※この作品はR-18です。

ハイスクールハックアンドスラッシュRPG  バトル&バイオレンス&ラブな1year二周目俺TUEEEプレイ   作:笛ふき用

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第六話 初ダンジョンダイブ当日 6:00〜9:00

 

 ーー6:00

 

 カーテン越しの陽の光で目が覚めた修二は、寝起き特有のぼんやりとした頭のままそれでも目の前に自分を見つめる瞳があることに気づいた。

 

「おはよ、修二くん」

 

 美南先輩。自分の初めての女性。寝ていた間も彼女の背中に回していた右腕にわずかに力が入るのは、無意識に彼女を抱き寄せようとしたからだろうか。こんなふうに一緒に朝を迎えられる目の前の女性に修二は好きではなく愛おしいと男の本能で思った。

 

「……ん、おはようございます。美南先輩」

 

「うん、おはよ。昨日も可愛かったよ、修二くん。ねぇ、ちゅうしよ? はい、ちゅー」

 

「ちょ、先輩。んっ」

 

 昨日はといえば、まず『魔物を倒すとレベルが上がると同時に精力が高まり、どうしてもセックスがしたくなるし、しないといつまでもムラムラがおさまらない』という死ぬほど大事なことを全く説明もせずに、「なんとかするやつを紹介してやる」とだけ教えておいていきなり美南をベッドに送り込んできた上、翌朝美南と腕を組んで食堂に顔を見せた自分に対し全力でニタニタしながら「しゅ〜〜〜〜じく〜〜〜〜ん、昨日はお楽しみでしたねぇ?」と馬鹿なことを言った死ぬほど馬鹿な兄に照れ隠しも加わった本気の鉄拳制裁(顔面にグーパン)したあと、美味しくご飯を食べて登校したのだが、その時も学園の玄関まで美南は自分の腕から離れず、彼女を知る人間から驚きを持ってみられていた、ようだ。正直、修二自身は『なんか女の人と一緒のところを見られるのってすごい恥ずかしいな』としか思っておらず、美南も美南で完全に周囲の反応などどこ吹く風であったのだが、それを見て受け取る側の衝撃は当然そんなものではなく、割と本気で二年生以上の学園全体に激震が走るのだが、今この時の修二たちには関係がないのでこれ以上は割愛する。

 

 名残惜しそうな美南と別れ際のキスをした後、ぼんやりしながらクラスにたどり着いたものの正直夢見心地で授業などまるで耳に入らなかった。覚えているものといえば、最初席に座る時、そのぼんやりとした修二の姿を気持ち悪がった滋の、初めは変なもんでも食ったかと言わんばかりに不思議そうに、あまりの修二の反応の頼りなさのために途中からは心配そうに話しかけてくれている怪訝そうな顔と、一時間目終了のチャイムでハッと正気に戻った瞬間に目に入った、隣の席の栞里のこちらを心配そうに伺う美しい顔だけだった。

 

(やっぱり綺麗な子だな)

 

 そう思う一方、何故かそれ以上に危うさを感じる彼女。しかも自分に近しい何かを彼女に感じながらその横顔に惹かれていることをうっすらと自覚しながら苦笑した。昨日あれよあれよという間に童貞を捨てた自分。瞼を閉じるだけで浮かんでくる顔を朱に染めながらはにかんだ美南先輩の顔、声、匂い、おっぱいの感触、etc。なんならついさっきまで組んでいた腕の感触がはっきり残っているし、最後のキスの唇の感触など言わずもがなだ。そんな状態でいったい自分は何を考えているんだと思う一方、こうも思った。

 

 別に綺麗な女の子を眺めるくらいならノーカン、と。だって僕、綺麗な女の子好きだし、と。

 

 こういう普通の男子高校生の部分と明らかにそうでない部分が垣根なしの同一平面上に同居しているのが、修二の特異性であり異常性であり妙な愛嬌に繋がっているのだが、つまり何が言いたいかというとこいつは案外ミーハーかつ女の子が好きな普通の男の子で(・)も(・)あるだということである。

 

