※この作品はR-18です。

欲しいモノ全てが手に入る地下迷宮を死神は旅をする   作:柊咲

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第19話 運送屋

 

「……カトレア、頼みがあるんだ」

「あら、たった一日で色々と有名になった新人探索者のクレスじゃない、いらっしゃい」

 

 

 

 ──次の日の朝。

 俺はエリザと共に、カトレアのいるギルド協会を訪れていた。

 

 その理由は、とある相談をする為だ。

 ギルド協会にいる探索者たちから嫌な視線を受けながら、なるべく周りに聞こえないよう小さな声でカトレアに伝えた。

 

 

 

「エリザに新しい宿屋を紹介してくれないか?」

「あら、今まで住んでいた宿屋はどうしたの? まさか追い出されちゃった?」

 

 

 

 おそらくなぜ俺がこんなことを言っているのか、その理由を既に知っているのだろう。

 クスクスと笑うカトレアは、それはそれは楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「あー、そういえば今朝、変な噂話を聞いたんだったわ。夜中から朝方までずっとセックスしてる男女がいて、喘ぎ声がうるさかったって。しかもその宿屋は一人用で、一切の性行為は禁止されてるって……それ、もしかして、あなたたち?」

「……ノーコメントだ」

「ふふっ、随分と激しかったみたいね。それにお相手はあの人間嫌いのエリザだったなんて」

「……ノーコメントよ!」

 

 

 

 決して目を合わせようとしないエリザ。

 

 

 

「そういえば、カトレアはエリザと仲良かったのか?」

「まあ、仲悪くはないわよ。ねえ、エリザ?」

「カトレアには、ここへ来たときからお世話になっている」

「最初は「気安く人間が喋りかけるな、このボケェ!」って、ツンツンしていたけど」

「そ、そこまでは、言っていないじゃないか……」

「あら、そうだったかしら? まあ、今では二人で飲みに行ったりする仲よ」

 

 

 

 どうやら人間であるカトレアだが、彼女に対しては敵意はなく仲もいいらしい。

 

 

 

「それで話を戻すけど、仲良く二人で宿屋を追い出されたんだったわよね?」

「まさか宿屋によって一人用とか、性行為禁止だとかがあるとは思わなかったんだ」

「エリザの借りていたのは毎月契約する月決めの宿屋で、そういったところは値段が安い代わりに複数人では泊まれない決まりになっているのよ。それに近隣に迷惑にならないよう、騒音を出さないって決まりにもなっているの。エリザ、最初に契約したときちゃんと説明されたはずだけど?」

「うっ……ま、まさか、私が誰かと一緒の部屋で寝るとは思っていなくて、聞き流してしまって」

「まったくもう」

 

 

 

 呆れたようにため息をつくカトレアだったが、その表情はどこか嬉しそうにも見えた。

 

 

 

「まさか人間嫌いのエリザが、その人間のクレスと男女の関係になるとはねえ……ふふっ、良かったわね」

「カ、カトレア!」

「何よ、陰ながら心配していたのよ? ずっとあなたが一人ぼっちでいて、いつか誰かと一緒になれたらいいなってね」

 

 

 

 姉や母親のような優しい微笑みを浮かべるカトレア。

 カトレアなりに、ずっと孤独だったエリザを友人として心配していたのだろう。

 

 

 

「だけど気を付けてね、彼……私のこともベッドに誘ってきたから」

「なっ!? クレス……?」

「まあ、カトレアも綺麗な女だからな。仕方ない」

「それは、そうだけど……」

 

 

 

 何か言いたげなエリザ。

 そんな彼女に、カトレアは諭すように伝える。

 

 

 

「ふふっ、そういう男だってわかっていたのに、惚れちゃったのでしょ?」

「それは!」

「だったら諦めなさい。女癖の悪い男に惚れた女の方が悪いんだから」

「う、うぐぅ……」

 

 

 

 そうだそうだ、と口にしようとしたが、エリザはムスッとした表情のままずっと俺の太股を指でつねっている。

 

 

 

「まあ、二人の関係については今度ゆっくりお酒を呑みながら聞くとして。新しい宿屋を紹介してほしい、って話しだったかしら?」

「ああ。今度は一人用じゃなく二人で泊まっても問題ないところにしてくれ。あと壁が厚くて近所迷惑にならないと助かる」

「エッチする気満々ねえ」

 

 

 

 エリザは赤面したまま何も言わない。

 一緒の宿屋をとることは今朝、追い出されたときに納得させた。まあ彼女も元々その気だったが、少しからかいすぎて拗ねてしまったが。

 

 

 

「二人で泊まれる宿屋で空きは何件かあるけど……家賃の支払いはできそう?」

「いくらぐらいだ?」

「一番安いところでもこのぐらいね」

 

 

 

 カトレアから紹介された宿屋の一ヵ月分の家賃を見ると、エリザの泊っていた宿屋の四倍ほどの金額だった。

 そして最初に驚いたのはエリザだった。

 

 

「えっ、こんなにするのか!?」

「二人以上だとこれぐらいは仕方ないわね。だけどどの宿屋も広くて快適よ。他の選択肢だと一軒家を購入するって手もあるけど」

「ちなみに一軒家はどれぐらいするんだ?」

「二人部屋の家賃何年か分くらいかしらね」

「「無理だな」」

 

 

 

 一軒家なんて買えるのはいつになるのだろうか。

 結局のところ二人で泊まれる宿屋をカトレアに用意してもらうことにした。

 

 

 

「稼がないとな」

「そうね。この金額だと結構無理しないと難しいかも……それこそ、中層に行くとか」

 

 

 

 エリザの言葉に、少し考えこんだカトレア。

 

 

 

「二人だけで中層に向かうのは、あまりオススメしないけど。それにもし中層を目指すなら運送屋《ポータル》を雇わないといけないわね」

「運送屋?」

 

 

 

 初めて聞く名称に疑問符を浮かべる。

 

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