シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
《樹下誠二》
不幸中の幸いだったのは、この喫茶店が普通にフードメニューも豊富だったことだ。
と、いうわけでコガネさんと一緒に食べることになった。
男で稼いでいる俺が奢るべきかとも思ったが、コガネさんは折半を固持。まぁ主が違う悪魔である以上、最低限の一線は引くべきなんだろう。
とはいえ、だ。
本当に助かった。ラブホテル云々はこれで一気に吹っ飛ばせる……吹っ飛ばせるよな?
少し不安に覚えていたが、しかしそこは安心してよさそうだ。
というのも……だ。
「あそこの教会、大きいけど、素敵でした」
「少し嬉しく思いますね。あの教会は本当に質素でありながらもおしゃれで、努めていて居心地がよかったですから」
なんと、コナユキの故郷はコガネさんが聖女として赴任していた教会がある街だったらしい。
逆に俺が置いてけぼりなところもあるが、同郷の会話はコナユキにとっては貴重だろう。
厳密に言えば、コガネさんは故郷から移って活動していたわけだが。それはそれとしても、きっと悪い話ではないだろう。
今はデザートの形でスコーンを食べてながらだけど、美味しいこともあって話が弾む弾む。
「……本当にいい街でいい人たちでした。悪魔を助けてしまった後は微妙な視線もむけられましたが、それでも理不尽な悪意にはあまりさらされなかったこともありますし、子供達とも少しだけ遊んだこともあります」
と、コガネさんは紅茶を一口飲んでからそう話す。
「中には魔法の素質や神器を宿している子もいました。何人かは教会に属したこともありますが、そうでない人もいたので、そういった時は教会と折り合いがつく人を紹介したこともありますね」
そういうこともあったのか。比較的リベラルな教会だったのかもしれないな。
「もっとも、いざ敵対したとなると苛烈なところもありますが。柔軟性はありましたが、だからこそ暗部にも理解があるところがあるので、痛しかゆしですね」
「必要悪は、あります。それはまぁ、仕方ないですよね」
「まぁ確かに。減らしていく努力も必要ですけど、目を背けて全否定するのもあれだしなぁ」
コナユキも俺も、暗部の存在が必要になるような環境や悪意にならされているからな。
苦笑はするけど、必要は認める。というより、不本意でも認めないといけない世界ではあるからなぁ。
ただまぁ、減らしていく努力はいる。そして必要なくなることが理想的なのは言うまでもない。
だからまぁ、そこは苦笑いで流していくしかないだろう。
「でも、そういう意味ではコガネさんも近いのでは?」
「……え˝」
なんか凄い反応をされているが、別に俺は悪意があるようなことも皮肉も言ってないんだが。
「自分のつらい過去をあえて話して人の背中を押すのも、毒をもって毒を制しているといえるわけですし」
「あ˝。……あ、あ~そういうことですか! その……別のそんないい物でもない、ですよ」
ものすごく動揺しているんだが、え、もしかしてそういうことか?
俺がうかつに触れてはいけないようなことを悟っていると、コガネさんは視線をそっと逸らす。
「本当に……そんな、いいものではありません」
その寂しげな表情に、俺もコナユキもちらりと視線を合わせてしまう。
露骨に顔を見合わせずに、僅かな視界に映すだけでアイコンタクトができる。波柴一族で叩き込まれた技法のひとつだが、こんなところで役に立つとは。
とはいえ、あまり踏み込むことでもないか。
「そういえば、コガネさんは何で日本に? ディオドラ・アスタロト殿はまだ若いので人間界での活動はしてないのでは?」
「あ、それですか。ディオドラ様から、日本の文化を学んで来いと言われまして。悪魔は言語は問題ありませんが、念の為に日本の血が流れている私が派遣された形です」
……ふむ。
なんというか、直感的に思うところが出てきてしまったな。
そして俺はちらりと一瞬でアイコンタクトを取り、コナユキも頷いてくれた。
「その、メールアドレスとか、交換しません?」
と、コナユキが話を切り出す。
そして俺もそれに便乗するべく、スマホを取り出した。
「そうですね。上級悪魔の主を持つ者同士、あまり主に聞かせられない話もできるでしょう。……ディオドラ殿はアーシアのことが気に入っているようですし、状況次第ではその辺りの話も聞きたいですし」
「そ……いえ、確かにそうですね。一応持たされているので、もしよろしければ」
納得してくれてありがたい。
……さて、ここからどうするかだな。
《アザゼル》
急に樹下の奴から「腹芸できる人を集めてほしい。グレモリー眷属以外で」とか相談が来やがった。
そういうわけで、俺を含めた何人かが桃山警護事務所の応接間に通される。
一体なんだと思っていたが、樹下の表情を見るとかなりガチだな。
「……さて、とりあえず事情を説明してほしいな。どういう相談事なのだろうか?」
と、教会側で呼び出しを喰らった雨宮司教が口火を切ったな。
真面目な話だとは分かっているようだが、こうして呼び出された理由がさっぱり分からない。
と、同じように呼び出しを喰らったソーナも、怪訝そうな表情だ。
「同感です。態々リアス達を避けたということは、グレモリー眷属絡み……もしくはディオドラですか?」
ま、俺達全員その辺りだとは思っているさ。
リアス達は基本的に性根が真っ直ぐだから、あまり捻くれたことはできないだろう。できたとしても、態々他にできるやつがいる時に深入りさせるべきでもねえしな。
そして樹下の奴はしっかりと頷いた。
一緒に参加しているコナユキもだが、秀華の奴も話を聞いているのか真面目な顔つきだ。
で、どういうこった?