 そして放課後。まずは兄から具体的な初回ダンジョンダイブの心得なるものをコンコンと説明を受け、その後初日と同じように延々とゴブリンどもを屠殺し続け、その後美南との夜を楽しんだ修二は今朝も同じく彼女とお目覚めのキスを交わす。最初に出会った時の印象などもはや忘れてしまったこの自分にとって初めての女性は、とても積極的かつキスが大好きでことあるごとにキスをせがんできて、まだまだ童貞を昨日に捨てたばかりで精神的に女性に対して一歩も二歩も引いて接してしまう修二にとっては嬉しいやら恥ずかしいやらでどうしていいのかわからないが、少なくても嫌ではないのでこうして彼女のおねだりにすぐ絆されてしまう。

 

 そのまま流れるように自分の口内に美南の舌が入り込んでくるが、少しは慣れてきた修二はそれに自分の舌を絡ませるようにして応えた。頭全部で響き脳みそまで蕩けさせるような音と濃密に女性そのものを思わせる唾液の味と口内いっぱいに広がった匂いで脳みそがノックダウンされそうになった。おかげで昨日あれだけの回数射精したにも関わらず元々元気に朝勃ちはしていたのだが、勃起が止まらない。

 

 それを目ざとく見つけた美南に人生初の口内奉仕(フェラチオ)を受け、敏感な亀頭のカリの部分を舌でざらりとやられただけで大量の精子を彼女の口の中にぶちまけた後、それを嬉しそうに飲み込む姿に大興奮しもはや学校などどうでもいいと押し倒しそうになったが流石に今日はまずいと思いとどまり、二人でシャワーを浴びて部屋を後にしようとしたところで美南に部屋に残ると言われた。

 

 じゃあ、ここでと言いかけた修二の唇を強引に奪いそのまま驚いた修二の首に美南は両手を回して長い長いディープキスをする。やがて互いの唇が離れ、唾液で出来た透明な橋が出来た。それが廊下のカーペットの小さなシミになった後、美南は涙を浮かべた真剣な目で修二の頬に両手を添えた。

 

「絶対、生きて帰ってきてね? 帰ってきたら今の続きをするんだからね? 約束だよ?」

 

「はい、もちろんです。約束です」

 

 そう言ってからエレベーターのドアが開き、「いってらっしゃい、修二くん」と手を振るその瞬間まで美南は手を決して離さなかった。

 

 ーー7:00

 

 美南と別れた修二は食事を取った後、今日は兄の隆一と二人で登校していた。割とのほほんとしている修二に対し、逆に隆一は神経質な顔つきで弟に話しかけていた。

 

「修二、おさらい。初回ダンジョンダイブで気をつけることは?」

 

「ひとつ、基本ずっと移動し続けるべし。同じところに長時間留まるのは【天敵者(アグレッサー)】っていう黒い人影をした戦っても勝てないヤバイ奴に遭遇しちゃうかもしれないからNG。ふたつ、モンスターとの戦いは必要な時以外は避けるべし。不必要なリスクは犯さないように。みっつ、ダンジョンに潜るときに何人かと一緒に入ってもいいがあまり大人数は避けるように。できれば一人、多くても二人が望ましい。これは不必要な足手まといが多くいると自分が死んじゃう確率が上がるからだったよね?」

 

「Exactly(その通り)。十二分に強くなったけどな、それでもお前はダンジョンに関しては初心者以下でしかない。お前自身を守ることだけ考えろ。それにまだ学校入ってすぐで別に友達もいねえだろ……、いやルームメイトの子がいたか。滋(しげる)くんだったな。せいぜいその子一人にしときな。それなら自然だし誰も怪しまねぇ」

 

「あれ? なんで滋くんのこと知ってんの?」

 

「昨日のうちに挨拶に行った。うちの弟がご迷惑かけてますってな。なかなか面白い子だったな。笑ったわ、お前から唐揚げ何個もぶんどるとか割とマジで快挙だぞ、あの子」

 

 そう言って思い出し笑いで吹き出す。

 

