シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
ちなみに各場合、こちらで出そうとしていたヒロイン用鬱エロ作品ネタの残りをブッコむ方向になるかと。今作、R-18作品かでリミッターを解除しすぎたのでちょっとブレーキ生成中でして。
《木場祐斗》
「……と、言うことがあってね」
「……大変でしたね」
空本さんの説明を聞いて、僕は流石にちょっと引いていた。
まさか、そのレベルでサバイバル生活を送っていたとは。
むしろ半ば適応できているのが凄いよ、イッセー君。
「いや本当に頭が痛くなった。とりあえず、リアス部長とは後で話を入れるつもりだがタイミングが悪かったな」
「本当にタイミングが悪いわね。まぁ、グレモリー領にとって彼女は王女とかそういう立場に近いわけだし、久しぶりに帰ってくれば呼ばれることもあるでしょうね」
樹下君と吹本さんがそう話し合うけど、リアス部長は今城にはおられない。
グレモリー領の悪魔からの依頼で、ちょっとした慰問会に参加することになったからだ。
もっとも、その悪魔はレーティングゲームでも有望な成績を収めており、その話を聞くことを条件に受け入れたらしい。部長は部長なりに、アザゼル先生に言われた指導をきちんと受けているようだ。
そして僕達魔剣創造組もまた、たまたま顔を合わせたのでちょっとした話を聞くことにしたんだ。
転生悪魔の中で魔剣創造を持っている者がおり、たまたまグレモリー領に来る予定があると知ったので、話を聞けないかとちょっと接触を試みていたのだ。
幸い自由な時間もあったようで、僕達が魔剣創造で作っている魔剣のパターンや、僕の聖魔剣を見物することを条件に話が通った。リアス部長にもきちんと許可は取っている。
場所はグレモリー領の地方にある温泉街。話を聞き終えた後で、ちょっと疲労を湯治で回復しようという話になった。
ここの温泉は日本風ではなく、水着を着て入ることが前提のタイプだ。温度も低い部類なので、温水プールじみた娯楽施設になっているね。
その中でも、リアス部長と謁見した経験を持つ方が経営している温泉が、優待券を贈っていたとかでグレモリーから貰っていることも大きいね。
「しかしところ変われば品変わるっていう物だな。やっぱり島国日本の常識を世界に当てはめるのはダメってことか」
樹下君が少し残念そうに言っているけど、スーパー銭湯みたいなものを望んでいたのは間違いないだろう。
と、目的の建物が見えてきた。
そう思っていると、ちょうどそのタイミングで出入り口から出てくる人がいた。
どうやらお客さんのお帰りのようだ。
……問題なその格好だ。
何故か左腕と右足に包帯を巻いている。
腰には色違いのチェーンがぶら下がっている。
右目には眼帯が付けられており、そこには何故かハートマーク。
頭には猫耳がついているけど、あれは間違いなくカチューシャのそれだね。
で、肝心の格好はメイド服だった。それもメイド喫茶にありそうなデザインで、紫と黒のメイド服だった。
……衝撃が、衝撃が強すぎる。
無駄に目立つ。むしろ目立ちすぎるあまり、大半の人達があえて関わらないように視線を逸らして足早に歩き去っていた。
「……いやちょっと待て」
と、樹下君が何故か目を疑っていた。
いやまぁ、確かに目を疑いたくなるような格好だよね。
と思っていると、肝心のメイド服の人がこっちを見ている。
多少失礼だったね。樹下君を止めた方がいいだろう。
そう思った時、樹下君は何故か頭を結構下げた。
会釈というレベルでは無いそれに困惑するより早く、メイド服の人が競歩じみた勢いでこちらに近づいた。
「頭を上げてもらおう。グレモリー卿にきちんと許可はもらっているがお忍びなのでな」
……あれ、どこかで聞いたことがあるような?
「……失礼ですが、サリアローズ・バアル様ですか?」
と、吹本さんが思わず尋ねていた。
え?