「単刀直入に言います。……アーシアが追放された一件、そもそもディオドラが意図的に行ったことではないかと俺は疑っています」
ほう。
結構切り込んだな。
「本当はちょっとした疑念程度だったんですが、そちらで起きたディオドラの問題行動を聞いて、更に深まりました。なので申し訳ないのですが、裏付け調査をしたいので許可を取ろうと思い相談した所存です」
「……具体的に何が起きたのかね? 私はそのあたりを聞いていないが」
樹下の話に雨宮司教が首を傾げるが、そこでソーナの方が軽く眼鏡を直して頷いた。
「リアスからはある程度伺っていますが、来訪したディオドラがアーシアさんと自分の眷属の
そういうこった。
ディオドラの奴はそういうことをした結果、グレモリー眷属全員から軽く敵視されている。
つーか、アーシアが平手打ちって時点で大概だ。駒王学園生徒が聞いたら100人中100人がディオドラが悪いというレベルの事態だな。
「リアスちゃんの性格だと挑発に乗りそうだったから、その辺りは私が丁寧に断っておいたよ。「そういうことを試みたいのなら、納得するだろう対価をまず用意するのが名門一族としての対等の在り方ではないか」ってね」
「それがいいな。懸念通りならまともな試合になるとも思えないし、そもそも挑む必要がない試合に乗る意味がない」
誠二の奴は秀華に頷くと、俺達を見回した。
「アーシアが追放された一件は全員が知っているという前提で説明します。ディオドラ・アスタロト眷属の星辰奏者であるコガネ・レイクメイデン嬢と縁ができた際、彼女から聞いた眷属入りの経緯がアーシアの一件と類似点が多すぎることに気づいたのです」
そして誠二は説明するが、確かにな。
聖女とまで呼ばれるようになった女信徒が、悪魔を助けた所為で居場所を失くす。そして致命的な事態になった結果悪魔に救われるって話だ。
それだけなら和平後なら美談だが、似たようなケースが重なるとどうしても懸念は生まれるわな。
「……アーシアに関してはイッセーとリアス部長が助けたわけですが、これはレイナーレ達が駒王町という「リアス・グレモリーの管轄区」でことに及んだことが最大の理由です。裏を返すと、介入するならまずリアス・グレモリー眷属がという状況ですしね」
「そうですね。逆説的に考えれば「他の悪魔が即座に介入できない」状況。もしそうでない場合、ディオドラが現れるというのはあり得ますね」
「なるほどな。確かに悪魔でアーシア・アルジェントを狙っている者がいた場合、あの状況下はあまりにもタイミングが悪いということか」
……ソーナも雨宮司教も納得するが、同時に明らかに表情が険しくなる。
ま、当然だわな。
そういうのにいい気分になるような奴らじゃない。でなけりゃ、今のこの街に派遣されるわけもない。
だが同時に、この二人ならその後も考えて険しくなるだろうさ。
「しかし、現状でそれが分かったとしてもどうしようもないでしょう。和平後の今から行うならともかく、和平前においては敵の篭絡と寝返りを成しているのですから、表向きには褒めなければならないのが現状です」
「客観的に見ればそうなるな。それに転生悪魔という形で味方として任命できる悪魔だから表向きに堂々とできるだけで、似たようなことは堕天使側もしているだろう。教会暗部にもそういったはぐれ悪魔を集めた部署が存在している」
教会内部にある、はぐれ悪魔の部隊ねぇ……?
