※この作品はR-18です。

シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! ちょっと本作のイッセー関係で煮詰めていたら時間のかかったグレン×グレンでっす!

 そういうわけで、ちょっと長いですが本編です!


第十一話 背負った重荷

《樹下誠二》

 

 

 

 遠く離れているグレモリー領は、今頃夜になっているだろうか。

 

 そんなことを思いながら、俺は茶店でそれなりに楽しく会話ができていた。

 

「冥界にもいろいろあるんですね。俺は冥界に来たのも今回が初めてなので、とても興味深いです」

 

「私も二年少しぐらいですけどね。まぁ、人間界に比べると娯楽は少ないですが……だからこそこういうところに行きたくなりますよね」

 

 そう返してくれるコガネさんは、そっと次のスコーンに手を取った。

 

 そして乗せるのはチョコレートクリーム。その上で適度な大きさでほおばると小さく笑顔を浮かべている。

 

 ふふ。なら俺はシンプルにホイップクリームを試してみよう。

 

 さっきからジャム主体だったスコーンに、クリーミーなまろやかさがいい刺激となる。

 

 ああ、気分はカラオケやゲームセンターで遊び倒した後のお風呂タイム……っ!

 

「クリームがもたらす、緩やかな癒し……っ!!」

 

「分かります。ジャムの刺激とは異なるクリームの強みですね」

 

 ああ、スイーツでここまで話が合うのって初めてかもしれぬ。

 

「ああ。冥界にスーパー銭湯がないのは悔やまれる。このコンボで陶酔したかった……っ!!!」

 

「すーぱーせんとう……? 初めて聞きますね。私は近くの湖でそっと浮かぶのが好きなので、そういう意味だと一歩先を行ってますかね」

 

 なるほど。スーパー銭湯を知らないのは当然か。

 

 だが、なんという悲劇……!

 

 ……いや、お風呂上がりの場合アイスクリームとか冷たい系のほうが向いてそうだな。焼きたてスコーンと出来立てジャムのセットである今回は、ちょっと相性が悪いかもしれない。

 

 ま、それはともかく実にいい時間帯だ。

 

 スコーンで炭水化物。ジャムでビタミン。そしてクリームでたんぱく質。結果的にだがこれだけで栄養バランスはある程度取れる。

 

 まぁ糖分取りすぎだが。糖尿病が怖いのでこのあたりでそこそこにしとかないと。

 

 スイーツはこのあたりを気を付けないといけないのが大変だ。やはり世の中何でもありとはいかないもんだ。

 

 とはいえ、これはなかなかに堪能できた。後でお土産で数箱ぐらい買っておくべきか。

 

 そういえばコナユキ、前にスコーンが好きだって言ってたな。

 

 ……コナユキ、か。

 

 あいつ、大丈夫だろうか。

 

「……どうかしましたか?」

 

 と、コガネさんに心配されてしまったな。

 

「いえ。今身内は鍛え直している真っ最中なんですが、そのうちの一人が……どうやら特訓メニューとPTSDが絡んでいるようで難航中でして」

 

 本当に、あれは大変だった。

 

 精神的負荷で吐くほどのトラウマを背負っている以上、トレーニングメニューの見直しは決定だ。少なくとも、ジャックフロスト云々においてはトラウマの克服が優先だろう。

 

 ただ、そのトラウマについて俺は触れていない。

 

 本人が口にするのも嫌なレベルだからな。カウンセラーや精神科医には話さなければならないだろうが、話さないで済ませられるのならそのほうがいいと思うべきだろう。

 

 べきなのだが……。

 

「相当悩んでいるようですね。よければ、差しさわりがないぐらいに相談に乗りましょうか?」

 

「え、いえ……」

 

 相手は一応別の悪魔の眷属だ。アスタロト本家はグレモリー本家と同じく魔王派よりだろうが、秀華はレヴィアタン末裔になっている以上ややこしいことになるのではないだろうか?

