シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
さて、ちょっと長いですが、ヘルキャット編が長くなったので一話で巻きます!!
『兵藤一誠』
「……なぁ、樹下」
「なんだ?」
俺はちょっと衝撃を受けていたので、樹下にちょっと聞いてみることにした。
「グレイフィアさんがサーゼクス様の奥さんだって知ってた?」
「少し真面目に調べればすぐ分かることだからな。一応政府機関直属だったので、多少は知っているようにしているが」
そっかぁ。
めっちゃびっくりだよ。
グレイフィアさんとミリキャス様の関係性から何となくって感じだったけど、やっぱりだったのかぁ。
マジかぁ。グレイフィアさんって、サーゼクス様にもミリキャス様にもメイドとして対応しているから、よく分かんなかったよ。
「ま、何でそこまでなのかは知らないがな。とはいえグレイフィアさんは元々旧魔王派のエースだったというし、政治的な判断もあるんだろうさ」
樹下はそういうと、アイスティーを一口飲む。
……チラチラと視線が向いているけど、そっちはそっちで大変なことになっているんだよなぁ。
「………」
「………」
「………」
「合流が遅れたのは詫びる。だがこんなところで正座をされても困るぞ」
と、何か立派な神父服を着ている人の前で、空本さんと雨宮さんと雲川さんが正座で座っている。
後顔がめっちゃいたたまれない感じだ。
でもまぁそうだろうさ。なんてったって、その神父服の人、雨宮さんのお兄さん!!
確か雨宮星斗さんだっけ。なんでも教会の本部とか大規模拠点とかで、技術研究を行っている人らしい。
「……来てたのね兄さん。その、なんというか面目なさ過ぎてごめんなさい」
「お久しぶりです星斗さん。……本当に、申し開きもございません!」
「星斗さん、その……なんというか、その節はご迷惑をかけて申し訳ない!」
三人揃ってすっごい謝ってるよ。後ろで小笠原さんとリーネさんがとっても困り顔だし。
と、雨宮星斗さんは複雑そうだけど柔らかい表情だった。
「……過ぎたことだ。麗華君は純然たる被害者であり、麗夜君は悔い改めたからこそ自ら警察に全てを話して罰を受けた。順番こそ逆だが、麗奈も償い悔い改めたのだ。信徒として、これ以上とやかく言うことはない」
そして、ほっとした表情を浮かべている。
「そして個人としては、三人がまた仲良くなってくれて一安心だ。……仲良くなる方向に関しては、和平に伴う交流ということで流しておこう」
ちょっと冗談まで言っている辺り、どうやら本当に思い詰めたりはしてないみたいだな。
あ、雨宮さんが顔を真っ赤にしている。
……うん。やっぱりいいよな。
雨宮さん達は色々あったけど、それでも今こうして仲良しに戻っている。
ちょっと爛れてる気もするけど問題なし。俺もハーレム王目指している以上、その辺はむしろ参考にするぐらいじゃないとな。
と、樹下も空本さん達の方を見てちょっと微笑んでるし。
「……うん。あれぐらいじゃないとな」
と、そう呟いた樹下がこっちをちらりと見る。
「しかし、ついに年下までカバーしたか」
「……同年代をカバーしているお前が言うな」
俺と樹下はそう言い合ってから、お互いの下を見る。
「……にゃん? どうしました、先輩」
「……ゴメン、あと三十分」
と、お互いの膝に頭を乗せている小猫ちゃんとフロージアさんを見てから、ちょっとお互いに苦笑した。
「ま、お互い頑張っていこうぜってことで」
「俺は別に、積極的に増やしたいわけじゃないんだがな」
樹下は苦笑で言うけど、多分この程度じゃすまないと思う。
せいぜい頑張れ。嫉妬はするけど変な嫌がらせはしないからな!
