少女はサディストや問題児も多いですから!」

 

「だめなのー! 魔法少女レヴィアたんは、みんなの心を明るくするものじゃないとだめなのよん!?」

 

 押しきれるか? 間に合うか!?

 

「……お姉様?」

 

 あ、微妙に間に合わなかった。

 

「そ、ソーナちゃん……?」

 

「何やら騒ぎと聞きましたが、寄りにもよってわが校の生徒に公衆の面前で土下座をさせるような事態を引き起こすなんて……しかも、この学園内の公開授業でその恰好などと……っ」

 

 あ、これピキってるな。怒ってるな。

 

「いかにお姉様と言えど見逃せません。生徒会室に来ていただきます」

 

「ちょ、ちょっと待ってソーたん!? 私はそのねー」

 

「言い訳は後で聞きます。それと、TPOをわきまえない呼び方も説教です!」

 

 あーあ。説教に連れていかれてしまった。

 

「……間に合わなかったか。ごり押しで何とか押し込めれたらと思ったんだが」

 

 まぁ、TPOガン無視だったのは事実だしな、自業自得か。

 

 そう思って立ち上がっていると、いつの間にかリアス先輩たちは紅髪の男性と話していた。

 

 確か資料にあったな。現グレモリー当主、ジオティクス・グレモリー殿か。

 

 というか、イッセーのご両親もいるんだが。

 

「おやおや。セラフォルーはソーナ君を怒らせてしまったようだね」

 

 その声に振りかえると、そこにはサーゼクス殿もいた。

 

「一緒に来るなら釘を刺しておいて頂きたい。人間界は基本として、異形社会より硬いところは硬いでしょう?」

 

 いやまぁ、異形も場所によっては硬いところもあるけど。

 

 特に大王派はそういうのにうるさそうだ。

 

 サーゼクス殿はハッハッハと笑っているけど、笑いごとなんだろうか。

 

「まぁ大丈夫だろう。それより、君に少し伝えておこう」

 

 ん?

 

 俺が首をかしげていると、サーゼクス殿は少し咳払いをした。

 

「ここ最近のリアスや君たちの活躍から、ある眷属の封印が説かれることになった。君たちもかかわると思うから、私人としての都合がつく範囲で気にかけてほしい」

 

 ……なんだろう。また癖のある奴が出てきた感じだな。

 

 おそらく、例の癖のある後輩のことだろう。

 

 まぁ、それなりにフォローはしておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《空本麗夜》

 

 

 

 最大勢力の情報交換会の名を借りた、和平交渉まであと少しとなっている状況下。俺も少しは仕事をしている。

 

 単刀直入に言えば、比較的治安が悪いところを偵察して、変な連中が集まってないかの確認だ。

 

 三大勢力の和平は、間違いなく大きな衝撃を世界にもたらすだろう。

 

 こと、各勢力がそれぞれ鎖国しているような異形社会の影響は大きい。和平が結ばれたとなれば、大きな衝撃は避けられない。

 

 三大勢力側は和平の輪を広げることを考えていて、日本政府もそれに賛同的立場だ。日本神話体系との繋ぎを取るための動きも取れるだろう。元々割とおおらかだから、神話側はさほど心配していない。

 

 とはいえ、それに対する反発が起きる可能性は大きい。三大勢力全体が日本神話や日本政府と連携を取れるのなら十分対応できるだろうが、万が一いくつもの神話勢力が同盟を取ってきたときは怖いね。

 

 そしてまぁ、内側の反発も無視できない。

 

 コカビエルが派手に動いてくれたことで、過激派が動く可能性は低くはなっているだろう。というより、出鼻を盛大にくじかれた形になる。

 

 だけど、それ以外にいないとも限らない。それも、政府に関与できる立場でだ。

 

 どの勢力にも戦争の継続を望む奴はいるだろう。問題は、そいつらが和平の動きを知って何もしないわけがないというわけだ。

 

 もしこの和平成立がとん挫すれば、情勢は一気に戦争継続に動くだろう。となると、会談の場を提供した日本側にも不利益は大きく発生する。

 

