※この作品はR-18です。

シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! ゴールデンウィークも終わり、今月も頑張らねばなグレン×グレンでっす!

 ここから当分、平日に休日は来ませんからねー。そういう意味では大変ですが、毎日少しずつ頑張っていこうと思います!


第十話 事態目まぐるしく動く

《樹下誠二》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はある程度の事態に備え、一仕事を終えた。

 

 終えたのはいい。少なくとも、開始から終了までスマートかつスムーズに終えたといえるだろう。

 

 だが、本命を完全に取り逃がしている。

 

 どうやら向こうは向こうで動いていたようだ。タイミング悪くかち合ってしまったらしい。

 

 その所為か、()()も見つからない。そしてそれが、嫌な予感を加速させる。

 

 調べてもらった彼女の来歴。それを考えれば、奴にとって彼女が手放したくない手駒であることは間違いない。

 

 だからこそ嫌な予感がする。

 

 向こうがただの脱出や逃亡ならいい。だが攻撃前の安全確保止まりだった場合、事態は悪い方向に動き出しているだろう。

 

 ……とはいえ、それを考えるのはもっと上の仕事でもある。

 

 俺は一呼吸入れて最低限の冷静さを取り戻してから、連行されていく少女達を見る。

 

 割合としては不満げだったり敵意を向けている者もそこそこいる。だが、その多くは絶望している者や、後悔の感情を露わにして泣いている者も数多い。

 

 それを見ながら、俺は内心で憤りを覚える。

 

 それを飲み込んでいると、隣に並ぶ者がいた。

 

「や、誠二君。チュロス食べる?」

 

「……デュリオ」

 

 差し出されたそれを受け取りながら、俺は彼に軽く会釈をする。

 

 デュリオ・ジュズアルド。教会が誇る現役最強格の悪魔祓い。

 

「そういえば、転生天使になったと聞きましたけど」

 

「敬語はいいよ、天使になってるから周りからされまくってるしね。……あとまぁ、なんか特別待遇になっちゃってるかな」

 

 そう言いながら見せてくる紋章は、数字でも英語一文字でもない。

 

 なるほど。ジョーカーか。

 

「流石最強戦力。……あ、それと改めて礼を言うよ。信子さんやコナユキの件もだけど、今回の協力も本当に助かる」

 

「気にしなくていいさ。俺も天使のはしくれだしね」

 

 そう答えるデュリオは笑顔だが、内心の怒りがちょっと隠せてないな。

 

 俺も大概だろうが、まぁ当然でもある。

 

 今回の内情を考えれば、ストレスがたまるのは当たり前だ。というより、信徒なら尚更不快感を抱くだろう。

 

 それでも和平前のことだという事実を考えれば、今回のような事態にならなければ()も無傷で流すことはできただろうに。

 

 ここに至るまでの情報を考えれば、奴はこれからも続ける気が満々だということだ。反吐が出そうだな。

 

 ただ、彼女達はまだマシになるだろう。少なくとも、マシな奴らが多くなるのは間違いない。

 

「信仰の徒にふさわしい技だよな、それ」

 

「そうかい? ま、酷いことなんてしないで済むならそれがいいからさ」

 

 俺が褒めるとそう謙遜するが、実際に信徒として素晴らしい技だと思う。

 

 その者が忘れている、大事なことを思い出させる異能。

 

 道を踏み外していたり、大切なことを忘れた結果迷走しているものというのは少なからずいる。そういった者をただ罰するのではなく、自分自身で悔い改めさせることができるのは、聖書の教えを報じる者として素晴らしいことではないだろうか。

 

 そして何よりだ。

 

「……さて、一応抑えられるだけ抑えてはいるが何時気づくことやら」

 

「中々容赦ないねぇ。ま、俺もちょっと加減する気はないんだけどさ」

 

 そう語り合い、俺達は決意をしている。

 

 あの野郎、確実にぶちのめす。その決意が共鳴すらしていると思えている。

 

 さて、とりあえず戦後処理をしたうえで次の手に備えるか。

 

 そう考えつつ、俺はスマホを取り出して学園の方を確認する。

 

 ……その瞬間、メッセージが届いた。

 

―緊急事態発生―

 

「……おいおい勘弁してくれ」

 

