「もしかして、下手?」
「うっせぇ…」
焦げて崩壊したフライパン上のパンケーキを見つめて────
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▽
□電子メイシ
【おーいバトルウィッチ】
シャドウ:バトルウィッチってどんな感じのドライブツリーにしてる?
シャドウ:ってなるよなー
闇狭間クリム七ゅー:ってなるよねー
シャドウ:それ、たのしい?
闇狭間クリム七ゅー:それ、ミリもたのしくない
シャドウ:きっとやめたほうがいいぜ壁に話しかけてるみたいで マジむなしい
闇狭間クリム七ゅー:そっちもきっとやめたほうがいいぜ。何かを知りたいのならもっとなかよしポイントを稼ぐこと。親しき中にも序列あり、マジ
シャドウ:序列って…それも犬みたいでやめたほうがいいと思うけど……じゃ今度一緒に風の国の方の未開地エリアにピクニック!俺まだ開放されて全然行ってない!
闇狭間クリム七ゅー:風の翼人ヴルゥプラノたちのエリアはレベルが高い割に旨味がないわ、うちの最弱には無理ね
シャドウ:たしかにって最弱じゃねぇ!!!
闇狭間クリム七ゅー:たかし最弱じゃぁね!!!
シャドウ:あん???ヤルのか???(たかし誰だよ)
闇狭間クリム七ゅー:あーん、ヤラない
シャドウ:はー、調子狂う。ここまで付き合ったんだからバトルウィッチについて一つ教えてよ
闇狭間クリム七ゅー:ひとつ、イチバンたのしい職
シャドウ:とある影魔法剣士はまことに異議ありだけど、まぁそっちはなかなか愉快なヤツが多いな
闇狭間クリム七ゅー:そっちはなかなか根暗だもんね
シャドウ:ちょっと今返す言葉えらんでる
闇狭間クリム七ゅー:……戦争(ラグナロク)ね!
シャドウ:ケガする前にやめようぜ闇ねぇ お互い
闇狭間クリム七ゅー:そう ねぇ
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※ドライブライフツリー:
枝分かれに伸びていく無限の成長図をレベルアップ時などで手に入れたDポイントでプレイヤーの好きに成長させていくシステム。
成長させれる項目パネルは多岐にわたり、職、趣味、技、魔法、心、心得、種族、生死、素ステータスなどがある。このドライブツリーの伸ばした結果で新たにつける職が決まることもある、現在気に入った職についている場合は現在の職の条件を常に満たした上で慎重に更なる成長ルートを選ぼう。
一度だけポイントをリセットし振り直す事ができるが、二回目以降は特別なレアアイテムが必要になる。
※ヴルゥプラノ:
風の国にいる翼人たちの総称。
ラグナロク以前は人にはない翼を持ち大空を旅するものたちであったが、現在の彼らは飛べない。
傭兵、旅人、詩人などが多くいたが、飛べなくなってからは風の国に居つく者が増えた。
森のエルフたちのように余所者に厳しい者が多い。
一番戦闘力の高い種族であった。
料理スキル熟練度を高め、今日もパンケーキスフレをつくる修行に打ち込む。
とある一軒家マジックコンロの前のそんな日常的なシーンに、
新たな訪問者が現れた。
クラシックなメイド服姿が部屋の扉をあけて入って来た。
「知り合い?」
「あ? しらない」
「だれだよコイツ? 地蔵かNPCか? おっとそろそろひっくり返そ」
「さぁ。──はやっ」
「うわっ!? 言うのおせぇ! あぁもう最悪だよっ、いやっこっからリカバリーを図る!」
「下手──へたっ──へたっ」
「あおるたびに煽るナ!!!」
無言で佇む新メイドは目撃する。
マジックコンロで屑みたいなパンが豪快にあおられるフライパン上を舞い、その後ろでタバコの煙がもくもくと立ち昇り混在している。
思考を停止しながら────────新メイドはやがて足音を大きく立て動き出した。
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テーブルで一皿平らげ無言。石を嚙み砕くような音を立て────口元をナプキンでぬぐい、お味の感想はなし。突如現れた審査員はノートにてきぱきメモを取りながら、席を立ち次の行動へと移る。
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サンサンシュガーのタバコの先端に風のマジックを放ち刻み禁じ、シャドウに石のような食感のパンケーキを焼く練習をすることをフライパンをメイド長職の腕力で丸めて畳み、一時禁じた。
「メイドたるもの先ずは身だしなみ。きちんと着こなしてもらいます」
威厳ある青黒い髪のメイドは新米メイドの襟を正し、スカート裾を正し、髪を結い、邪魔だといって外していたベッド下のブリムをアイロンにかけ、頭に装備し直した。
「ってなんで俺がツインテに……!!」
立ち鏡の前にデジャブするのは新米メイドと先輩メイドの図。
しかし此度の彼を指導するメイドはこの間までお世話になっていたピンク髪よりも余程メイドらしいメイド、〝メイド長〟であった。
□公開ステータス
ブルー・フライハイト
種族 ヴルゥプラノ
職 メイド長
称号 メイドマスター 裁縫マスター 風の民
髪色 ミッドナイトブルー
髪型 ギブソンタック(後ろまとめ三つ編み)
目 梟の眼 黒 オレンジ
■装備
風爪の孫の手
サンゾウブリム
風の加護のクラシックメイド服
綺麗なドレスシューズ
深紅の燕尾ロングリボン
古代英雄のキルトハンカチ
□
あまりにも長い服装チェックにあきれ、暇をもて余していたシャドウは鏡ごしに新キャラのステータスを確認した。
どうやら自分を完璧なメイドにするために他から派遣されたらしいのは嘘ではなく事実であり、ステータス肩書通りの本物のメイドであった。
シャドウはそのステータス種族称号装備を確認し少々感心と納得をせざるをえなかったが、────ツインテール。
鏡の前にはツインテールに結われた新米メイド、シャドウ・シェードが顔表情を引きつり立っている。青髪のメイドは依然チェックに余念がない、ツインテールの毛先の位置まで手先で器用に……。
シャドウが大人しくしているのは完璧なメイドの納品クエストのため、メイド長の実力とノウハウを様子見である。
そしてやっと終わったメイド長によるチェックに、新米メイドが立ち鏡のまえからアクビをして去ろうとしたところ────
やっと自由に解き放つように広げようとした肩の可動域が狭い──肩が痛い。
ものすごい力で左右から手で肩を押さえつけられている。
アクビの一つも急に阻害され、さすがに鬱陶しくなったシャドウは拘束する手を振りほどいた。
「おいっ!!! イテェよ!!! 意味のねぇ装備チェックもいい加減に! あがっーー!??」
強引に暴れ振り向き、文句鬱憤を盛大に垂れ流そうとしたそのとき────脳天に電撃が走った。装備していた電磁ブリムからいきなり伝い、シャドウを愚痴のつづきも発せないほどの麻痺状態にした。
「ダメです。メイド長にこのように乱暴に手をあげ逆らうとは。ポイントマイナスの駄メイドには、折檻が────必要なようです」
魔力を帯びた紅のメイド長のブリムはバチバチと赤雷を漏らし光り、メイド長を叩いた新米メイドの右手はその手首を彼女の左手にガッシリと掴まれた。
シャープに吊り上がったオレンジの中を泳ぐ、黒い瞳はぎろり……ツインテールの駄メイドを睨みつけその掴んだ手首を痛いほどに離さない。
丁寧に隠し仕舞われていた、翼人の翼がナゾの感情に疼く……メイド長による新米駄メイドの折檻は始まった。