 ただでさえ、悪魔以外の三大勢力とは接触すら禁止事項にしているらしいアイアンローズがいるのだ。懸念事項は可能な限り排除しておきたい。

 

 だから一通り見回って、結界をかいくぐって潜入している奴がいないかを調べていた。

 

 まぁ今回はいなかったけど。かといって油断はできない。

 

 俺たちがミスをしている可能性だってあるし、敵が一枚上手であることは常に考えないといけないからね。

 

 考えすぎるのあれだけど。まぁ、そのあたりの塩梅はある程度個人差も出るだろう。

 

 そう思いつつ、軽い休憩をとるために俺は地面に着地する。

 

 ……こういう時、ノリでパルクールを練習していてよかったと思う。

 

 偵察とかには便利なんだよね。堂々と開けた空を飛んだり、相手と同じ目線で歩いたりするよりははるかに偵察向きだ。

 

 カッコつけでやっていたことだけど、カッコつけるために相応に頑張っていてよかったよ。戦闘とかでも攻撃回避には便利なスキルだし。

 

 そう思って自販機に向かうと、先客がいた。

 

「……あら、桃山警護事務所の……空本さんだったかしら?」

 

「富士野アルトリーネ。こんなところで何を?」

 

 コカビエルとの戦いで前衛を張ってくれた、富士野アルトリーネがそこにいた。

 

 まさかこんなところで会えるとはね。

 

「会談はまだ先だけど?」

 

「下見の一環よ。名目上は情報交換会だから、かかわった私にも参加してほしいって上からの意向でね」

 

 そう苦笑するアルトリーネは空を見上げる。

 

「質問なんだけど、天使や堕天使、悪魔という種族をどう思う?」

 

 その唐突な質問の意図はわからないけど、まぁ言えることはある。

 

「文化や価値観の違いは感じるけど、そこはもう異種族だしね。それさえきちんと互いにわきまえられるなら、性能以上の大きな違いは感じないよ」

 

 文字通り種族が違う以上、考え方にどうしても違いは出る。

 

 堕天使にも悪魔にもろくでもない奴は確かにいるけど、それは人間だって変わらないしね。そのあたり、俺はすさまじい悪意にさらされたうえ、もっとひどい悪意に弄ばれた同僚もいるから。

 

 折り合いをつけて歩み寄ってくれる悪魔だっている。それがわかっているなら折り合いのつけようはあると思う。

 

 ……まぁ、たまに大きなずれを感じて頭痛は感じるけど。

 

 そんな俺の答えに、アルトリーネは当たり前のようにうなづいた。

 

「そう。異種族や異文化は、独自の歴史や価値観を持つ。それは当たり前のことだわ」

 

 そういうアルトリーネはだけどどこかため息をつきたそうな表情だった。

 

「だからこそ、相互を理解しようと試みお互いに譲り合う。それこそが異なる者同士の交流の根幹に必要。これは人間同士でもいえるのだけれど……ね」

 

 なんだろう。

 

 何か耐え難いストレスでも感じているのだろうか。

 

 というより、アルトリーネがここにいるとさすがに無視できないこともある。

 

 なにせ、長官達から送られたある指令があるからね。無視なんて不可能といってもいい。

 

「……ごめんなさい。まだ悩んでいることもあるから、今日のところはこれで帰るわ」

 

「そうか。まぁ、この町はいいところだからいい休暇扱いするぐらいでちょうどいいと思うよ?」

 

 俺はそういい、そしてアルトリーネに背を向ける。

 

 なんだろう。和平会談、絶対に荒れる予感がする……っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《樹下誠二》

 

 

 

 さて、今日は確か、リアス先輩の眷属が封印を解かれる日だったな。

 

 秀華はリアス先輩とともに会談の打ち合わせに行っているが、俺は今回護衛から外れている。

 

 会談に事務所の面子が参加する以上、他のメンバーにならしておこうという考えらしい。まぁ、来たとしても旧校舎ぐらいだからだとうか。

 

 と、いうわけで来てみたんだが―

 

「さぁ、走れギャスパー!! このまままだと聖剣の錆になるぞ!!」

 

「ギャーくん。疲れたならニンニク食べてスタミナつけよう」

 

