シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
《樹下誠二》
強化合宿で俺はきちんとトレーニングを積んでいる。
こういうのはしっかりと鍛え上げたほうがいい以上当然だ。弱いままだと、光吉がまた攻めてきたときに死人を出すかもしれないしな。
可能な限り言われた創造する魔剣は早い段階でクリアー。二週どころか三週目ぐらいはやろうと思っている。
基本トレーニングも常に行っている。夏休みの宿題などはやっているし息抜きもしているが、裏を返せばそれぐらいで済ませてトレーニングに集中している。
とはいえ、だ。
俺も責任を負う側としていろいろと動くのは当然だ。
助けた責任といっても一口にいろいろあるだろう。だが、人生の最後まで責任を持つ気なら、まめにやるべきだとはわかっている。
……どうもそれが原因で惚れさせているのだが、これはどうしたものかと思案中だ。とりあえず、俺個人はいつか上級悪魔を目指さないといけないとは思っている。
その一環でほかのみんなの様子もいろいろと見ているんだが……。
「ぅ……ぇ……ぉ゛……ぇ……っ!!」
「大丈夫かコナユキ!?」
コナユキの様子を確認しに来たら、すでに吐いているコナユキがいた。
慌てて背中をさすりつつ、人を呼ぼうとしたら、たまたま先生が通りがかった。
「……先生? どんなトレーニングを強要したんですか?」
内容次第では反粒子もいとわん。
言外にそう込めて脅しをかけるが、先生は困惑していた。
「ハードトレーニングなんぞイッセー以外に課しちゃいねえぞ? 勝手にやった……にしても早すぎるな、大丈夫か?」
イッセーには課しているのかとも思ったが、そこはおいておこう。
周囲を確認するが、どうもハードトレーニングをやっているような場所ではない。
どういうことだ? 一体何が……。
「ごめ……んなさい。その、使お……うとして……だめだった……っ」
息も絶え絶えに話すコナユキの言葉から、コナユキは指導内容をこなそうとしていたんだろう。
と、なるとだ。
「重度のPTSDといったところか。……先生、コナユキは一体何があるんですか? 神器持ちなんて聞いたことないですけど」
自分の力を受け入れるのが、コナユキに課せられた指導内容だ。
つまるところ、コナユキはただの人間ではないということだ。
……うかつに踏み込むことがいいとは限らないが、コナユキの人生に責任を負うと決めた身としては無視するわけにはいかない。
というより、こんな状態になるほどのものを使わせようというんだ。流石に納得のいく言い訳もなしに知らないままでいられるか。
アザゼル先生もそれは悟っているのか、ため息をついてから話し出す構えになった。
「ジャックフロストって聞いたことがあるか? 〇トラスとかのゲームに出てくる〇ホヒ〇とかいうやつの元ネタとなる妖精の一種。……コナユキの先祖はその妖精にかかわる形で
取り換えっこ。妖精が人間の子供をさらい、妖精の子供を代わりに置いていくという手法だ。
日本人が妖精と聞くと、人間と仲良くしてくれるかわいい者を想像してしまいがちだ。しかし実際は西洋版の妖怪であり、悪質な行為を行うことも珍しくない。
そういった事象があったというのなら、コナユキにその因子があったとしてもおかしくないだろう。
「記録上では、目覚めたての時点で上級悪魔クラス。それも生物を生きたまま凍結封印するようなこともできたと書かれて―」
「……ぅ……ぉえ……ゲェッ!?」
アザゼル先生の説明中に吐いているあたり、これは重傷だ。
「……先生。とりあえずはカウンセラーとセラピストの用意からしてくれ。コナユキにはまだ早いってことだけはわかった」
「……だな。波柴の連中が遺した資料を精査して、こうなった理由とかも調べとくさ」
ダメだなこれは。
相当トラウマになっているのは間違いない。使うかどうかを考えるレベルですらないだろう。
これ以上この段階でさせるのは忍びない。秀華だってそこまで強引な成長は求めない。それで今回は話が終わる。
というよりだ、精神が破綻していたとしか思えない矢城の配下だった時に、コナユキが凍結能力を使っているところを見た覚えがない。それはつまり、その状態ですら使えなかったということだ。
……波柴の連中、コナユキの凍結能力で何をさせやがった……っ
「ご、めん……っ ゴメン、誠二……私、まだまだで―」
「いいから。今は気にするな」
俺はためらうことなくコナユキを抱き寄せ、その上で背中をさすってやる。
吐き終えた状態で多少は汚れるがどうでもいい。洗濯・消毒・消臭でどうとでもなる。今はお城に住まわせてもらっているから風呂にも入れるしな。
今はコナユキが収まることが重要だ。少なくとも、気にするようなことでは断じてない。
だから俺は、コナユキが落ち着くまで抱き寄せる。
ふと気づくと、先生がいつの間にかいなくなっていた。
やはりできるな。というか、これは空気を読んでくれたということでいいのだろうか?