 

 などと少し不安に覚えていたが、コガネさんは小さく微笑んだ。

 

「ご安心ください。告解の類と同じ扱いにしておきます。一応かつてはシスターだったので、そのあたりはしっかりとさせていただきます」

 

「……貴方も元聖職者だったんですか?」

 

 なんというか、元聖職者の転生悪魔が多いな。

 

 アーシアもそうだしゼノヴィアもそうだし。なんなら麗奈さんやリーナも、広義的にはそうなるし。

 

 いや、あまり詮索するのもあれか。

 

 とりあえず、俺は概要程度に語るようにする。

 

 もともと俺は裏社会の連中に拾われ、手ごまとしての教育を受けさせられていたこと。

 

 コナユキはその時同じ教育課程を受けており、多少はフォローをしていたが裏で一矢報いる気満々だったので深入りはしない程度にしていたこと。

 

 その後組織の一斉摘発につなげ、秀華の眷属となったこと。

 

 そして数年後にコナユキがいまだ残党に囚われていると知ったこと。

 

 いまさらという気持ちもあったが、馬鹿な親友と主の発破もあって助けることを決めたこと。

 

 再起できずにまた堕ちたときの後始末を含めて、責任を取ると告げたうえで助けたこと。

 

 で、その時期に強いトラウマを負ったらしく、強くなるための特訓で刺激されて相当苦しんでいること。

 

 あまり詮索していい事柄でないのはわかっているからこそ、どうしても心配してしまうジレンマに陥っていること。

 

 いってもさほど問題にならないだろう範囲内で、俺は一通り話し終えた。

 

「……正直な話ジレンマです。うかつに深入りすることではないのはわかっているのですが、人生に責任を負うと宣言しておきながら、重度のトラウマに対して何も知らない状態を維持するのも……といった感じで」

 

「なるほど。確かにうかつに踏み込みづらく、かといって遠巻きにしていい問題でもない……と」

 

 そういうことだ。

 

 俺とコナユキはいわば同じ釜の飯を食った仲。だが、距離を開けていたのも事実だ。

 

 吐くほどの重度のトラウマとなると、うかつに踏み込むべきではない。人生の面倒を見ると宣言したとはいえ、このあたりを踏み込むのはさすがに躊躇するべき問題だろう。

 

 そんなわけで沈黙が響くが、その時コガネさんが意を決してカップを置いた。

 

「円卓の騎士、ペレアス卿をご存じですか?」

 

「……すいません。円卓の騎士全員はさすがに把握してないです」

 

 円卓の騎士って、伝承によると300人ぐらいいるらしいからな。さすがにランスロットやガウェインといった有名どころはさわり程度は知っているが。

 

「エクスカリバーの伝承にも出てくる湖の乙女と愛し合い、円卓の騎士では珍しく大往生を遂げた騎士と伝わっています。私の実家のレイクメイデン家は、祖が彼と湖の乙女だと伝わっているんです」

 

 そう前置きした彼女は、苦笑を浮かべていた。

 

「そんな伝承ぐらいしか取り柄の無い家でしたが、クリスチャンの母と日系二世の父は熱愛結婚し、海沿いの集落で私を産みました。これは後で知ったのですが本当に湖の乙女の血が流れていたみたいで、母もですが私も泳ぐのが得意だったり生水にアタりにくかったりするんです」

 

 なるほど、それはすごいな。

 

 水道水をそのまま飲用水として使える国は意外と少ないと聞く。だが彼女の体質なら水道水をそのまま飲み水として使えるわけだ、便利だ。

 

 いや、話がそれてるなコレ。

 

「その影響か泳ぐのも得意でして。着衣水泳も遠泳も何のそので、海でおぼれている人がいたら真っ先に助けたりしていました。……そして、集落の教会でシスターをしていると司教区の方が来報して、スカウトを受けましてね」

 

 なるほどな。

 

 司教区の者が見出すほどの力を持っていたということなのだろう。

 

 実際問題、多くの人を救った信徒なら美談も美談だ。シスターがそういう美談を持っているのならスカウトもしたくなるだろう。

 

「その検査で初めて知りましたが、私は神器を保有し星辰奏者の適性もありまして。おかげで近辺の聖職者からは聖女に近い待遇でした」

 

 そう語る彼女は誇らしげだったが、すぐのその表情を陰らせる。

 

