シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
それはそれとして、少しずつクライマックスに近づいていくぜー!!
《樹下誠二》
「……ぁ」
「あ。起きた、よ」
俺が前方警戒をしている間に、背負ったコガネさんが起きたのをコナユキが気づいて伝えてくれた。
まぁ、死なない程度に加減はしていたからな。意識を刈り取ったとはいえ、彼女ほど鍛えられているならすぐに起きるか。
俺は周囲の確認を終えたところで、俺は苦笑をしながら振りかえる。
まぁ、万が一に備えて物理的にも異能的にも拘束しているから問題ないだろう。周囲に敵もいないしな。
「悪いがそういうことだ、コガネさん。貴女には生きて罪を償ってもらう」
ああ、それは確定だ。
と、いうよりだ。
「最も生きて捕まえられたディオドラの眷属はそうなるがな。奴が家に囲っていた女の大半も既に保護している」
相応に確保できたのは確定だ。そろそろディオドラの眷属も、別動隊がどうにかしている頃だろうさ。
「……そう、ですか」
そう呟いてから、コガネさんは目を伏せる。
やはり、心が立ち上がることを選べないか。
そんな人達は何人も見てきている。だからまぁ、そこで一々憤りは感じない。
知識として教えられているしな。人とは大半が程度はともかく弱いものであり、つらくても頑張るのは基本的に難しいのだと。
そしてそれは体感している。ギリギリのタイミングで秀華と出会えたから戦えているが、あの時は無駄死に覚悟で秀華を人質に強引に脱出することを考えていたからな。
ま、そのおかげで信頼に値する相棒に会えたからよかったが。そうでなかったらそもそも日本が大ピンチだったろうしな。
だから、生きて捕らえる事もできた以上コガネさんをここで殺すなどという選択肢はない。あと高確率で、秀華がケツ持ちするだろうしな。
現政府側の悪魔も文句は言うまい。むしろここで秀華が周囲の貴族にあえて貸しを作ることで、すり寄りたい貴族側にもメリットがある。
ま、それはそれとしてだ。
「コガネさん。貴女のしてきたことすべてが肯定されるわけではないし、衝動にまみれて公衆の面前で惨殺死体を作ってしまったことは、罪ともいえるだろう」
俺は背負われているコガネさんに、向き合って告げる。
如何に両親を惨殺されたとはいえ、一般市民が見ているところで惨殺死体を作り上げる。これは民衆が受けただろう心の傷を思えば、罪と言えてしまうだろう。
だがそれとて、両親を目の前で殺されたことに端を発している。ただでさえ精神的に追い詰められていた状態でそんなことをされた以上、多少の情状酌量はあるはずだ。
それに、だ。
「まして断罪の聖女としてのあなたの活動は、貴女だけが背負うべき必要悪じゃない。それは教会という組織そのものが背負う業であり、それを容認し罰を下さないと決めたこれからの三大勢力が背負うべき業だ」
断罪の聖女は必要悪だ。少なくとも、知りえる限りではよほどの相手においてのみ断罪対象となっている。
ならその責任を彼女だけが追うべきではないだろう。それを指示した者は当然背負うべきだし、知ったうえで肯定している者達にも分散されるべき業だ。
だから言える。心から言える。
「貴女の業の大半は貴方だけの物ではない。無理に全部抱え込む必要なんてないし、誰かの肩を借りてもいいものです」
俺は心の底からの本音を言う。
自らの行動と発言に対する責任は、それに見合った者を背負うべきだ。
だが、背負いきれない荷物を無条件で無理に背負う必要なんてない。背負いたいと願い背負う為に頑張れる人に、肩を貸すぐらいのことはあってもいい。
「……無理ですよ。私には、もうそんな人はいないし……耐え切れない……っ」
視線を逸らし俯くコガネさんだが、ここまでは分かっている。
だから、俺はいつも通り―
「………?」
―声が、自然と出てこない。
「誠二、君?」
コナユキが首を傾げているが、俺も自分でびっくりしている。
いつものことを言うだけだと、ただそれだけのことだ。
むろん責任が伴うが、その覚悟など当の昔にしている。なにより、言わないという選択肢こそ存在しない。
何故だと自問自答し、そして答えが自然と出てきた。
……本当にそれで背負えるのかと、自分に疑念を抱いているのだろう。
青蘭がああなったのは、俺の行動と発言によるものだ。それぐらいは分かっているし受け入れた。
そして青蘭達だけではない。
目の前のコナユキ。そして信子さんに海砂さんに流花さん。
彼女達が立ち上がれないほどの絶望を抱えながら、それでも立ち上がって歩けることを願った。それだけの絶望を抱えていると分かったうえで、立ち上がって歩いてほしいと思えた。
だから肩を貸すと決めている。どうしても無理だというのなら、それが周囲を毒する前に終わらせることも決めている。それが、そうであることを望み背を推す責任だ。その為に明確に行動し、自信の無いものを歩かせるのだから、そこに対して生じる責任から逃げたくない。
だがそれは、愛されることとは方向性が違う責任だ。
彼女達の愛に対しても真面目に向き合うと決めている。可能な限り背負うと決めている。それはもう決めている。
だが、愛に対して責任感から愛そうというのは何かが間違っているのではないか。そう思う自分が確かにいる。むしろかなり悩んでいる。
……それが、いつもの一言を言わさせない。
愕然となるとはこのことだ。
どうする? どうすればいい?
