シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
とりあえずヘルキャット編は書き終えたので、この調子で行きまっす!
『木場祐斗』
戦闘は激しさを増している。
アイアンローズのあの三人は、おそらく三人でのシナジーを前提に上層部が組ませたんだろう。
高速移動によるかく乱、防御力による足止め、砲撃による攻撃。
三人連携による戦闘により、格上や物量差すら押し返せるような準精鋭。
おそらく、三人一組ならコカビエルにも通用する。
そして悪魔の力を流用するあの謎の力。その所為で、一人一人の強さは絶大なレベルに高まっている。
その為戦闘は膠着状態。長続きは避けられないだろう。
実際、魔力を振るっておきながら三人とも雷光や聖剣のダメージがさほどでもない。本来かすり傷でも上級悪魔が消耗するほどであろうにだ。
敵の手札が全く読めない。おそらくアイアンローズの技術だけでなく、ロキやハーデスといった名だたる神々の加護あってのものだろう。
「散々聖書の神が作った神器を否定しておきながら、ロキやハーデスの力は借りるとは、笑わせますわね!」
「人と神が正しく手を取り合う姿としれ! 分からんからお前達は神器を野放しにするのだよ!」
朱乃さんに斬撃を受け止められ、互いに至近距離から攻撃を相殺しながら、攻撃担当の女が吠える。
くっ! 朱乃さんの持っているのは、星辰光の特性で作り出された剣。僅かながら聖剣の力を持っていて、更に至近距離の雷光にも対応している!
相手も増援が来たのか、上級悪魔の数が戻り始めている。
このままだと、押し切られ―
「全員下がって!」
―思考を断ち切るように、空本さんの声が響く。
とたん、回避を連発する空本さんを追撃するように、ヴァーリ・ルシファーが現れた。
このタイミングでヴァーリか!? なんてタイミングの悪い!
「……なっ!?」
その小猫ちゃんの声に振り返ると、小猫ちゃんが着物を着た猫又の女性に捕まれていた。
あれはSSランクはぐれ悪魔の黒歌……小猫ちゃんのお姉さんか!
「ヴァーリぃ? 悪いけど私は白音を連れてくから、こいつら吹っ飛ばしといてくれないかにゃ?」
「かまわないさ。折角の肉親だ……連れて帰ってからで十分だろう」
こ、このタイミングで!
ヴァーリが邪魔で小猫ちゃんのところに近づけないまま、黒歌はそのまま転移魔術を発動させようとする。
くっ! このままでは……っ!!
『兵藤一誠』
俺は兵野と真っ向から殴り合うけど、こいつやっぱり強い。
やっぱり鍛え方が違う。PMCなんてやってるだけあって、戦い方を叩き込んでやがる。
というか、俺は今光力を纏っているってのに、なんでこんなにぴんぴんしてるんだよ!?
『おそらくだが、奴は悪魔となっているのではなく悪魔の力を振るっているに過ぎないのだろう。俺達神器を否定するだけのことはある』
どういうことだ、ドライグ?
『おそらくは外付けの装備で悪魔の力を振るえるようになっているだけ。要は悪魔の支援によって力を代行しているにすぎん。魂に宿る神器ではないから、本人に直接悪魔に特攻が入る影響はないということだ』
「ずるいだろ、それ!?」
「転生悪魔になり聖剣まで貰った男が言うか! そもそも神器保有者だろう!!」
兵野がそう叫ぶと、それは衝撃になって俺に当たる。
声に出すだけで衝撃波かよ。なんだこいつは?
だけどこのままだと、禁手の持続時間も追いつかない。
俺の鎧は俺を星辰奏者にするから、結果的に禁手の持続時間はかなり伸びている。
それでも精々二時間ちょっと。長期戦にはめっぽう弱い。
更に兵野は俺に対して組み技を仕掛けてくる……っていうかしびれる!?
「なにすんだ……よ!」
「ぬぅっ!」
俺は地面に向かって炎を吐き、跳ね返ったそれを兵野に当てて隙を作って逃げる。
タンニーンのおっさんとの特訓で、これぐらいのドラゴンじみたことはできるんだよ!
そのまま蹴りを入れるけど、兵野はそれを飛び退って回避する。
……ただ、兵野の表情は鋭くなっていた。
「いいだろう。ろくでなしとは言え赤龍帝とは、油断できる相手でないと判断した」
そう言いながら、兵野はトンファーを構える。
何時の間に装着したんだ? いや、そもそだ。
普通の星辰奏者は、星辰光の発動に専用の合金で出来た発動体を必要とする。つまり、あいつのそれが発動体。
漸く本気を出すってか……!?