『樹下誠二』
コナユキもだいぶ調子が良くなって、俺はちょっと太ももの感覚を直す感じで軽く列車内を歩く。
なんというか、もの凄くコナユキから愛されている。というより、信子さんにも愛されている。
それと今更ながらに気づいたが、まず間違いなく流花さんと海砂さんからもかなり好感度を抱かれている。
……そして、秀華との繋がりはとても深い。
いい加減俺も馬鹿ではない。多分だが、俺は間違いなくモテている。
その理由もその多くが理解できた。というより、これを想定できなかった俺の落ち度でもある。
引っ張り上げた者に。自分に絶望し切っている者に。幸せを目指して生きることを望み、それができず道を再び誤った時、終焉をもたらすことを責任として成すことを宣言する。
万人がそれで心に大きなものを宿すとは言わない。だが、絶望の底に沈んでいる存在にとって、希望を見せられることは麻薬に近しい。そして、それだけでは信じきれないほどに自分を疑っている者にとって……また間違えてしまう可能性を強く感じて恐れるものに、そうなった時の始末をつけるという宣言は致命傷に等しい。
もっと早く考えるべきだった。というか、これに思い至りながら俺は信子さんやコナユキに肩を貸し、もしもの時の始末をつけることまで翻さない。
そういう意味での責任も、取らないといけない。俺が俺自身の信念と決意にかけて、先の発言を翻すなんてできないのなら尚更だ。
分かってはいる。そのつもりでもある。
ただ、今の俺は責任感の方が重く感じてしまっている。
……そういう意味では、イッセーが素直に羨ましくなりそうだ。
日本人としての倫理観がまだ根付いていることに若干びっくりするというべきだろうか。波柴の連中の特殊すぎる環境に置かれながら、俺は妙なところでそういったところに縛り付けられているのかもしれない。
そう思った時、ふと視界が窓の外を見る。
……冥界の空は基本的に紫色。そしてそれは、人間界では夕暮れを更に過ぎたような時間帯でないと見れないだろう。
俺はそんな空の元で、痛感したことを思い出す。
「……ふぅ」
やはり俺に、何人もの女性を囲うなんてマネができるとは思えなくなる。
現実問題、俺にだって限界はある。というか、限界ないんだったら一人で波柴を速攻で潰している。
秀華と共に波柴を潰してからも、失敗がないわけではない。
特に、流花さんや海砂さん、麗夜さんに美子が来るまでは、俺と秀華だけではできないことなんていくらでもある。
こんな空の元でも、そんなことがあったと思い出した。
……苦い思い出だ。あれは、あの下手人はまだ残党が少しいると思われるのが酷いな。
そして俺は、二人の女性を思い出す。
涙をこぼし、恐怖に震えながらも大切な人を助けてもらうことを求めることしかできなかった女性。
そして、命を助けられながらも心を徹底的に殺された女性。
……あの時は本当に未熟だった。もっと他に言いようがなかったのかと、今でも時々嫌になりそうになる。
それでも、当時の俺にできるだけのことはした。
今でも俺を恨んでいるだろうか。そしてそれは構わないが、彼女は生きることを自発的に選べているだろうか。
俺に対して憎しみをもって立ち上がり、友を支えに生きることを選べているだろうか。
そんなことを思いながら、俺は気分を切り替えるためにコーヒーを飲みに向かうことにする。
まったく。これからも忙しいだろうに何をやっているんだろうかねぇ、俺は。
『木場祐斗』
「……まったく。なんだったのかしらね、あいつらは」
と、麦茶をごくごくと飲んでから吹本さんが苛立ち交じりに言い放つ。
あの戦いでは禍の団から来た、三人にそれぞれ狙われていた人だったからね。相当追い詰められたそうだし、苛立ちも溜まっているのだろう。
「そうね。その、あの言い分だと私達三人をそれぞれ狙い打っているわね。……私の先祖に彼女達のあやかりものがあったのかしら」
松森さんも首を傾げるけど、確かにね。
「というより、木曽義仲と巴御前は聞いたことありますけど……山吹御前って誰ですか?」
と、小笠原さんが首を傾げている。
「あ、確かに! 確か木曽義仲と巴御前って、日本の武士とそのお嫁さん……でしたっけ?」
リーネさんもうろ覚え手の知識を思い出している。
空本さん達が雨宮大司教とつもる話もある流れで席を外しているけれど、まぁ確かにその二人ぐらいしか思い浮かばない人は多いだろうね。
「厳密にいえば、木曽義仲は平安時代末期の侍で、巴御前はその妾とされているわ。そして大分マイナーよりだけど、山吹御前も妾の一人よ。もっともこちらの彼女は実在をかなり疑われているって話だけれど」
と、富士野さんが補足している。
「詳しいな。貴方も日本歴はさほど長くないだろうに」
「勉強は大切ってことよ。知らないことを知ることは楽しいし、自分が知らないことがあるって知るのは良いことでしょう? ……自分とは違う所の文化を知ることは、異文化交流で大切だしね」
ゼノヴィアにそう答えるけど、殊勝な人なんだなぁ。
自分の狭い世界に囚われず、色々なことを知ろうとする。そういう姿勢は確かに大事だろう。
