シルヴァリオ ディアボロス~ハイスクールD×D銀月譚 作:グレン×グレン
最近いつものベルトの穴だとだいぶベルトが緩むようになっております。この調子なら今月中にベルトの穴を一つずらすことになるのではないかとちょっと皮算用中。
では本編!
《樹下誠二》
「我、目覚めるは―――」
イッセーの切り札は覇龍か。
覇。それは異形を封印した封印系神器にのみ備わる、神器の最終手段。
究極系といえる禁手とことなり、覇は基本的に暴走させる手段だ。
封印された存在に力をフルに発揮できるが、いわばリミッターを解除して制御も手放すのに近い。必然的にデメリットも大きく、大抵は理性を吹き飛ばしたうえ恐ろしい速度で生命力を削り寿命も減って行く。
文字通りの最後の手段。禁手のようなある意味で完成された到達点には遠く及ばない。
だが、全盛期に二天龍の力に一気に近づけるのなら、魔王クラスが相手でも十分すぎる勝算がある。
となれば、もう一人を倒すのは反粒子が使える俺だ。……流石に魔王クラスの性能を持つ奴を二人も倒せば、生命力が尽きるだろうしな。
あいつがそこまで覚悟を見せたのなら、俺はそれに答えるしかない。
確実に……目の前の二人は倒す!!
「何のつもりだ? この真なるベルゼブブが、オーフィスの蛇を持った今の私がそんなもので倒されるとでも―」
「言っている場合ではない! 我らが初代達ですら苦戦する力、出させるような隙など与えん!」
シャルバ・ベルゼブブは余裕をブッコいているが、クルゼレイ・アスモデウスは遠慮なく突貫する。
なるほど……なら、お前だ。
「邪魔をさせるか!」
遠慮なく黒刃を足に具現化し、俺は即座に切りかかる。
連戦で疲れてるし反動も大きいが、今そんなことを気にしている場合ではない。
攻撃を受け止められるが、それを逆手にとって強引に引き離す。
負傷者が多い以上、油断してない方の敵を近くに置いておくわけにはいかない。
「黒刃の狗神擬き……! そうか、貴様がカテレアのまがい物が作ったという粗悪なデッドコピーかぁ!」
どうやらカテレア・レヴィアタンと仲が良いらしい。俺の正体を悟って、勝手気に激高してくれた。
ならこのまま引き付ける……!
《空本麗夜》
戦闘が激しくなってきたそのタイミングで、俺達はそのオーラに誰もが気を取られた。
気を取られただけで警戒を捨て去ってない者は多く、完全に意識が向いている奴らは物の次いででノールックキルされて行っている。諸行無常過ぎるけど、麗奈達はやられてないので良しとしよう。
というか、何だこのオーラ!?
コカビエルが可愛く思えるレベルのオーラだ。いきなりあんなものが垂れ流し気味に放出されている!?
「……なるほど、赤龍帝が覇を使ったか。それほどの事態のようじゃの」
オーディン様が真剣な顔つきになって呟くけど、つまりイッセー君が覇龍を使ったのか!?
イッセー君の才覚で覇を使えばどんなことになるか分かったものじゃない。誠二がそれを簡単に許可するとも思えない……それほどの事態か!!
「……おられましたか、星騎士雨宮様、それに星騎士旗本様、吹本様、松森様!!」
と、泡を食った顔で悪魔祓いが伝令の為か駆けつけている。
駆けつけているけど……やっぱりあの三人、関係者か!!