 念の為に備えてはいたんだが、これはそれでも足りなかったということか……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《空本麗夜》

 

 

 

 

 

 

 

 一体なんだと、俺は本気で言いたい。

 

 この駒王町は、三大勢力和平の地。更に管理者はグレモリー本家の次期当主であるリアス嬢であり、同じ学び舎にシトリー本家次期当主のソーナ嬢も在籍。更に天使長ミカエル様直属の天使であるイリナちゃんに、二十代で異形側とは言え大司教についた経験を持ち技術開発で多大な貢献を果たした星斗さんが派遣。堕天使側に至っては、総督であるアザゼル総督が自ら赴任してきている。

 

 いうなればかなりの重要地点だ。ゆえにこの町の防備は下手な上級悪魔の管轄地など比較対象にもならない。

 

 うかつに仕掛けることは三大勢力と日本政府を敵に回すことであり、この時点で精神的にも枷がかかる。そういう、手を出すことはバカのすることと言ってもいい要所だ。

 

 これがただの馬鹿なら問題ない。だが、もう一つの場合だと厄介になる。

 

 つまるところ、それができる実力と自信を併せ持った、手練れの場合だ……っ!

 

「大丈夫かい!?」

 

 飛び跳ねるように爆発が起きた地点に割って入ったその瞬間、目の前に黒い刃が放たれる。

 

 その刃を、俺はよく知っている。

 

黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)!?」

 

 咄嗟の反射で後ろに倒れつつ、前進だけは殺さないことで俺は滑るように攻撃を掻い潜る。

 

 ロックバンドのパフォーマンスじみた動きで滑るように攻撃を回避しながら、素早く魔剣を創造して反撃。

 

 そして視界に敵が映るけど、かなり厄介な相手だ。

 

 全身が影の獣で覆われた人型。体格的に女性的に見えるが、全身を包み込んでいるので確定とはいいがたい。

 

 そしてこちらの攻撃を触れずに弾き飛ばした相手は、そのままこちらに対して攻撃を叩き込んでくる。

 

 放たれるのは影の刃。やはり黒刃の狗神を再現する星辰光か。

 

 素早く飛び跳ねて回避し、同時に周囲を確認。

 

 ……誰もいない? あの時、悲鳴が聞こえたような気がしたけど―

 

「きゃぁっ!?」

 

 ―その声に、俺は最悪の事態を悟っていた。

 

 あの声、間違いない!

 

「狙いはアーシアちゃんか!?」

 

 つまり、こいつらは!

 

 そう思った時、即座に相手は後退する。

 

 その瞬間、その方向線上に発生するのは禍々しい霧。

 

 転移で逃げる気か、させるわけがない!

 

 追撃を試みるけど、その瞬間に俺の周囲に大量の爆発が発生する。

 

 伏兵か!

 

 素早く魔剣で防ぎながら、俺は周囲を確認。

 

 ……誰もいない。

 

 時間差で発動するタイプの星辰光か? ただの爆薬や魔法という線は薄そうだけれど。

 

 いや、そんなことを言っている場合じゃない。

 

「こちら麗夜! 仕掛けてきた敵は撤退したけれど、アーシアちゃんは大丈夫なの!?」

 

 声を張り上げて通信をするけれど、おそらく最悪のパターンなのは間違いない。

 

 そして案の定、返信は苦渋のそれだった……。

 

『……ゴメン、こっちも襲われて、誘拐、された……っぅぐ!?』

 

 海砂の返信は咳込んで遮られる。

 

 あの咳の音……血が混ざってるな、それもかなり……っ

 

『こちら流花! 海砂のところについたけど怪我が酷い! 今すぐ治療するから後処理と残敵警戒をお願い!!』

 

 流花が来てくれたのなら死にはしないだろうけれど、これは本当にまずい。

 

 やってくれる。

 

 だが、下手人……いや、黒幕の当たりはついている。

 

「覚悟しとくんだね、ディオドラ・アスタロト……っ!!」

 

 

 

 

 

《木場祐斗》

 

 

 

 

 

 

 

 合流した僕たちは、オカ研の部室で緊急会議を開いている。

 

「アーシアは……アーシアは、一体どこに連れされたっていうんだ!!」

 