「アザゼル総督から呼ばれましたが、大丈夫ですか?」
「お召し物は代わりを用意しますので、まずは湯あみをなさって身を清めてください」
……使用人をサラッと呼んでいたらしい。やはりできるな堕天使総督。
《空本麗夜》
とりあえず魔剣の製造はひと段落ついたので、ちょっと麗奈たちの様子を見に堕天使側の施設に足を運んでみた。
……なんか鉄球を体にぶつけられたり、麗華みたいに変な掛け声を言っている全身タイツがいたりするけど無視しよう。君子危うきに近寄らずというし、深淵をのぞき込むには覗かれる覚悟と備えが足りないし。
麗華と麗奈を探していることを伝えると、喫茶スペースにいると聞いたので向かっていた。
と、そこにはテーブルに突っ伏している麗華に、それをあきれ顔で見ている麗奈がいる。
「もどってこーい。今日何回目よ」
「……十回目である……」
何事?
「おーい。ちょっと様子を見に来たけど、なにがあったのー?」
声を掛けながら近づいてみたら、麗奈がため息をついて肩まですくめた。
「アザゼル総督の予想大的中。で、発作的に自己嫌悪で突っ伏すようになってるのよ」
あ、そうなんだ。
こんな予想は的中しないでほしかった……っ。
麗奈も同意見なのか、天を仰いで額に手を当てる。
「なんで一番の被害者が一番変なことになってるのよ。加害者としての立ち回りをする気力が……いい加減削れそう……っ」
「……いや、それはいい加減吹き飛ばしてほしいのだがな?」
あ、元に戻った。
というより、もう数日たつんだけど。
まぁ、いろいろとメンタル的にあれではあるけど慣れておかないとだめだよね。
麗華の家族については、政府の裏機関であった桃山警護事務所の権限を使って調べることはできた……というか、所長が調べて教えてくれた。
俺が警察に言って洗いざらい話したことと、所長や誠二の情報提供が重なったことで、矢城が通っている大学にも捜査の手が及んで一斉摘発が起きた。
矢城は大学でもいろいろやっており、女子大生を堕として大学の職員や教授にあてがうことで便宜を図ってもらっていた。その過程で脳破壊系のあれをやっており、最低限の異能と波柴の積み上げた人心誘導テクニックで口止めも成功していたそうだ。
ただし異能保有者と優秀な尋問担当がタッグを組んで話を聞くことで一気に崩壊。その証言と送られたビデオという捜査資料を基にすれば、本気を出した日本警察は裏を取ることなど造作もない。こと凶悪犯罪レベルの本腰を入れるべき事案において、日本の検挙率はかなり高いの{軽犯罪なども含めると3割程度。要はリソース集中の問題}だ。
で、タイミングを見計らって一斉検挙。ただ奇跡的な偶然で突然の別件が矢城に入り、その際紹介も兼ねて松森さんを連れて行ったことで、悪夢のようなタイミングで検挙に失敗したらしい。そのどさくさで主を失ったコナユキをゲットする奴も大概能力はあったようだ。
で、大学方面はそれはもう大ごとになった。異能が関わっている案件だからそれとなくごまかしも入っているが、それでも入学応募を取り消す人が続出するレベルにはごっそりやられた。退学届けも大量に出てきて、一時期は廃校すら危ぶまれたほどだ。逮捕者や精神病院等で治療を受けることになったものが数十人いるんだから当然だ。麻薬使用者が部活に出てきたほうがまだましなレベルで大打撃だ
世界的にも名前が知られているレベルの教授が、寄りにもよって便宜を餌に強気に要求できる関係だったことまで発覚したそうだ。しかもどさくさに紛れて校内で殺されるとかいう、かなり血なまぐさい事態になったらしい。
そして、そんな事態と共に矢城は行方を消した。そしてもちろんだが、警察は手の内が高校にも及んでないか念のために調べており、それもあってある程度の内情は学校に知れ渡った双だ。
……雲川家は引っ越したが、その後両親が離婚して麗華を含めた三姉妹は行方不明。雨宮家も田舎に引っ越すことを選び、すでに加害者側になっていた麗奈も少年院にはいり、出た後は行方知れず……まぁ、その後教会という裏側に入ったことが理由だろうね。