「……あれ、こんなところに貴方もいたんですか?」
と、そこでかつて戦ったフードを被った男が現れてあちらに飛び掛かる。
確か木曽義仲と名乗っていたな。なんか久しぶりの人に対する暗殺感覚で薙刀を振るっているのですがそれでいいのか。
と、旗本姓らしい相手の星辰奏者はそれを同じように薙刀で迎撃。
どっちも薙刀の扱いが上手いな。流花とまともにやりあえるのではないだろうかというレベルだ。
と、木曽義仲のフードが何時の間にか断ち切られている。
何時の間にか、旗本姓の星騎士は脇差を持って振るっていた。
そして風に飛んでいくフードから、俺達は視線を木曽義仲に向ける。
……そこにいたのは白髪の青年。
筋肉はしっかりあるけれど、細マッチョというほどでもないレベルの細さだ。多分元々筋肉が付き難いうえ、文系か体が弱いかのどちらかだったのだろう。
異能で補佐しているのか、治療可能の病気だけど完治したのが遅れたのか。年齢は俺と同じぐらいだから、流花と同じ22歳前後だろうか。
ただ、彼は苦笑していた
「……驚きましたか、師範代。神器が悪影響を与えていたようで、至ったことで克服しました。その影響で星辰奏者になったので、こうして武技を振るえています」
「そういうことか……いえ、でしたか。できればもっと若い頃に至っていてほしかったですよ」
やはり関係者か。
ただ問題は、二人は一体誰かということなんだけど、そうも言ってられない。
「………嘘、でしょ?」
明らかに絶望レベルの表情を浮かべている、流花の状態が間違いなくまずい状態なのが分かるからだ。
木曽義仲。隠された末裔であるか、もしくはあやかって名乗ったか。
いわゆる源氏の一人だが、粗忽ものだったことが要因で味方からも見捨てられたとかいう感じの人物だったろうか。巴御前や山吹御前を名乗っている他の二人に合わせたものだと思っていたから、血縁者ということではないだろう。
そしてその木曽義仲を名乗っていた彼は、小さく苦笑を浮かべながら複雑な表情を流花に向けている。
「改めて名乗ろうか。……
若干呆れ半分のその言葉に、流花は崩れ落ちかけている。
そして同時タイミングで、弾き飛ばされた海砂がそれでも人形を展開して結界を展開する。
「麗夜、こっちはかなりまずいけど状況は!?」
「流花もまずい! あの木曽義仲、やっぱり関係者だった……そっちは?」
かなり執拗に狙われているし顔つきも似ている。……となると、当然だけど関係者であることを考えるべきだ。
ただ、答えは微妙に違っていた。
「残念だけど血縁でもないし会うのは初めて。……だけど、恨んでいる理由も誰なのかも大体分かったわ」
そのよく分からない答えに、追撃してきた音成光珠は明確な敵意を向けながらも、笑みの形で応えている。
「よくお分かりで。……
「ええ。スカウトされた時から、結構何度も聞かされてたわ。……目的は仇討ち?」
「どうかしらね。……ただ、私個人はアンタのことが許せない……っ!!」
どうやらこっちはこっちで因縁が酷いようだ。
「初めまして、戦士音成殿。……今にして思えば、このような形以外で一度会ってみたかった……っ」
「それはどうも。ま、今はお互い敵同士だし……容赦なくいきましょうか?」
旗本の師範代と音成光珠はそう言った時、師範代とやらの方に着地する人影があった。
と、その姿を見た海砂が頬を引きつらせる。
「……貴方まさか……!」
「うっす、久しぶり。……戦士辰人、怠いですけど手伝いますよ、こっちも無関係じゃないで」
更に海砂の関係者まで、これは流石にまずい……けど!
「ダーリン無事! っていうか海砂さんも流花さんも顔色悪いけど!?」
美子ちゃんも来てくれたのなら、やりようはある。
「流花も海砂も流石にメンタル的にダメージが大きい! ここは俺達がメインで動くよ!!」
こういう時は肩を貸すぐらいでちょうどいい。
どんな時でも頑張るなんて大変だ。大変な時、少しぐらい肩を貸す程度のことはできる男でいようと決めているんだ。美子ちゃんの前では尚更ね!!
と、いうわけで俺は息を吸い込んで―
「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌く流れ星!」
―気合を入れるとしますかね!!
《木場祐斗》
吹き飛ばされる周囲の風景。
それを成しているのは三つの戦場だ。
一つは、海の方に飛んでいく、カテレア・レヴィアタンを押し込んでいる秀華さん。
一つは、見知ったイッセー君のオーラでありながら、明らかに異常なレベルのオーラ。
そして最後の一つは、乱れ打つ戦闘共に少し離れたところを通り過ぎた樹下君だ。
三人とも、対峙するオーラは魔王クラス。おそらく蛇を利用した旧魔王血族だ。
それだけの事態だという事か……!