「ですが、布教活動の一環で訪れた町でおぼれた少年を助けたのですが……その子が悪魔だったもので、大騒ぎになってしまいまして……」

 

 ……あ~。

 

「身内に似たようなことで追放された子がいましたが、貴女も?」

 

 ものすごくアーシアを思い出してしまう。

 

 ただ、コガネさんは首を横に振った。

 

「いえいえ! 確かに追放を提言する人もいましたが、かばってくれる人もたくさんいました。「偶然の事故であり、相手が人間だったら見捨てるほうが大問題になる」「むしろ近くに悪魔がいたことに気づかなかった警備側に問題がある」といった形で、すごいことになりましたけど」

 

 なるほど。

 

 まぁ、アーシアの場合は聖書の神の死や遺したシステムの不具合にかかわっている要素だからな。事情が若干変わるんだろう。

 

 ただ、ものすごく疲れた顔になってるな。

 

「ただ、そういう騒動そのものもあって私も参ってしまって。ただその助けた悪魔の子が、直接教会に侵入できないことから両親に直接相談してくれたんです。それで、一度戻ってくればいいと言われて甘えたんですが……」

 

 そこでいったん切り、コガネさんはうつむいた。

 

「教会の追放派から情報が漏れていたらしく、悪魔に敵対的な異能集団が……父と母を殺したその瞬間を、私は見てしまいました」

 

 ……。

 

 それは、本当にきついな。

 

「俺も、母を通り魔に殺された身です。その気持ちも少しはわかります」

 

「お気遣いありがとうございます。……あの時は目の前が真っ白になって、気づいた時には、下手人のうち二人を集落の広場で文字通りばらばらに切り刻んでました」

 

 精神的に追い詰められているときに、両親を目の魔で惨殺されたんだ。所業の是非はともかく、可能であるのならやってしまいかねないのは理解できる。

 

 ……ただ、それを実行可能にする技量に気になるところはあるけどな。

 

「それもあって私はさすがに教会にいられないし、むしろ犯罪者になってしまいました。はっきり言って自棄になりかけてましたが、その悪魔が……ディオドラ様が私を保護してくれたんです」

 

 涙目になりながら、コガネさんは笑みを見せる。

 

「あの方もタイミングが悪く、フェニックスの涙を使うほどの大けがを負われることになったのに。「僕のせいで全てを失ったのだから、僕がその人生を拾うのが道理という者だろう」とおっしゃってくださいました。まぁ年頃の少年で悪魔ですから体も求められましたが、むしろそういう形でも必要としてくださると思えて、何とかこの数年間生きていくことができました」

 

「そうですか。本当に大変でしたけど、どん底には堕ちる前に救われたんですね」

 

 俺の言葉に、コガネさんは少ししてからうなづいた。

 

「ですから、貴方ももっと踏み込んでもいいと思います。衛兵や医師を必要とする者をそこに連れて行く程度の人助けはともかく、貴方は人生を背負うと決めたのでしょう? なら、それぐらいするのが責任というものです」

 

 その言葉に、俺は心からうなづいた。

 

「ありがとう、コガネさん。人に話してアドバイスも貰ってすっきりしました。今度、必ずお礼をさせてもらいます……いや、違うな」

 

 俺は頭をしっかり下げてから、領収書をひったくる。

 

「おいしいスイーツのお礼も兼ねて、ここは俺が払わせてもらいます。お代わりはまた次の機会にしてコナユキと向き合いたいんで!」

 

 俺はそういうと、すぐに帰るべく動き出す。

 

 レジに向かう視界が、ガラスに反射したコガネさんの表情をわずかに映し出すのが見える。

 

 ……その、ぎこちないように見える笑みがなぜか気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《兵藤一誠》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレモリーの御城で、俺は吹本さんや旗本さんと一緒に夕食を取る流れになった。

 

 今日の晩御飯はざるそばと筑前煮にデザートにあんみつ。なんつーかめっちゃ和風だけど、日本風の露天風呂があったりしているからな。グレモリー本家は日本好きが多いんだろうなぁ。

 