 修二も思い出したのか、まるで小さな子供のようにぷくーと頬を膨らませた。この男、とにかく自分のものを誰かに取られることを嫌がる。それは彼が次男坊であるからなのか、それとも魂そのものに刻まれた業(カルマ)そのものであるのか。ともかくそのふくれっ面を久しぶりに見た隆一は満足そうに先ほどまでとは違う種類の笑顔を浮かべながら、自分がその成長を見守ることができなかった間に自分と変わらないほど背が高くなっていた弟の頭を撫でた。当然嫌がられたが、気にせずに撫で回す。抵抗しても無駄なことを悟りふくれっ面のままなすがままになる修二。それは兄弟の失われた四年の時間を埋める行為そのものだった。

 

「ほらほら、いつまでもふくれてねーで次は?」

 

 しばらくして満足したのか弟の頭から手を離した兄が続きを促す。ふくれっ面のまま続きを答えた修二だが、このとき修二がふくれっ面のままだったのは先ほどまでの流れだけが原因ではなかった。

 

「……よっつ、少なくともダンジョンにダイブするまでは誰とも情報の共有はしないように。直前にそれを話してそれがバレてパニックが起こった場合、僕だけじゃなく、僕のクラス全体が学園上層部に目をつけられて停学ののち洗脳、僕は学園から物理的に排除されるからNG。……ねぇこれホントにダメ?」

 

「ダメ。気持ちは痛いほどわかるが俺たちもお前一人生かすこの段取りだけで精一杯。今でさえ倶楽部の連中巻き込んで全員もろとも破滅しかねない危ない橋渡ってんだわ。流石にこれ以上は無理」

 

 つまり、基本的には自分以外の他の全員を見捨てろという冷静で冷酷で冷徹な兄の決断だった。理由は昨日くどいほど言い聞かされており、なんにせよ納得できる論理的説明があれば物事に関して『割り切って』しまうことで素直に言うことを聞く修二も、今回のこの件に関しては流石にかなり兄に喰らいついたのだが、当然隆一にも譲れないものがある。最後は修二も納得するしかなかったのだ。ただ、この弟、ただでは起きない。そして兄もそれは分かっているので釘を刺すのを忘れない。

 

「ねぇ、にいちゃん。じゃあさ、一(・)旦(・)中(・)に(・)入(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)い(・)さ(・)え(・)す(・)れ(・)ば(・)こ(・)の(・)制(・)限(・)は(・)無(・)し(・)に(・)な(・)る(・)よ(・)ね(・)?」

 

「ん? ダンジョン内で滋くんにでも説明すんのか? まぁ、そんくらいならいいぜ。だが、わかってると思うが、ダンジョンから出た後も公の場でもどこでも信用のできない不特定多数の一年生にこんなベラベラ説明したりすんじゃねーぞ? マジで収拾がつかなくなる」

 

「……は〜い。いつつ、懐中時計は忘れずにブレザーのポケットに入れておくべし。これなんだっけ?」

 

 そう言った修二がブレザーの胸ポケットから取り出したのは鎖に繋がったよく磨かれた銀の懐中時計だった。

 

「タイマー機能付きの機械式懐中時計だよ。ダンジョンの中じゃ普通の電気式の時計じゃ役に立たねぇし、こういうアナログな道具が役に立つ場面があるんだわ。本当は時間がさらに正確なクオーツ式の方がいいんだけど、何故かクオーツ式もダメだったからモノホンの機械式になったってわけだ。ちなみにその時計は18世紀のスイスのアンティーク時計をうちの連中が改造してこさえたもんでな。元の中身が壊れてたから少しは安かったが、それでも外の部分は純銀製。だから元々の代物は完全な形なら500万円でも安いっていういいモンだよ」

 

「うげ、じゃあこんなのいらないよ、にいちゃん。高くて怖い」

 

 そう言って修二は隆一に懐中時計を押し付けようとするが隆一はそれを受け付けない。

 