そして麗華のお姉さんが、ルシファーの末裔として傀儡になるべく大王派の眷属悪魔に成り下がった。なかなかに重い内情だよ。
「……へこんではいる。凹んではいるぞ? だが最初にまずロマンを感じてガッツポーズを仕掛けてなぁ? ……我ながら流石にロマンに生き過ぎているぞこの本能……っ」
再び頭を抱えてうめく麗華に、俺と麗奈は顔を見合わせる。
善性はある。理性的に責任も感じている。悔恨するだけの感情もある。
だが真っ先に本能がロマンを感じて高ぶったらしい。ロマンに人生を全振りしすぎている。
まぁ、そうなったのも俺と麗奈の責任もあるしね。
「安心してくれ。この件においては俺たちだって責任を負わないといけない。……いや、そういう問題でもないね」
「今更だけど、私たちは幼馴染だもの。今度こそ親友でいるために、私たちにも背負わせてほしいわね」
俺も麗奈も、それが自然と言えた。
大切な幼馴染だと、今なら今度こそはっきりといえる。
それを大事にしよう。大事にしたいと願っている。
だから、そっと隣に座って肩に手を置くことができた。
「……言質は取ったぞ。今更撤回は聞かんからな?」
「「うん、わかってる」」
だからまぁ、そこは本当に安心してくれ。
今度はそこだけは間違えない。そして、間違えるようなら殴り倒してでも止めてくれる人もいる。
だから、支えて見せるさ。
「ならばもうこうなったらやけ酒やけ食いやけSEXだ! 使うぞ、またあの部屋を!!」
「「せめて大声は禁止!!」」
精神的な負担はめちゃくちゃ大きいだろうけどね!?
《Other》
「……ミカエル様。すでに
「そうですか。懸念材料でしたが、想像以上に手が早いですね」
「おそらくですが、禍の団がそれとなく情報をリークしていたのでしょう。ヴァーリ・ルシファーが情報提供者ならばそれも可能かと」
「頭の痛いことです。そして、貴方個人にとってもでしょう?」
「ええ。さらに暗部組織であるプルガトリオ機関からも相当数の出奔者が出ております。そしてその一人についてなのですが、こちらを」
「……そういうことですか。詳細は改めて見させてもらいますが、まずはアザゼルとサーゼクスに連絡をするべきでしょう」
「そうですな。今、麗奈も麗夜君も麗華君も冥界にいる以上、まずは前もって伝えておくべきでしょう。……本当に、我ら教会が至らず申し訳ありません」
「いえ。こちらも時間をかけて根回しをすることなく進めた以上、相当の反発が出ることは覚悟していました。ですが、やはり苦しいものです」
「心中お察しします、ミカエル様。そして兄として責任を取らねばなりますまい」
「……そうですか。なら貴方をこれまでとは全く違う役職、それも当分は担当が生贄扱いされるようなところに向かわせるとしましょう」
「……というと?」
「今回の和平に伴い、日本政府からも要請が来ていましてね。和平の地である駒王町を中心として、日本政府との折衝も行うことを前提とした裏の管理部門を作ってほしいと。幸い、土地に関しては悪魔側と協議して設置するそうです」
「ミカエル様。それはもはやご厚情というものではないでしょうか?」
「いえいえ。技術研究部門の担当であるあなたを全く関係ない部門の責任者にするのです。ある意味で左遷である以上懲罰人事として効果的でしょう?」
「技術者としてもすぐれた手腕を持つアザゼル総督の近くが職場なのは、近づける職務であることを踏まえると栄転でしかないのですが」
「そう思うのならぜひとも、職務をこなして成果を上げることで責任を果たしてください。妹さんやその幼馴染たちともきちんと挨拶をすることも命じましょう。……頼みますよ、
「……は! 主の代行たるミカエル様の御心のままに! あの愚妹にも久しぶりに顔を見せることといたします!」
そういうわけで、今回はいろいろと大変なところになっております。
……しかし、ちょっと調子に乗って前半なのにキャラを作りすぎたと反省しております。勢い余りすぎたか……。
R-18に舵を切ったことで調子に乗りすぎましたね。いろいろと出したい鬱エロ系のネタが多かったので、ちょっとタガが外れておりました。そのあたりをちょっとセーブしていこうと思っております。