いや、え?
この、ひいき目に見て邪気眼系中二病とかそういうジャンルが着きそうな痛メイド服を着た人がサリアローズ・バアル?
名門中の名門である、バアル本家の女子。サイラオーグ・バアルとは別の意味で強さを示し、魔王ルシファーの先祖返りを眷属に持つ女傑。
サリアローズ・バアルが?
思わず絶句していると、女性は一瞬で素早く視線だけで回りを確認している。
できる者の動きを見せた彼女は、小さくため息をついた。
「あまり騒がないでもらおうか。もう一度言うが、許可はもらっているとはいえお忍びで来ているのだ」
………え?
《樹下誠二》
とりあえず、喫茶店に入ってチーズケーキを注文してから、俺は呼吸を整える。
波柴の連中に仕込まれた呼吸法で冷静さをなるべく保ちながら、俺は確認の為に声をかけることにする。
「それで、サリアローズ様? その恰好は何でしょうか?」
「ふふ、ある意味で痛々しい恰好だろう? もっと凝視してくれるとありがたいな」
どこから突っ込んだらいいんだろうか?
「もの凄く失礼なことを聞きますけど、そういう性癖ですか?」
妾の子とは言え、超名門貴族の子女がしていい恰好ではないだろう。
何考えてるのか真剣に問い質したい。
本当にそういう趣味なのだろうかと思う。というか、M的な性癖でないと返って問題がある気がするほどだ。
だが、サリアローズ殿は首を横に振った。
「逆だ。そういう趣味がまったくないからこそあえてプライベートではこういう格好をするようにしているのさ」
「すいません。意味が分からないのですが……あ、もしかして正体を気づかせないカモフラージュですか?」
麗夜さんがそう判断すると、サリアローズ殿は小さく苦笑した。
「40点だな。確かにこういう問答無用の衝撃を与える格好は、そこばかりに目が行ってしまうだろう。だがそれは副産物だ」
そう告げるサリアローズ殿は、苦笑を深めた。
「ユーラシア大陸のある国では、ストーブに興味を持つ幼子に対し、あえて軽い火傷を負いかねない温度の時に触らせるということがあるそうだ。火傷の経験を持たせることで、危険であること言うことをきちんと認識させるというものだな」
話が飛んだような気がするが、サリアローズ殿にとっては説明の一つらしい。
「また話は変わるが、生まれた時から一切病原菌がない無菌培養で育った生物は、いざ病原菌がある環境に出るとすぐに病気になり重症化するという。逆に多少不衛生な環境で育っていると、病気になりにくく重症化もしにくいなどという話がある」
そうかたったサリアローズ殿は、小さく微笑みながら自らの奇特すぎる格好を見せつける。
「精神においても同じだろう。あえて屈辱や挫折を知っておいた方が、いざ大きなそれを味わった時に耐えられる可能性がある。逆にそれらを知らぬがゆえにあっさりと折れた者も何度も見てきている」
……なるほど、つまりこういうことか?
「あえて精神的に苦痛をもたらす格好で人目にさらされることで、精神的ストレスに慣れておこうと?」
「その通り。その為に色々な格好を調べて見出したのがこの手の邪気眼系中二病要素を取り入れた低俗なメイド喫茶風ドレスということだ」
あえて確認したけどそういうことか。
方向性に天然が入っているような気もするが、まぁ言いたいことは分かるというか。
というより、エロに置き換えた場合桃山警護事務所正社員も似たような者になる。エロへ溺れない為にエロに慣れておくって感じだしな、うちの正社員。
「なるほど、理解しました。むしろ共感しました」
「ウチも似たようなことをしているので、かなり感じ入る物がありますね」
海砂さんも麗夜さんもうんうんと頷いている。
逆に木場は困惑気味だが、これはまぁ仕方ないだろう。
お、チーズケーキが届いた。
一口食べるとほのかな酸味とチーズの濃厚な旨味が染み渡り、甘みをまろやかにしてくれる。
「ふふ。さっきの話と真逆を行く、まろやかと穏やかのベスト……マッチ……!」
「あ、この馬鹿は無視してください。スイーツでおかしくなるんです」
オイ海砂さん。酷くないか?