「馬鹿、気にすんな。初回ダンジョンダイブは9時から15時までの六時間の長丁場だ。流石に時計なしだといつになったら終わるのかという終わりの見えないことによる圧迫感で精神的にキツくなる。通常のダンジョンダイブにおいても時計は必需品だし、それにそいつは今回ダンジョンダイブから五時間までは一時間ごとに、あとは30分、20分、10分、5分、3分、1分、そして3時ちょうどで鳴るように設定してあるから、わざわざ取り出さなくても使えて便利だぞ。あと昨日も言ったが絶対にそいつをお前の体から離すな。手に取って時間を確認する時以外、絶対にブレザーのポケットから出すな。約束しろ。絶対だぞ?」

 

 わざわざ立ち止まって自分の方を見ながらそんなことを言ってくる隆一の剣幕に修二は驚いた。この兄は普段からふざけているし実際イタズラ好きのふざけた人間なのだが、基本的に誰かに対して声を荒げたりマジな顔をすることは珍しい。それは弟の自分に対しても基本は同じはずだ。しかしこの件に関しては昨日も同じようなことを言っていたし、昨日もマジのガチの声だった。そんな極めて珍しいはずの二日連続の兄の本気の声に修二はびっくりしたように返事を返す。

 

「わかったよぉ、約束するよぉ。……なんか変なもんしこんでないよね?」

 

「ナイナイ、安心しろ。お守り代わりだよ」

 

 そう言ってプラプラ手を振って先に歩き出した兄を追う形で修二もまた歩き続ける。チラホラと登校途中の学生たちが増えてきている。遠巻きに修二と、そしてSランク倶楽部の部長がなぜこんな時間に普通に登校しているのかと隆一を見て驚いている生徒が多数いたがこの兄弟はそんなことを気にするような人間たちではなかった。

 

「ほれ。シュウ、続き」

 

「じゃあ、ダンジョンダイブが終わった後は何も言わない。馬鹿みたいにボーとしとく! んで最後。必ず生きて帰ってくる」

 

 ダンジョンダイブの後にボーと何も知らないふりをするのは普通初回ダンジョンダイブの後の反応がそれが普通だからだ。そして最後の一つに関してはもはや言うまでもない。隆一はまさにこの二年間そのためだけに頑張ってきたのだから。そうしてその答えに満足したのかニヤリと隆一は笑った。

 

「よし、完璧だ。行って来い! シュウ!」

 

 そう言って気合を入れて弟を死地へと送り出した隆一の声は、それでもそれを受けた弟にもわからない程僅かにだったが不安と後悔に揺れていた。

 

 愛する弟を地獄に放り込むのにこの程度のことしかできないのかという自分への怒りに震えながら。

 

ーー7:20

 

 兄と別れた後、修二は一人教室へと向かった。そうしてまだ誰もいない教室へと辿り着き、静かに席へと座った。良くも悪くも余計なことを知ってしまった為に迂闊なことを話すこともできない。目を瞑って判断基準を明確にする為に深く思考に潜る。自分が納得するために。

 

 今の今まで兄が教えてくれたさまざまな情報を精査する。今の自分のレベルは15。初回ダンジョンダイブで送り込まれる限界の階層はおそらく地下三階であること。そこに存在できる通常のゴブリンのレベル限界は20であること。おそらく今の自分ならタイマンならどうにかなる相手だろうし、奇襲して相手を乱せば集団でも勝つこと自体は可能だろうと兄が言ってくれたこと。それでも突然現れる階層ごとのレベル限界を超えた徘徊する怪物(ワンダリングモンスター)相手には分が悪いだろうこと。そして勝利条件はモンスターを倒すことではなく、制限時間の9時から15時まで生き残ること。それら全てを考慮に入れて修二は結論を出した。

 

(……うん、この辺りが妥当かな)

 

 この時点で修二は一度ルームメイトである滋も含めある意味平等にこのクラスの自分以外の全員を切り捨てた。仕方のないことは仕方がないのだと『割り切った』。

 

 そうして新たに自分の中に基準を設定した。

 

 ひとつ。助けてくれと言った人は助けよう。

 

 ふたつ。一緒に行こうと声をかけてくれた人も見捨てない。

 

 この二つだけ。そして自分からは声をかけない。兄が一緒に行っても構わないと薦めてくれた滋に対しても自分からは声をかけない。ある意味で平等にこの条件で行こうと決めた。

 

