シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
第一話 夏の始まりです!!
《樹下誠二》
改装も施された桃山警護事務所。その屋上で俺たちはいま、ラジオ体操をしていた。
「は~い。毎日のストレッチは体が資本の業界には大事だよ~♪ 早起きは三文の得! 適度に整った生活習慣を守ってこぉ~!」
ノリノリでラジオ体操を終えた秀華がスキップをしながら朝食を作りに行っている。
しかしまぁ、朝の軽い運動は空腹を刺激するな。おかげで朝からご飯がおいしく食べれるわけで。
しかしまぁ、もう夏休みにもなっているしラジオ体操の季節かもしれないな。
「……なんだろう。こういうなんてことのない毎日って、いいもんだよなぁ」
「……誠二君……頑張ったね……っ」
思わずぽつりとつぶやくと、いろいろ察したらしい信子さんが涙目になってしまった。
いやまぁ、まごうことなく大変な数年間を過ごしたからまったくもっておかしくないんだが。小学生ぐらいの年で拷問や見せしめの技術を習得するとか、日本どころか世界水準でも壮絶な幼少期だ。反論できない残酷な現実だ。
そして今も、なんかどんどん激しくなる戦いに備えないといけないのかと思うと頭が痛くなりそうではある。
……人間界では
そして秀華がレヴィアタンであることも明かされ、桃山警護事務所は日本及び三大勢力が合同出資する組織となった。主な任務は三大勢力和平の地である日本国の地方都市、すなわちこの駒王町の用心棒といえる合同部隊だ。
今後の未来を考慮しつつ、俺たちも相応に備えるべきでもある。
まぁ、それはそれとしてだ。
「そういえば、駒王学園組はオカ研の集まりだったね。……所長、朝ご飯作ってる余裕があるんだろうか?」
「そうなの? ……それなら真剣に手伝ったほうがいいわね」
麗夜さんが今日の予定を思い出して、麗奈さんが気を効かせてくれる。
まぁ、朝飯作って食べてからでも余裕はあるけどな。俺たち、ラジオ体操があるから朝も早いほうだし。
でもメンツも増えてるからな。食事当番の負担も増えてるだろうし、後でちょっと見直したほうがいいだろう。
「そういえば、麗奈さんは料理できるのか? まぁ高校生活があるなら家庭科は受けてるだろうけど」
「安心なさい。家庭科は学生時代で唯一二人のどちらにも負けなかった科目だから」
俺がそれとなく冗談じみて言うと、なんかガチの自信がにじみ出ていた。
「真剣においしかった。……そっか、また食べられるのか……所長、今日の朝食当番ですが、メイン担当じゃなくてサブに回ってください! いや、割とマジで!」
なんか麗夜さんがすごい食いついていた。
ちらりと麗奈さんのほうを見ると、ちょっと得意げで嬉しそうだった。
「ふふん。これでも私は今でも自炊してるしね。……とりあえず即興だと下ごしらえが足りないし、ニンジンシリシリをメインにして、セールで買いだめしてたレタスは浅漬けにして……と」
あ、これガチだ。ガチで料理できる人だ。
レシピを組み立てる際にある食材からパターンを変えて組み立てられるタイプだ。ヤバイ。
これは、毎日の楽しみがさらにグレードアップするかもしれん。ちょっと期待。
「……料理できないと、女として負けそうになるわね……」
「そう? あ、でもおいしいご飯は楽しみ」
なんか落ち込んでいる海砂さんの隣で、コナユキはちょっと楽しみにしている。
「……和風なら。土鍋でご飯炊けるから……うん」
「まぁ、それなりには作れるわよ私。……手作りチョコレートとか……あ、ダメだ昔のこと思い出して……っ」
あと流花さんは真顔でなにか自己弁護しているし、信子さんはなんか自爆してダメ―ジが入っている。
「朝から愉快で楽しいですよね♪ これからもっと楽しいかも♪」
美子はこういう時、大物感がヤバイな。
「……私はちょっと、これからが不安になってきたかも」