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌く流れ星」
その瞬間、兵野の動きが明らかに早くなった。
「愛を交わして交じり合い、流れる自然に鍛えられる」
動きが早い。一撃が重い。
「その果てに、人は星へとたどり着く。父母の、先祖の血の連なりこそ、星光を纏う本質なり」
っていうか、いまだになんでこいつは異能を振るってこない?
星辰奏者ってのは、星辰体に感応して超人的な身体能力と星辰光という異能を振るう存在だ。
それが、いまだに異能の類を見せてない。
「ゆえにこそ、傲慢なるぞ唯一神。己一人を神だと抜かし、全てを己が生んだと語る、その醜悪さは世の毒だ」
……いや、違う。そういうことか?
こいつの星辰光は、つまりそういうことなのか?
「今ここに、世界は星に塗り替えられる。適者となるのは一体だれか、今こそ雌雄を決しよう」
この、あり得ないぐらいの身体能力。下手すると鎧をつけたヴァーリじみたレベルの、
「変異、適応、そして生存。神意を超えし進化の果てに、霊長は星々へと飛び立たん」
それが、兵野勝正の
「
兵野勝正
基準値:B
発動値:AAA
収束性:B
拡散性:D
操縦性:A
付属性:D
維持性:B
干渉性:C
「悟ったか。これが俺の星辰光……星辰体感応率増強能力」
兵野まで俺の心を読んでくるけど、文句を言う暇もない。
能力を持たないことが能力だけど、ある意味で兵野達にとって最高の能力だろう。
人間として、勝手に異能を与える存在を滅ぼす。そんな奴らにとって、異能ではなく基本性能の強化をもたらす星なんて、最高なのかもしれない。
だからって、なぁ……!
「負けてられるかよ!!」
俺も星辰体との感応率を増強させ、殴り合いに持ち込む。
技の土俵に持ち込まれたら負ける! 真っ向からの力と力の比べ合いじゃないと―!?
気づけば、俺は踏み込んだ足を滑らせていた。
っていうか、濡れてる!?
「悪いが、この程度の魔法など練習すれば誰でも習得できる」
ま、魔法で地面をぬかるみに!?
「そして終わりだ……神の傲慢な異能に奢ったその罪、命で償え!!」
やば、振り下ろされて……!?
「させないわよ!」
その瞬間、そのトンファーが真っ向から殴り飛ばされる。
そして、メイド服を着たその弾き飛ばした人物は……!
「アルトリーネ……っ!」
「……勝正っ!」
あ、アルトリーネさん!!
『樹下誠二』
防ぎきれるか自信があまりなかった。それほどまでに、ヴァーリの炎は絶大だった。
だがその瞬間、横合いからヴァーリに切りかかる存在が現れる。
「……っと」
ヴァーリは素早く躱すが、しかし鎧に僅かに損傷が現れる。
そしてその隙に、俺はコナユキをあえて投げ飛ばして魔剣を投擲。
更に一旦距離を取るヴァーリの分身を警戒しながら、俺はその救援に対して心から感謝する。
「助かりました。……コガネさん」
コガネ・レイクメイデン。ディオドラ・アスタロト眷属の一人であり、俺にコナユキと向き合う機会をくれた人。
まさか、コナユキをこんな形で救ってくれるなんて。
「こちらの戦闘は落ち着いたと思ったらこれとは想定外ですね。……今代の白龍皇でもあるルシファーの末裔。悪夢のような存在です」
コガネさんはヴァーリから目を逸らさず、冷や汗を垂らしながら腰を落として臨戦態勢に入る。
それに対し、ヴァーリの分身は小さく笑う。
「……
「そうでもないですよ。私如きがここまでのことをしたことに自分で驚いているので」
……微妙に嫌な予感を覚えるが、コガネさんは戦意を一切隠さずヴァーリと相対する。
「半減は私には効きませんよ? そういう得物を用意しています」
そう告げながら、コガネさんは武器を何時の間にか切り替えていた。
長めのカトラスに、サブウェポンとして大ぶりのダガーナイフ。どうやらかなりの武闘派だったようだ。
……そしてその足運びに嫌な予感を覚えるが、今はいい。
今やるべきことはそこではない。
「……細かい連携は俺達では取れません。一撃離脱の繰り返しで行きましょう」
「それが妥当でしょうね。……なるべくスパンの調整をピーキーにするべきでしょう」
最大の問題として、俺とコガネさんは連携戦闘の訓練を受けていない。
また俺が冥界歴が浅い為、冥界流の連携戦術も学んでいない。そういうの無しでできる手合いも割といるが、この手の戦いでそれを大前提にするべきではない。