「かまわん。そのような奇行に慣れておけば、いざというとき困惑する可能性も減るだろうさ」
相手が名門貴族でなければ文句の一つでも言いたくなること言われたなぁ!?
とはいえ大王派相手になめた口を利くわけにもいかないので、あえてスルーしてチーズケーキを口に運んで不満も呑み込む。
そんな俺をちらりと見てから、サリアローズ殿は少し微笑んだ。
「だがまぁ、和平に伴う三大勢力と人間側の国家の合同部隊。そんな君達や三大勢力が描き出す未来は、どのような前進を世界にもたらすのだろうな」
その言葉に、どこか寒気を感じたのは何だろうか。
バアル本家の出という、嫌でも自分だけでなく冥界全体の未来を考慮するべき立場。
そんな立ち位置にいる者は、当然悪魔という種族の未来を考えるべき立場。そして同時に、その為に関連する勢力の未来も考えるべき手合いでもある。
故に、彼女の発言は本来賞賛されてしかるべきものだ。為政者の側に立つのならば、必要といえる視点でもある。
自分の生活ばかりでもない。自分達全体を考えるからこそ、無視するわけにはいかない繋がりを持つ勢力も視野に入れた発言だろう。それも、ただ今の生活を良くするのではなく先を見据えたそれだ。
ただ、それでも何となく寒気を感じた。
……この寒気を、深く考えた無かったことを俺はのちに後悔することとなる。
《Other》
樹下誠二達の分まで代金を支払い、サリアローズ・バアルは喫茶店を後にする。
あまりに奇抜な格好ゆえに人目を惹くが、それはサリアローズにとって望むところ。そして同時に、民衆は彼女がサリアローズだとはさっぱり気づかない。
あまりにも衣装が特徴的過ぎるが故、誰もがサリアローズの特徴に意識が向けられていない。その為結論として、あまりにも場違いな格好をした痛々しい女悪魔とだけ見られている。
それは間違いなく色々な意味で精神的に苦痛であり、だからこそ彼女にとって恩恵を与えてくれる。
サリアローズは兄サイラオーグを見て育った。そして、彼が模擬戦で何人もの悪魔の心を折った光景をよく覚えている。
だからこそ、彼女はこの鍛錬が価値を持つと確信している。だからこそできることが増えると、胸を張って断言できる。
全ては、自分達が生まれ持つ目的の為に。
それを考えながら、帰りの馬車に乗ったうえでサリアローズは通信を繋ぐ。
「私だ。例の話し合いはどうなった? ……なるほど、当分はこちらに手を出さないことで話が着いたか。その方が潰し合いになるだろうから好都合だ」
そう話し合うサリアローズは、指示をいくつか出して通信を切った後、天井を見上げる。
ただ天井を見ているのではない、その視線が向く先は、彼女達が目指す未来の夢想。
「さて、我らが理想が結実するか否か。……この世界の変転、上手く乗らなければ成しえることなど何もないだろうな」
決意を込めた目で理想を見据えるサリアローズは、その上で算段を整える。
「さて、兄上には悪いが、バアル次期当主の座を明け渡してもらわねばならんな。……分の悪い賭けになりそうだ、まったく」
目の前の大いなる壁を想像し、彼女はそれを乗り越える為の準備を始める。
その未来の理想。その手段が示されるのは、まだ先の話となる。
ガラスのエリートによくある敗北や屈辱や窮地や苦痛に慣れてないことに由来する脆さをカバーする努力をするというのは理にかなっているとは思っています。
ただその経験の積み方がトンチンカン。そういう意味では短編でゆるキャラとしてボケ倒したサイラオーグと血がつながっているといえるでしょう。