「個性的な人たちですよねー」
アルトリーネとリーナは、ちょっと慣れてないから大変そうだな。こっちもフォローを入れとかないと。
まぁそれはともかく。
とりあえず夏休みだから、鍛え直しもしたほうがいいな。そのあたりを考えておかないとな。
《木場祐斗》
イッセー君の家が大改装され、僕たちも集まってオカ研の会議を始めることになった。
まぁ、今回はリアス・グレモリー眷属の今後の会議といったほうけどね。秀華先輩たちも来ているから、オカ研というほうが近いところはあるかな。
そしてまぁ、この時期だと大きな方針は大体わかってはいる。
「さて、とりあえず夏休みは冥界に帰るわ」
ある意味、遠くの学校に家から出て通っている生徒の定番。里帰りだ。
「……え?」
「絶望するな馬鹿。夏休みに故郷に戻って終わると戻るだけだ、戻って来ーい」
イッセー君がなぜか愕然としていたけど、付き合いの長い樹下君がすぐに悟って指摘してくれる。
なるほど。そういう勘違いをしたのか。
イッセー君、時々発想が変な方向に飛躍することがあるよね。
「勘違いはだめだよ、イッセー君。それに僕たち眷属もついていくのが基本だからね?」
「なるほど。つまり私にとっては冥界巡りといえるのか。……信徒がそれはどうなのかもしれないが、私はすでに追放されて悪魔に成り下がった身だからあっているのだが……主よ!」
僕が指摘すると、今度はゼノヴィアが変な方向に入っていった。
ふふ。この集まりは飽きないよね、本当に。
とはいえだ。冥界に帰るのならついでに強化合宿にもなるだろう。
リアス部長は上級悪魔では珍しい、自分にも眷属にも鍛錬することを求めるお方だ。そしてそれがあったからこそ、これまでの戦いで誰一人失わずに生き残れたともいえる。
だが、禍の団というテロリストとの戦いも想定され、その一人である白龍皇ヴァーリ・ルシファーにイッセー君が目をつけられていることもある。
これまで通りでは全く足りない。一度真剣に見直して、徹底的に鍛え直す必要がある。
そんな時間がまとまって取れることなんてめったにない。上級悪魔とその眷属はやることが多いし、学生生活をないがしろにしていいとも思えないしね。
この夏休み。しっかりと鍛え直して今後を乗り越える丈の礎を作らないと。
「私たちも今回、冥界に行っとくように言われてるんだよねー。小笠原長官が代行を送るから、夏休みに間だけはオッケーにしておくつもりみたいだし」
「小父さんにはいつも感謝です! あ、お土産買っときたいですけどおすすめあります?」
秀華先輩と小笠原さんの話だといっそのこと一緒に行ったほうがいいかもね。
そしてまぁ、冥界に呼ばれるか。当然と言えば当然だよね。
秀華先輩がレヴィアタンの先祖返りである以上、冥界政府が無視できるわけがない。各勢力合同出資の部隊になってることも踏まえれば、一度冥界に来てもらったほうがいいはずだ。
まぁ、サーゼクス様達が話を通しているのなら大丈夫だろう。古い貴族は危険視することもあるかもしれないけれど、各勢力のトップが後ろ盾についているのなら早々無体な真似はされないだろう。
むしろ、縁がある僕たちの評判が上がっているかもしれないね。そういう方向にしたほうが楽なところもあるだろうし。
そういう意味だと、先輩たちは夏休みの間は忙しそうだ。いろいろと根回しをしないといけないだろうしね。
「ま、こっちもいい機会だし鍛え直したい所ではあるな。リアスせ……部長、そういうところで有効な所、冥界にありますか?」
樹下君はその上で鍛え直す気で、話を振ってみている。
とはいえ、悪魔社会でそういうのが使えるところっていっても―
「安心しな。お前らの特訓メニューと時間は用意してるぜ」
―その声に、僕たちは慌てて振り返った。
そこにはアザゼル先生がいつの間にか麦茶まで飲んでいる。
い、いつの間に……?