「……ついてる。すごくついてる……っ!」

 

「ふふ、久しぶりの筑前煮……っ!」

 

 旗本さんも吹本さんもものすごくうれしそうだ。多分どっちかがどっちかの好物なんだろう。

 

 お蕎麦と筑前煮っていうのは結構古風だけど、こういうご飯もいいもんだよなぁ。

 

 あ、さっすがリアス部長のお城の人。本当にうまい。

 

 二人もすっごい美味しそうに食べてるしな。これはマジでうまい。

 

 だからか、とりあえず晩飯を食べてから話が始まった。

 

「ふぅ……おいしかった。じゃぁ、いい話じゃないけど私から話そうかしら」

 

 吹本さんは満足そうに蕎麦湯を呑んでから

 

 あんみつが残ってるけど、どうやら二人の好物は蕎麦か筑前煮らしいな。

 

 まぁ、俺もあんみつが大好物ってわけじゃない詩歌。むしろあんみつを口直しにして嫌な気分をやわらげられるかも。

 

「うっす! 俺も準備万端っす!」

 

 俺が気合を入れていると、旗本さんはちょっと苦笑いしてた。

 

「あはは……。まぁ、私たちの過去バナなんてろくなことじゃないけど」

 

 そこは大体予想ついてます。

 

 いや、だってねぇ?

 

「樹下から、波柴一族の悪行三昧はちょっとは聞いてますんで。それにまぁ、松森さんやフロージアさんのこともありますし」

 

 本当にあれだったからなぁ。

 

 ……ん? 待てよ?

 

 俺はふと思い至った。

 

「すいません。その樹下の話で思い出したんですけど」

 

「「ん?」」

 

 二人が首をかしげるけど、俺はふと思い至った。

 

「以前樹下が教えてくれた、波柴の悪行が関わってたニュースの見出し、一つは空本さんや松森さんが関わってた波柴矢城の奴だったんスよ。で、あと二つほど見出しを見せてもらったんですけど……」

 

 俺はスマホを操作して、以前見せてもらった見出しを出す。

 

—芸能界に巣くう闇! 大規模売春ネットワークの所業!!—

 

—嘆かわしい親不孝! 更生機関が犯罪者に人材斡旋!?—

 

—名門大学の腐敗!? 学生サークルの皮をかぶった、大学援助交際ネットワーク!!—

 

 見た瞬間、若干表情が引きつってるし辺りだな。

 

「名門大学援助交際が、空本さんたちの一件でしょ? その、やっぱり二人が巻き込まれたのも……どっちかで?」

 

 多分、あたりだよなぁ。

 

 そう思っていると、吹本さんがあんみつを一口食べてから息を吐いた。

 

「誠二なりの気遣いかしらね。話しづらいことだからこそ、話す必要がある前にワンクッション置いた感じの」

 

 あ、やっぱりか。

 

 俺が納得していると、吹本さんは芸能界の売春ネットワークのほうを指さした。

 

「私はこっちで―」

 

「残ったのが私だったりするんだ」

 

 やっぱりか。

 

「その、深く聞いていいんスか?」

 

 どう考えても重い話な気がするんだけど、聞いていいんだろうか。

 

 俺はかなり不安だったけど、吹本さんは肩をすくめていた。

 

「波柴の連中が禍の団に絡んでる時点で、しゃべられる可能性があるから私は別にいいわ。……ま、いろいろとえげつない話だから覚悟しなさい」

 

 そういうと、吹本さんは話す前にため息をついた。

 

「私はもともと、本当に普通の家庭出身だったわ。弟と妹が一人ずついて、高校一年までは水泳をやっていたわ」

 

 水泳かぁ。

 

 なんていうか、雰囲気と合ってるとかそんな感じがするな。

 

 ただ、吹本さんは懐かしいというより悲しそうな雰囲気だった。

 

 と、なぜか急に胸を揺らしたりしている。

 

「自分で言うのもなんだけど、中三のころから急成長して記録が伸び悩んで、顧問から引退も進められてね。男は胸しか見ないし女は嫉妬でいろいろ言われたりで、何もかも嫌な時にアイドルのスカウトを受けたわ」

 

 ……俺、謝ったほうがいいんだろうか。

 

 大きなおっぱいの人がスクール水着や競泳水着を着て泳いでいたら、絶対胸見るし。むしろ見ないほうが礼儀知らずな気がするんだけど。

 

 いやこれ何を言っても墓穴掘るな。黙ってるしかねえ!?