 イッセー君が今にも暴れ出しそうな状態だけれど、それをアザゼル先生が肩に手を置いて止めている。

 

「どこかは分からねえが、当たりはつけている。今捜索班で順繰りに探っているからもうちょっと待ってろ……!」

 

「だね。ここまで大事にしてくる辺り、絶対あいつらも動くだろうし」

 

 と、秀華さんが気になることを言っている。

 

 あいつらも動く? つまり、今動いたものは別ということだ。

 

 その上で連鎖で動くと悟っているのなら、つまり下手人に心当たりがあるということになる。

 

「……どういうこと? 日本政府が何かを掴んでいるの?」

 

 リアス部長も悟って訪ねるけれど、秀華さんは首を横に振った。

 

「そうじゃなくてね。というか、イッセー君もちょっと思い当たるところがあるんじゃない?」

 

 秀華さんにそう言われて、イッセー君は少し考えこんで目を見開いた。

 

 そして僕達もそれを悟る。

 

 イッセー君が今態々してくされるような心当たり。それを、僕達も話は聞いている。

 

 イッセー君が契約活動の帰り、ヴァーリ・ルシファーと美猴に接触されたらしい。

 

 そしてディオドラに気を付けるように忠告を受けたとか。

 

 それはつまり―

 

「ディ、ディオドラの奴が強引に誘拐したってのか!? いくらなんでも、それは馬鹿なんじゃねえか!?」

 

 ―ディオドラ・アスタロトが黒幕だということを遠回しに告げたのだ。

 

 当然イッセー君だって驚愕している通りだ。

 

 彼は腐っても時期アスタロト当主。現政権側で相応の待遇が約束されている少年だ。

 

 だがそれはリアス部長も同じこと。次期グレモリー次期当主である部長もまた、ディオドラに負けず劣らずの立場だ。同じ魔王排出家であることを考えれば、アーシアさんを得るにしてもごり押しはできない。

 

 かといって、こんな手段を取れば実家に迷惑がかかるなどという者ではない。お家騒動には確実になるし、間違いなく貴族社会でも市井の側でも問題となるだろう。

 

 一言言って正気の沙汰ではない。彼はアスタロト家の名誉を失墜させる気なのか?

 

 そんな気持ちの僕達に、雨宮さんが肩をすくめていた。

 

「馬鹿の極みなのよ。……あの男、禍の団と繋がってたの」

 

 なんだって?

 

「……アスタロトの次期当主が、ですか? ……信じられません」

 

「覚えときなさい、小猫。馬鹿ってのはね、信じられないような行動をとるから馬鹿なのよ」

 

 小猫ちゃんにそう言い切った雨宮さんだけれど、たぶん自分のことを言っているんだろう。

 

 だいぶ僕達も慣れてきたけれど、今指摘する余裕はない。

 

 というより、雨宮さんはタブレットPCを取り出して掴むと、そのまま画面が起動して自動的にいくつもの映像や写真に資料を見せてくる。

 

 ……というより、とんでもないことになってないかい!?

 

「……フェニックスの涙の横流し幇助に、下級中級の市民達を対象にしたスカウト班の支援。嘘でしょう……グラシャラボラス家次期当主の暗殺に情報提供をしたっていうの……っ!?」

 

「信じられないぐらい色々やってやがるだろ? 俺も流石にここまでとは思わなかったぜ」

 

 愕然となるリアス部長に、アザゼル先生がやれやれといった形で肩をすくめる。

 

「ちなみに、アイアンローズと冥界でやりあった時に仕掛けてきたヴァーリ達だが、あいつが手引きしてホテルに潜ませていたわけだ。大方、あの時に大暴れできたのはオーフィスの蛇だろうさ」

 

 なんてことだ……。

 

 現魔王ベルゼブブを輩出したアスタロト家。その本家次期当主たるディオドラ・アスタロト。

 

 そんな立場の男が、寄りにもよって内通者だったなんて……っ。

 

 アスタロト家の方々にとっては不幸としか言いようがない。醜聞にもほどがあるだろう……!