あの三人が、それぞれ気合を入れて限界を超えるように戦っている。
なら、僕達のすることはただ一つ。
「この戦闘は僕達で切り抜ける。……そうだろう、皆!」
「まったくもって、その通り!!」
聖魔剣で敵の攻撃を切り刻み、それでも突貫してくる敵をアルトリーネさんが拳で打ち払う。
今三者三葉で、僕達の仲間が命を賭している。そんな彼らに恥じることはできないだろう。
「簡単に言ってくれる。我ら第七愛欲騎士団、そうやすやすやられる柔な鍛え方はしていない!!」
そう踏み込む、第七愛欲騎士団のパウロ。
彼が放つ星辰光は、聖なる光によって構成される巨大な鳥を使役することだ。
間違いなく彼は主力級だろう。今の僕達でも楽には勝てない。
そう、仮にも禁手に至っている僕と、アイアンローズでトップエージェントだったアルトリーネさん。間違いなく僕達の中では上位側にいる僕達ですら苦戦している。
だけど流石に甘く見積もりすぎだよ、パウロ。
何故なら、君達と同じように―
「……グゥウウリィイイイイイイゴォリィイイイイイイイッ!! 麗奈のことが心配だが、とりあえず貴様らから薙ぎ払ってくれるわぁああああああっ!!」
「お姉様どちらにぃいいいいいいい! が、頑張って乗り越えて助けに行くから、無事でいてぇええええええええっ!!」
―僕達にも仲間はいるのだから!
強引に敵を弾き飛ばしながら、雲川さんとリーネちゃんが戦いの場へと入っていく。
第七愛欲騎士団の者達は聖なる光の獣達を使役しながら挑んでいくけれど、豪快に二人揃って薙ぎ払い続けている。
「同志達!? ってこっちに来た―」
「「そこをどけぇええええ!!」」
その瞬間、二人の攻撃がパウロに叩き込まれる。
轟音が鳴り響き……だが、パウロは耐えた。
「衝撃系の星辰光に、鋼の巨人を
ある程度押し飛ばされるが、すぐに着地してそう推測し、そして足を踏み込む。
「なら
聖なる光の鳥を雲川さんへと牽制として放ちつつ、一瞬で踏み込むとリーナちゃんを狙う。
二人は共に防御の構えを取るが、大丈夫。
「「させると思うか!」」
僕らがそれぞれ割って入り、その攻撃を弾き飛ばした。
そして同時に、直接打撃を弾いたアルトリーネさんが舌打ちする。
「今の感覚、アイアンローズの星辰奏者にもいたけれど神殺しね! リーネはサポートに回りなさい!!」
「マジですか!? あ、危なかったぁ……っ」
神殺しか。なるほど、合点がいった。
聖なる光の獣を操る能力を持ちながら、リーネちゃんの方を狙う。
だが神殺しの力を持っているなら妥当だ。むしろ神殺しは到達難易度が極めて難しい以上、優先的に神に由来する存在を狙うのが戦術的な政界だろう。
「これでも一応、八百万の荒魂は屠っていると言っておこうか。その為に至ったようなものだからね」
自慢げに言うけど、となると脅威だね。
八百万の神々は神としては下位の部類だろうけれど、一度でも屠った実績があるのならその自信は明確な根拠となる。
下手に神々とぶつけ合わされると危険だ。
……できることならここで倒した方がいい。
なにより―
「イッセー君達が頑張っているんでね。その程度の実績で臆する気は……ない!」
―彼らに恥じる真似はできないね!!
《樹下誠二》
放たれる猛攻は洒落にならない。
いくら出力や性能が蛇で底上げされたとはいえ、性能が魔王クラスあることは事実。
それにそれを差し引いても最上級悪魔クラスはあったのだ。技術も経験も十分強者レベルはある。
それに比べ、俺はまだ十代の若輩者。神器だけでなく神滅具再現型の星辰光があるとはいえ、どちらもただの上位型のデッドコピーで至ってない。
普通に考えれば圧倒的に不利なのはこちら。幸いなのは、俺如きに手段を選ばないのはプライドが邪魔をしすぎるだろうから、味方を呼び寄せるような真似は当面ないということだ。
「おのれまがい物がぁ! いい加減に……消し飛べ!」
「そんな言い分を、了承する……自殺志願者だと、思うかぁ!!」
なめられたものだな!