「……近くを通った時には気づきましたけど、気配を消してどっきりしないでください」
あ、樹下君は気づいてたのか。
彼は波柴一族で護衛としての訓練を受けていたし、暗殺者の訓練と併用すれば気づけるのだろう。
そういう意味だと、いざというときの護衛である僕たちが気づけなかったのは悔やまれる。鍛え直そう。
「これは俺の自然体だよ。今のに気づけないってんなら、相応のメニューにしておいてよかったぐらいだな」
アザゼル先生は辛らつなことを言うけど、相応の準備もしてくれたらしい。
「俺はそういう条件で教師やってるしな。お前らグレモリー眷属だけじゃなく、秀華たちももう山警護事務所についてもいろいろ練ってるから安心しろ。時間もサーゼクスたちが調整してるしな」
「すっごい助かります! ……どうです旦那ぁ、お礼にしっぽりやってきません?」
秀華先輩はいつもの調子だけど、本気の感謝がにじんでいる。
因縁のある波柴・光吉・モンタギューのこともある。彼女もただこの町を警護するだけで終わるつもりはないのだろう。
そうだね。その熱意があるのなら、見合った訓練メニューがあるべきだ。
「別に堕天使の力添えが無くても、鍛え直すぐらいはできますわ」
「……でも、参考にはなります。ここで一気に強くなりたいです」
「……ぼ、僕も当たって砕けろの精神で頑張りたい……でも怖いですぅ」
朱乃さんも小猫ちゃんもギャスパー君も思い思いの言葉を口にするけど、僕としては興味深い。
特に僕の場合、禁手に到達するという点ではそれを伸ばす必要もある。神器研究の最先端にいるアザゼル先生の知見は頼りになるだろう。
ゼノヴィアや樹下君も興味深そうにしているし、前向きな人も多いようだね。
「はい先生! 私は神器とか全然持ってないですけど、大丈夫ですか!?」
「安心しろ、お前さんにはぴったりの講師を用意してある! 時間は短いが頼りになるぜ!」
リーナさんにも胸を張って宣言してから、アザゼル先生はリアス部長のほうを向いた。
「ま、安心しとけ。サーゼクスのお墨付きで堕天使の長が鍛えてやるんだ。……将来的に、お前さんはびっくりするほど強くなるぜ?」
「ええ、期待してるわアザゼル。……これからを乗り切るためにも、頼りにさせてもらうわよ?」
リアス部長がここまで乗り気なら、眷属として否はない。
イッセー君も、こぶしを握り締めてやる気を燃やしているしね。
「よっしゃぁ! 冥界で俺たちは、思いっきり強くなってやるさ!!」
ああ、そうしようイッセー君!
《空本麗夜》
さて、なんかこれから冥界でいったん動くらしいし、代理で対応してくれる人たちのためにも引き継ぎの準備はしておかないと。
問題なく必要最低限の行動ができるように簡単なマニュアルを作るべきだ。加えて、舎弟の人たちが迷惑を掛けたりしないよう言伝などもしておかないと。言い訳用のお土産の準備として事前に取り寄せもしたほうがいいだろう。……説得力を増すためにも欧州の消え物が妥当だろうか。
そういった事務仕事をしていると、麗奈がコトンとお茶を置いてくれた。
「こっちの仕事は終わったし、いったん休憩したら?」
「確かに、一時間ずっとやってたし小休止だね」
それなりに切りのいいタイミングでもあったので、俺は一旦手を止めるとお茶を飲む。
はぁ、安らぐ……。
ほっこりしていると、麗奈がこっちをじっと見つめていた。
「どうかした?」
「いや、なんていうか昔に戻っている感じがしてさ」
なるほど確かに。
「俺も結構中二病だったからね。ギターやったりパルクールに手を出したり……ソロキャンプやったり」
「ギターは学園祭で好評価されるぐらいにはなってたし、パルクールは町内で大会やった時に未成年の部で優勝したでしょうが。ソロキャンプも野外活動クラブにアドバイスできたし」
さらりと俺の過去でなしたことを言われるけど、まぁ確かに。
中二病ってポーズだけしてる印象があるし、成果が出せるだけ俺はまだ違うほうなのかもね。