「いやー! ニンニクも聖剣もいやですー!! 小猫ちゃんもゼノヴィア先輩もやめて―!!」

 

 ……なんだこの状況。

 

「イッセー。とりあえず俺は止めたほうがいいか?」

 

「いやぁ。どうしたらいいんだろうなぁ」

 

 近くにいたイッセーに聞いてみると、もうイッセーも困惑していた。

 

「お、樹下も例の眷属を見に来てたのか。……あのゼノヴィアと塔城に追いかけられてるのが……かわいいけど可哀そうだな」

 

 あ、匙も来た。

 

 まぁ確かに。見ている分にはかわいいんだが、一つ問題がある。

 

「イッセー。確かリアス先輩が封印させられている眷属、男だってもらった資料に描かれてたんだが」

 

 なんで女子が追いかけまわされている?

 

「ああ。あいつは男だ」

 

 イッセーが、絶望すら目に浮かべて答えてくれた。

 

 なるほど、女装趣味か。

 

「しかも引きこもりで外に出たがらないから、強引に連れ出してああなったんだ」

 

 そうか、ひきこもりか。

 

「……マジかぁ」

 

 匙も結構凹んでいるな。

 

 まぁ確かに、かわいい女の子だと思ったら女装している男っていうのは……男の視点だとダメージがあってもおかしくないだろう。

 

 俺はまぁ、性奴隷としての教育で女装の経験も女装して男を相手する経験も女装した男を相手する経験もあるから、比較的ダメージは薄いな。過去にもっと深い傷を負っただけというのが近いとは思うが。感覚がマヒしてるだけともいえるな。

 

「あとひきこもりなのに女装ってなんだ? そういうのって人に見てもらうのが目的だろ?」

 

「いや、女性は結構な割合で「自分のため」に着飾る奴が多いからな。メンタルも女性的ならそういう場合もあるだろう」

 

 匙の指摘に俺はそうたしなめる。

 

 人に見られるのではなく、自分がそういう格好をしているというほうに重点を置く手合いはいるからな。まぁ、どちらかというと女性のほうに多い価値観だが。

 

「そういう手合いは人が見てくるという可能性をガン無視する手合いもいるからな。気をつけろよ、人目を惹く格好の女を見ていたらキレられるってあるらしいぞ?」

 

 まぁ逆切れに近い気はするが。

 

 そういう知識を伝えると、匙もイッセーも困惑気味だった。

 

「マジか。女心ってよくわかんないな」

 

「俺、ハーレムやっていけるんだろうか?」

 

「人によりけりだから過剰に悩むな。それに、今どきネットで統計学的なデータぐらいは見れるからな?」

 

 俺がイッセーを説得するデータも、教育課程で教わった知識をネットで検索して手に入った程度の代物だ。

 

 真面目に調べようと思えば、金を払って専門書を買うという手段もあるしな。

 

「本気で調べようと思えば、意外と現代は何とかなるもんだ。特に日本は恵まれてるし、お前ら悪魔稼業で収入もあるんだからしっかり調べとけ」

 

 まったく。資金面でも環境面でも恵まれてる自覚はするべきだろう。

 

 環境がひどいと本当にストレスがたまるからな。そこに上手いはけ口や言い訳があると、一気に人間的に終わってしまうこともある。というか、波柴の教育機関とかがまさにそれだし。

 

 イッセーはモチベーションさえ与えればすごく頑張れるんだから、そのあたりもフォローするか。そっちのほうがいいだろう。

 

 匙にしても、恋愛方面で変な失敗をするリスクは減るだろうしな。付き合いはあまりないが、この学園で数少ない男で異形側の顔見知りとして多少は気を使っておこう。

 

 そして匙だが、俺の言葉にかなり真剣な顔つきになっていた。

 

「そうだな。この国は、本当に恵まれてるほうだよ」

 

 ……こいつも何かあったりするんだろうな。

 

 まぁ、向こうから言ってこないのに深堀するのもあれか。俺たちの距離感だとそのあたりの遠慮は必要だろう。

 

 そう思っていると、近づいてくる足音があった。

 

 特に意図的に気配を消しているわけでもない自然体。だが同時に、自然体でありながらこちらの注意をかいくぐっている。

 

 まずいな。相当できる奴だぞ?