不幸中の幸いだが、脅威というレベルではあるがコカビエルほどの技量や判断力はない。だから何とかしのげている。
そして不幸なことに、俺にとってはそれでも十分なほどに脅威だということだ。
間違いなくコカビエルと戦った時より俺は強くなっている。それこそ段違いに強くなっている。そこは断言できる。
だが同時に、それを踏まえてもなお単独で魔王クラスを打倒するのは困難だ。反粒子があるからワンチャンあるが、裏を返すとワンチャンしかない。
数百回やれば一回ぐらいは掴めるだろうが、裏を返すと勝率1%未満だ。
そしてもう一つ面倒なことに、クルゼレイは配下を送り付けて連携を分断しやがった。
つまり確率を上げる為の手法が俺の努力ぐらいしかない。
……これ詰んだのではないだろうか?
そんな悪い予感が思考をよぎった時だ。
「見つけましたよ!!」
少し離れた水中から、いきなりコガネさんが飛び出した。
「無事か、ご主人様!!」
しかも青蘭が抱き着いている。
え、何この状況!?
俺がちょっと困惑していると、コガネさんはこちらに飛びながら青蘭を俺に向かって投げつけた。
「一分稼ぎます、お願いしました!!」
「任された!!」
なにやら示し合わせると、青蘭は俺に抱き着いた。
「ちょ、今は―」
「―時間がない、私を……信じてくれ!!」
その言葉に、俺は反論を飲み込んだ。
俺は彼女に対して責任を持つと決め、愛せる可能性を認めた。
彼女は俺を愛すると決め、命すらかけて尽くすと決めていた。
相互にそれを知り決意した。なら、それは当然の覚悟だ。
「分かった、任せる!」
「ああ、受け取ってくれ」
俺の頷き、青蘭は頷きながら頬を染め―
「……っ!?」
―急に唇を奪ってきたのだが!?
一体なんだと困惑する、その時だ。
そういう、ことか!!
《Other》
楽青蘭は優秀である。
学生として常に成績優秀であり、大学院の課程を修了する。これは無能では当然できないことだ。
また幾多もの異能をその身に宿す、先祖返りの見本市。その基点が人間であるがゆえに、彼女は神器すら持っている。
楽青蘭は凡人である。
最先端の研究機関に属するわけでも、国家運営機関の幹部についたわけでもなく、また飛び級を可能としたわけでもない。
数多の異能も決してずば抜けた域はなく、総じてそれぞれの分野で言うなら中間から中の上クラス。基本的に量より質が優位性を持ちやすい異形の世界において、彼女は一上級悪魔の眷属としてならエースになれても、最上級悪魔上位の眷属足りえる力はない。
それゆえに心を砕かれ、しかし彼女は砕けた心のまま立ち上がる。
それはすべからく、支えとなる柱を完全に外に依存することを決意したが故の在り方。そして彼女はそれゆえに、その力をありえないほどに高めている。
己の全てを主の為に費やす決意は、至ることなく彼女を新たなる領域へと昇り詰めさせる。
……そしてその結果として編み出したことこそ、彼女のその数だらけの才覚に由来する結論だった。
生命を調律する仙術すら扱える猫魈。吸血を解すことで眷属を作り上げ、肉体を別の生物へと変えることもできる吸血鬼。人の姿から獣のそれへと変貌させる獣人も、また強大。更に人間の魂を導き、英雄にもたらすヴァルキリーの要素も見過ごせない。堕天使としての性質はさほど恩恵を与えていないが、この無理ばかりあるがゆえに反動も大きいだろう前人未到を成し遂げるのに、その欠点の少ない性質は一助に放っているだろう。
そして、最後の切り札は己の神器。
彼女はこれを至らせることなく、更なる進化形へと至らせた。
そう、彼女はこの力をもってして、半端な効果しかない己の異形としての性質全てに「他者の強化」という進化形を組み込んだ。
故に、驚愕せよ古き魔王の残留物。
「……これはあれだな。気合を入れないと駄目だろうってことだろうな」
小さく冷たい笑みを浮かべるだけの勝算が、樹下誠二に誕生した、その絶望を知る時だ。
これまでの作品で作ってきた神器も、いろいろと使っていきたい今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか?
今週末は本章のクライマックスとなっております!