 

「……悪い遅くなった。そして、事情は一通り聞いている」

 

「まずいことになってるわね。まだあいつ、見つかってないんだけれど」

 

 と、樹下君や吹本さんが部室に入ってくる。

 

「……その様子だと、皆さんはディオドラの逮捕を試みていたのですか?」

 

 朱乃さんが訪ねると、樹下君がすぐに頷いた。

 

「色々と懸念事項があったが、確証無しな上に相手が相手だったんでな。そちらに知られない形でいろいろと調べてもらっていたんだ。……あの野郎、想像を絶するほどの下種野郎だったよ」

 

 頷いた樹下君は、本気で苦々しい表情になっている。

 

「もう後回しにしない方がいいだろうからはっきり言う。アーシアがディオドラを助けて追放されたのはディオドラの仕込みだ」

 

 ……その即座の言葉に、僕達は寒気すら感じた。

 

「というより常習犯よ。誠二とコナユキが世話になったアスタロト眷属の一人と、アーシアの悪魔になった来歴が類似していたことから捜査した結果、常習犯だって判明したわ」

 

「眷属はおろか、城で囲っている女も含めて全員元々はシスターや聖女といった聖職者の女性。どうやらそういう手合いをあの手この手で貶めて、自分の手元に置くコレクション趣味を持っていたようだ」

 

 吹本さんも樹下君もげんなりしているけれど、それは本当に酷い。

 

 ……最大の問題は、和平が結ばれた後でなおそれをしていることだろう。

 

 敵対勢力の者を寝返らせるといったことそのものは、戦争中なら大抵の勢力がやっているだろう。三大勢力においても否定されることではない以上、戦争中なら美談にすらなるし、そうでなくても称賛される。こと悪魔の場合、転生システムがある都合上比較的難易度も低いし受け皿もある。

 

 だけど、和平が結ばれてからでもやるのなら大問題だ。

 

 さらにそれをテロリストに成り下がってまで成そうとする。このざまはアスタロト家にとって大きな痛手になるだろう。現ベルゼブブである魔王アジュカ様の進退にすら影響する醜態だ。

 

 そして問題は、彼がまだ捕まってないだろうことだ。

 

「それで、問題は奴がまだ捕まってないことだろう……! 動いていたのではなかったのか!?」

 

 ゼノヴィアがいら立って問い質すけど、そこで首を横に振ったのはアザゼル先生だった。

 

「残念だが、ディオドラ以外にも消えた上級悪魔が結構いてな。……どうやら、示し合わせての一斉亡命とかそんな感じだろう。こっちがディオドラの摘発に動いていることを悟って、重要人物とその側近だけといったところだな」

 

「それで間違いないでしょうね。ディオドラも流石に女を全員とまではいかなかったようで、奴の個人的な城やアスタロト本城にいた女性達はデュリオも動いて保護には成功してます」

 

 樹下君が補足するけれど、となると尚更だ。

 

 今回の事件にディオドラが絡んでいるのはほぼ確実。となると、アーシアさんの身が危ないのは確実だ。

 

 そして今現在、ディオドラ達の居所はようとして知れない。これでは手詰まりだろう。

 

「くそ……アーシア……っ!!」

 

 イッセー君が歯ぎしりをする中、リアス部長や秀華さんは、アザゼル先生の方を向く。

 

「言っておくけれどアザゼル。アーシアが見つかったのなら私達が助けに行くわ。……ディオドラに関しても沙汰を下すからね」

 

「……タイミングがタイミングですし、多分探せば見つかりそうですよね。当てはあります?」

 

「ディオドラ達が手を付けてそうなところをローラー作戦であさってる。そもそもアーシアを誘拐するなんて追加を許している辺り、俺達の予想以上に禍の団は……いや、旧魔王派は速攻で決着をつける気だしな。遅かれ早かれ動くはずだが―」

 

 

 

 

 

 

 

 ―メールを受信しました―

 

 

 

 

 

 

 

 その音声が、やけに耳に届いた。

 

 ただまぁ、そういうことは起きてもおかしくない。

 

 そう思って皆が流そうとした時だ。

 

 

 

 

 

 ―~~~~さんからのメールです―

 

 

 

 

 

 

 

 その続いた合成音声に、誰もがその音の方を振り向いた。

 

「……マジか」

 

 樹下君が珍しいぐらいに、唖然となっているのがよく思い出せる。




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