ここで誠意のない偽りの言葉を言うわけにはいかない。だが、今から同じことを言ってもそこに誠実さがあるとはいいがたい。かといって、だから何も言わず突き放すなんて言うなんてありえない。
思わぬ形で自縄自縛に陥っている。何より、想定外すぎて対応策が思いつかない。
それを、コナユキは何かの状態異常と勘違いしたらしい。
「……皆助け、て。誠二君が、何かされ―」
『『『『『……ぁあああああっ!?』』』』』
―その途端、悲鳴が響き渡った。
《兵藤一誠》
「舐めるな……この僕を、アスタロトのディオドラを……っ!」
「この、野郎……っ!」
ディオドラの奴、今の今まで本当に手を抜いてやがったな!?
部屋中が聖なるオーラに包まれ、更に濃密な聖なるオーラが剣となって襲い掛かる。
俺は星辰光の性質上あまりダメージを受けてないけど、それでも何本かは血反吐が出るほど効いてる。
しかも、右腕の腱がごっそり切られた所為で動きが微妙になっている。アーシアに治してもらいたいけど、いいのをもらったのか意識が曖昧だ。
「龍殺しの聖剣まで用意してもらったっていうのに、しぶといんだよ……!」
そういうことかよ。そりゃ効くわけだ。
まだ戦える。ただ、右腕がまずいな。聖なるオーラで焼かれた所為で血はあまり流れてないけど、これは下手するとちぎれるから使いづらいな。
「しぶといのは……お前だ……っ」
ゼノヴィアが俺が貸したアスカロンとデュランダルの二刀流で何とか立ち上がるけど、こっちも消耗が激しい。
元々体が頑丈じゃないアーシアや、純血悪魔のリアス部長は瀕死レベルだ。しかもアーシアの意識はまだ回復してないから、このままだとまずい。
「元人間のまがい物達が揃いも揃って、アスタロト家次期当主の僕にたてつくな。しかも一人は人間とも言い難い、混ざりものだらけのキメラじゃないか!」
あの野郎、青蘭さんをよくもまぁボロッカスに!
「痛いところを突かれたな。まぁ、私が一番弱いだろうから仕方がないか。だが、そう簡単に倒れるつもりはないさ」
青蘭さんは軽く流しているけど、あっちはあっちでボロボロだ。
いくら悪魔じゃないからって、これだけオーラで攻撃されてればきついだろうさ。正直、人間だったら俺はもう死んでる。
「まぁ、優秀なのはいいことだよ。僕はシスターでもない女に興味はないけど、禍の団に興味を持つ者はいるだろうさ。……モルモットでもいいから死にたくないのなら、取り次いでやってもいいけどね」
この野郎……なめてんのか!
自分が勝てる自信が出てきているからって、舐めやがって。
そんなものを誰が受けるっていうんだよ!
「……ほぉ、待遇は?」
あれぇえええええ!?
青蘭さぁああああん!?
ちょ、樹下お前、もしかして見切られたぁああああ!?
いや馬鹿な。落ち着け落ち着け多分時間稼ぎだ。
「モルモットに待遇と言われてもねぇ? まぁ、君は色々特殊らしいから、三食昼寝付きぐらいはしてくれるんじゃないかい?」
「そうかそうか。まぁ聞いてみただけだし、絶対条件が満たせないだろうから断るがな」
ですよね!
さらりと言ってくれてよかったです!
「ふぅ~ん? ちなみに、その絶対条件が満たせない理由は何だい? 派閥によっては応相談だろうけど?」
ディオドラも余裕が出てきたのか、なんか変なこと聞いてきたし。
と、とりあえず今のうちに倍化を溜めないと。
そう思った時だ。
「決まっているだろう? お前達がご主人様じゃ―樹下誠二じゃないからだ」
す、凄くはっきり言ってきたな。
「私の心は徹底的砕かれて壊れてしまった。極端な話、私を支配して管理してくれるものがいなければ、私は前に歩くことすらできないだろう。……極論だが、それをしてくれる人がいるのならどんな思想の持ち主であっても、その進む道が私のそれになってしまうほどに私は誰かに依存せずにはいられなくなっていると思っている」
あの、言ってることさっきと矛盾してません?