 

 だらだらと冷や汗が流れてる。旗本さんはそれを見て、察したのか苦笑いを浮かべている。

 

 ただ、吹本さんは見えてないのか、天井を見上げていた。

 

「インディーズとか地下とかから始めていたけど、人気が出てきたときはうれしかったわ。スカウトしてくれたマネージャーには感謝したわ。目指してた明るいところが見えない私に、新しい光を見せてくれた」

 

 そう語る吹本さんは、その上で歯を食いしばる。

 

「……それを、私自身が裏切った」

 

 ……ここからが、本番なんだな。

 

 思わずちょっと背筋を伸ばすと、吹本さんは眉間にしわを寄せながら話し始める。

 

「きっかけは、芸能関係者のカメラマンが持ってきた写真だったわ。相方のスキャンダルとかいう話で……出版社に殴り込みをかけたとき、薬を盛られて寝ている間に。……その相方が仕込んだことだと知ったのは、かなりあとよ」

 

 重い話を語りながら、吹本さんは一度ため息をついた。

 

「あの子は私より先に、波柴一族で芸能方面を担当していた奴に目をつけられていたのよ。しかもアイドルを目指す理由だった過去のアイドルの娘が調教に参加したことでプッツンいったらしいわ。そして、徹底的に仕込まれて限界寸前だった時、マネージャーが勘づいて調べていたことを逆手にとって、私も彼も心が砕けたわ」

 

 もう一度、吹本さんはため息をついた。

 

「その後、私たちはそいつの事務所に移籍したわ。マネージャーは張り付けたような笑顔しか浮かべなくなって、私は私で今までの自分が思い出せなくなるぐらい快楽に呑まれていった。……そしてメジャーデビューをしてから少したって……一斉摘発が起きたわ」

 

 そこまで行ってから、吹本さんは苦笑した。

 

「……それがきっかけで、私は一人警察に捕まる、というか保護されることになったわ。波柴の男は途中で誰かに殺されたそうだけど、他の人は……ね」

 

 悲しそうにそういってから、吹本さんは苦笑した。

 

「ま、そのあと所長たちに拾われることになったんだけどね。ほら、次は流花の番よ」

 

「うん。こっちはこっちで長くなるかな?」

 

 俺が何か聞くより早く、今度は旗本さんが話し始める。

 

「私の家……っていうか一族は、鎌倉時代から武士だって伝えられていてね? それもあってか代々本家が武術道場を営んでいるの。で、私は分家だったんだけど本家の子が押しが弱くて体も強くなかったんだ。それで、父親である当主がある学校に叩き込んで鍛え直すことを選んだの」

 

 そう語り始める旗本さんは、複雑そうな表情だった。

 

「幼馴染だった……というか、結婚したいぐらい好きだったから心配でさ? 全寮制の男子校だったけど、無理を言って男装して一緒に入ったよ。……もともと更生施設じみた私立校だったから、案の定いびられたりしていたし、毎度毎度私がどつきまわされないとあいつらも止めなかったし……でも」

 

 そう、旗本さんはため息をつく。

 

「うっかりミスでそいつらに女だって知られてね。あとはまぁ、漫画でもありそうな黙ってるのとあの子を虐めないことの交換条件で慰み者。……というか校長は親から継いだ二代目なんだけど、親と比べられるのが嫌だったのかそいつらとつるんでた上に混ざってきたぐらいで」

 

 溜まってきた者があったのか、旗本さんは一度あんみつをがつがつとかきこんだ。

 

「……ごく。で、私もまぁ似たような者かな。そのまま墜ちてしまったけど、一斉摘発でそのあたりが明るみになってね。……道場は破門されるし家族には縁切りされるしね。所長が保護してくれなかったら、どんどん落ちぶれてたよ」

 

 ……本当に、二人とも……っ!