実際、全部今でも趣味のままではある。あれはあれでなかなか楽しいしね。
ただ、そういった麗奈はどこか辛そうだった。
「中二病だったのは私の方よ。……しかも悪いほうにばっかり転がってたし」
そう言いながら麗奈は適当な椅子に座ると、天井を見上げていた。
「……学生時代であるあるじゃない? テスト前に勉強してないアピールしている実は勉強している奴。私は、ずっとそれを続けていたようなものだった」
そういえば、麗奈はあの頃自然体だった気がする。
特に勉強会とかにも参加せず、テストで常に平均点より数段上。勉学面では俺の場合、基本的に麗奈にも麗華にも負けていたしね。
それでいてスポーツもそこそこできていた。特に基礎体力とかがしっかりしていて、大抵の新しい試みとかにもすぐ対応していた。俺はその点で一歩遅れるけど、まぁパルクールやソロキャンで鍛えられてるのか慣れてくれば勝てはした。
……その裏で、麗奈は毎日努力していたのか。
「どれぐらい頑張ってたの?」
「まず最初に速読を習得して、毎日復習と予習をやったうえでさらにHowTo本でスキル習得もやってたわね。お風呂に入る前にはストレッチと筋トレをして、朝は早く起きて早めのランニングに走り込みをこっそり」
なるほど。しっかり鍛えてたのか。
「でも、私は二人の上を維持し続けるなんてできなかった。どっちも精々二人の間で、昔みたいになれなかった」
そういえば、小さい頃は何においても麗奈が一番だった。
勉強も呑み込みが早いし、喧嘩も強くて運動もできる。あの頃の俺はいじめられっ子なぐらいで、むしろ麗奈に守られ続けてたしね。
「……それで勝手に自家中毒で歪んで、そのザマがあれよ。……デュリオがいなければ、私は今でも二人を恨んで勝手に道を踏み外していった自信がある」
うつむいていく麗奈は、歯をくい縛っているほどだった。
それほどまでに、麗奈は過去を後悔している。悔やんでいる。
だから、俺はそっと近づいて麗奈の髪を手ですいた。
「……昔は、俺より濃い茶髪だったよね。これ、染めてないんだろう?」
麗奈の白髪は天然ではない。嘘偽りなく、彼女は天然で白髪になっている。
強いストレスを受けると、若くして髪の毛が白くなる。そういうことがあることを俺は聞いたことがある。
その上で、俺の髪は昔と変わってない。体質や個人差が大きいとはいえ、俺は白髪になんてなっていない。
「麗奈は、心から昔の罪を悔やんでいるんだろ? そして、そのまま沈み続けるんじゃなくて誰かを守れるような生き方をしている」
「……」
麗奈はあえて答えないけど、視線をそらして頬が赤くなっているのが答えだ。
だから、俺は自然と微笑んだ。微笑むことができた。
「そんな麗奈が俺は誇らしい。俺は恨まれることを覚悟で警察に行ったけど、それを恨まず俺のことを心配してくれている麗奈がいてくれて、心から嬉しい」
ああ。これは本心だ。
だから、はっきりと言おう。
「俺もあの頃は恰好ばかりつけていた。だけど今は、麗奈のためにも本当に恰好よく生きていたいと思ってる」
美子ちゃんに恥じない生き方をしようと決めた。その上で、俺は麗奈と麗華に恨まれても仕方ないと持っていた。
でも、麗奈も麗華も俺のことを大切に想ってくれている。それが心から嬉しいんだ。
だから、二人のためにもそうありたい。そう、俺は心の底から思っているんだ。
「胸を張って、君たちの幼馴染だって言えるようになりたい。それも、今の俺にとって大事な本心だよ」
「………………もうなってるわよ……っ」
それはうれしいけど、わき腹をつねる照れ隠しはやめてほしいかな……?
「見て、皆。誠二には負けるけどアイツも大概スケコマシなのよ」
「……あれで矢城にいろいろやられたの、童貞だからってだけな気がするけれど」
何のぞき見してるのかな、海砂に信子さん!?
ヘルキャット編はインフレに一気に追いつくための下準備回でもありますし、このあたりであまり深堀してないキャラの深堀も少しずつしていくべきかなどとは思っております!!