ディオドラもきょとんとしているし。なんか気持ちが分かっちまうのが腹立つ。
「その、言っていることが矛盾していないかい?」
「否定はしない。だが、それでも私は樹下誠二を主と決めた。……彼が主でないなら死んでいいと、私は私に命じている」
ゼノヴィアにそう言いながら、青蘭さんは小さく笑う。
「分かっているのさ。誠二にとって私のような縋りつくような依存は、本来望んでいるものではないということは。だが、私はもう一人では立ち上がることすらできない。それほどまでに、私の心は壊れ切ってしまっている」
寂しげに笑う青蘭さんは、それでも立ち上がって胸を張る。
「……今思い出せば思い出すほどに、だからこそ分かるのさ。私の仲間を、死んでいった者達をあえて侮蔑する彼は、自分では隠せているつもりだったのだろうがとても悲壮感に溢れていたと。それほどまでに自分を苦しめてでも、私に立ち上がる気力を与えようとしたのだと」
そこはある程度聞いてる。
心が徹底的にズタボロにされるような目に遭った青蘭さんに、樹下は死んでいった仲間達を罵倒して憎悪を抱かせることで立ち上がらせようとしていたって。
「……彼は会ったばかりの私の為に、文字通りに憎まれ役を買って出てくれた。誰かが再起することを望み、その為に苦難を背負い、できなかった時の最後の責任を果たそうとしてしまう少年だ」
目を伏せて、青蘭さんは小さく笑う。
血まみれで傷だらけなその姿を、俺は綺麗だと思う。
「優しくそして、自他に厳しい人だと、三年以上の時を経て私は気づいた。気づいてしまった……」
青蘭さんは、俺以上にボロボロなのに、一歩を確かに踏みしめた。
「だから私は決めている。誰かにすがるしかないのなら、せめてその相手だけは自分で選ぶと。そしてその相手は、助けられる人の為に文字通り苦しみ、そして苦しんででも最後の責任まで取ろうとする彼だけだ。歩く為に縋りつき、そして彼の為に持てる全てを懸けると……!」
星辰光が発動し、足が黄金の獅子の刃に代わっていく。
反動もでかいだろうに、全身ズタボロなのに、青蘭さんは真っ直ぐにディオドラを睨みつける。
「私は、例え僅かな逢瀬であっても彼のことを愛し、そしてそれは間違ってないと今までの生活で確信した! 彼以外の主を私は選ばないし、それができないのなら死んでいい……すべてを懸け、私以外の為にも傷つきながら続けるだろう旅路を支える力になる、その為にこの命を使い切る!」
地面を踏みしめ、構えを取って、青蘭さんは胸を張る。
「その主が、彼らを助けろと言ったのなら! ご主人様にとっての友であり仲間の窮地なら! この命、全て使い尽くしてでも力となる!! それが……壊れ果てた私がそれでもしたいと願った、最後の意地だ!!」
……はっ!
ったく。樹下は本当に……いい男だぜ。
ここまで惚れこまれるなんて男冥利に尽きるってもんだろ。それをウジウジと妙に悩んで。
これが終わったら無理やりにでも話す時間を作らせないとな。俺も頑張るぜ!
「だったら生き残らないと駄目っスよね! 気合入ってきた……!」
もう腕が落ちるとかどうでもいい。後で繋げてもらえばいいだろうしな!
こっちもかなり時間がぎりぎりだけど、ここは一気に決着を―
「……まったく、そこまで言われたら完敗だよ」
―その瞬間、そんな声が聞こえると同時に部屋の壁がぶっ壊れた。
これは、樹下の反粒子に、得意技の弾幕ならぬ魔剣幕!?
ってことは!
「樹下!」
「誠二?」
「樹下か!」
俺もリアス部長もゼノヴィアも声を上げた時、そのまま樹下がディオドラに切りかかった。
ディオドラも聖なるオーラの剣を使って迎撃するけど、あっさりと樹下は弾き飛ばす!
「……ディオドラ・アスタロト。投降することを勧めるが、どうする?」
「ふ、ざ……けるなよ、まがい物の悪魔風情がぁーっ!!」
冷静に言い切った樹下に、ディオドラは聖なるオーラの剣と魔力の雨あられをぶっ放す。
それに対し、樹下は軽く息を吐いた瞬間に魔剣だけで全部薙ぎ払った。
え、いやちょ……あっさり!?
ディオドラも面食らっている中、樹下はため息を吐いて宣言した。
「少なくともお前は勝てない。詰んでいる自覚もないんだからな」
ちょ、超がつくほど頼もしぃいいいいいいいいっ!!!
ここで青蘭の内面を明かす形となりました。
とりあえず青蘭関係においては早い段階で「誠二が悩む」「意図せず青蘭の本音を聞く」「誠二、スイッチオン!」にすることは確定。そこに精神的に追い詰められまくっているコガネもいましたので、からめとってマスドライバーのようにする形になりました。
青蘭は本質的に総合的に優秀ですが、チート級のインフレに対応できるほどではなかったので大きく心身に傷を負い、だけど優秀ではあったので誠二の本質を時間こそかかったが気づいてしまった。
だからこそ、できないなりに頑張ったのが従属根性フルスロットル。そして誠二がいないと思っているところで言い放ったことが、誠二に対していい影響……だよな……を与えることになります。
そしてそろそろクライマックスも近づいてまいりました。
所詮ディオドラは、爽快感あるぶっ倒されで終わる程度の小物じゃけぇのぅ……。