 

「お、悪魔くんたちはこんなところで何してるんだ?」

 

 そう、当たり前の感覚でその気配の主は声をかけてきた。

 

 黒に近い茶髪を主体とし、金色が混ざった髪の中年男性。

 

 和風の着流しを着たそいつは、とてもフレンドリーな話し方だ。雰囲気的にちょい悪親父とかいうノリで、女子からの人気が高そうだな。

 

 問題は、そいつが間違いなく優れた戦闘能力を持っていることだ。

 

 動きに隙が見当たらない。無駄のないスマートな動きを、自然体で行っている風に見える。

 

 鍛錬・才能・経験。これらの合計がすさまじい密度で高くそびえたっている。そう形容できる、歴戦の強者のそれを感じさせた。

 

 おそらくコカビエルクラス。そして奴を比較対象にできるそれは、長命の異形であることを裏付ける。

 

「あ、アザゼル!?」

 

「……え、アザゼルって、堕天使総督!?」

 

 イッセーが慌てて構え、匙も度肝を抜かれている。

 

 まったく。少し落ち着け。

 

「二人とも落ち着け。会談内容が内容である以上、ここでそれを台無しにはしないだろう。殺気も特に感じないしな」

 

 俺は片手で二人をなだめつつ、一歩前に出る。

 

「申し訳ありませんが総督殿。この状況下で他勢力をからかうのはやめていただきたい。場合によっては日本政府から正式な抗議を送りますし、そうなるとさすがに無視できないのでは?」

 

「痛い所つくねぇ。ったく、もうちょっと遊びを入れたほうが人生は面白いぜ?」

 

 アザゼル総督は軽く肩をすくめながらそう茶化すが、問題ない。

 

「ご安心ください。会談が終わり次第、関東最大級のスーパー銭湯をはしごするために有給申請はしておりますから♪」

 

 想像しただけでワクワクが止まらなくて、後半は本気で笑顔になってしまったな。

 

 だが本気だ。大一番を乗り越えた以上、自分にご褒美を与えるのは人生に彩を与えてくれる。

 

 ああ、今からでもワクワクが止まらなくなる。我慢我慢、我慢だ……っ!

 

「なぁ、赤龍帝? この兄ちゃん、遊園地に行く前日の小学生みたいな雰囲気になってんだが」

 

「え、どゆこと? スーパー銭湯?」

 

「なんかゴメン。樹下、スーパー銭湯とスイーツが絡むと途端におかしくなるんだ」

 

 なんだこの展開。警戒心が崩壊しているのはいいことだが、なぜ俺がやり玉にあがる。

 

 ……まぁいい。どうも俺の趣味は理解され切れないところがあるからな。個人差と価値観の違いは折り合いをつけねば。

 

「まぁそこはいいでしょう。で、アポ無しで来られたのは何ようですか?」

 

「噂の聖魔剣君にも興味があってな? 近くに来たんでちょっと見れないかと思ったんだが……いなさそうだな」

 

 なるほど。自由人だ。

 

 異形は結構こういうのが権力持てるからなぁ。できればしっかり手綱を握っている人がいると助かるんだが。

 

 まぁ、悪人ではないみたいだし多少は譲歩するか。

 

「残念ながら、リアス先輩と秀華たちによる打ち合わせの護衛役です。興味があるなら会談成功後、アポイントを取ってから来ていただけると助かりますね」

 

「なるほどねぇ。ま、それなら仕方ねえか……ん?」

 

 俺の遠回しなたしなめに納得していた総督は、視線を急に女装に向ける。

 

 さらに匙のほうを見て、交互に見やっているん。

 

 一体なんだというのやら。女装の……たしかギャスパーは怖くて震えてるし、匙もかなり警戒心が復帰しているし。

 

 そう思っていると、総督は首をかしげていた。

 

停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)がうまく制御できてないみたいだな。悪魔側が補正具がまだ開発できてないって聞いてはいるが、そいつの黒い龍脈(アブソーション・ライン)を使って力を抜き取ればマシになるぞ? なんで使わないんだ?」