 傲慢だと思う。冷酷だとも思う。だがこれが修二自身の良心の限界だった。

 

 そうでもないと流石の修二も割り切れそうになかったからだ。そして全てを助けられない不甲斐ない自分への怒りを静かに心の中で燃やした。いつか報いを受けさせてやると『心の奥底』に新たに火を焚べたのだ。

 

 そうしているうちにどんどんクラスメートたちが登校してきた。みんな不安と緊張と興奮でガヤガヤとしている。それでも修二は目を開かなかった。ただ静かに座っているだけ。

 

 そんな修二の肩を誰かがつついた。目を開くとそこにはメガネのレンズ越しに自分を見つめる栞里の姿があった。心配そうにこちらを見ている。

 

「あの……、修二、くんでいいですか? あの、大丈夫ですか? すごく緊張しているみたいだから……」

 

 改めて繁々と彼女の整った顔を見た。やはり気になる女の子だ。おそらく一目惚れなのかもしれないとこの時自覚した。胸が急にドキドキした。思わず少し椅子から腰を浮かし先ほど自分で決めた基準を覆して自分と一緒にいかないかといいそうになったその時、教室の入り口で歓声があがった。

 

「おはよう! アゲハちゃん! 今日も美人だね! ねぇ、今日のダンジョンダイブ俺らと一緒にいかない? 行こうよ! ねぇ!」

 

「えぇい! 貴様ら、しつこいわ! 散れ! いい加減鬱陶しい! アゲハも何かゆうてやれ!」

 

「……ごめんなさい。……ウチは、澪ちゃんたちと行くからいいです」

 

「え〜そんなこと言わずにさぁ! 一緒に行こうよぉ〜」

 

 登校してきた褐色金髪の超美少女アゲハに群がる数人の男たち。それは今日のダンジョンダイブにアゲハと一緒に行ってナ(・)ニ(・)カ(・)をしようとしているのは明白であり、それをおかっぱ頭の澪が何とか防いでいるこの二日間の変わらない風景。それを見た栞里は「うぅん、もう! あいつら!」と言って修二から離れ、澪と肩を並べてアゲハを自分の背後で庇った。

 

 修二は喉元まできていた「僕と一緒にダンジョンに行きませんか?」という言葉を飲み込んでため息をひとつ。こうなると縁がなかったのだと言わざるを得ない。流石に今から追いかけて誘うのは自分の中の基準に反する。こういう頑なところがある修二が諦めて目を閉じてしばらく前の席の椅子がひかれる音がして頭の上から声が聞こえた。短い金髪に耳に開けたピアス。少しクセの強い顔つきのルームメイトの滋がそこにいた。

 

「よお、修二。はよっす」

 

「うん、滋くんおはよう」

 

「てかお前いつになったら部屋に帰ってくんのよ、俺もう二日も一人部屋よ? まぁ昨日お前のお兄さんがきてたけどよ」

 

「いや、なんかごめんね? にいちゃんが迷惑かけたみたいで」

 

「いや、面白い人だったしそれはいいけどよ。まぁそんなことはさておきだ」

 

「何?」

 

「ダンジョン、一緒に行くだろ?」

 

 ヘラヘラした笑顔のまま当然のように言う滋に、ポカンとした顔をした修二。そんな顔をされたこと自体に心外だと言わんばかりの滋はこう続けた。

 

「んだよ、一日だけとはいえルームメイトじゃねぇか。それにこういうのってよ、え〜となんだっけ? 『そでふれあうもたしょうのえん』だっけ? だろ? あってるよな? 俺バカだからちゃんとこういうのわかんなくてよ」

 

 少し照れくさそうにそういう。

 

 そんな滋もちろん何の考えもなく、修二を誘ったわけではなかったが、それはあの力と精神性なら少なくても俺の足手まといにはならんだろうし、初回のダンジョンダイブとやらは絶対みんな死ぬとか言っているがそんなの関係ねぇ、自分は死ぬつもりなんてさらさらないからちょっとでも使えるやつと一緒にダンジョンダイブをして生存率を上げたいと考えていたにすぎない。

 

 そしてそんな多少の計算はあったのだが、ただそれ以上に言葉通りの考えで滋はごくごく単純に、なんかやばい奴だけどなんとなく気の合いそうな修二をただ誘ったのだ。そんな自分の悩みなど知る由もない気軽な滋の誘いに、嬉しくなった修二は滋と同じような笑みを浮かべて、

 

「うん、『袖触れ合うも多少の縁』であってるよ。よろしくね、滋くん」

 

 といい握手のための手を差し出したのだった。

 

 ……なお、滋はこの時に

 

(こいつあのバカ力で俺の手のひら握りつぶすつもりじゃねぇよな?)