雨宮司教の話は中々に興味深いところだが、そこはまあいいだろう。
だが実際、そこまでならそれで終わる。
戦争中に敵対勢力を寝返らせるような工作活動なんて珍しくもねえ。俺達神の子を見張る者の中にも、和平前から他の勢力の連中と恋仲になるなんて話はないわけじゃねえしな。
だが、問題はそこじゃねえ。
「問題は、今それをディオドラがしてきたことだろ?」
「はい、先生。……和平が結ばれた以上、同様のことを起こすのはリスクが勝るのは当然で、下手に掘り起こせば問題行動として批判される可能性は十分あります。……にも関わらずこんな強引な手法を取ってくる奴が、このままで終わるとも思えない」
俺が指摘すると、誠二の奴はしっかりと頷いた。
「私も同感ですよ、先生。そういう奴らは波柴にもいましたけど本当にいるんですよぉ? 「ルール守った方がお得な地位にいるのに、趣味を優先して全部投げ捨てて裏切る」タイプの馬鹿」
秀華も秀華でよく見てるもんだぜ。
ま、それならこっちも明かしていいか。
「おそらくだが当たりだろう。そもディオドラに関しては、禍の団と繋がっている疑いがある。」
俺がそれを伝えると、全員が表情を鋭くする。
ま、これはトップシークレットレベルだが別にいいだろう。
「極秘案件だから言いふらすなよ? 奴のアイアンローズとの一戦での眷属の配置や、ヴァーリ・チームがいざ出てきた時の対応の速さ、更に明らかに異常なレベルの性能の向上から「禍の団と内通して情報提供の引き換えに蛇を得ている」という懸念があって、現在目下捜査中だ。俺はおそらく当たりと思っている」
それぐらい、ディオドラの暴れっぷりは以上レベルだ。
それに動きにもその辺が見え隠れしている。より具体的に言うのなら、「自分は繋がった連中と一緒に裏切ってやるぜ馬鹿どもが」という雰囲気が溢れている。
たまにいるんだよ。そういう匂いを真っ先に隠さないといけないものを隠さないくせして、自分は暗躍してますよって動いている類の連中がな。
雨宮司教も言っていた通り、積極的に隠す必要がなかったから隠し慣れてないんだろうさ。ついでに言うと名門貴族だったから権力でゴリ押せただろうし尚更だ。
だから既に調べ始めていたが、コリャ警戒必須だとみていいだろう。
「よし。俺の伝手で捜査の方針を「ディオドラの眷属やその周囲」にまず集中するように言っておこう。ソーナと秀華は悪魔側の社会的立ち位置から、雨宮司教には教会側からアーシアやコガネってのに、眷属関係の情報から類似するケースに該当してないかのサポートをお願いしたい」
「かまいませんよ、総督殿。個人的にもそういったものを見過ごすのは不本意ですし、そういう悪事を教会が正すのは情報戦略的にも有効でしょう」
雨宮司教がすぐにOKを出すと、ソーナと秀華もすぐに頷いた。
「個人的にも不愉快な話でしたし、お姉様が動いているなら尚更です。我が校の生徒に不届きな真似をする物には相応の返礼をしないといけませんしね」
「誠二が動くってんなら任せなさい! なんなら最後の
太鼓判も貰ったしな。なら、やっちまうか。
と、そんな時にコナユキが片手を上げていた。
「その、実は、もう一つお願い、あります」
「なんだ? とりあえず言ってみろ」
なんか真剣そうなので聞いてみるか。
俺達が何となく真剣な顔で続きを促すとだ―
「………――――」
―なるほど、な。
それはコナユキにとって無視はできねえだろ。
なら、ここは動くしかねえだろうさ。
「任せとけ。ついででいいなら調べとく。その後のフォローは任せたぜ、お二人さん?」
「「それは勿論」」
と、即座に秀華も誠二も頷いたよ。
まったく。コナユキも立派な主と旦那を持ったもんだぜ。
コガネ・レイクメイデンは本作のヒロインズとしては若干毛色が違うモデルキャラがおります。
ハイスクールD×Dとゴジラシリーズのクロスオーバー作品で、自分が感想で出した反応を基にキャラ設計が「出てきてやられる」程度から「めっちゃ悲惨な過去を持つ攻略ヒロイン」になったディオドラ眷属出身のキャラができたのですが、ホーリー編が終わった直後にエタってしまいまして。残念に思ったのでガチ目に供養したいと思い、彼女を基にしてこの作品に合わせたキャラとして作ってみたのがコガネ・レイクメイデンです。
……なのでめっちゃ強いです。あくまで参考レベルですが、かなり強いキャラだったのでかなり強いキャラにしております。