 

「本当、大変だったんですね」

 

 なんつーか、平和にエロいことばっかり考えてた俺には、想像もできないようなこと上がったんだろうなぁ。

 

 でも、俺にできることなんて一つぐらいしかねえか。

 

「なんか俺が役に立つことがあったら言ってください!! 馬鹿なんでできることは少ないっすけど、仲間なんですから力になります!!」

 

 こぶしを握り締めるていうと、二人そろってなんか寂しそうな笑顔を浮かべてた。

 

「……こういうのが響く子ってたくさんいるけどね」

 

「うん。そういうところが効いたんでしょうね」

 

 ど、どういうところが?

 

 俺がちょっとわけわかんないでいると、二人そろって小さく笑いながらうなづいてた。

 

「うん、必要な時は素直に頼むよ。ただ、私たちって自分に自信が全く持てなくなってるから……ね?」

 

「そうね。最後の始末をしっかりつけてくれるような奴じゃないと、頼り切れないところがあるのよ」

 

 う、う~ん。馬鹿な成果そのあたりがよくわからん。

 

 と、とりあえず向き不向きとか相性とか、そういうのがちょっと合ってないんだろうな。

 

 そういう部分は樹下のほうがいいんだろう。つーか、あいつ本当に殺し文句言ってるんだなぁ。

 

 でもまぁ、それならそれで仕方ないか。

 

「じゃ、樹下だけだとまずいって時は俺も呼んでください! あいつにも世話になってるんでなおさらですし! あ、リアス部長たちも絶対力になってくれますよ!!」

 

 頼れる仲間がいっぱいいるっていいことだよな。

 

 と、今度は二人そろって顔を見合わせながらくすくす笑ってた。

 

「いいよね、この子って」

 

「ええ。すごくいいわ」

 

 な、なんかよくわからんけど褒められてるのかな?

 

 ま、笑えてるならいいか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《樹下誠二》

 

 

 

 

 グレモリーの城に到着していると、城の庭園にたたずんでいるコナユキが見えた。

 

 俺はすぐに方向を変えると、足早にコナユキに近づく。

 

「……コナユキ!」

 

「え、誠二君、どうしたの?」

 

 首をかしげるコナユキの前で、俺はどっかりと座り込むとお土産に購入していたスコーンとジャムをあえて出さずまっすぐに目を見る。

 

「俺はコナユキの人生に責任を持つ。道を踏み外すしかないようなら、殺してでも止めると宣言した」

 

 俺が大前提のそれを言うと、コナユキは頬を赤く染めていた。

 

 正しい意味での殺し文句になっているなアレ。まぁいい、悪魔になったんだし責任を持てる可能性は十分あるだろう。

 

 とりあえず十年は待ってくれ。対コカビエルといったデカすぎる功績もあるし、多分十年もたてば上級のチャンスはある。

 

 ただ、だ。

 

「……あの時の言葉を少しだけ言いかえる。……背負ったお前に肩を貸したいから、今教えてくれ」

 

 その言葉に、コナユキは目を丸くした。

 

 呼吸も荒くなっている。顔色も、赤くなるどころか青くなっている。

 

 ただ、それでも俺をまっすぐ見た。

 

「背負って……くれるの?」

 

「重いものを背負ったんだろう。あんな風になるほどなんだろう。……だからこそ、俺は肩を貸したいんだ。お前の背負った重荷を、少しぐらい俺にも支えられるようにしてほしい」

 

 そう答えて、俺は頭を下げる。

 

 かつての俺ができなかったことを、今からでも少しぐらいするために。

 

 それが俺の答えだ。

 

 死んだ母さんや、相棒たる秀華に胸を張れる人生を生きて死にたい。それが俺の基本原理。

 

 身勝手だと言われてもおかしくない。だけど、俺は俺にできる範囲内で俺の責任を果たしたい。

 

 苦労してまで生かしたコナユキに対して、せめて誠実であろうとすること。それを俺は示したい。

 

 そんな俺を正面に見据えて、コナユキはぺたんと座り込んだ。

 