こと、鎖国的な手法を取り続けていた異形達の和平が進むこの世界においてそれは大事だ。禍の団やアイアンローズ、それに戦奏教団と戦うには尚更だ。
「そうなると、あの三人は三人で共に戦うことを選んでいるのかもしれませんわね。……もっとも、木曽義仲と恋仲であることを示唆するのなら正室の冬姫を優先するべきと思いますが」
「言われてみるとそうだねー。ま、三人揃ってバトル系ってところじゃない? あやかりまくってる辺り、多分英雄派だろうし」
朱乃さんと秀華先輩が話し合っているけど、そういう可能性が大きいだろう。
男一人の女二人で、共に戦うことを考える。そういう意味だとその組み合わせは納得に近いだろう。
とはいえ、気になることも多いけどね。
「……問題は、なんで三人を狙ったんだろうかってところだけど」
「その件ですが、少し気になることがあります」
と、秀華先輩に応えるように旗本さんが口を開いた。
……妙に真剣になっているけれど、一体どうしたというのだろうか。
思わず僕たち全員が息を呑んでいると、旗本さんは目を伏せた。
「あの三人の動き、練度の違いはありましたが……私の家の流派の動きです」
その言葉に、僕達は息を呑む。
「武器はそれぞれ違ったと思うが?」
ゼノヴィアが指摘するけど、旗本さんは首を横に振った。
「旗本流はそもそも一族が平安末期から武士だったことが分かっている家で、いわゆる武芸十八般を教える流派なの。結構独特な分野もあるんだ」
そういうことか。
日本古来の戦士階級である武士は、基本的にいくつもの武芸を治めている。
刀だけでなく、薙刀や槍、弓も扱うことが基本であり、武士は多芸であることが求められるといってもいい。
そんな流派の出身なら、得手不得手はあっても一通りの武器や戦い方は心得ていて当然か。
「……難儀な敵が多いということね。もっとも、それがどうしたという気もするけれど」
と、話を聞いていたアルトリーネさんは小さく告げる。
僕らの視線が集まったのに気づいて、彼女はなんてことがないように微笑んだ。
「和平設立の大きな出来事に関わった者達だらけで、現魔王ルシファーの妹に旧魔王レヴィアタンの先祖返りがチームを組んでいるのよ? すぐ近くに現レヴィアタンの妹までいる以上、敵からすれば注目して当然だわ。……討ち取ることができれば、宣伝としては十分だもの」
なるほど確かに。
流石は超大手PMCのトップエージェントを、面従腹背で到達しただけのことはある。大局的な戦略視線もある程度は持ち得ているようだ。
そしてそこまで読んだうえで、彼女ははっきりと告げる。
「私はその上で、友を奪った報いをアイアンローズに与え、禍の団から上司や仲間を守る。貴方達だって似たようなものでしょう?」
……これは一本取られたね。
そうだ。僕達はどれだけ強大な敵がいても、やることはきっと変わらない。
だからこそ、それができるように頑張って成長していくしかないんだろう。
「そ、そうですね。……僕も引きこもりを脱却することから始めます!」
「ええ。まずは一歩を踏み出すこと。結局はそれが大事なんだから」
少し気合を入れたギャスパー君の頭をなでながら、アルトリーネさんは微笑んだ。
「それに、彼は常にそうあって、そうあろうとする人達の支えになれるでしょうから。……私達はとても恵まれているわ」
そう告げる彼女の頬は、僅かに赤らんでいた。
―あ、更に増えた―
大体僕らの心が一つになったね。
イッセー君、君は何時の間にこんなにフラグを立てているんだい……?
『空本麗夜』
しばらくして、俺達が乗っているグレモリー本家の列車が駅に着いた。
……ははは。結構、精神的に疲れたなぁ。
「ダーリンも麗奈お姉様も、麗華お姉様も大丈夫ですか?」
「お姉様方! とりあえず呼吸を整えてください!」
美子ちゃんにリーナちゃんが心配してくれるぐらいには、俺達全員結構きついところがあるね。
……なにせ、星斗さんと会ったのは本当に久々だからだ。
昔っから、情状酌量はしてくれるけど厳格な人ではあったからね。俺と麗奈に関してはことがことだし、やっぱり個人的に結構クるかな。
「それで星斗さん。その……私達の件で何かしらの問題が発生したりはしなかったのだろうか?」
麗華が星斗さんにそれを聞く。
……まぁ、肉親がやらかしている上にその被害者でもある幼馴染―つまり星斗さんにとっても近しい人物―が悪魔になっているわけで。
その辺り、ちょっと問題になったりしないのかと思うのは当然だろう。
ただ、星斗さんはその辺りを深く気にしていないようだ。
「和平を機にした再編もあるから大したほどではない。便宜上は再建されるこの町の教会に神父として派遣される形になるが、同時に異形方面における教会信徒側の駒王町担当という形だ。あくまで教会側であり、天界からも人員が派遣されることになっているがな」
「そうだったのか。……しかし天界から人が来るとなると誰であろうか? 現魔王の妹や旧魔王の先祖返りが多数おり、更に堕天使側からは総督自らが来ておるからなぁ……」
星斗さんの説明で麗華が首を傾げるけど、確かに。
なんというか、駒王町のスタッフは凄いのが多いからね。確かに顔役となると相応のレベルは求められるかも……?