故に、俺は呼吸法を敏捷性より最高速度重視に切り替える。
それを察したのか、ヴァーリの分身は微笑んだ。
「面白い。来るといい……!」
その戦意が増した瞬間、機先を制するように俺達は駆け出した。
『Other』
その光景を、コナユキ・フロージアは吐き気にさいなまれながら見ていた。
現れた誰かと共に、誠二がヴァーリ・ルシファーの分身と激突している。
連携の拙さを突かれることを避ける為、一撃離脱の波状攻撃に切り替えた二人の攻撃は、しかしヴァーリ・ルシファーには届かない。
一撃離脱戦法は、ある意味でテレホンパンチの連続だ。乱戦で注意が分散しているならともかく、二対一程度ならヴァーリクラスに対応できない道理はない。
二人係りで少しでも勝算を上げる為にはそれしかない。だが今のヴァーリを相手にするには、二人レベルがその戦術で挑むのはどうしても勝算が低い。
だから援護をしなくてはいけないと思い、しかし立ち上がることができない。
理由は分かる。あの瞬間、自分は己の異能を使おうとした。それが原因だ。
フラッシュバックした思い出は、間違いなく絶望だった。
まだ十代前半の、幼馴染二人。
それが目の前で文字通り砕け散る光景。
大きな破片を二人別々に籠に入れられていく光景。
小さな破片が使い魔の犬達に食べられていく光景。
そして、その光景を生んだ力は自分から引き出されたものだった。
発狂するなり精神崩壊するなりしたとして、誰が責められようか。そんな絶望だった。
奇跡的に、波柴一族の教育が心閉ざすという手段を提供したから、こうして自分は暖かいところに連れて行ってもらえた。
だが、自分の力は呪わしいものとしか思えない。
元々望んで得た力でもないし、おかげで友達も中々できなかった。そして、その漸くできた友達二人を自分の力を使われて死なせてしまった。
脈拍が荒れ、呼吸が乱れる。
立ち上がろうとする脚すらもつれる。
……なんで?
ふと、自分にそう疑問を浮かべる。
投げ飛ばされたのは、乱暴であっても少しでも距離を開けようと誠二が気遣ったからだ。実際、少しずつだがヴァーリが遠ざかっていくように誘導もしている。
なら、このままでいてもいいのではないか。
そう、自分を納得させようとした時だ。
「……だめ」
そう、言葉にすることができた。
今でも悲しい。今でも自分を呪いたくなる。
それほどまでに、二人の友に対する想いは本物だ。
だからこそ―
『樹下誠二』
連続の一撃離脱戦闘。だが、やはり戦術としてはつたない。
純粋にヴァーリが強すぎる。このレベルを相手にするには、一撃離脱戦闘の波状攻撃にしても後数人分は欲しい。
俺もコガネさん十分すぎるほどに強いが、それで足りないほどにヴァーリの分身が強い。
まずいな、このままだとカウンターをそろそろもらう―
「うん。割と楽しいけどこの程度では……ね!」
―よなぁ!?
既にこちらの動きを読んでいたのか、俺の突撃に合わせて炎が放たれる。
素早く炎そのものは魔剣の群れで防御するが、対炎の魔剣であってもこの熱までは防げるか……あれ?
なんか、熱くないどころか……寒い?
「間に……合った!!」
この声は!?
「コナユキか!?」
「……させ、ない……っ」
今にも吐き出しそうな表情と顔色で、コナユキは俺のカバーに入っている。
全身から小さな雪が舞い散るのは、彼女がジャックフロストの先祖返りであるからか。
そんな今にも倒れそうに見える中、コナユキは俺に並び立つ。
「お前、なんで―」
「―訓練は、覚えてる?」
俺の言葉を遮って、コナユキが確認する。
「……今度は、助ける。あの時みたいに、死なせたくない。……それが、前に進むって……ことだから……!」
……。
そう、か。
コナユキは、俺が思ってるよりよっぽど強いな。
同じことが次からもできるとまでは言わない。
だけど、今のコナユキの勇気に応えよう。
「ああ、キチンと定期的に反復練習はしているさ」
「なら、いこう」
俺とコナユキは共に頷き、腰を落とす。
合わせるのは呼吸。そのリズムを同調させる、波柴一族が孤児達に戦力として教え込んだ殺傷方法―
「「波柴流呪術殺法、忍びの呼吸……!」」
ここからが、反撃の時だ!!
激戦激戦股激戦!
だがそろそろ終盤に近付いているぜぇええええ!