 

 と少しおっかなびっくりで握手をしたことは、彼だけが知っているここだけの話である。

 

 ーー8:50

 

 その後修二たちは担任の桃香先生に先導され教室から学園の校舎の中央、庭園のような中庭の真下部分へと階段を地下三階分くらい降りた先にある地下金庫室のような扉をいくつか抜けた先にある大空洞の中にある朱い鳥居だけの神社の前へと移動した。

 

 そこには教室を出る前に配布された何の役にも立たなそうな一メートルぐらいの長さの警棒のような棒と薄っぺらな強化プラスチックでできた小型の盾だけ持たされた今日ダンジョンダイブをする一年生たちでごった返していたが、その場にいたおよそ300人以上の生徒の中でおそらく修二だけがその鳥居と神社の出来損ないのようなモノの正体を知っていた。

 

 【羅城門】。生徒たちをダンジョンという死地へと誘う現世と幽世(かくりよ)を隔て繋ぐ忌まわしき超古代の遺物。

 

 各担任が震えるような声で自分達のクラスの生徒たちに【羅城門】の説明をし始める。曰くこれは世界に穴を開けるゲートの一種であり、同時にあなたたちの身の安全を守るセーフティ機構でもあると。そんな真実の混ざった嘘を罪悪感の混ざった震えた声で告げているのを聞いて修二は改めてこう思った。

 

『くたばれ、学園上層部』と。

 

 そうしてすぐにダンジョンダイブが順番に始まり、やがて自分達癸組の番になり、栞里、澪、アゲハの三人が他の生徒たちと同じように門の柱と柱の間にできた空間の歪みに溶け込むように消えていったのを見届けてほぼ最後の組として修二と滋の番になった。

 

 ん、と言って手を差し出してくる滋が

 

「さっきの握手は別としてよぉ。俺ぁ、この歳になって野郎と仲良くおてて繋いですることになるなんて思ってもみなかったわ」

 

 そう口元を歪めたいつものヘラヘラ顔でわざとうんざりした声で言ったので修二も負けじと、

 

「僕も弟や妹以外で最近手を繋いだ経験はないなぁ。まして同い年の男となんて。正直、手を繋ぐなら可愛い女の子が良かった」

 

 それはこっちのセリフだけどな! そう言って笑い合った二人は手を繋いだまま仲良く歪みへと身を委ねた。

 

 

 ーー9:00

 

 そしてその中で修二は見た。

 

 訳のわからないアルファベットの羅列。アルファベットだけではない、漢文、和文、象形文字。ともかくそれは見たこともない言語の羅列だったが、その中で一文だけなぜか意味の理解できたものがあった。

 

 ーー汝等、この門を潜る者一生を破棄せよ。

 

 その文字列の意味を理解した瞬間、修二はおそらく自分自身の魂の右腕なのだろうそれを動かして思いっきり真上に向かって拳を突き立てたのち見事に中指をおったてた。

 

 ーー誰がテメェらなんかの思惑に乗るか、このクソどもが。これから何もかもぶっ壊してやるから覚悟しとけよ。

 

 そんな決意と共にまだ幼い修羅はダンジョンへと降り立った。

 




感想、評価、気が向いたらお願いします。

誤字脱字報告いつもありがとうございます。

次回、かなり視点が入れ乱れます。

アンケート締め切りました。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。

アンケート 第6話最後の質問について

  • A 侮られ男子の悪女ザマァメス豚ハーレム
  • B ゲーム世界転生者のMOBハーレム作り
  • C そんなんいいから本編はよ
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