そう思った時、視界に此処にいるはずがない人物が映る。
「あれは、ディオドラ殿か?」
一度記憶を思い返すけど、間違いないだろう。
あれは時期アストロト当主のディオドラ・アスタロト殿だ。
「……やはり、君はアーシア・アルジェントだね?」
と、何故かアーシアちゃんに注目している。
なんだろう。何か心の中で嫌な予感といえるものを感じている。
「お、おい! アーシアに何の用だ!」
「ディオドラ? アーシアに何か用かしら?」
イッセー君とリアス嬢が割って入るけど、ディオドラ殿は視界に入ってないかのようにアーシアを見て、そして胸元をはだける。
そこにあった深い傷の跡を見て、俺達は息を呑む。
あれだけの重傷、下手をすれば命に係わる。そこまで悟ったうえで、俺はアーシアちゃんの身の上を思い出す。
確か、深手を負った悪魔を癒してしまったことがあったはずだ。
つまり、彼が……?
「傷を完璧に治してもらう時間はなかったけれど、おかげで証拠として使うことができる。……会いたかったよ、アーシア」
「貴方は、あの時の悪魔さんですか……?」
アーシアも困惑している、その時だった。
「あら、先客がいたみたいね」
エレベーターが開き、更に新しい人物が姿を現す。
前髪を切り揃えた長い藍色の髪をした女性だ。外観年齢は二十代後半に差し掛かるぐらいだろうか?
こちらは見覚えがない人物だけど、二人ほど反応している人がいた。
「……こ、このタイミングで来ちゃう!?」
特に所長が狼狽して、チラチラと誠二のほうを見ている。
そして誠二も一瞬体を震わせており、相応の衝撃を受けているんだろう。
「……アーシア。僕は君に感謝も負い目もある……そして、強い想いを抱いているんだ」
あとディオドラ殿。無視して話を戻さないでください。
胆力があると考えればいいのかな?
そう思っていると、誠二は誠二でディオドラを無視してその女性の前に立つ。
秀華所長がもの凄く不安げになっているんだけど、これは何か荒事になりそうな予感がしないでもない。
「もうそんな時期、か。いや、既に半年近く経っているから、てっきり乗り越えたのかもと思ったんだがな」
そう言った誠二は、ちらりとこちらの方を向く。
「ただ、どっちにしてもこの場は悪い。できれば場所を変えたいんだが」
「気にしなくていいさ。というより、そうじゃないんだ」
と、その女性は誠二の前に出る。
「今でのあの誓約は覚えている。あの誓約があったからこそ、四年近い月日を私は生きてこれた」
あ、これいつもの案件だ。
ちらりと視線を向けると、海砂も流花も信子さんもコナユキちゃんも、若干呆れながらもちょっと頬を染めている。
誠二の定型句だ。多分何かあって心が追い詰められていて、それを奮起させるために最後のケツ持ちを宣言したあれだ。
そして好感度が上がってしまったと。流石にそろそろ改善を試みたほうがいい気がする。
と、思ったけど。
「大学院を出てもなお、お前のことを恨んでいるなら正面からの挑戦をいつでも受け付ける。大学院を出てもなお、生きる気力を取り戻せないのなら助けた責任を取って必ず終わらせる。あの言葉は、大学院を出るまでの私をどこまでも支えてくれた」
……なんか微妙に空気が怪しくなってきたぞ?
というか、中々に物騒なことになりそうなんだけど。
そう思った時、その女性がなぜか跪いた。
「気づいてしまったんだ。私は私の全てを投げ捨てたあの時、たった一つにすがっていたことで今までにない居心地の良さと幸せと開放感を手にしていたことに」
なんか別方向におかしな空気になってきたぞ?
更に上着を脱ぎ捨てると、何かを誠二に差しだした。
「あの時私の根幹は全て砕かれ、貴方だけが生きる柱になった。……もう私は、貴方という存在に全てを預けずに生きられない……っ」
最期の方では縋る勢いかつ切羽詰まった表情になりながら、彼女が差しだしたのは鎖のついた首輪だった。
「お願いします。私を……
………。
「え、と、ぉおぉぅう?」
もの凄いレベルで誠二が困惑しているけど、多分外野の俺達が一番困惑している。
『『『『『『『『『『……ぇえええええええええええ~~~~~~っ!!?!?‼???‼???!!』』』』』』』』』』
もう大絶叫だよこれは!?
「外野がうるさいけどそんなことはどうでもいい。僕の妻になってくれ、アーシア!!」
そしてディオドラ殿は我が道を行きすぎでは!?
新キャラ……というかヒロイン関係においてはこのあたりでいったん打ち止め。ただし、誠二の恋愛事情の必要な部分を担う一名を追加しました。
……飼われたい発言でインパクトは超万全ですね!