「友達が、いたの。私、こんな見た目だから人間界だといじめられたりで。でも、二人は守ってくれたし友達でいてくれた」

 

 ぽつりぽつりと、コナユキは話し出す。

 

「家族が死んで、波柴に拾われる前に約束したの。……今度会った時、皆で胸を張りあおう。たとえお墓越しでも、胸を張れるような大人になろう……そう、したの」

 

 肩が震える。

 

 声が揺れる。

 

 うつむいた顔からは、涙がぽろぽろと零れ落ちる。

 

「でも、二人は私を探して魔法使いに入ってて……。才能があったの。波柴を、私の、痕跡を……見つけちゃったの……っ」

 

 ガタガタと、歯の根が合わなくなる。

 

 それでもコナユキは、声を出す。

 

「矢城の前は、魔法使いで、契約を交わして、相手の力を振るうの。それで、そいつが、二人を……二人を見つけて。わ、私……契約、した直後、で……」

 

 今すぐ遮ってやりたい。すぐにでも抱きしめてやりたい。

 

 そう思って、でも抑える。

 

 それは甘やかしだ。きっと、其れだと前に進み切れない。

 

 だからまだだ。今は抑えろ。

 

 抱きしめるのは―

 

「二人が凍って……砕けて……小さい破片は、使い魔の犬が食べて……気づいたら、私は私を閉じ込めてた……っ」

 

 ―しっかりと語った、今からだ。

 

「話してくれてありがとう。話させて済まなかった」

 

 俺はそっと抱きしめる。

 

「ああ、約束通り肩を貸す。お前が悪くないと誰が言っても、お前の力が殺した二人を……俺も少しでいいから背負わせてくれ」

 

 それは吐く。吐くほどの傷になって当然だ。

 

 でも、そこで終わっていはいけないとコナユキ自身が思っている。

 

「いつか、その力でたくさんの人を助けられるようになろう。いつか、二人の墓の前でいっぱい謝ろう。そしていつか……きちんと伝えよう」

 

 この震える少女を、震えてしまえるような状態にした俺には責任がある。

 

 いつかコナユキが、その傷と向き合ったうえでできるようになるように。そうなれるように俺も肩を貸そう。

 

「……胸を張れるような大人になったって。そう、ちゃんと伝えられるようになろう?」

 

「………うん……う˝ん˝……っ」

 

 俺もいつか、母さんの墓に報告したい。

 

 俺はちゃんと、一人の女の子の人生に責任を取れたって。それぐらいのことを、できるようになってみせる。

 

 だから、ちゃんと責任を取るからさ?

 

 その時は、頼りにしてるぜ、コナユキ?

 




 もともと自分は、作品のオリジナルキャラクターに鬱系のエロ作品のキャラクターを母体にして設計することで一種の発散をするスタイルです。

 で、R-18作品として書いているディアボロスは、当然ですがフルスロットルとなっております。

 もうため込んでいるのを全部ぶち込む勢いでしたが、ヒロイン増えすぎて書き分けも追いつかないし読者側も困っているのでちょっと打ち止めです。ただ誠二ヒロインはもうちょっと増やしたいのが本音だし、現段階でほぼ設計完了している追加ヒロインもいるのでややこしいですが。

 ちなみにコナユキ・海砂・流花の三人ですが

 それぞれ煌野一人・左藤空気・流一本の作品のキャラクターがモデルとなっております。海砂は割とわかりやすいかな?






 それはそれとして余談ですが、コガネのAIイラスト作成の過程でディオドラ眷属のあの衣装をAIイラストで作れないか思っておりまして。

 いろいろ試しているけど難しいので、AIイラストにおけるLoRAというのが無いか探していたらディオドラ本人のLoRAが出てきてちょっとびっくり。しかもそのLoRAを作っている人でハイスクールD×DのLoRAはそれだけだったのでまたちょっとびっくり。

 コガネの来歴もあってある程度のズレはどうとでもなるけれど、さて何かしらのいい物はない物かな……などと思っております。

 あのデザイン可愛いし、LoRAがあってもおかしくないと思ってたんだけどなぁ……ま、そううまくはいかないかといった感じですね。
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