 

 ……二人の神器をこの距離で把握したのか。

 

 堕天使が神器研究の最先端を行っているのは知ってるが、それにしたって慧眼だな。堕天使総督は研究面でも優秀というわけか。

 

 というより、匙のほうは目をぱちくりしてるし。

 

「え、俺の神器ってそんなことできんの!?」

 

「……最近の神器使いは自分の神器をもっと探れよ。そいつは分割された一部とはいえ、五大龍王の一角である黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)であるヴリトラの魂を宿した神器の一種だ。大半のヴリトラ系神器は俺たちが回収してるとはいえ、知識がなさすぎだろ」

 

 困惑する匙に総督は呆れると、今度は俺とイッセーのほうを見た。

 

「それに比べて、お前さんたちはなかなか面白い育ち方をしてるがな」

 

 そこまで感心されるほどだろうか? 鍛えている自覚はあるが、戦闘に面白みを重視する趣味はないから戦術もつまらないぐらいだと思うが。

 

 俺は疑問符に思うが、特に俺のほうに興味深い視線を向けている総督がいる。

 

「創造系神器は多種多様な手札こそが本懐であり、手札を増やし切り替えることが真骨頂。だがお前さんはその機能を補助に留め、大量生産による物量戦術での中距離戦闘が主体になっている。邪道や裏技よりだが、面白い発想の組み合わせだな」

 

「こと戦闘においては主力にしづらい神器ですからね。手札もある程度絞ったほうが実戦には向いてますし」

 

 波柴の洗脳教育をもとに、海砂さんたちとの相互の影響をもって会得したスタイルだからな。そこまで邪道とは思わなかったが。

 

 と、そう思っていると総督の視線はイッセーのほうに向く。

 

「で、そっちはそっちでイレギュラーの塊だ。うちの組織が殺害を決定するぐらい才能がないくせに、神器に目覚めるより先に禁手に至るんだからな。それも前戯で到達するんだから……なんなんだろうなぁ」

 

 あ、やっぱりイレギュラーすぎるのか。

 

「……ま、転生悪魔になったことで制御ができるのはいいことだ。そういう手段が取れるに越したことはねえが、今の情勢下だととても勧められなくてなぁ」

 

 そうため息をつく総督は、本当に残念そうだな。

 

 あくまで、危険な神器保有者を殺害する堕天使の行為は必要悪。積極的に推し進めるぐらい絶賛できるものでは断じてない。

 

 その価値観を、堕天使の総督も持っていてくれるということか。トップがこれでも末端が染まるわけではないが、気休めぐらいにはなるだろう。

 

「……さて、長話してると本当に怒られそうだし、聖魔剣君と会えねえならもう帰るわ。あと邪眼の持ち主はハーフヴァンパイアだし、二天龍である赤龍帝の血を飲ませれば制御の余地もあるさ。会談が成功したなら補正用メガネをくれてやるから、その時はじっくり調べさせてくれや」

 

 そう言いながらひらひらと手を振って帰るアザゼル総督は、終始敵意も殺意もむけなかった。

 

 和平を結ぶという話は知っているが、少なくとも個人としても善人なのだろう。

 

 ……なんだろう。それはそれとしてすさまじくトラブルメーカーの雰囲気を見せているのがきついな。

 

 あんまり長く付き合うより、距離感を置いて付き合いたいなーとかそう思ってしまうんだが。

 

 さて、それはそれとしてだ。

 

「イッセーにゼノヴィア。そういえば時間があるか?」

 

 俺は、秀華からこっそり伝えられていたことを実行するべきと判断した。

 

 幸か不幸か都合がいいしな。さっさと終わらせることにしようか。

 

「今度時間があるならちょっと俺と付き合ってくれ。頼みがあるんだ」

 

「「……ん?」」

 

 さて、さっさと問題を解決するとするか。

 




 最近少しずつ読者数が増えているようで、一話単位の平均PV数が計算すると600を超えました。

 この調子で、いつかは平均が1000を超える作品を書きたいです……書きたい……です……っ!
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